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フィリップ・ピネル

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ピネルから転送てんそう
フィリップ・ピネル

フィリップ・ピネルPhilippe Pinel, 1745ねん4がつ20日はつか - 1826ねん10月25にち)は、フランス医学いがくしゃ精神せいしん百科全書ひゃっかぜんしょ影響えいきょうけ、心理しんりがくふか研究けんきゅうし、ジャン=ジャック・ルソーや、当時とうじ英国えいこく心理しんりがくてき精神せいしん臨床りんしょう実績じっせき影響えいきょうけた。「精神病せいしんびょう患者かんじゃくさりからはなったはじめての医者いしゃ」としてられている[1]

ピネルは革命かくめいてき勢力せいりょく(「ジロンド憲法けんぽう」の起草きそうしゃだったコンドルセなど)と親交しんこうがあり、ピネルはフランス革命かくめい政府せいふから「精神せいしん医療いりょう改革かいかく」の許可きょか活動かつどうしていた[2]現代げんだいでは、一連いちれん精神せいしん医療いりょう医学いがく改革かいかくはピネルと「様々さまざま人々ひとびとちから結集けっしゅう」によっておこなわれたものであり[3]、こうした改革かいかく各国かっこく精神せいしん保健ほけんほう成立せいりつつながったとかんがえられている[4]

生涯しょうがい

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1745ねん南仏なんふつタルヌけん母方ははかた実家じっか農場のうじょうロックでまれ,そのちかくのサンタンドレ(Saint-André)でそだった。1767ねんトゥルーズ大学だいがくフランス語ふらんすごばん神学しんがく学位がくい取得しゅとく。そのトゥルーズ大学だいがく医学部いがくぶさい入学にゅうがくし、1773ねん学位がくい取得しゅとく1774ねんモンペリエ大学だいがく医学部いがくぶ臨床りんしょうかかわる研究けんきゅうつづけた。1778ねんパリおもむき、市立しりつ中央ちゅうおう病院びょういんであるHôtel-Dieu de Paris(パリのオテルディウ[ちゅう 1])のピエール・ジョゼフ・デソーフランス語ふらんすごばん(1744-1795)のもと心理しんりがくてき解剖かいぼうがくてき外科げか臨床りんしょうかかわり、骨格こっかく関節かんせつ研究けんきゅうおこなう。1784ねん『ガゼット・デ・サンテ』の編集へんしゅう参加さんかウィリアム・カレン著作ちょさく出版しゅっぱんやジョルジオ・バグリヴィの全集ぜんしゅう編纂へんさんたずさわる。骨格こっかく研究けんきゅう外科げか施術しじゅつせんもんであったが、1785ねん親友しんゆう急性きゅうせい精神せいしんけい疾患しっかんになったのをきっかけに、心理しんりがくてき精神病せいしんびょう理学りがく転向てんこうする。ジャック・ベロムがパリ郊外こうがい建設けんせつした精神病せいしんびょう患者かんじゃ施療せりょういん就職しゅうしょく、さらに1792ねん当時とうじパリ周辺しゅうへん精神せいしん疾患しっかん患者かんじゃ囚人しゅうじん一堂いちどう収監しゅうかんしていたビセートル病院びょういんしょくもとめた。その30ねん以上いじょうにわたって、閉鎖へいさ病棟びょうとうくさりにつながれている精神せいしん神経症しんけいしょう患者かんじゃ出会であう。1793ねん1がつ21にち薬理やくりがく教授きょうじゅのルイに閉鎖へいさ病棟びょうとう改善かいぜん実施じっし進言しんげんどう8がつ25にち閉鎖へいさ病棟びょうとうからの精神せいしん疾患しっかん患者かんじゃ開放かいほう実現じつげんする。1794ねんサルペトリエール病院びょういんうつる。1795ねん5月13にち主任しゅにん医員いいんとなり、どう病院びょういん閉鎖へいさ病棟びょうとう改善かいぜんどう病院びょういんのホスピスの開放かいほう病棟びょうとうとう当時とうじでは画期的かっきてき改革かいかくおこなう。1795ねんパリ大学だいがく病理びょうりがく教授きょうじゅ就任しゅうにん1804ねんアカデミー・デ・シアンス会員かいいんとなる。1826ねんパリでぼつ

ピネルの医療いりょうは、「しんてき療法りょうほう」(traitement moral)に代表だいひょうされる純粋じゅんすい人道じんどうてき心理しんりがくてき臨床りんしょうおもんじる精神せいしん理学りがく医療いりょうであった。「くすり過剰かじょう投与とうよ」をはいし、人道的じんどうてき精神せいしん理学りがく療法りょうほうによって薬物やくぶつ療法りょうほう過度かど依存いぞんいましめた。そして患者かんじゃ人権じんけん重視じゅうしし、治験ちけんではなく臨床りんしょうによる心理しんりがくてきあたたかみのある理学りがく療法りょうほうおもんじ、人道的じんどうてき精神せいしん医学いがく創設そうせつしゃとなり、かつ、フランスの人道じんどう医療いりょうさきがけとなった。

評価ひょうか

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患者かんじゃ解放かいほうするピネル トニ・ロベール=フルーリー

いわゆる「精神病せいしんびょう患者かんじゃくさりからはなった」はじめての医者いしゃとしてられている[1]臨床りんしょう心理しんり人間にんげん科学かがく修士しゅうしである高橋たかはしゆたかによれば、ピネルの活動かつどうは「ピネル神話しんわ」をんだとわれている[5]厳密げんみつには、一連いちれん精神せいしん医療いりょう医学いがく改革かいかくはピネルと監護かんごじんピュサンの「合作がっさく共同きょうどう作業さぎょうとみなすべきであろう」、と精神せいしん影山かげやまつとむべており、高橋たかはしもそれに同意どういしている[3]

人道じんどう主義しゅぎてき精神病せいしんびょうしゃ自由じゆうあたえたピネルは感動かんどうをもってかたがれたが、ピネル自身じしん記録きろくによると1798ねん5がつ23にちに「くさりからの解放かいほう」をおこなったのは、監護かんごじんであったピュサンである[6]。ピネル本人ほんにんが「くさりからの解放かいほう」をおこなったのはその3ねん転任てんにんさきであるサルペトリエール救済きゅうさいいんだったと高橋たかはしべている[3]

革命かくめいの「理性りせい祭典さいてん」に連動れんどうするかたちでピュサンと事務じむかんたちがおこなった「迷信めいしん打破だはする」ためのだつ宗教しゅうきょう世俗せぞくは、おおくの精神せいしん疾患しっかん患者かんじゃたちから支持しじされ[7]かれらの「改革かいかく」はピネルの弟子でしたち(エスキロールなど)に継承けいしょうされて、1838ねん6がつ30にちの「共和きょうわ国法こくほう」へつながった[4]共和きょうわ国法こくほうは、当時とうじとしては画期的かっきてき福祉ふくしほうであり[4]公的こうてき介護かいご義務ぎむ入院にゅういん制度せいど患者かんじゃ人権じんけん保護ほごなどをも規定きていしていた[8]のち共和きょうわ国法こくほう国々くにぐにから模範もはんとされ、現代げんだい日本にっぽんの「精神せいしん保健ほけん福祉ふくしほう」にもおおきく影響えいきょうしていると高橋たかはし[8]

現代げんだいではピネルはしゅとして医学いがく看護かんごがく分野ぶんや評価ひょうかされているが、18世紀せいきというフランス激動げきどう時代じだい医師いしとしてき、その経験けいけん筆記ひっきした著書ちょしょ社会しゃかい科学かがくてき意義いぎ見出みいだ研究けんきゅうしゃもいる。たとえば『精神病せいしんびょうかんする医学いがく哲学てつがくろん』(邦訳ほうやく中央ちゅうおう洋書ようしょ出版しゅっぱん、1990ねん)はかれ診察しんさつした精神せいしん疾患しっかん患者かんじゃ臨床りんしょう記録きろくであるが、革命かくめい庶民しょみん生活せいかつ精神せいしん構造こうぞう克明こくめい記録きろくされており、史料しりょうてき価値かちたかい。

脚注きゃくちゅう

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注釈ちゅうしゃく

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  1. ^ hôtel-Dieu オテルディウ」というのは、「hôtel-Dieu」は元々もともとかみ療養りょうようしょ」といった意味いみ表現ひょうげんで、フランスの各市かくししゅたる市立しりつ病院びょういん慣習かんしゅうてきにつけられている名称めいしょうである。

出典しゅってん

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  1. ^ a b 日本にっぽん精神せいしん神経しんけい学会がっかい 専門医せんもんい認定にんてい試験しけん問題もんだい解答かいとう解説かいせつだい2しゅう P32 新興しんこう医学いがく出版しゅっぱんしゃ ISBN 978-4880028613
  2. ^ 高橋たかはし 2014, p. 112-113.
  3. ^ a b c 高橋たかはし 2014, p. 112.
  4. ^ a b c 高橋たかはし 2014, pp. 114–115.
  5. ^ 高橋たかはし 2014, p. 98.
  6. ^ 高橋たかはし 2014, pp. 110–111.
  7. ^ 高橋たかはし 2014, p. 114.
  8. ^ a b 高橋たかはし 2014, p. 115.

参考さんこう文献ぶんけん

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  • 高橋たかはし, ゆたか精神せいしん障害しょうがい心理しんり療法りょうほう:「悪魔あくまばらい」から「精神せいしん分析ぶんせき」、「おや乳幼児にゅうようじ心理しんり療法りょうほう」への概念がいねん変遷へんせん河出書房新社かわでしょぼうしんしゃ、2014ねんISBN 978-4309246604 

関連かんれん項目こうもく

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外部がいぶリンク

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