ユダヤ人じん入植にゅうしょく地ち

東ひがしエルサレム・ヨルダン川よるだんがわ西岸せいがん地区ちくの道路どうろや分離ぶんり壁かべの現状げんじょう（2020年ねん）。ピンク色ぴんくいろはイスラエル人じん入植にゅうしょく地ち

ユダヤ人じん入植にゅうしょく地ち（ユダヤじんにゅうしょくち）とは、ユダヤ人じんによる入植にゅうしょく地ちのこと。イスラエル人じんによるものはイスラエル人じん入植にゅうしょく地ちとも呼よばれる。

概要がいよう

中東ちゅうとうにおけるユダヤ人じん入植にゅうしょく地ちは元々もともとはユダヤ人じんの移住いじゅうを図はかる目的もくてきで建設けんせつされたキブツ（集団しゅうだん農場のうじょう）や大だい規模きぼ開発かいはつ都市としが起源きげんであるが、国際こくさい社会しゃかいを論ろんじる際さいに主おもに問題もんだいとなるのは1967年ねんの第三次中東戦争だいさんじちゅうとうせんそう以降いこうにイスラエルが占領せんりょうした東ひがしエルサレムを含ふくむヨルダン川よるだんがわ西岸せいがん地区ちくのユダヤ人じん入植にゅうしょく地ちでありパレスチナ問題もんだいの1つである（他たにゴラン高原ごらんこうげんにおけるユダヤ人じん入植にゅうしょく地ちなど）。イスラエル政府せいふはパレスチナやシリアの占領せんりょう地ちにおいてユダヤ人じんの流入りゅうにゅうを認みとめる一方いっぽうでパレスチナ難民なんみん等とうの非ひユダヤ人じんの流入りゅうにゅうを厳きびしく制限せいげんしたり、社会しゃかいインフラにおいて入植にゅうしょく者しゃであるユダヤ人じんに便宜べんぎを図はかる一方いっぽうで先住民せんじゅうみんであるパレスチナ人じんやシリア人じんに損失そんしつを与あたえるという差別さべつ的てき政策せいさくを採とっている。これについて国際こくさい社会しゃかいは占領せんりょう権力けんりょくが自国じこく市民しみんを占領せんりょう地域ちいきに移住いじゅうさせることを禁きんじたジュネーブ第だい4条約じょうやく第だい49条じょうに違反いはんすること等とうを根拠こんきょとして、国連こくれん安保理あんぽり決議けつぎ452（1979年ねん）や国連こくれん安保理あんぽり決議けつぎ465（1980年ねん）が決議けつぎされ、1967年ねん以降いこうにイスラエルが占領せんりょうした領土りょうどでの入植にゅうしょく地ちの建設けんせつを国際こくさい法ほう違反いはんとして撤回てっかいを求もとめている。国際こくさい社会しゃかいからは第だい一いち次じ中東ちゅうとう戦争せんそうにおける1949年ねん時どきの停戦ていせんラインはグリーンラインと呼よばれ、イスラエルとパレスチナとの境界きょうかい線せんとして認知にんちされている。

ユダヤ人じん入植にゅうしょく地ちは国外こくがいからのユダヤ人じん移民いみん流入りゅうにゅう増加ぞうかによる都市とし部ぶの住宅じゅうたく価格かかく高騰こうとう問題もんだいへの対策たいさくとしてイスラエル政府せいふが住宅じゅうたく省しょうを中心ちゅうしんとして公式こうしきに支援しえんしている事例じれいもあれば、イスラエルの民間みんかん右派うはがイスラエル政府せいふの無認可むにんかではあるが宗教しゅうきょう的てき信念しんねんや対たいパレスチナ強硬きょうこうの政治せいじ的てき思惑おもわくから入植にゅうしょくしているアウトポストの事例じれいもある。アウトポストはイスラエル政府せいふによって強制きょうせい撤去てっきょされることもあるが、事実じじつ上じょう黙認もくにんされることが多おおく、事後じご的てきにイスラエル政府せいふに公的こうてきに認可にんかされることもある。

ユダヤ人じん入植にゅうしょく地ちは1967年ねんの占領せんりょう直後ちょくごから労働党ろうどうとう政権せいけん下かでパレスチナ人じんの居住きょじゅう区くを避さけて占領せんりょう地ちとの境界きょうかいであるグリーンライン付近ふきんや幹線かんせん道路どうろ沿ぞいに集中しゅうちゅうして計画けいかく、建設けんせつされ、軍事ぐんじ的てき防御ぼうぎょ線せんや戦略せんりゃく拠点きょてんの目的もくてきがあった。1977年ねんに保守ほしゅ強硬きょうこう派はのリクード政権せいけんが誕生たんじょうしてからは占領せんりょう地ちの返還へんかん拒否きょひを明言めいげんし、占領せんりょう地ちにおいてパレスチナ人じんの居住きょじゅう区くを含ふくめた様々さまざまな場所ばしょでの入植にゅうしょくを積極せっきょく的てきに進すすめた。国際こくさい社会しゃかいはイスラエルに対たいして入植にゅうしょく活動かつどう凍結とうけつや入植にゅうしょく地ちの撤退てったいを求もとめているが、イスラエルは一部いちぶを除のぞいて入植にゅうしょく凍結とうけつ撤退てったいを拒否きょひして入植にゅうしょく活動かつどうを積極せっきょく的てきに進すすめている。

かつては1967年ねんの第三次中東戦争だいさんじちゅうとうせんそう以降いこうのシナイ半島しないはんとうやガザ地区ちくにもユダヤ人じん入植にゅうしょく地ちがあったが、シナイ半島しないはんとうのユダヤ入植にゅうしょく地ちについては1979年ねんのエジプト・イスラエル平和へいわ条約じょうやくを機きに、ガザ地区ちくのユダヤ入植にゅうしょく地ちについては2005年ねんにガザ地区ちく等とう撤退てったいを機きにそれぞれ撤退てったいし、シナイ半島しないはんとうとガザ地区ちくのユダヤ入植にゅうしょく地ちだった地域ちいきではアラブ系けい住民じゅうみんが多数たすう派はとなりユダヤ人じん入植にゅうしょく地ちは無なくなっている（シナイ半島しないはんとうではエジプトの施政しせい下かになったユダヤ人じん入植にゅうしょく地ちについてユダヤ人じんを保護ほごできないとしてイスラエル軍ぐんが強制きょうせい排除はいじょした）。

入植にゅうしょく地ちの地区ちくによっては入植にゅうしょくしているユダヤ人じんがパレスチナ人じんからのテロ対策たいさくとして予備よび役やく用ようの武器ぶきを所持しょじしている例れいもある。

1993年ねんのオスロ合意ごういではイスラエル権力けんりょくは占領せんりょうした地域ちいきから暫定ざんてい的てきに撤退てったいした上うえで、ユダヤ人じん入植にゅうしょく地ちの最終さいしゅう的てきな地位ちいについてはイスラエルとパレスチナによる交渉こうしょうによって決定けっていされるものとしている。

法的ほうてき位置付いちづけ

ヨルダン川よるだんがわ西岸せいがん地区ちくはイスラエルの占領せんりょう下か（イスラエルは「係争けいそう地ち」と主張しゅちょう）にあるが、東ひがしエルサレムを除のぞき、公式こうしきに併合へいごうしたわけでは無ない。このため、占領せんりょう前まえの旧法きゅうほう（オスマン帝国ていこく法ほう・イギリス法ほう・ヨルダン法ほうなど）を継承けいしょうしつつ、必要ひつように応おうじてイスラエル国防こくぼう軍ぐん軍律ぐんりつで上書うわがきする形式けいしきを取とっている。

一方いっぽうで、ユダヤ人じん入植にゅうしょく者しゃに対たいしては、イスラエル国内こくない法ほうを適用てきようできるよう、軍律ぐんりつやその他たの特別とくべつ法ほうを施行しこうしている（ヨルダン川よるだんがわ西岸せいがん地区ちく入植にゅうしょく地ちにおけるイスラエル法ほう、ユダヤ・サマリア入植にゅうしょく地ち規制きせい法ほう）。これらの施行しこうは、併合へいごうと区別くべつするために入植にゅうしょく者しゃ個人こじんに適用てきようする形かたちを取とっており、地権ちけんに関かんする法令ほうれいは適用てきようされない。

実態じったいとして、同どう一いち地域ちいきでユダヤ人じん入植にゅうしょく者しゃと被ひ占領せんりょう民みんに異ことなる法令ほうれいが施行しこうされる二に重じゅう法令ほうれいとなっている。一般いっぱんに、被ひ占領せんりょう民みんに対たいしてより過酷かこくな法令ほうれいとなっている。たとえば、投石とうせきは被ひ占領せんりょう民みんは無条件むじょうけんで10年ねん以下いかの懲役ちょうえき（危害きがいを目的もくてきとした場合ばあいは20年ねん以下いかの懲役ちょうえき）となり、実行じっこう犯はんが未成年みせいねん者しゃの場合ばあいは両親りょうしんへの連座れんざ刑けいも設もうけられている。しかし、ユダヤ人じん入植にゅうしょく者しゃはイスラエル国内こくない法ほうが適用てきようされ、被ひ占領せんりょう民みんより量刑りょうけいは軽かるく、連座れんざ刑けいも設もうけられていない。

参考さんこう文献ぶんけん

• 立山たてやま良司りょうじ『中東ちゅうとう和平わへいの行方ゆくえ―続ぞく・イスラエルとパレスチナ』中央公論社ちゅうおうこうろんしゃ（中公新書ちゅうこうしんしょ）、1995年ねん。ISBN 9784121012609。 

関連かんれん項目こうもく

• イスラエル
• パレスチナ（パレスチナ問題もんだい） - ヨルダン川よるだんがわ西岸せいがん地区ちく・ガザ地区ちく
• シリア - ゴラン高原ごらんこうげん
• エジプト - シナイ半島しないはんとう
• シオニズム - ネオ・シオニズム
• ダニエラ・ヴァイス