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フガシティ(英: fugacity)または逃散能、散逸能とは、物理化学の分野において、圧力の高い実在気体の化学平衡を扱うときにも、理想気体の化学ポテンシャルの形式が成り立つようにする意図で導入された概念である[1]。
この概念はもとはウィラード・ギブズが escape tendency という考えを熱力学的平衡に用いたことに由来し[1]、ギルバート・ルイスが導入した。
成分i のフガシティfi は次のように定義される[2]。
![{\displaystyle f_{i}:=p^{0}\exp \left({\frac {\mu _{i}-\mu _{i}^{0}}{RT}}\right)}](https://wikimedia.org/api/rest_v1/media/math/render/svg/2ea1d6e8d0a4ab24b261d3de04c111d752b7cd3c)
- p0 :基準圧力(通常は1気圧)
- μi :成分i の化学ポテンシャル
- μi0 :基準圧力における化学ポテンシャル
フガシティは圧力と同じ次元をもち、単位にはパスカルが用いられる。
理想気体は分子間力を持たず、圧力は運動エネルギーのみから生ずる。このとき、成分i の化学ポテンシャルμi は
![{\displaystyle \mu _{i}=\mu _{i}^{0}+RT\ln {\frac {p_{i}}{p^{0}}}}](https://wikimedia.org/api/rest_v1/media/math/render/svg/c67f48b6991930d4367f155ffac85521ae655c7e)
で表される。
それに対して、実在気体は分子間力を持つから、その補正を加える必要がある。だが、分子間力は気体の種類によって異なり、それを考慮することは非常に扱いにくい。そのため分子間力を初めから補正に織り込み、大きな分圧でも同じ形式の
![{\displaystyle \mu _{i}=\mu _{i}^{0}+RT\ln {\frac {f_{i}}{p^{0}}}}](https://wikimedia.org/api/rest_v1/media/math/render/svg/48b11c4d17e04d9d5bb60ee1208c8ddb4cfbf386)
で表されるようにした、「ある実在気体と同じ化学ポテンシャルを持つ理想気体の圧力」がフガシティである。
フガシティは、化学ポテンシャルを「補正した圧力」の形式で表したものである。それは物質の相から相(たとえば、液相、固相、気相)への物質の逸散性、「逃げやすさの度合い」を示す。一定の温度と圧力の下で、均一の物質であってもおのおのの相に対して異なる逸散性をもつことになる。最も低いフガシティを持つ相が安定であり、最も低いギブス自由エネルギーを持つことになる。
理想気体ではフガシティは分圧と同じとなる。また、低分圧の極限として次も成り立つ[1]。
![{\displaystyle \lim _{p_{i}\rightarrow 0}f_{i}=p_{i}}](https://wikimedia.org/api/rest_v1/media/math/render/svg/03a71187796aeb6f3e11633bdfc6d5db7794de05)
実在気体では分子間相互作用が反映されているので、フガシティfi は他の成分の分圧にも依存する。フガシティと分圧の比fi /pi をフガシティ係数[3]という。
- ^ a b c 林茂雄『移動現象論入門』東洋書店、2007年、219-220頁。ISBN 978-4-88595-691-1。
- ^ μi0 - RT lnp0 を改めてμi0 と定義し直し、p0 が露わに出ないように書く流儀もある。
- ^ Peter Atkins; Julio de Paula (2014), Atkins' Physical Chemistry (10 ed.), Oxford, p. 146, ISBN 978-0-19-969740-3
- P. A. Atkins; J. de Paula 著、千原秀昭、中村亘男 訳『物理化学(上)』(8版)東京化学同人、2009年。ISBN 9784807906956。