ガイウス・ユリウス・ヒュギーヌス

ガイウス・ユリウス・ヒュギーヌス Gaius Iulius Hyginus
誕生たんじょう	紀元前きげんぜん64年ねん頃ころ
死没しぼつ	17年ねん
職業しょくぎょう	著作ちょさく家か
代表だいひょう作さく	『神話しんわ集しゅう』 (Fabulae)

ガイウス・ユリウス・ヒュギーヌス（ラテン語らてんご: Gaius Iulius Hyginus, ガーイウス・ユーリウス・ヒュギーヌス）は、ラテン語らてんごの著作ちょさく家か。

生涯しょうがい

出生しゅっしょうは明確めいかくではなく、スペインかアレクサンドリアのどちらかと思おもわれる。アレクサンドロス・ポリュヒストルの弟子でしで、アウグストゥスの解放かいほう奴隷どれい。スエトニウス『文法ぶんぽう家伝かでん』によると、アウグストゥスによってパラティーノの図書館としょかん長ちょうに任命にんめいされたという。また、年老としおいてから貧窮ひんきゅうに陥おちいったともあり、これについては歴史れきし家かのクロディウス・リキヌスも同おなじことを書かいている。

作品さくひん

ヒュギーヌスは多作たさく家かであった。ジャンルも地形ちけい学がくから伝記でんき、詩人しじんヘルウィウス・キンナやウェルギリウスの詩しについての注釈ちゅうしゃく、農業のうぎょう・養蜂ようほうに関かんする論文ろんぶんと多岐たきにわたって著作ちょさく活動かつどうを行おこなったが、それらの原本げんぽんはすべて失うしなわれている。

ヒュギーヌスの名前なまえで現存げんそんするのは『神話しんわ集しゅう』と『天文てんもん詩し』の二ふたつで、これらは、おそらくヒュギーヌスの神話しんわ論ろんを略記りゃっきした学生がくせいの覚おぼえ書がきであると思おもわれる。ただし、作者さくしゃのヒュギーヌスとガイウス・ユリウス・ヒュギーヌスは別人べつじんだという説せつもある。

• 神話しんわ集しゅう（Fabulae） - 300程ほどの神話しんわと天界てんかいの系譜けいふについてのエピソードが短みじかく、そっけなく、そして粗雑そざつに語かたられている。当時とうじの編者へんしゃたちはこの作品さくひんの価値かちを、ギリシア悲劇ひげき作家さっかの失うしなわれた作品さくひんについての"adulescentem imperitum, semidoctum, stultum"（無む教養きょうような若わかさ、半端はんぱな知識ちしき、愚おろか）と評ひょうした。両りょうアントニヌス時代じだい（138年ねん - 180年ねん）の教育きょういくを受うけたローマ人じんなら誰だれでもギリシア神話しんわを知しるべきと期待きたいされていたため、ヒュギーヌスはぞんざいな形式けいしきで、最低限さいていげんのことだけを書かいたのかもしれない。ギリシア神話しんわには内容ないようが部分ぶぶん的てきに異ことなるバージョンが多おおく存在そんざいしていたとされるが、それらの多おおくが失うしなわれている現在げんざい、『神話しんわ集しゅう』は貴重きちょうな文献ぶんけんである。

しかし、『神話しんわ集しゅう』の大半たいはんも失うしなわれている。900年ねん頃ころにベネヴェント体たいで書かかれた写本しゃほんが1冊さつだけバイエルン州しゅうフライジングの修道院しゅうどういんに残のこっており、1535年ねんにはその写本しゃほんを基もとにして最初さいしょの印刷いんさつ版ばんが作つくられるが、Jacob Micyllusは不注意ふちゅういかつ無む批判ひはん的てきに書かき写うつした。ちなみに、"Fabulae" という題名だいめいをつけたのもMicyllusである。15世紀せいきと16世紀せいき、印刷いんさつの過程かていで写本しゃほんは印刷所いんさつしょでばらばらにされ、生いき残のこったのはたった2つの断片だんぺんのみであった。1つは1864年ねんにレーゲンスブルクで、もう1つは1942年ねんにミュンヘンで発見はっけんされた。両方りょうほうともミュンヘンで保存ほぞんされている。なお、バチカン図書館としょかんには15世紀せいきに写うつされた不完全ふかんぜんなテキストがある。

Ratdolt版ばんの『天文てんもん詩し』。木版もくはん画がはカシオペヤ座ざとアンドロメダ座ざ。アメリカ海軍かいぐん天文台てんもんだい蔵ぞう

• 天文てんもん詩し（Poeticon astronomicon） - 最初さいしょに出版しゅっぱんされたのは1482年ねんのヴェネツィアで、出版しゅっぱん者しゃはErhard Ratdolt、題名だいめいは"Clarissimi uiri Hyginii Poeticon astronomicon opus utilissimum"だった。星座せいざの星ほし々を一覧いちらんにしたものであるが、語かたられる主おもな事柄ことがらは星座せいざにまつわる神話しんわである。エラトステネス作さくとされる『カタステリスモイ』などを基もとにしている。

両方りょうほうの作品さくひんとも要約ようやくである。文体ぶんたい（スタイル）、ラテン語らてんごの能力のうりょくのレベル、初歩しょほ的てきな間あいだ違ちがい（とくにギリシャ語ごの翻訳ほんやく）は、ガイウス・ユリウス・ヒュギーヌスのような著名ちょめいな学者がくしゃの作品さくひんとは思おもえず、別人べつじん説せつの根拠こんきょとなっている。

日本語にほんご訳やく

• ヒュギーヌス『ギリシャ神話しんわ集しゅう』（松田まつだ治おさむ・青山あおやま照男てるお訳やく、講談社こうだんしゃ学術がくじゅつ文庫ぶんこ、2005年ねん2月がつ） ISBN 978-4061596955
• ヒュギヌス『神話しんわ伝説でんせつ集しゅう』（五之治昌比呂訳、京都大学きょうとだいがく学術がくじゅつ出版しゅっぱん会かい〈西洋せいよう古典こてん叢書そうしょ〉、2021年ねん1月がつ） ISBN 978-4814002825

参考さんこう文献ぶんけん

•  この記事きじにはアメリカ合衆国あめりかがっしゅうこく内うちで著作ちょさく権けんが消滅しょうめつした次つぎの百科ひゃっか事典じてん本文ほんぶんを含ふくむ: Chisholm, Hugh, ed. (1911). "Hyginus, Gaius Julius". Encyclopædia Britannica (英語えいご). Vol. 14 (11th ed.). Cambridge University Press.
• P.K. Marshall, ed. Hyginus: Fabulae 1993; corrected ed. 2002.
• Rose, H. I. Hygini Fabulae (1934) 1963. The standard text, in Latin.

外部がいぶリンク

• Online Text: Hyginus, Fabulae translated by Mary Grant
• Online Text: Hyginus, Astronomica translated by Mary Grant
• Online Text of Hyginus. complete （ラテン語らてんご）
• Review by Wilfred E. Major of P.K. Marshall, Hyginus: Fabulae. Editio altera. 2002