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ピアノソナタ第だい8番ばん (ベートーヴェン)

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ピアノソナタ第だい8番ばん（ピアノソナタだいはちばん）ハ短調たんちょう 作品さくひん13『悲愴ひそう大だいソナタ』（"Grande Sonate pathétique"）は、ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェンが作曲さっきょくしたピアノソナタ。作曲さっきょく者しゃの創作そうさくの初期しょきを代表だいひょうする傑作けっさくとして知しられる。

概要がいよう

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正確せいかくな作曲さっきょく年ねんは定さだめられていないものの1798年ねんから1799年ねんにかけて書かかれたものと考かんがえられており、スケッチ帳ちょうには作品さくひん9の弦楽げんがく三さん重奏じゅうそう曲きょくと並ならぶ形かたちで着想ちゃくそうが書かき留とめられている[1]。楽譜がくふは1799年ねんにウィーンのエーダーから出版しゅっぱんされ、早はやくからベートーヴェンのパトロンであったカール・アロイス・フォン・リヒノフスキー侯爵こうしゃくへと献呈けんていされた[1][2]。本ほん作さくはベートーヴェンのピアノソナタの中なかで初はじめて高たかく、永続えいぞく的てきな人気にんきを勝かち得えた作品さくひんである[3]。楽譜がくふの売うれ行ゆきもよく[4]、気鋭きえいのピアニストとしてだけでなく作曲さっきょく家かとしてのベートーヴェンの名声めいせいを高たかめる重要じゅうような成功せいこう作さくとなる[5]。

『悲愴ひそう』という標題ひょうだいは初版しょはん譜ふの表紙ひょうしに既すでに掲かかげられており[6]、これがベートーヴェン自身じしんの発案はつあんであったのか否ひかは定さだかではないものの、作曲さっきょく者しゃ本人ほんにんの了解りょうかいの下したに付ふされたものであろうと考かんがえることができる[7]。ベートーヴェンが自作じさくに標題ひょうだいを与あたえることは珍めずらしく、ピアノソナタの中なかでは他たに第だい26番ばん『告別こくべつ』があるのみとなっている[1]。『悲愴ひそう』が意味いみするところに関かんする作曲さっきょく者しゃ自身じしんによる解説かいせつは知しられていない[8]。標題ひょうだいについてパウル・ベッカーはそれまでの作品さくひんでは垣間見かいまみられたに過すぎなかったベートーヴェンらしい性質せいしつが結晶けっしょう化かされたのであると解説かいせつを行おこなっており[1]、ヴィルヤム・ビーアントは「（標題ひょうだいは）気高けだかい情熱じょうねつの表出ひょうしゅつという美的びてきな概念がいねんの内うちに解ほぐされるべきである」と説といている[8]。

ミュージカル・タイムズ誌しに1924年ねんに掲載けいさいされた論説ろんせつは、本ほん作さくの主題しゅだいにはベートーヴェンも称賛しょうさんを惜おしまなかったルイジ・ケルビーニが1797年ねんに発表はっぴょうしたオペラ『メデア』の主題しゅだいと、非常ひじょうに似通にかよった部分ぶぶんがあるとしている[8]。他ほかにも、同おなじくハ短調たんちょうで本ほん作さくと同様どうようの楽章がくしょう構成こうせいを持もつヴォルフガング・アマデウス・モーツァルトのピアノソナタ第だい14番ばんの影響えいきょうも取とり沙汰ざたされる[3]。とりわけ、第だい2楽章がくしょうアダージョ・カンタービレの主題しゅだいはモーツァルトの作品さくひんの第だい2楽章がくしょうに見みられるものと著いちじるしく類似るいじしている[9]。また、未完みかんに終おわった交響こうきょう曲きょく第だい10番ばんの冒頭ぼうとう主題しゅだいが同どう主題しゅだいに類似るいじしたものだったという研究けんきゅう成果せいかが発表はっぴょうされている[注ちゅう 1]。グスタフ・ノッテボームは本ほん作さくの終おわり楽章がくしょうが構想こうそう段階だんかいではヴァイオリンとピアノのための楽曲がっきょくであった可能かのう性せいを指摘してきしている[1]。

このピアノソナタはベートーヴェンの「ロメオとジュリエット」期きの心境しんきょう[3]、すなわち「青春せいしゅんの哀傷あいしょう感かん」を写うつし取とったものと表現ひょうげんされる[10]。描えがかれているのは後年こうねんの作品さくひんに現あらわれる深遠しんえんな悲劇ひげき性せいとは異ことなる次元じげんの哀あい切せっさであるが、そうした情感じょうかんを音楽おんがくにより伝達でんたつしようという明確めいかくな意識いしきが確立かくりつされてきた様子ようすを窺うかがい知しることが出来できる[10]。劇的げきてきな曲調きょくちょうと美うつくしい旋律せんりつは本ほん作さくを初期しょきピアノソナタの最高峰さいこうほうたらしめ、今いまなお多おおくの人ひとに親したしまれている[1]。

イグナーツ・モシェレスは、1804年ねんに図書館としょかんでこの作品さくひんを発見はっけんして写うつしを取とって持もち帰かえったところ、音楽おんがく教師きょうしから「もっと立派りっぱな手本てほんを基もとにしてスタイルが出来上できあがるよりも先さきに、そんな奇矯ききょうな作品さくひんを弾ひいたり勉強べんきょうしてはならないと注意ちゅういを受うけた」と回想かいそうしている[8][11]。ベートーヴェン自身じしんは持もち前まえのレガート奏法そうほうを駆使くしし、あたかもその場ばで創造そうぞうされたものであるかのように弾ひいたとアントン・シンドラーは証言しょうげんしている。その様子ようすは既すでによく知しられていた本ほん作さくと同おなじ曲きょくが演奏えんそうされているのかと耳みみを疑うたがうほどであったとされる[11]。

本ほん作さくはピアノソナタ第だい14番ばん（月光げっこう）、第だい23番ばん（熱情ねつじょう）と合あわせてベートーヴェンの三さん大だいピアノソナタと呼よばれることもある。約やく100年ねん後ごにロシアの作曲さっきょく家かピョートル・チャイコフスキーが交響こうきょう曲きょく第だい6番ばん『悲愴ひそう』を作曲さっきょくしているが、その第だい1楽章がくしょうにはこのピアノソナタの冒頭ぼうとう主題しゅだいとよく似にたモチーフが使用しようされている[7][10]。

演奏えんそう時間じかん

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約やく17-19分ふん[2][10]。

楽曲がっきょく構成こうせい

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第だい1楽章がくしょう

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Grave 4/4拍子ひょうし - Allegro di molto e con brio 2/2拍子ひょうし ハ短調たんちょう

ソナタ形式けいしき[10]。譜ふ例れい1に示しめされるグラーヴェの序奏じょそうが置おかれ、展開てんかい部ぶとコーダでも姿すがたを見みせる[10]。同様どうようの手法しゅほうは選せん帝みかど侯こうソナタ第だい2番ばん WoO.47-2（1782年ねん-1783年ねん）の第だい1楽章がくしょうにも見みられる。

譜ふ例れい1

\relative c' { \new PianoStaff << \new Staff { \key c \minor \time 4/4 \tempo "Grave." <c~ g~ es~>4 <c g es>16. <c g>32 <d b g>16. <es c g>32 <es c a>4( <d b>8) r <f~ d~ b~>4 <f d b>16. <f d b>32 <g d b>16. <aes d, b>32 <aes d, b>4( <g es c>8) r8*3/4 } \new Dynamics { s1\fp s\fp } \new Staff { \key c \minor \time 4/4 \clef bass <c,,~ g~ es~ c~>4 <c g es c>16. es32 d16. c32 fis4( g8) r16. aes,!32 aes'4~ aes16. aes32 g16. f!32 es4~ es8 r16. } >> }

急速きゅうそくな半音はんおん階かいの下降かこうで序奏じょそう部ぶを終おえると主部しゅぶが開始かいしされ、第だい1主題しゅだいがトレモロの伴奏ばんそうに乗のって現あらわれる[10]（譜ふ例れい2）。

譜ふ例れい2

\relative c' { \new PianoStaff << \new Staff { \key c \minor \time 2/2 \tempo "Allegro di molto e con brio." \override Score.NonMusicalPaperColumn #'line-break-permission = ##f << { c2. <e bes>4-. <f aes,>-. <g e>-. <aes f>-. <b d,>-. <c es,!>-. <c e,>2 \stemDown <e bes!>4-. <f aes,>-. <g e>-. <aes f>-. <b d,>-. <c g es! c>2-. <g f b, g>-. <es c g>-. <d aes f>-. \stemUp <c~ es,>1( _\( <c a es>2 \) _\( <b f! d>\) ) <c es, c>4-. } \\ { s1 s s s s s g2 fis } >> } \new Dynamics { s1\p s s4 s2.\sf s1 s2\cresc s\! s1 s s s4\p } \new Staff { \key c \minor \time 2/2 \clef bass \stemUp c,,8 c' c, c' c, c' c, c' \repeat tremolo 2 { c,8 c' } \repeat tremolo 2 { c, c' } \repeat tremolo 2 { c, c' } \repeat tremolo 2 { c, c' } \repeat tremolo 2 { c, c' } \repeat tremolo 2 { c, c' } \repeat tremolo 2 { c, c' } \repeat tremolo 2 { d, d' } \repeat tremolo 2 { es, es' } \repeat tremolo 2 { f, f' } \repeat tremolo 2 { g, g' } \repeat tremolo 2 { aes, aes' } \repeat tremolo 2 { fis, fis' } \repeat tremolo 2 { g, g' } c,,[ c'] } >> }

譜ふ例れい2が発展はってんして緊張きんちょうの高たかまりを迎むかえ、落おち着つきを取とり戻もどすと次つぎなる主題しゅだいが変へんホ短調たんちょうに提示ていじされる（譜ふ例れい3）。

譜ふ例れい3

\relative c' { \new PianoStaff << \new Staff \with { \remove "Time_signature_engraver" } { \key c \minor \time 4/4 r4 \clef bass bes,4-. es-. f-. ges-. \clef treble bes'-. es-. f-. \slashedGrace bes,8 ges'2.( es4) \slashedGrace bes8 ges'2.( es4) d-. \clef bass bes,,-. f'-. ges-. aes-. } \new Dynamics { s1 s s\sf s\sf } \new Staff \with { \remove "Time_signature_engraver" } { \key c \minor \time 4/4 << { d'4\rest <ges, es> <ges es> <ges es> d'\rest <ges, es> <ges es> <ges es> d'\rest <ges, es> <ges es> <ges es> d'\rest <ges, es> <ges es> <ges es> d'\rest <aes f> <aes f> <aes f> d\rest } \\ { bes,1 bes bes bes bes bes1*1/4 } >> } >> }

さらに管弦楽かんげんがく的てきな広ひろがりを持もった変へんホ長調ちょうちょうの主題しゅだいが続つづく[12]（譜ふ例れい4）。同どう主音しゅおんの短調たんちょう長調ちょうちょうによる対照たいしょう的てきな譜ふ例れい3と譜ふ例れい4はいずれもソナタの第だい2主題しゅだいとなり得える性格せいかくを有ゆうしており、こうした構成こうせいに関かんしては第だい3番ばんのソナタの第だい1楽章がくしょうで行おこなわれた主題しゅだい配置はいちが先例せんれいとなっている[10]。譜ふ例れい2によるコデッタが提示ていじ部ぶを結むすび反復はんぷく記号きごうが置おかれるが[10][13]、この反復はんぷくを受うけて曲きょくの冒頭ぼうとうに戻もどるか、主部しゅぶの開始かいし点てんに戻もどるかは奏者そうしゃによって意見いけんのわかれるところである[8]。

譜ふ例れい4

\relative c' { \new PianoStaff << \new Staff \with { \remove "Time_signature_engraver" } { \key c \minor \time 4/4 << { d'2\rest es2~ es es d\rest es~ es es } \\ { r8 es, g es es' es, g es g es g es r es g es r es g es es' es, g es g es g es r es g es } >> } \new Dynamics { s4\p } \new Staff \with { \remove "Time_signature_engraver" } { \key c \minor \time 4/4 \clef bass << { r8 bes g bes g bes g bes | g bes g bes r bes g bes | r bes g bes g bes g bes | g bes g bes r bes g bes } \\ { es,1~ es2 es des1~ des2 des } >> } >> }

提示ていじ部ぶの反復はんぷくが終おわるとト短調とたんちょうで譜ふ例れい1が再現さいげんされて展開てんかい部ぶとなる[10]。展開てんかい部ぶは第だい1主題しゅだいに基もとづいて勢いきおいよく開始かいしするが、その中なかに序奏じょそう部ぶの音おと型がたがリズムを変かえて巧たくみに織おり込こまれている[10][12]。展開てんかい部ぶの半なかばほどで既すでにト音おんを執拗しつように鳴ならす左手ひだりてのトレモロの音おと型がたがペダルポイントを形成けいせいしており[12]、十分じゅうぶんに準備じゅんびされた後のちに4オクターヴに及およぶ下降かこう音おん型がたから再現さいげん部ぶに入はいる[13]。再現さいげん部ぶでは第だい1主題しゅだいとヘ短調たんちょうの譜ふ例れい3の間あいだに新あらたな推移すいいが置おかれ、譜ふ例れい4はハ短調たんちょうとなって現あらわれる。コデッタがハ短調たんちょうでクライマックスに達たっしたところで再ふたたび譜ふ例れい1が挿入そうにゅうされ、第だい1主題しゅだいによる短みじかいコーダで力強ちからづよく終結しゅうけつする。

第だい2楽章がくしょう

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Adagio cantabile 2/4拍子ひょうし 変へんイ長調いちょうちょう

ロンド形式けいしき[14]。ベートーヴェンの書かいた最もっとも有名ゆうめいな楽章がくしょうのひとつである[12]。ヴィリバルト・ナーゲルはベートーヴェン全ぜん作品さくひん中ちゅうでも指折ゆびおりの音楽おんがくと評価ひょうかしており[14]、マイケル・スタインバーグはこの楽章がくしょうのために「ハープシコードの所有しょゆう者しゃは最寄もよりのピアノ屋やに駆かけ込こんだに違ちがいない」と述のべた[8]。美うつくしく、物憂ものうい主題しゅだいが静しずかに奏かなで始はじめられる[2]（譜ふ例れい5）。

譜ふ例れい5

\relative c' { \new PianoStaff << \new Staff { \key aes \major \time 2/4 \tempo "Adagio cantabile." \clef bass << { c4( bes es4. des8) c8([ es aes bes]) es,4.*2/3 } \\ { aes,16 es aes es g es g es aes es aes es bes' es, bes' es, aes es bes' es, c' aes d aes g bes g bes } >> } \new Dynamics { s4\p } \new Staff { \key aes \major \time 2/4 \clef bass \stemUp aes,4_\( des c g\) aes8([ g f f']) es4 } >> }

声こえ部ぶを増ふやして譜ふ例れい5が1オクターヴ高たかく繰くり返かえされると、譜ふ例れい6のエピソードがヘ短調たんちょうで奏そうされる[14]。

譜ふ例れい6

\relative c' { \new PianoStaff << \new Staff \with { \remove "Time_signature_engraver" } { \key aes \major \time 2/4 \partial 32 \override TextScript #'avoid-slur = #'inside \override TextScript #'outside-staff-priority = ##f c32 c'4~( c16 aes' g f) c'4~( c16 aes g f) c4~( c16 aes' g f) es8( d)~ d(^\markup \override #'(baseline-skip . 1) { \halign #-3 \tiny \musicglyph #"scripts.turn" } f16. es32) es4 } \new Staff \with { \remove "Time_signature_engraver" } { \key aes \major \time 2/4 \clef bass \partial 32 s32 r16 c, c c c c c c <c g e> <c g e> <c g e> <c g e> <c aes f> <c aes f> <c aes f> <c aes f> <e bes g> <e bes g> <e bes g> <e bes g> <f c aes> <f c aes> <f c aes> <f c aes> \clef treble <aes f bes,> <aes f bes,> <aes f bes,> <aes f bes,> <aes f b,> <aes f b,> <aes d, b> <aes d, b> <g es c> <g es c> <g es c> <g es c> } >> }

続つづく譜ふ例れい5[ハ短調たんちょう]の再現さいげんが終おわると中間なかま部ぶとなる。3連れん符ふの伴奏ばんそうの上うえに変へんイ短調たんちょうの主題しゅだいが導みちびかれる（譜ふ例れい7）。

譜ふ例れい7

\relative c' { \new PianoStaff << \new Staff \with { \remove "Time_signature_engraver" } { \key aes \major \time 2/4 \partial 8 << { es8 aes[( ces bes aes)] g( des') d4\rest } \\ { r8 \times 2/3 { <es, ces>16[ <es ces> <es ces>] } \times 2/3 { <es ces> <es ces> <es ces> } \times 2/3 { <es ces>[ <es ces> <es ces>] } \times 2/3 { <es ces> <es ces> <es ces> } <es des>16*2/3[ <es des> <es des>] <es des> <es des> <es des> <es des>[ <es des> <es des>] <es des> <es des> <es des> } >> } \new Dynamics { s8 s4\pp } \new Staff \with { \remove "Time_signature_engraver" } { \key aes \major \time 2/4 \clef bass \partial 8 r8 <aes, aes,>4 r bes8~ \times 2/3 { bes16[ bes( a] } \times 2/3 { bes-.)[ bes-.( aes)] } \times 2/3 { g-.( f-. es-.) } } >> }

譜ふ例れい7は大おおきく盛もり上あがるとホ長調ちょうちょうへ転調てんちょうして繰くり返かえされる。第だい3の部分ぶぶんは譜ふ例れい5の再現さいげんであるが、譜ふ例れい7とともに新あらたに提示ていじされた3連れん符ふがそのまま持もち越こされる[12][14]。3連れん符ふを用もちいた小規模しょうきぼなコーダが置おかれ、静しずかに楽章がくしょうの幕まくが下おろされる。

第だい3楽章がくしょう

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Rondo, Allegro 2/2拍子ひょうし ハ短調たんちょう

ロンド形式けいしき[14]。譜ふ例れい8のロンド主題しゅだいは譜ふ例れい3から導みちびかれているが[12][14]、第だい1楽章がくしょうとは異ことなって劇的げきてきな表現ひょうげんを抑おさえて洗練せんれんされた簡素かんそさを感かんじさせる[8]。

譜ふ例れい8

\relative c' { \new PianoStaff << \new Staff { \key c \minor \time 2/2 \partial 4. \tempo \markup { \column { \line { RONDO. } \line { Allegro. } } } g'8-.\p c-. d-. es4.( f8 d4. es8) c2 \slashedGrace d8 c( b c d \slashedGrace f es d es f) g4-. g-. g2. } \new Staff { \key c \minor \time 2/2 \clef bass r8 r4 c,,,8_\p ( es g c) c,( f g b) c,( es g c) es g es d c g' <es c> g <d b> g <c, aes> g' g,( b d g) g,[ \set stemRightBeamCount = #1 b] } >> }

推移すいい部ぶを挟はさんでドルチェの主題しゅだいが変へんホ長調ちょうちょうで奏そうされる[13][14]。

譜ふ例れい9

\relative c' { \new PianoStaff << \new Staff \with { \remove "Time_signature_engraver" } { \key c \minor \time 2/2 << { g'4-. \stemDown bes2_\markup \italic dolce bes4~( bes8 c d es f g aes f) aes( g f es) es( d c d) f( es d c) \stemUp bes4-. bes-. } \\ { s1 s1 s s2 aes4 aes } >> } \new Staff \with { \remove "Time_signature_engraver" } { \key c \minor \time 2/2 \clef bass c,,8( bes' es bes aes bes d bes g bes es bes d, bes' d bes) es, bes' es bes aes bes f' bes, g bes es bes d, bes' d, bes' } >> }

3連れん符ふ主体しゅたいの経過けいかが穏おだやかなエピソードを中間ちゅうかんに置おいて繰くり返かえされ、フォルテッシモの下降かこう音階おんかいの最低さいてい音おんにフェルマータを付ふして区切くぎりをつけ[13]、譜ふ例れい8の再現さいげんへと移うつっていく。次つぎに出だされるのは優美ゆうびな変へんイ長調いちょうちょうの主題しゅだいである[14]（譜ふ例れい10）。対位法たいいほう的てきな手法しゅほうを駆使くしして左右さゆうの手てに現あらわれた旋律せんりつが声こえ部ぶを交代こうたいしながら繰くり返かえされていく[12]。

譜ふ例れい10

\relative c' { \new PianoStaff << \new Staff \with { \remove "Time_signature_engraver" } { \key c \minor \time 2/2 \partial 2 r2 c2\p ( f bes, es) aes,( des4 c bes aes g) r4 } \new Staff \with { \remove "Time_signature_engraver" } { \key c \minor \time 2/2 \clef bass \partial 2 r8 aes,_\p c es aes2( des, g c,) f4( bes,2 c4 des d es es,) } >> }

対たい旋律せんりつがスタッカートの音おと型がたに取とって代かわられて忙せわしない経過けいか楽らく句くに接続せつぞくされると、再ふたたび下降かこう音階おんかいで区切くぎられてロンド主題しゅだいの再現さいげんへと進すすめられる。主題しゅだいを低てい声こえ部ぶに移うつすなど変化へんかを持もたせながら、譜ふ例れい9もハ長調ちょうちょうで続つづけて再現さいげんされる[12][14]。3連れん符ふのエピソードもこれに追随ついずいし、再度さいど現あらわれた譜ふ例れい8からコーダに至いたる。終おわり付近ふきんで譜ふ例れい8が回想かいそうされつつ静しずまっていくが、最後さいごは突如とつじょフォルテッシモに転てんじて強力きょうりょくに全曲ぜんきょくを結むすぶ。作曲さっきょく者しゃ自身じしんはこの楽章がくしょうを「ユーモラス」に弾ひいたと伝つたえられる[8]。

試聴しちょう

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その他た

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編曲へんきょく例れい

使用しよう例れい

脚注きゃくちゅう

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注釈ちゅうしゃく

  1. ^ バリー・クーパー補筆ほひつ完成かんせい版ばんの録音ろくおんなどで聴きくことができる。

出典しゅってん

  1. ^ a b c d e f 大木たいぼく 1980, p. 341.
  2. ^ a b c ピアノソナタ第だい8番ばん - オールミュージック. 2016年ねん4月がつ10日とおか閲覧えつらん。
  3. ^ a b c “Beethoven, Piano Sonatas” (PDF). CHANDOS. 2016年ねん4月がつ10日とおか閲覧えつらん。
  4. ^ Maynard Solomon, Beethoven, p. 80. Revised Edition, Schirmer Trade Books.
  5. ^ Jan Swafford, Beethoven: Anguish and Triumph, p. 219. Houghton Mifflin Harcourt
  6. ^ “Beethoven, Piano Sonata No.8, first edition” (PDF). Eder. 2016年ねん4月がつ10日とおか閲覧えつらん。
  7. ^ a b “Beethoven, Piano Sonatas”. Hyperion Records. 2016年ねん4月がつ10日とおか閲覧えつらん。
  8. ^ a b c d e f g h Angela Hewitt. “Beethoven, Piano Sonatas Opp 2/3, 13 & 28”. Hyperion Records. 2016年ねん4月がつ10日とおか閲覧えつらん。
  9. ^ Marks, F. Helena. The Sonata: Its Form and Meaning as Exemplified in the Piano Sonatas by Mozart. W. Reeves, London, 1921.
  10. ^ a b c d e f g h i j k 大木たいぼく 1980, p. 342.
  11. ^ a b H. C. Robbins Landon, Beethoven: A Documentary Study, pp. 61–62. Thames & Hudson 1970.
  12. ^ a b c d e f g h “Andras Schiff lecture recital: Beethoven's Piano Sonata Op 13”. The Guardian. 2016年ねん5月がつ3日にち閲覧えつらん。
  13. ^ a b c d “Beethoven, Piano Sonata No.8” (PDF). Breitkopf & Härtel. 2016年ねん5月がつ3日にち閲覧えつらん。
  14. ^ a b c d e f g h i 大木たいぼく 1980, p. 344.

参考さんこう文献ぶんけん

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  • 大木たいぼく, 正せい興きょう『最新さいしん名曲めいきょく解説かいせつ全集ぜんしゅう 第だい14巻かん 独奏どくそう曲きょくI』音楽之友社おんがくのともしゃ、1980年ねん。ISBN 978-4276010147。 
  • CD解説かいせつ Angela Hewitt, Hyperion Records, Piano Sonatas Opp 2/3, 13 & 28, CDA67605
  • CD解説かいせつ Hyperion Records, Piano Sonatas, Moonlight, Pathétique & Waldstein, CDA67662
  • CD解説かいせつ CHANDOS, Beethoven: Piano Sonatas, CHAN 10616(9)
  • 楽譜がくふ Beethoven: Piano Sonata No.8, Breitkopf & Härtel, Leiptig

外部がいぶリンク

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初期しょき

選せん帝みかど侯こうソナタ - ソナチネ ト長調とちょうちょう（英語えいご版ばん） - ソナチネ ヘ長調ちょうちょう（英語えいご版ばん） - ハ長調ちょうちょう WoO 51（英語えいご版ばん） - 第だい1番ばん ヘ短調たんちょう - 第だい2番ばん イ長調いちょうちょう - 第だい3番ばん ハ長調ちょうちょう - 第だい20番ばん ト長調とちょうちょう - 第だい4番ばん 変へんホ長調ちょうちょう - 第だい19番ばん ト短調とたんちょう - 第だい5番ばん ハ短調たんちょう - 第だい6番ばん ヘ長調ちょうちょう - 第だい7番ばん ニ長調ちょうちょう - 第だい8番ばん ハ短調たんちょう『悲愴ひそう』 - 第だい9番ばん ホ長調ちょうちょう - 第だい10番ばん ト長調とちょうちょう - 第だい11番ばん 変へんロ長調ちょうちょう - 第だい12番ばん 変へんイ長調いちょうちょう『葬送そうそう』

中期ちゅうき

第だい13番ばん 変へんホ長調ちょうちょう『幻想曲げんそうきょく風ふうソナタ』 - 第だい14番ばん 嬰ハ短調たんちょう『月光げっこう』 - 第だい15番ばん ニ長調ちょうちょう『田園でんえん』 - 第だい16番ばん ト長調とちょうちょう - 第だい17番ばん ニ短調たんちょう『テンペスト』 - 第だい18番ばん 変へんホ長調ちょうちょう - 第だい21番ばん ハ長調ちょうちょう『ヴァルトシュタイン』 - 第だい22番ばん ヘ長調ちょうちょう - 第だい23番ばん ヘ短調たんちょう『熱情ねつじょう』 - 第だい24番ばん 嬰ヘ長調ちょうちょう『テレーゼ』 - 第だい25番ばん ト長調とちょうちょう『かっこう』 - 第だい26番ばん 変へんホ長調ちょうちょう『告別こくべつ』 - 第だい27番ばん ホ短調たんちょう

後期こうき
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