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ピンナップガール

出典しゅってん: フリー百科ひゃっか事典じてん『ウィキペディア（Wikipedia）』
ベティ・グレイブルのピンナップ（1943年ねん）

ピンナップガール（pin-up girlまたはpin-up model 、まれに男性だんせいに対たいしてmale pin-upとも）とは、大衆たいしゅう文化ぶんかとして広ひろく出回でまわっている写真しゃしん、つまりピンナップのモデルのこと。今日きょうでは性的せいてき魅力みりょくを持もつモデル、ファッションモデル、俳優はいゆうに対たいして用もちいられている。ピンナップは「（壁かべに）ピンで留とめる」という語かたりに由来ゆらいし、展覧てんらん会かいのように額縁がくぶちに入いれて飾かざるのではなく、ざっくばらんと張はることを前提ぜんていとしている。チーズケーキ (cheesecake) ということもある。アメリカの俗語ぞくごで、20世紀せいき初頭しょとう、ピンナップ写真しゃしんがタブーとみなされていたため、セミヌード女性じょせいの写真しゃしんのことをこっそりそう呼よんでいた[1]。

B-25に描えがかれたピンナップガールのノーズアート

男性だんせいのピンナップ写真しゃしん（スラングでいうところのビーフケーキ (Beefcake（英語えいご版ばん）[2])は20世紀せいきを通とおして女性じょせいのものと比くらべてまれだったが、男子だんしを対象たいしょうとした同性愛どうせいあい市場いちばは存在そんざいし、ジェームズ・ディーンやジム・モリソンといった男性だんせい有名人ゆうめいじんの写真しゃしんが出回でまわった。

男性だんせいのピンナップ写真しゃしん

歴史れきし

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19世紀せいき初頭しょとうの演劇えんげき界かいがピンナップの起源きげんとされる[3]。アメリカン・バーレスクのパフォーマーや女優じょゆうたちは、ショーを宣伝せんでんする目的もくてきで名刺めいし代かわりにブロマイドを使つかいだした[4]。

世界せかい初はつのピンナップは、20世紀せいき初頭しょとうの「ミス・フェルナンド」ことフェルナンド・バレエ（フランスの美術びじゅつモデルで、藤田ふじた嗣治つぐじの妻つまでもあった）らの写真しゃしんだと言いわれる。バレエの写真しゃしんには胸むねの谷間たにまと正面しょうめんからのヌードが写うつっており、第だい一いち次じ世界せかい大戦たいせん中なかには連合れんごう国こく・同盟どうめい国こく双方そうほうの兵士へいしたちが大切たいせつに持もっていた[5][6]。

ピンナップガールとしてとくに有名ゆうめいなのは女優じょゆうのベティ・グレイブルで、第だい二に次じ世界せかい大戦たいせん中なかにはアメリカ軍ぐんのGIのロッカーの至いたるところに彼女かのじょのポスターが張はられていた。

ピンナップガールは実在じつざいの女性じょせいばかりではなかった。絵画かいがに描えがかれたピンナップガールもいた。たとえば、チャールズ・ダナ・ギブソン（英語えいご版ばん）が描えがいた「ギブソン・ガール」。ギブソンが描えがいたのはフェミニストの理想りそうを体現たいげん化かした新あたらしい女おんなだったが、「新あたらしい女おんなは性せいに対たいする新あたらしい概念がいねんの象徴しょうちょうであったが、そのことで彼女かのじょが、性的せいてき関心かんしんについての新あたらしい概念がいねんの象徴しょうちょうになることも避さけられなかった」[7]。本物ほんものの女優じょゆうやダンサーたちと違ちがって、絵えの中なかの女性じょせいは好すきなように描えがくことが出来できた[8]。男性だんせい誌し『エスクァイア』には多数たすうの女性じょせいのヌード絵えが掲載けいさいされたが、一番いちばん人気にんきがあったのはアルベルト・バルガスの描えがいた「バーガ・ガール」だった。第だい二に次じ世界せかい大戦たいせん中なか、軍服ぐんぷくを着きせられたバーガ・ガールのノーズアートが爆ばく撃げき機きや戦闘せんとう機きの機首きしゅに描えがかれた。1942年ねんから1946年ねんにかけて肥大ひだい化かする軍事ぐんじ的てき需要じゅようにより、「広告こうこくなしの無料むりょうの雑誌ざっしを900万まん部ぶコピーして、国内外こくないがいのアメリカ軍ぐん基地きちに送おくった」[9]。彼女かのじょたちは売春ばいしゅん婦ふとしてでなく、幸運こううんを呼よぶ女性じょせい愛国あいこく者しゃだと捉とらえられていた[10]。ピンナップ画家がかは他ほかにも、アール・K・バーゲイ（英語えいご版ばん）、イーノック・ボレス（英語えいご版ばん）、ジル・エルブグレン、ジョージ・ペティー（英語えいご版ばん）、ロルフ・アームストロング（英語えいご版ばん）、ゾーイ・モーザート、デュエイン・ブライアーズ（英語えいご版ばん）[11][12]。

フェミニズムとピンナップ

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1869年ねんには、ピンナップを否定ひていする女性じょせいもいれば、支持しじする女性じょせいもいた。支持しじする理由りゆうは、ピンナップが「それまでの肉体にくたい的てき羞恥しゅうちに対たいする、ポスト・ヴィクトリア朝あさ時代じだいの明確めいかくな否定ひていで、女性じょせいの美びへの健全けんぜんなリスペクト」とみなしたからだった[13]。

一方いっぽうで反対はんたい派はは、ピンナップのイメージが社会しゃかい道徳どうとくに与あたえる影響えいきょうを考かんがえると、公共こうきょうの場ばで女性じょせいの性せいを露出ろしゅつさせることは女性じょせいらしさの基準きじゅんを下さげ、品位ひんいを破壊はかいし、男性だんせいを喜よろこばせるだけの存在そんざいと思おもわれ、それは女性じょせいにも若者わかものにも有害ゆうがいであると主張しゅちょうした[13]。

ジョアン・マイエロウィッツ（英語えいご版ばん）は『Journal of Women's History（英語えいご版ばん）』に寄よせた論文ろんぶん『Women, Cheesecake, and Borderline Material』の中なかで、「女性じょせいの性的せいてきイメージがポピュラー・カルチャーの中なかで増大ぞうだいするにつれ、女性じょせいがそれに抗議こうぎすることは、同時どうじに、支持しじするための議論ぎろんの構築こうちくに能動のうどう的てきに参加さんかしてしまうことになる」[14]

ヘアスタイルとメイクアップ

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ピンナップの古典こてん的てきなスタイルは1940年代ねんだいに確立かくりつされた。第だい二に次じ世界せかい大戦たいせんで物資ぶっしが不足ふそくしていたため、この時期じきのメイクは「自然しぜんな美び」が主流しゅりゅうだったと考かんがえられる[15]。アメリカは戦争せんそう経済けいざいのもと、消費しょうひ財ざいに配給はいきゅう制限せいげんをかけていた[16]はずだが、「女性じょせいは口紅くちべにを買かい続つづけ、兵士へいしの士気しきを高たかめるべく、手紙てがみの表面ひょうめんに"口紅くちべにのキス"をつけて送おくるよう奨すすめられた」。

  • ファンデーション - クリーム、リキッドとも自然しぜんな肌はだのトーンにマッチしたもの。白人はくじん女性じょせいの間あいだでは夏なつの日焼ひやけメイクが人気にんきだった[17]。
  • フェイスパウダー - ファンデーションを落おち着つかせ、肌はだの色いろを均一きんいつにする。
  • アイライナー - 1950年代ねんだいまでにウィング効果こうかが一般いっぱん的てきになった。
  • まつげ - 大おおきく見みせる。
  • ブラシ - 頬ほおをパステルカラーとローズカラーで塗ぬる。
  • 唇くちびる - ヴァイブラントレッドとマットカラーでふっくらと見みせる[18]。

1950年代ねんだいは真まっ赤かな唇くちびるとばら色いろの頬ほおがよくマッチしていた。アイライナーは大胆だいたんに、目めを大おおきく見みせるようになった。 1920年代ねんだい〜1930年代ねんだいの細ほそい眉毛まゆげと対照たいしょう的てきに、自然しぜんな眉まゆが好このまれた。1940年代ねんだいの眉まゆはくっきり綺麗きれいだったが、ペンシルで濃こく見みせた[19]。

口紅くちべには「危険きけんに臨のぞんでも回復かいふくする女性じょせいらしさの象徴しょうちょう」[20]となり、戦たたかう兵士へいしたちの士気しきを高たかめる武器ぶきとなった。唇くちびるの形かたちも同様どうよう。唇くちびるはより丸まるみを帯おび、唇くちびるの輪郭りんかくも太ふとくなった。それを両方りょうほう兼かね備そなえているのがマックスファクターが開発かいはつした「Hunter's Bow」である[19]。また、ピンカール[21]もピンナップガールの主要しゅような要素ようそだった[22]。

Hunter's Bowメイクを代表だいひょうするジョーン・クロフォード（1946年ねん、撮影さつえい：Paul Hesse）

曲芸きょくげい飛行ひこうと第だい二に次じ世界せかい大戦たいせん支援しえんの意味いみを込こめて名付なづけられたヴィクトリーロール（英語えいご版ばん）も、同おなじである。

ヴィクトリーロールにしたアン・グウェイン（英語えいご版ばん）（1944年ねん、軍ぐん発行はっこうの雑誌ざっし『ヤンク (雑誌ざっし)』より）

現代げんだいになっても、ケイティ・ペリーなどがクラシックなピンナップ・メイクをリバイバルしている。

肌はだの色いろ

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雑誌ざっしの特集とくしゅうでステレオタイプ女性じょせいドライバーを演えんじるベティ・ペイジ

ピンナップガールとして名前なまえが挙あがる女性じょせいたちといえばマリリン・モンローやベティ・ペイジなどといった白人はくじん女性じょせいが多おおいが、1920年代ねんだいにはジョセフィン・ベーカーという黒人こくじんバーレスク・ダンサーがいた。他ほかにも、ドロシー・ダンドリッジ、アーサー・キットがいる。

「黒くろいヴィーナス」と呼よばれたジョセフィン・ベーカー（1927年ねん）

脚注きゃくちゅう

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  1. ^ Meyerowitz, Joanne (1996). “Women, Cheesecake, and Borderline Material: Responses to Girlie Pictures in the Mid-Twentieth-Century U.S.” (英語えいご). Journal of Women's History 8 (3): 9–35. doi:10.1353/jowh.2010.0424. ISSN 1527-2036. https://muse.jhu.edu/article/363799/summary. 
  2. ^ “「牛うしのケーキ(beefcake)」って?【知しっているとちょっとカッコいい英語えいごのコネタ】”. マイナビニュース (マイナビ). (2014年ねん1月がつ15日にち). https://news.mynavi.jp/article/20140115-a051/ 2023年ねん1月がつ5日にち閲覧えつらん。 
  3. ^ 1971-, Buszek, Maria Elena, (2006). Pin-up grrrls : feminism, sexuality, popular culture. Durham: Duke University Press. ISBN 0822337347. OCLC 62281839. https://archive.org/details/pinupgrrrlsfemin00busz 
  4. ^ 1971-, Buszek, Maria Elena, (2006). Pin-up grrrls : feminism, sexuality, popular culture. Durham: Duke University Press. pp. 43. ISBN 0822337347. OCLC 62281839. https://archive.org/details/pinupgrrrlsfemin00busz/page/43 
  5. ^ “Dazzledent: Fernande Barrey”. Tumblr (201-08-29). 2020年ねん1月がつ16日にち閲覧えつらん。
  6. ^ “Miss Fernande”. Comcast. 4 October 2013時じ点てんのオリジナルよりアーカイブ。2020年ねん1月がつ16日にち閲覧えつらん。
  7. ^ Buszek (2006), p. 82.
  8. ^ Buszek (2006), p. 43.
  9. ^ Buszek (2006), p. 210.
  10. ^ Costello, John (1985). Virtue Under Fire: How World War II Changed Our social and Sexual Attitudes. Boston: Little Brown. pp. 144–155. ISBN 0-316-73968-5 
  11. ^ “How Hilda the forgotten Fifties plus-size pin-up was rediscovered one year after the man who created her died”. 2020年ねん1月がつ16日にち閲覧えつらん。
  12. ^ Bulletin, JB Miller The. “Noted artist Duane Bryers dies at 100”. 2020年ねん1月がつ16日にち閲覧えつらん。
  13. ^ a b Meyerowitz (1996), p. 10.
  14. ^ Meyerowitz (1996), p. 9.
  15. ^ Hernandez, Gabriela (2017). Classic Beauty: The History of Makeup. United States: Schiffer Publishing LTD. ISBN 0764353004 
  16. ^ Tassava, Christopher. “The American Economy during World War II”. EH.Net Encyclopedia, edited by Robert Whaples. February 10, 2008. URL http://eh.net/encyclopedia/the-american-economy-during-world-war-ii/
  17. ^ “Women's 1940s Makeup: An Overview - Hair and Makeup Artist Handbook” (英語えいご). Hair and Makeup Artist Handbook. (2013年ねん1月がつ30日にち). http://hair-and-makeup-artist.com/womens-1940s-makeup/ 2018年ねん5月がつ5日にち閲覧えつらん。 
  18. ^ Corson, Richard (2005). Fashions in Makeup: From Ancient to Modern Times. London, United Kingdom: Peter Owens Publisher. ISBN 0720611954 
  19. ^ a b Thomas, Erika (2016). Max Factor and Hollywood: A Glamorous History. United States: History Press. ISBN 1467136107 
  20. ^ Schaffer, Sarah E (2007). “Reading our lips: The history of lipstick regulation in Western seats of power”. Food & Drug LJ (HeinOnline) 62: 165-225. https://heinonline.org/HOL/LandingPage?handle=hein.journals/foodlj62&div=13&id=&page=. 
  21. ^ “ピンカール（英語えいご表記ひょうき）pin curl”. コトバンク. 朝日新聞社あさひしんぶんしゃ. 2020年ねん1月がつ16日にち閲覧えつらん。
  22. ^ “Demystifying Pin Curls | Bobby Pin Blog / Vintage hair and makeup tips and tutorials” (英語えいご). www.vintagehairstyling.com. 2018年ねん5月がつ8日にち閲覧えつらん。

関連かんれん項目こうもく

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外部がいぶリンク

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