パヴェル・ヴラニツキー

Paul Wranicky

パヴェル・ヴラニツキー（Pavel Vranický, 1756年ねん12月30日にち、モラヴィア地方ちほうノヴァージーシェ - 1808年ねん9月26日にち、ウィーン）は、チェコ（モラヴィア地方ちほう）出身しゅっしんの古典こてん派は音楽おんがくの作曲さっきょく家か・ヴァイオリニスト・オルガニスト。ウィーンで活躍かつやくし、パウル・ヴラニツキー（Paul Wranitzky）というドイツ語ご名めいを残のこす。

モーツァルトと同年どうねん生うまれの親友しんゆうとして有名ゆうめいで、モーツァルトも彼かれのことを高たかく評価ひょうかし、また同時どうじにフリーメイソンのメンバーでもあった。多作たさく家かで、膨大ぼうだいな数かずのオペラ・バレエ音楽おんがく・交響こうきょう曲きょく・協奏曲きょうそうきょく・室内楽しつないがくなどを残のこしている。中なかでもシェイクスピアの戯曲ぎきょくに基もとづくオペラ『オベロン、妖精ようせいの王おう』（1789年ねん）は好評こうひょうで、シカネーダーがモーツァルトに『魔ま笛ふえ』を作曲さっきょくさせるヒントになったと伝つたえられる。

なお、弟おとうとのアントニン・ヴラニツキーも作曲さっきょく家かとして作品さくひんを残のこした。

生涯しょうがい

ヴラニツキーは1756年ねん、チェコ南部なんぶモラヴィア地方ちほうノヴァージーシェに宿屋やどやの息子むすことして生うまれている。歌うた・オルガン・バイオリンを町まちのグラマー・スクールで学まなんだ後のち、チェコ東部とうぶオロモウツに移うつり、オロモウツ大学だいがくの神学しんがく部ぶで学まなんだ。1776年ねんごろになって、同年代どうねんだいの若わかい作曲さっきょく家かたちと同おなじようにチャンスを求もとめてウィーンに移住いじゅうし、神学校しんがっこうに入はいって音楽おんがくを習得しゅうとくした。

1783年ねんにはウィーンを訪おとずれたスウェーデン王室おうしつの宮廷きゅうてい楽長がくちょうヨーゼフ・マルティン・クラウスについた。1784年ねん、エステルハージ宮廷きゅうていの音楽おんがく監督かんとくとなり、1785年ねん、ウィーンのケルントナートーア劇場げきじょうオーケストラの指揮しき者しゃとなり、1787にはブルク劇場げきじょうオーケストラに移うつった。1808年ねんに亡なくなるまで、この2つのオーケストラと関かかわった。

ヴラニツキーはモーツァルトの友人ゆうじんの一人ひとりで、モーツァルト未亡人みぼうじんコンスタンツェが夫おっとの遺作いさくを出版しゅっぱんする交渉こうしょうの手助てだすけをした。ヴァイオリニスト、作曲さっきょく家かとして優秀ゆうしゅうだっただけでなく、モーツァルトを初はじめ多おおくの人ひとから尊敬そんけいを集あつめた指揮しき者しゃでもあった。1800年ねんにはベートーベンが第だい1交響曲こうきょうきょくの初演しょえんを依頼いらいし、またハイドンはオラトリオ『四季しき』の初演しょえんを頼たのんだ。またウィーンの宮廷きゅうていでも尊敬そんけいされ、マリア・テレジア女帝にょていの個人こじん的てきな用ようのために作曲さっきょくし、その孫まごフランツ2世せいのために戴冠たいかん交響曲こうきょうきょくを書かいた。

作品さくひん

10曲きょくのオペラ、56曲きょくの交響曲こうきょうきょく（出版しゅっぱん済ずみ29曲きょく、未み出版しゅっぱん27曲きょく）、少すくなくとも56曲きょく（一説いっせつによれば73曲きょく）の弦楽げんがく四よん重奏じゅうそう曲きょくと、厖大ぼうだいな数かずの管弦楽かんげんがく曲きょく・室内楽しつないがく曲きょくを残のこした。1967年ねんにミラン・ポシュトルカが作品さくひん表ひょうを発表はっぴょうしているが、作品さくひんの多おおくは未み出版しゅっぱんのままになっている。

19世紀せいきベルギーの著名ちょめいな音楽おんがく評論ひょうろん家か・音楽おんがく学者がくしゃで、フランスで活躍かつやくしたフランソワ＝ジョゼフ・フェティスは次つぎのように書かいている。「ヴラニツキーの音楽おんがくは、自然しぜんなメロディーと輝かがやかしいスタイルで当時とうじ流行りゅうこうの音楽おんがくだった。管弦楽かんげんがく法ほうが巧たくみで、とりわけ交響こうきょう曲きょくの扱あつかいが秀ひいでていた。私わたしの若わかかりし頃ころには、その人気にんきがハイドンの作品さくひんと比くらべて引ひけをとっていなかったことを思おもい出だす。今日きょう、彼かれの音楽おんがくが早はやくも忘わすれ去さられているのは私わたしにとって驚おどろきの種たねである。」

ハイドンについて勉強べんきょうしたと信しんじる研究けんきゅう者しゃもいるが、その証拠しょうこはない。ただ彼かれがハイドンの弦楽げんがく四よん重奏じゅうそう曲きょくに学まなび、影響えいきょうを受うけたことは疑うたがいない。ハイドンと同様どうようヴラニツキーの弦楽げんがく四よん重奏じゅうそう曲きょくも、前ぜん古典こてん派はの形式けいしきからウィーン古典こてん派は後期こうきのソナタ形式けいしきに至いたるまで、発展はってんを示しめしている。

• オペラ『オベロン、妖精ようせいの王おう』 （1789年ねん）
• バレエ音楽おんがく『風ふうの精せい、花はなの精せい』（1795年ねん）、『森もりのおとめ』（1796年ねん）
• 交響こうきょう曲きょく（出版しゅっぱんしたもの）ハ長調ちょうちょう『ハンガリー人じんの喜よろこび』Op.2、ハ短調たんちょう Op.11-1、ヘ長調ちょうちょう Op.11-2、イ長調いちょうちょう Op.11-3、ハ長調ちょうちょう Op.16-1、イ長調いちょうちょう Op.16-2、ニ長調ちょうちょう Op.16-3、ハ長調ちょうちょう Op.17、変へんロ長調ちょうちょう Op.18、ハ長調ちょうちょう『戴冠たいかん式しき』Op.19、ニ長調ちょうちょう『狩かり』Op.25、ハ短調たんちょう『革命かくめいまたは平和へいわ』Op.31、変へんロ長調ちょうちょう Op.33-1、ハ長調ちょうちょう Op.33-2、ヘ長調ちょうちょう Op.33-3、ハ長調ちょうちょう Op.35-1、ト長調とちょうちょう Op.35-2、変へんホ長調ちょうちょう Op.35-3、ニ長調ちょうちょう Op.36、ニ長調ちょうちょう Op.37、ト長調とちょうちょう Op.50、イ長調いちょうちょう Op.51、ニ長調ちょうちょう Op.52
• ヴァイオリン協奏曲きょうそうきょく　ハ長調ちょうちょう、ニ長調ちょうちょう、ヘ長調ちょうちょう、ト長調とちょうちょう
• チェロ協奏曲きょうそうきょく ハ長調ちょうちょう　Op.27
• フルート協奏曲きょうそうきょく ニ長調ちょうちょう　Op.24
• オーボエ協奏曲きょうそうきょく ト長調とちょうちょう
• フルートとオーボエのための協奏きょうそう交響曲こうきょうきょく ハ長調ちょうちょう　Op.39
• 2つのヴィオラのための協奏曲きょうそうきょく ハ長調ちょうちょう
• 木管もっかん八はち重奏じゅうそうのためのハルモニー
• フルート・オーボエと弦楽げんがくのための六ろく重奏じゅうそう曲きょく
• オーボエ・フルート・2ヴィオラ・チェロのための五ご重奏じゅうそう曲きょく 4曲きょく Op.3
• 弦楽げんがく四よん重奏じゅうそう曲きょく 3曲きょく Op.1、3曲きょく Op.2、6曲きょく Op.9、6曲きょく Op.10、6曲きょく Op.15、6曲きょく Op.23、6曲きょく Op.26、6曲きょく Op.30、6曲きょく Op.32、3曲きょく Op.40、1曲きょく Op.41、1曲きょく Op.45、1曲きょく Op.49
• フルート四よん重奏じゅうそう曲きょく3曲きょく　Op.28
• フルート・ヴィオラ・チェロのための三重奏さんじゅうそう曲きょく 4曲きょく
• 2本ほんのフルート・チェロのための三重奏さんじゅうそう曲きょく 3曲きょく Op.53
• ピアノ・ソナタ 3曲きょく Op.22
• ミサ曲きょく 1曲きょく
• カンタータ 1曲きょく

参考さんこう文献ぶんけん

• 井上いのうえ和男かずお 編著へんちょ『クラシック音楽おんがく作品さくひん名めい辞典じてん』 （1995年ねん、三省堂さんせいどう）
• Wikipedia ドイツ語ご・Pavel Vranicky (2012年ねん6月がつ閲覧えつらん）
• The Vranitzky Project http://www.wranitzky.com/

外部がいぶリンク

• 評伝ひょうでん（英文えいぶん）
• パヴェル・ヴラニツキーの楽譜がくふ - 国際こくさい楽譜がくふライブラリープロジェクト