フットブレーキ

フットブレーキは、自動車じどうしゃの運転うんてん中ちゅうに使用しようされる常用じょうようブレーキ／サービスブレーキ／主あるじブレーキの通称つうしょう。足あしで操作そうさするため、フットブレーキと呼よばれる。運転うんてん者しゃは単たんに「ブレーキ」と呼よぶことが多おおい。

自転車じてんしゃを停止ていしさせるためにタイヤの接地せっち面めんを靴くつ底そこで摩擦まさつする手法しゅほうを「フットブレーキ」と呼よぶ（制動せいどう装置そうちの名称めいしょうではない、通常つうじょう走行そうこうの手法しゅほうではなく特殊とくしゅ手法しゅほう(トリック)としての認識にんしきである。また、日本にっぽんの道路どうろ交通こうつう法ほうでは制動せいどう装置そうちとして認みとめられていない。）。

概略がいりゃく

足あしで操作そうさするパーキングブレーキも、「ハンドブレーキ」に対たいして「フットブレーキ」の一種いっしゅになるが、混用こんようを避さけるために「足踏あしぶみ式しきサイドブレーキ」「足踏あしぶみ式しきパーキングブレーキ」と区別くべつして呼よばれている。

通常つうじょう型がた自動車じどうしゃの運転うんてん席せきの足元あしもとについているペダルは、ブレーキペダルという。通常つうじょうはブレーキペダルは運転うんてん席せきに1つだけだが、自動車じどうしゃ教習きょうしゅう車しゃの教官きょうかん席せき、左右さゆう座ざ式しきのロードローラーは2つのブレーキペダルを備そなえる。不ふ整地せいちでの小回こまわりを要求ようきゅうされる農業のうぎょう機械きかいなどには、左右さゆう輪わ別べつ体からだ式しきの一対いっついのフットブレーキペダルが備そなえられる。これには左右さゆうペダルの連結れんけつ棒ぼうが取とり付つけられており、左右さゆうを合体がったいすることで通常つうじょうのブレーキとして操作そうさできる。オートバイのブレーキペダルは、後こう輪わブレーキのみの操作そうさをおこなう。

フットブレーキの種類しゅるい

踏力の伝達でんたつと制動せいどう力りょくの発生はっせいには、機械きかい（ロッド又またはワイヤー）、油圧ゆあつ、空気圧くうきあつが用もちいられる。

油圧ゆあつ式しき

油圧ゆあつ式しき（ハイドロリック）は、主おもに後こう輪わディスクブレーキのオートバイ、小型こがた自動車じどうしゃ、多おおくの中型ちゅうがた自動車じどうしゃは油圧ゆあつ式しきフットブレーキを備そなえている。フットブレーキで入力にゅうりょくされた力ちからは、負ふ圧あつ式しき倍ばい力りょく化か装置そうち（マスターバック）で増幅ぞうふくされ、マスターシリンダー内ないのピストンを押おして油圧ゆあつを発生はっせいさせ、各かく車輪しゃりんのブレーキシリンダーへ制動せいどう力りょくとして伝つたわる。自動車じどうしゃではペンダント（吊つり下さげ）式しきペダル、オートバイの後のち輪わ用ようではカンチレバー式しきペダルが主流しゅりゅうである。ブレーキは、踏ふみ続つづけると加熱かねつされて油圧ゆあつ配管はいかん内ないに気泡きほうが生しょうじ、ベーパーロック現象げんしょうを引ひき起おこしてブレーキが利きかなくなる危険きけん性せいを含ふくんでいる。

空気くうき油圧ゆあつ複ふく合ごう式しき（エアオーバーまたはエアオーバーハイドロリック）

主おもに大型おおがた自動車じどうしゃと一部いちぶの中型ちゅうがた車しゃで使つかわれている。油圧ゆあつ式しきのマスターシリンダーのピストンを、空気圧くうきあつで押おす方式ほうしき。このため、ブレーキペダルが操作そうさするものは、圧縮あっしゅく空気くうきのみで、踏ふみ込こむと圧縮あっしゅく空気くうきがマスターシリンダーのピストンに流ながれてブレーキを締しめ付つけ、離はなすとその空気くうきが外部がいぶに開放かいほうされ、ブレーキが解除かいじょされる。この方式ほうしきは負ふ圧あつ式しき倍ばい力りょく化か装置そうちよりも強力きょうりょくな油圧ゆあつ作つくることが出来できる。油圧ゆあつブレーキや機械きかい式しきブレーキは作動さどう力りょくに比例ひれいした感触かんしょくがあるが、エアブレーキの場合ばあいは作動さどう力りょくと踏力が比例ひれいしていないためエアブレーキ車両しゃりょうの経験けいけんがない運転うんてん者しゃは急きゅうブレーキになる（踏力の圧力あつりょくに比例ひれいするのではなく、ペダルの踏ふんだ距離きょりに比例ひれいする。）。オルガン（床ゆか置おき）式しきペダルの先さきの方ほうを軽かるく踏ふんでいくと徐々じょじょに空気くうきが送おくられるので、滑なめらかな減速げんそくが得えられる。一部いちぶを除のぞきオルガン（床ゆか置おき）式しきペダルである。オルガン（床ゆか置おき）式しきペダルでない（ペンダント（吊つり下さげ）式しきペダルの）車種しゃしゅは、日野ひの・レンジャーや日野ひの・プロフィアなどがある。ブレーキを使つかうたびにエアタンクの空気くうきが抜ぬけるため、エアコンプレッサーを使つかってタンク内ないの空気圧くうきあつをある程度ていど高たかめておかなければならない。空気くうきが漏もれ、タンク内ないの空気圧くうきあつが外気がいき圧あつと同おなじになると全まったく作動さどうしない。ホイールシリンダーは油圧ゆあつのため、ブレーキを踏ふみ続つづけると加熱かねつし、油圧ゆあつ配管はいかん内ないに気泡きほうを生しょうじ、ブレーキが利きかなくなるベーパーロック現象げんしょうを引ひき起おこす可能かのう性せいを含ふくんでいる。

空気圧くうきあつ式しき（フルエア）

主おもに大型おおがたトレーラーとトラクタに使用しようされている。空気圧くうきあつ式しきブレーキでは、ブレーキシューは、通常つうじょう、スプリングでブレーキドラムに押おさえつけられており、圧縮あっしゅく空気くうきで作動さどうするアクチュエータにより、ブレーキが緩解かんかいされる仕組しくみである。そのため、配管はいかんの破断はだんやトレーラーの分離ぶんりといった事故じこの際さいには、ブレーキが自動的じどうてきに作動さどうする。低圧ていあつのコントロール系けいで、高こう圧あつの動作どうさ系けいを操あやつっている。そのため細こまかい操作そうさのタイムラグは空気くうき油圧ゆあつ複ふく合ごう式しきよりも大おおきく、ペダルの反はん力ちからが不自然ふしぜんなもの（ゴムまりを踏ふむような感覚かんかく）もあるが、より強力きょうりょくなブレーキ力りょくを安定あんていして発生はっせいさせることができる。また、2系統けいとうの空気くうきのみの伝達でんたつのため、トレーラーの切きり離はなしに適てきしている。ブレーキを使つかうたびにエアタンクの空気くうきが抜ぬけるため、エアコンプレッサーを使つかってタンク内ないの空気圧くうきあつをかなり高たかめておかなければならない。当然とうぜんながら、タンク内ないの空気圧くうきあつが外気がいきと同おなじになると全まったく作動さどうしない。液体えきたいを使用しようしないため、ベーパーロック現象げんしょうはおこらないが、加熱かねつによるフェードは上記じょうきの各かく方式ほうしき同様どうように発生はっせいする。極ごく寒冷かんれい地ちにおいては、空気くうき中ちゅうの水分すいぶんが凍結とうけつして弁べんを固着こちゃくさせ、正常せいじょうに動作どうさしなくなることがある。

他た車くるまを牽引けんいんしないタイプの大型おおがた自動車じどうしゃでも使用しようされているが、この場合ばあいは、空気くうき油圧ゆあつ複ふく合ごう式しきから油圧ゆあつ系統けいとうを取とり除のぞいた形式けいしきである。

機械きかい式しき

オートバイの後のち輪わドラムブレーキには、ロッドやワイヤーといった機械きかい式しきフットブレーキが採用さいようされていることは珍めずらしくない。液体えきたいを使用しようしないため、ベーパーロック現象げんしょうはおこらないがフェードは起おこりうる。ペダルはカンチレバー式しき。

馬車ばしゃから引ひき継つがれた四よん輪りん車しゃのブレーキは、ハンドブレーキを経へてフットブレーキへと進化しんかしたが、現在げんざいでは機械きかい式しきは上記じょうきの各かく方式ほうしきに完全かんぜんに取とって代かわられており、日本にっぽんの場合ばあい、多おおくの陸運りくうん支局しきょくでは機械きかい式しきブレーキは認みとめられておらず、車検しゃけんに合格ごうかく出来できない。