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ペットボトル症候群しょうこうぐん

出典しゅってん: フリー百科ひゃっか事典じてん『ウィキペディア(Wikipedia)』

ペットボトル症候群しょうこうぐん(ペットボトルしょうこうぐん、えい: Pet Bottle Syndrome[1])は、スポーツドリンク清涼飲料水せいりょういんりょうすい大量たいりょうつづけることによってこる、急性きゅうせい糖尿とうにょうびょうである。正式せいしき名称めいしょうソフトドリンク(清涼飲料水せいりょういんりょうすい)・ケトアシドーシス清涼飲料水せいりょういんりょうすいケトーシスともぶこともある。ソフトドリンクやスポーツドリンクの急激きゅうげき大量たいりょう摂取せっしゅだけでなく、みかんの缶詰かんづめアイスクリームなど、糖分とうぶんおお食品しょくひん大量たいりょう摂食せっしょくでも発症はっしょうすることが報告ほうこくされている[2]

概要がいよう

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1992ねん5月、聖マリアンナ医科大学せいまりあんないかだいがく研究けんきゅうグループが報告ほうこくし、糖尿とうにょうびょうせいケトアシドーシス症状しょうじょうとなったわか人達ひとたちおおくがペットボトル清涼飲料水せいりょういんりょうすいんでいたことから命名めいめいされた。

市販しはん清涼飲料水せいりょういんりょうすいおおくは、砂糖さとうが100mLあたり10g程度ていどと、かなりおおふくまれている。スポーツドリンクには、たいてい100mLに6g程度ていど砂糖さとうふくまれている。ペットボトル飲料いんりょう普及ふきゅうとその手軽てがるさから、らないうちに過剰かじょう糖分とうぶん摂取せっしゅすることになる。

ソフトドリンクを普段ふだんみずわりとしてんでいる場合ばあい、1にちに2L程度ていどむと仮定かていすれば120 - 200gもの糖分とうぶんることになり、熱量ねつりょうにして470 - 780kcal。WHO/FAOは、レポート『食事しょくじ栄養えいよう慢性まんせい疾患しっかん予防よぼう』(Diet、Nutrition and the Prevention of Chronic Diseases WHO/FAO 2002ねん)という報告ほうこくしょにおいて、慢性まんせい疾患しっかんこうカロリーしょく関連かんれん指摘してきし、食事しょくじちゅうそう熱量ねつりょうそうカロリー)にめる砂糖さとう熱量ねつりょうを10%(200 - 260kcal)以下いかにすることを推奨すいしょうしている[3]

発症はっしょうメカニズム

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こう血糖けっとうによってこされるのどかわき(口渇こうかつ)を、糖分とうぶん含有がんゆうする清涼飲料水せいりょういんりょうすい飲用いんようやそうとするが、かえしの清涼飲料水せいりょういんりょうすいいんによりこう血糖けっとうこし、こう血糖けっとう膵臓すいぞうβべーた細胞さいぼう疲弊ひへいさせ、インスリン分泌ぶんぴつ不全ふぜんこしてとう代謝たいしゃされず、こう血糖けっとうのままによるのどかわきは解決かいけつせずさらなるこう血糖けっとうがよりのどかわきを誘発ゆうはつ清涼飲料水せいりょういんりょうすい摂取せっしゅ助長じょちょうされる。この悪循環あくじゅんかん糖尿とうにょうびょうせいケトアシドーシス(ペットボトル症候群しょうこうぐん)の発症はっしょうにつながる[4]こう血糖けっとうであってもインスリンが欠乏けつぼうするとインスリン感受性かんじゅせいであるグルコーストランスポーターGLUT4かいした細胞さいぼうグルコースみが困難こんなんとなり、飢餓きがおちいった細胞さいぼうにエネルギーげん供給きょうきゅうするため肝臓かんぞう脂肪しぼう組織そしき遊離ゆうり脂肪酸しぼうさん酸化さんかさせてグルコースの代替だいたいひんであるケトンたい大量たいりょうにつくられアシドーシス亢進こうしん糖尿とうにょうびょうせいケトアシドーシスが発症はっしょうする[5]。このため、インスリン投与とうよなどによりインスリン分泌ぶんぴつ不全ふぜん解決かいけつされる必要ひつようがある[6]

症状しょうじょう

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糖尿とうにょうびょういち形態けいたいであるため基本きほんてき症状しょうじょう糖尿とうにょうびょうわらない。

のどかわき」「倦怠けんたいかん」「体重たいじゅう急激きゅうげき減少げんしょう」など。典型てんけいてきなのどのかわきの症状しょうじょう単純たんじゅん水分すいぶん不足ふそくによるのどかわきと誤認ごにんし、さら清涼飲料水せいりょういんりょうすいむことで、いっそうの悪化あっかまねく。

じゅうあつし場合ばあいは、糖尿とうにょうびょうせいケトアシドーシスとなり、「尿にょう」「嘔吐おうと」「腹痛はらいた」「意識いしき混濁こんだく」「昏睡こんすい糖尿とうにょうびょうせい昏睡こんすい)」から死亡しぼういたことがある。

合併症がっぺいしょう

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清涼飲料水せいりょういんりょうすい大量たいりょう摂取せっしゅ原因げんいんとなっているが、基礎きそ疾患しっかんとして肥満ひまん生活せいかつ習慣しゅうかんびょう(メタボリックシンドローム)をゆうしているれい多数たすう報告ほうこくされている[7][8][9]。そのため基礎きそ疾患しっかん悪化あっかのほかに、ケトーシス発症はっしょうこうカルシウムしょうこうトリグリセライドしょう急性きゅうせい膵炎大腸だいちょう輪状りんじょう潰瘍かいようこうあぶらしょうはい梗塞こうそくなどの合併症がっぺいしょう発症はっしょう報告ほうこくされる[10][1]

検査けんさ治療ちりょう

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脚注きゃくちゅう

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  1. ^ a b 澤田さわだ雅彦まさひこ丸山まるやま太郎たろう北澤きたざわ吉明よしあき前田まえだ憲男のりお岩崎いわさき良二りょうじ鈴木すずき裕也ゆうや、「はい梗塞こうそく合併がっぺいして死亡しぼうした“ペットボトル症候群しょうこうぐん”の1剖検ぼうけんれい」『糖尿とうにょうびょう』 1996ねん 39かん 6ごう p.431 - 437、doi:10.11213/tonyobyo1958.39.431
  2. ^ 大濱おおはま俊彦としひこ金城きんじょう一志かずし知念ちねんのぞみ曽爾そに浩太郎こうたろう武田たけだえいまれ諸見里もろみざとつぶせひろしちょうどうてる宮平みやだいらけん、 「みかん缶詰かんづめ・アイスクリームの大量たいりょう摂取せっしゅ契機けいき清涼飲料水せいりょういんりょうすいケトーシスと同様どうよう病態びょうたいたした1れい」『糖尿とうにょうびょう』 2009ねん 52かん 3ごう p.255 - 258、日本にっぽん糖尿とうにょうびょう学会がっかいdoi:10.11213/tonyobyo.52.255NAID 10024929720
  3. ^ Nutrition and the Prevention of Chronic Diseases、pp.56 - 57
    WHO/FAOレポートでは"free sugar"を"all monosaccharides(たん糖類とうるい) and disaccharides(糖類とうるい) added to foods by the manufacturer、cook or consumer、plus sugars naturally present in honey、syrups and fruit juices"と定義ていぎしている。村上むらかみ直久なおひさ世界せかいしょく安全あんぜんまもれるか―食品しょくひんパニックと危機きき管理かんり』(平凡社へいぼんしゃ新書しんしょ)151ぺーじISBN 978-4582852370
  4. ^ 糖尿とうにょうびょう代謝たいしゃ -清涼飲料水せいりょういんりょうすいケトーシスを契機けいき診断しんだんされたCushingびょういちれい-」『日本にっぽん内分泌ないぶんぴつ学会がっかい雑誌ざっし』 Vol.85(2009) No.Supplement-1 特集とくしゅうごう だい19かい臨床りんしょう内分泌ないぶんぴつ代謝たいしゃUpdate Proceeding p.152 - 172、doi:10.1507/endocrine.85.Supplement-1_152
  5. ^ こう光義みつよしはく、「代謝たいしゃせいアシドーシス」『日本内科学会にほんないかがっかい雑誌ざっし』 Vol.86(1997) No.10、doi:10.2169/naika.86.1873
  6. ^ 清涼飲料水せいりょういんりょうすいケトーシスとは! - 久留米大学くるめだいがく医学部いがくぶ医学いがく
  7. ^ あしりつ恵子けいこ川村かわむら光信みつのぶ東田ひがしだ寿子ひさこ宮崎みやざきしげるひらゆいいとぐち清涼飲料水せいりょういんりょうすいケトーシスにIIIがただかあぶらしょう糖尿とうにょうびょうせい黄色おうしょくしゅ合併がっぺいした1れい 糖尿とうにょうびょう Vol.47(2004) No.12 p.939 - 943、doi:10.11213/tonyobyo1958.47.939
  8. ^ 今枝いまえだ憲郎のりお加藤かとうたけし一柳いちりゅう北田きただはるか、岩瀬いわせそうつかさ大口おおぐち英臣ひでおみ谷田たにださとし岡山おかやま直司なおじじょう卓志たかし、「清涼飲料水せいりょういんりょうすいいんともなうケトアシドーシスに大腸だいちょう輪状りんじょう潰瘍かいよう合併がっぺいしたインスリン欠乏けつぼうがた糖尿とうにょうびょうの1れい」『糖尿とうにょうびょう』 2012ねん 55かん 5ごう p.345 - 351、doi:10.11213/tonyobyo.55.345
  9. ^ 田中たなか正巳まさみ宮崎みやざきやすし、「清涼飲料水せいりょういんりょうすいいん契機けいき発症はっしょうこうカルシウムしょうこうトリグリセリドしょう無痛むつうせい急性きゅうせい膵炎を合併がっぺいした2がた糖尿とうにょうびょうでの糖尿とうにょうびょうせいケトアシドーシスの1れい」『糖尿とうにょうびょう』 Vol.44(2001) No.11 p.913 - 916、doi:10.11213/tonyobyo1958.44.913
  10. ^ 山本やまもとただし岡田おかだ洋右ようすけ新生しんせい忠司ただし西田にしだ啓子けいこ田中たなかりょう哉、「ソフトドリンクケトアシドーシスにこうトリグリセライドしょう重症じゅうしょう急性きゅうせい膵炎を合併がっぺいした1れい」『糖尿とうにょうびょう』 2011ねん 54かん 1ごう p.34 - 39、doi:10.11213/tonyobyo.54.34

関連かんれん文献ぶんけん

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  • べもの文化ぶんか編集へんしゅう清涼せいりょう飲料いんりょう上手じょうずかたえらかたばえしゃ、2003ねん4がつISBN 4-89579-267-6ISBN 978-4-89579-267-7

関連かんれん項目こうもく

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外部がいぶリンク

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