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モグラ (スパイ)

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モグラMole)はスパイ用語ようごで、機密きみつ情報じょうほう入手にゅうしゅする以前いぜん採用さいようされ、その目標もくひょうとする組織そしきはいむことができた長期間ちょうきかん潜伏せんぷく必要ひつようとなるスパイ(諜報ちょうほういん)のことである[1]。「ペネトレーションエージェント」[2]、「ディープカバーエージェント」、「スリーパーエージェント」ともばれることもある。「モグラ」は、一般いっぱんてきには、政府せいふ民間みんかん組織そしきない長期ちょうきてき密偵みってい情報じょうほう提供ていきょうしゃ意味いみする言葉ことばとして使つかわれている[1]警察けいさつでは、ある組織そしき活動かつどうかんする証拠しょうこあつめ、最終さいしゅうてきにその組織そしきのメンバーを告発こくはつするために、その組織そしき参加さんかするおとり捜査そうさかんのことを「モグラ」とんでいることもある。

この用語ようごは、英国えいこくのスパイ小説しょうせつジョン・ル・カレが1974ねん発表はっぴょうした小説しょうせつティンカー、テイラー、ソルジャー、スパイ[3][4]で「Mole」という用語ようご紹介しょうかいして以来いらい普及ふきゅうして一般いっぱんてき使つかわれるようになった。日本語にほんごやくよく1975ねん刊行かんこうされ、そのさいは「もぐら」とひらがなでやくされた[5]。その起源きげん[2]や、一般いっぱんするまえ諜報ちょうほう機関きかんでどの程度ていど使つかわれていたかは不明ふめいである。イギリスのもと諜報ちょうほういんであるル・カレは、モグラという言葉ことば実際じっさいにはソ連それん諜報ちょうほう機関きかんKGB使つかっていたものであり[1]欧米おうべい諜報ちょうほう機関きかん使つかわれていた対応たいおうする言葉ことばはスリーパーエージェントであったとべている[6]。モグラという言葉ことばは、1626ねんフランシス・ベーコンきょういた『ヘンリー7せい治世ちせい歴史れきし』というほんなかでスパイにたいして使つかわれていたが[2][1]、ル・カレは、そのほんからこの言葉ことばたわけではないとかたっている。

概要がいよう

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モグラは、人生じんせいはや段階だんかい採用さいようされ、すうじゅうねんかけて政府せいふ仕事しごとき、秘密ひみつ情報じょうほうにアクセスできる立場たちばになってから、スパイとして活動かつどうすることがある。1930年代ねんだいケンブリッジ大学けんぶりっじだいがく共産きょうさん主義しゅぎしゃ学生がくせいとしてKGB採用さいようされ、のち英国えいこく政府せいふのさまざまな部署ぶしょたか地位ちいいた5にん上流じょうりゅう階級かいきゅう英国えいこくじん男性だんせいケンブリッジ・ファイヴが、モグラのもっと有名ゆうめいれいである[3]一方いっぽう、CIA防諜ぼうちょう部長ぶちょうオルドリッチ・エイムズや、KGBのためにアメリカ政府せいふをスパイしたFBI捜査そうさかんロバート・ハンセン英語えいごばんなど、スパイ活動かつどうおこなものおおくは、対象たいしょうとなる組織そしきのメンバーとしての地位ちい確立かくりつしたのちに、スパイとして勧誘かんゆうされたり、情報じょうほう提供ていきょうしたりしている。

モグラの採用さいようははるか以前いぜんおこなわれたことであるため、当該とうがいこく治安ちあん当局とうきょく捜査そうさ当局とうきょく発見はっけんするのはむずかしい。政治せいじ企業きぎょう経営けいえいしゃ政府せいふ閣僚かくりょう情報じょうほう機関きかん役員やくいんなどのトップが外国がいこく政府せいふのためにはたらくモグラである可能かのうせいは、防諜ぼうちょう機関きかんにとって最悪さいあく悪夢あくむである[よう出典しゅってん]たとえば、1954ねんから1975ねんまでCIA防諜ぼうちょう部長ぶちょうつとめたジェームズ・アングルトンは、欧米おうべい諸国しょこく政府せいふ上層じょうそうには長期間ちょうきかん潜伏せんぷくちゅう共産きょうさん主義しゅぎしゃのエージェントがいるという疑念ぎねんりつかれ[2]、1975ねん解任かいにんされるまで、ヘンリー・キッシンジャーもとべい国務こくむ長官ちょうかんレスター・ピアソンもとカナダ首相しゅしょうピエール・トルドーもとカナダ首相しゅしょうハロルド・ウィルソンもと英国えいこく首相しゅしょうなどおおくの政治せいじおおくの国会こっかい議員ぎいん告発こくはつしたとわれている。このように、アメリカにおいて普通ふつう生活せいかつなか著名ちょめい地位ちいにスパイがいることをおそれて、マッカーシズムのような過剰かじょう反応はんのうきた[よう出典しゅってん]

モグラは、すうおおくのスパイ映画えいが、テレビ番組ばんぐみ小説しょうせつなどに登場とうじょうする。

使用しよう理由りゆう

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諜報ちょうほう機関きかん諜報ちょうほういん募集ぼしゅうするさいもちいるもっと一般いっぱんてき手順てじゅんは、外国がいこく政府せいふ組織そしきなかしい情報じょうほうのある場所ばしょ(ターゲット)をつけ、その情報じょうほうにアクセスできるひとさがし、そのなか一人ひとりをスパイ(諜報ちょうほういん)として募集ぼしゅうして情報じょうほう入手にゅうしゅしようとするものである。しかし、政府せいふ極秘ごくひ情報じょうほうにアクセスできるのは、高度こうどセキュリティクリアランス政府せいふ職員しょくいんであり、まさにそのようなスパイ活動かつどうのアプローチがされないように、政府せいふのセキュリティ機構きこうによって注意深ちゅういぶかかんされている。したがって、外国がいこく諜報ちょうほう機関きかん代表だいひょうしゃが、かれらを勧誘かんゆうするためにひそかにうことはむずかしい。だい企業きぎょうテロリストグループなどの民間みんかん組織そしきにも、同様どうようのセキュリティ監視かんしシステムが存在そんざいする。

また、セキュリティクリアランスのプロセスでは、公然こうぜん不満ふまんっていたり、イデオロギーに不満ふまんいていたり、くに裏切うらぎるような動機どうきっている職員しょくいん排除はいじょされるため、そのような立場たちばにあるひとはスパイとしての採用さいよう拒否きょひされる可能かのうせいたかいとされている。そこで一部いちぶ諜報ちょうほう機関きかんでは、上記じょうきのプロセスをぎゃくにして、まずスパイ候補者こうほしゃ募集ぼしゅうし、必要ひつよう情報じょうほうにアクセスできる立場たちばになることを期待きたいして、忠誠ちゅうせいしんかくして対象たいしょうとなる政府せいふ機関きかんでキャリアをませる方法ほうほうもある。

スパイとしてのキャリアは一生いっしょう大半たいはんめるほど長期ちょうきにわたるため、モグラになるひとにはたかいモチベーションがもとめられる。一般いっぱんてき動機どうきとしては、イデオロギー(政治せいじてき信念しんねん)がげられる。冷戦れいせん時代じだい西側にしがわ諸国しょこくでは、いわゆる同調どうちょうしゃばれるひとたちがモグラのおも供給きょうきゅうげんとなった。かれらは、1920年代ねんだいから1940年代ねんだいにかけて、わかころ自国じこく政府せいふ不満ふまんいだき、実際じっさい共産党きょうさんとうにははいらなかったが世界せかい共産きょうさん主義しゅぎ共感きょうかんした西洋せいようじんたちであった。

参照さんしょう

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出典しゅってん

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  1. ^ a b c d Green, Jonathon (March 28, 2006). Cassell's Dictionary of Slang: A Major New Edition of the Market-Leading Dictionary of Slang (2nd, revised ed.). New York City, New York, USA: Sterling Publishing. p. 953. ISBN 9780304366361. OCLC 62890128. https://books.google.com/books?id=5GpLcC4a5fAC&q=mole+%22john+le+carre%22+tinker&pg=PA953 2012ねん8がつ26にち閲覧えつらん 
  2. ^ a b c d Smith, W. Thomas (2003). Encyclopedia of the Central Intelligence Agency. Manhattan, New York City, USA: Infobase Publishing. p. 171. ISBN 9781438130187. OCLC 586163250 
  3. ^ a b Carlisle, Rodney P. (April 1, 2003). Complete Idiot's Guide to Spies and Espionage (illustrated ed.). Indianapolis, Indiana, USA: Alpha Books. p. 142. ISBN 9780028644189. OCLC 52090218. https://books.google.com/books?id=wZt283WNub4C&q=%22the+term+mole%22+%22john+le+carre%22&pg=PA142 2012ねん8がつ26にち閲覧えつらん 
  4. ^ Shapiro, Fred R. (Oct 30, 2006). The Yale Book of Quotations (illustrated ed.). New Haven, Connecticut, USA: Yale University Press. p. 448. ISBN 9780300107982. OCLC 66527213. https://archive.org/details/isbn_9780300107982 2012ねん8がつ26にち閲覧えつらん. "According to the Oxford English Dictionary "it is generally thought that the world of espionage adopted [the term mole] from Le Carré, rather than vice versa." 
  5. ^ ジョン・ル・カレ しる菊池きくちひかり わけティンカー、テイラー、ソルジャー、スパイ早川書房はやかわしょぼうハヤカワ文庫ぶんこ〉、1986ねん11月30にち、89ぺーじ 
  6. ^ Le Carré, John; Bruccoli, Matthew J; Baughman, Judith (2004). Conversations with John le Carré (illustrated ed.). Jackson, Mississippi, USA: University Press of Mississippi. pp. 33–34. ISBN 9781578066698. OCLC 55019020. https://books.google.com/books?id=jxPWT_Lo5yQC&q=mole&pg=PA33 2012ねん8がつ26にち閲覧えつらん. "interview with Le Carré in Melvyn Bragg The Listener, January 22, 1976 BBC1, (reprint)" 

参考さんこう文献ぶんけん

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