バンツー血ち鉄てつ症しょう

バンツー血ち鉄てつ症しょう（バンツーけつてつしょう、英語えいご、Bantu siderosis）とは、鉄てつ過剰かじょう負荷ふか（鉄てつ過か負荷ふかとも言いう）がかかったことによって発症はっしょうする鉄てつ蓄積ちくせき症しょうである。患者かんじゃはアフリカ大陸たいりくのサハラ沙漠さばく以南いなんに見みられた。

概要がいよう

鉄てつ蓄積ちくせき症しょうには、遺伝いでん的てきな原因げんいんで体内たいないに鉄てつを蓄積ちくせきしやすいことで発生はっせいする遺伝いでん性せい鉄てつ蓄積ちくせき症しょうの他ほかに、何なんらかの原因げんいんで体内たいないに鉄てつが過剰かじょうに吸収きゅうしゅうされたことによって発生はっせいする環境かんきょうが原因げんいんの鉄てつ蓄積ちくせき症しょうが存在そんざいする。バンツー血ち鉄てつ症しょうは遺伝いでん的てきな問題もんだいで起おこる病気びょうきではなく、後者こうしゃの理由りゆうで発生はっせいする鉄てつ蓄積ちくせき症しょうの1種しゅであり、鉄製てつせいの容器ようきの中なかで醸造じょうぞうした酒さけを大量たいりょうに飲用いんようしたことによって生しょうじた体内たいないの鉄てつ過剰かじょうによって引ひき起おこされる 。

つまり、単純たんじゅんに食しょく習慣しゅうかん（飲酒いんしゅ習慣しゅうかん）の問題もんだいによって鉄てつを過剰かじょうに摂取せっしゅし続つづけ、それを吸収きゅうしゅうし続つづけたことによって発生はっせいした鉄てつ過剰かじょう負荷ふかによる鉄てつ蓄積ちくせき症しょうである。ヒトの体内たいないからは代謝たいしゃに伴ともなって毎日まいにち微量びりょうの鉄てつが体外たいがいへと失うしなわれてゆくものの、ヒトには一旦いったん体内たいないに吸収きゅうしゅうした鉄てつを能動のうどう的てきに体外たいがいに捨すてる仕組しくみが備そなわっていない 。

このため、鉄てつを過剰かじょうに摂取せっしゅし続つづけた場合ばあい、いずれ体内たいないの鉄てつが過剰かじょうとなってゆく。ヒトでは体内たいないの鉄てつの蓄積ちくせき量りょうが約やく20 gを超こえてくると、鉄てつによって発生はっせいする活性かっせい酸素さんそ種しゅによる障害しょうがいや、鉄てつとDNAとが直接ちょくせつ反応はんのうすることによる障害しょうがいが起おこり、生体せいたいにダメージを与あたえるとされている 。

この状態じょうたいで生体せいたいが被こうむる障害しょうがいは可逆かぎゃく的てきであるものの、さらに鉄てつの蓄積ちくせきが進行しんこうすれば不ふ可逆かぎゃく的てきなダメージを生体せいたいは負おう 。

例たとえば、生体せいたい組織そしきへの鉄てつ沈着ちんちゃくが起おこり、酷ひどい場合ばあいは、肝かん細胞さいぼうが障害しょうがいされて肝硬変かんこうへんが発生はっせいしたり、膵臓すいぞうが繊維せんい化かしてインスリンが作つくれなくなって糖尿とうにょう病びょうになったり、心筋しんきんなどが障害しょうがいされてゆく。なお、あくまで鉄てつの吸収きゅうしゅう能力のうりょくが充分じゅうぶんであればの話はなしであるものの、バンツー血ち鉄てつ症しょうの発症はっしょう原因げんいんから明あきらかなように、別べつに鉄製てつせい容器ようきの中なかで作つくった醸造じょうぞう酒しゅを大量たいりょうに飲用いんようし続つづけなくとも、何なんらかの方法ほうほうで鉄てつの過剰かじょう摂取せっしゅを長期間ちょうきかんにわたって続つづければ、全まったく同おなじ状況じょうきょうに陥おちいり得える。例たとえば、鉄てつ欠乏けつぼう状態じょうたいになく、かつ、鉄てつの吸収きゅうしゅう能力のうりょくが正常せいじょうなヒトが鉄剤てつざいを長期間ちょうきかんにわたって服用ふくようし続つづけた場合ばあいなどである 。

バンツー血ち鉄てつ症しょうは鉄てつの過剰かじょう摂取せっしゅを続つづけたことによって起おこったものであり、既すんで述じゅつの通とおり、鉄てつの過剰かじょうはヒトの身体しんたいに悪影響あくえいきょうを及およぼす。しかし、鉄てつはヒトにとって必須ひっすの元素げんそでもあり、逆ぎゃくに鉄てつの摂取せっしゅ不足ふそくが続つづけば、今度こんどは鉄てつ欠乏けつぼう性せい貧血ひんけつを始はじめとする鉄てつ不足ふそくを原因げんいんとする疾病しっぺいが発生はっせいする。したがって、あくまで適正てきせいな鉄てつの摂取せっしゅが求もとめられる。

治療ちりょう

バンツー血ち鉄てつ症しょうを早期そうきに発見はっけんして、生体せいたいに不ふ可逆かぎゃく的てきなダメージが生しょうじていなければ、体内たいないの鉄てつを強制きょうせい的てきに除去じょきょする治療ちりょうを施ほどこすことで回復かいふくする。例たとえば、瀉血しゃけつすることによって赤血球せっけっきゅうなど血ち中ちゅうに含ふくまれる鉄てつを捨すてる方法ほうほう、デフェロキサミンのような鉄てつをキレートする製剤せいざいを投与とうよして腎臓じんぞうからの鉄てつの排泄はいせつを促うながす方法ほうほうなどがある。また、バンツー血ち鉄てつ症しょうの発症はっしょう原因げんいんが単たんなる鉄てつの過剰かじょう摂取せっしゅに過すぎないことからも明あきらかなように、生体せいたいに悪影響あくえいきょうの出でない程度ていどの鉄てつの蓄積ちくせきであれば、ヒトの体内たいないからは代謝たいしゃに伴ともなって毎日まいにち微量びりょうの鉄てつが体外たいがいへと失うしなわれてゆくため、一時いちじ的てきに鉄てつの摂取せっしゅ量りょうを制限せいげんすることで体内たいないの鉄てつが適正てきせいな量りょうになるようにすることも可能かのうである。しかし、逆ぎゃくに更さらなる鉄てつの蓄積ちくせきが続つづけば生体せいたいは不ふ可逆かぎゃく的てきなダメージを負おい得える 。

したがって、不ふ可逆かぎゃく的てきな組織そしき障害しょうがいが起おこる前まえに、体内たいないへの鉄てつの過剰かじょう蓄積ちくせきを発見はっけんして治療ちりょうすることが望のぞましい。なお、幸さいわいなことに血液けつえき検査けんさを実施じっしすれば、血清けっせい鉄てつや血ち中ちゅうのフェリチンが異常いじょう高値たかねを示しめしているなどといったことによって、体内たいないに鉄てつが過剰かじょうに蓄積ちくせきしていることを、不ふ可逆かぎゃく的てきな組織そしき障害しょうがいが発生はっせいするよりもずっと早期そうきに発見はっけんすることが可能かのうである 。

関連かんれん項目こうもく

• 金属きんぞく中毒ちゅうどく