ワシントン大だい行進こうしん

ワシントン大だい行進こうしん（ワシントンだいこうしん、March on Washington for Jobs and Freedom「仕事しごとと自由じゆうの為ためのワシントンへの行進こうしん」）は、1963年ねん 8月がつ28日にちに、アメリカ合衆国あめりかがっしゅうこくのワシントンD.C.で行おこなわれた人種じんしゅ差別さべつ撤廃てっぱいを求もとめるデモ。英語えいごでは「The Great March on Washington」とも呼よばれる。

概要がいよう[編集へんしゅう]

公民こうみん権けん運動うんどう家いえで、牧師ぼくしのマーティン・ルーサー・キング・ジュニアらによって、人種じんしゅ差別さべつ撤廃てっぱいを求もとめる運動うんどうの一環いっかんとして行おこなわれた行進こうしんで、20万まん人にん以上いじょうが参加さんかした。この行進こうしんの最中さいちゅうに、キング牧師ぼくしの有名ゆうめいな演説えんぜつI Have a Dream（[1]）が行おこなわれた。

背景はいけい[編集へんしゅう]

「ジム・クロウ法ほう」[編集へんしゅう]

アメリカでは、エイブラハム・リンカーン大統領だいとうりょうによる「奴隷どれい解放かいほう宣言せんげん」から100年ねんを経へた1960年代ねんだいになっても、「ジム・クロウ法ほう」と呼よばれる「人種じんしゅ分離ぶんり法ほう（=人種じんしゅ差別さべつ法ほう）」の下した、アパルトヘイト政策せいさく下かの南みなみアフリカ同様どうよう、交通こうつう機関きかんや学校がっこう、水飲みずのみ場じょうやトイレ等ひとしの公共こうきょう機関きかんのみならず、ホテルやレストラン、バーなどにおいても、アメリカにおける多数たすう民族みんぞくである白人はくじんと、黒人こくじんと全すべての有色ゆうしょく人種じんしゅが分離ぶんりされていた。なお、当然とうぜんのごとく有色ゆうしょく人種じんしゅ専用せんようのものは劣悪れつあくで不潔ふけつなものであった。

さらに「ジム・クロウ法ほう」の下したでは、黒人こくじんと白人はくじんの結婚けっこんを事実じじつ上じょう違法いほうとする州法しゅうほうの存在そんざいが認みとめられたほか、教育きょういくの機会きかいが与あたえられなかったことから識字しきじ率りつの低ひくい黒人こくじんの投票とうひょう権けんを事実じじつ上じょう制限せいげんしたり、住宅じゅうたくを制限せいげんすることも合法ごうほうとされてきた。また、これらの州しゅうにおいては、クー・クラックス・クラン（KKK）などの白人はくじん至上しじょう主義しゅぎ団体だんたいによる黒人こくじんに対たいするリンチや、同おなじような志向しこうを持もつ警察けいさつによる不当ふとう逮捕たいほや裁判所さいばんしょなどによる冤罪えんざい判決はんけつなどが多発たはつした。

公民こうみん権けん運動うんどうの盛もり上あがり[編集へんしゅう]

しかし、1950年代ねんだいに入はいって発生はっせいした「モンゴメリー・バス・ボイコット事件じけん」や「リトルロック高校こうこう事件じけん」以降いこう、キング牧師ぼくしなどの活動かつどう家かの指導しどうの下したに、黒人こくじんたちの公民こうみん権けん（参政さんせい権けんなど）獲得かくとくを求もとめる運動うんどうが盛もり上あがりを見みせ、反はん人種じんしゅ差別さべつ運動うんどう家かだけでなく、白人はくじんが多おおくを占しめるアメリカ国内こくないの世論せろん、そして連邦れんぽう政府せいふも公民こうみん権けん法ほうの制定せいていに大おおきく動うごき始はじめた。

この様ように公民こうみん権けん運動うんどうが盛もり上あがりを見みせる中なかで、連邦れんぽう政府せいふに対たいして公民こうみん権けん制定せいていを訴うったえかけることと同時どうじに、内外ないがいに対たいして公民こうみん権けん運動うんどうの盛もり上あがりをアピールするために、公民こうみん権けん運動うんどう団体だんたいを中心ちゅうしんにワシントンD.C.のリンカーン記念きねん堂どう前まえの「ワシントン記念きねん塔とう広場ひろば」に集結しゅうけつする「ワシントン大だい行進こうしん」が企画きかくされた。

「I Have a Dream」演説えんぜつ[編集へんしゅう]

詳細しょうさいは「I Have a Dream」を参照さんしょう

この運動うんどうは、ワシントン大だい行進こうしんによって最高潮さいこうちょうに達たっした。キング牧師ぼくしらの呼よびかけに応おうじて、人種じんしゅ差別さべつや人種隔離じんしゅかくりの撤廃てっぱいを求もとめる20万まん人にん以上いじょうの人々ひとびとがワシントン記念きねん塔とう広場ひろばに集あつまった。この大だい群衆ぐんしゅうを前まえにキング牧師ぼくしが行おこなった演説えんぜつは、

『私わたしは夢見ゆめみている。

ある日ひ、ジョージアの赤土あかつちの丘おかの上うえで、以前いぜんの奴隷どれいの息子むすこ達たちと以前いぜんの奴隷どれい所有しょゆう者しゃの息子むすこ達たちが、兄弟きょうだい愛あいというテーブルにともに就つき得えることを。

私わたしは夢見ゆめみている。

ある日ひ、不正ふせいと抑圧よくあつという熱ねつで苦くるしんでいる不毛ふもうの州しゅう、ミシシッピーでさえ、自由じゆうと正義まさよしというオアシスに変かわることを。

私わたしは夢見ゆめみている。

私わたしの4人にんの子こども達たちがある日ひ、肌はだの色いろではなく人物じんぶつの内容ないようによって判断はんだんされる国くにに住すむことを。』

などと、「I have a dream」のフレーズを何なん度ども繰くり返かえして人種じんしゅ平等びょうどう社会しゃかいの実現じつげんを訴うったえたことで知しられている。

行進こうしんに参加さんかした著名ちょめい人じん[編集へんしゅう]

キング牧師ぼくしらの活動かつどう家かたちによる公民こうみん権けん運動うんどうに賛同さんどうした、アメリカ内外ないがいの多おおくの芸能人げいのうじんや文化ぶんか人じん、反はん人種じんしゅ差別さべつ活動かつどう家かを中心ちゅうしんとした著名ちょめい人じんが行進こうしんに参加さんかした。

ローザ・パークス（人権じんけん運動うんどう家か・平和へいわ運動うんどう家か。1955年ねん12月から約やく一いち年ねん続つづいたモンゴメリー・バス・ボイコット事件じけんのきっかけとなった）
マヘリア・ジャクソン（ゴスペル歌手かしゅ）
ジョセフィン・ベーカー（ダンサー）
アブラハム・ヨシュア・ヘシェル（ヘッシェル）
マルコムX（オブザーバーとして参加さんかしたが、行進こうしんの意義いぎには極きわめて否定ひてい的てきだった）
マーロン・ブランド（俳優はいゆう）
ハリー・ベラフォンテ（歌手かしゅ）
チャールトン・ヘストン（俳優はいゆう）
ボブ・ディラン（歌手かしゅ）
ジョーン・バエズ（歌手かしゅ）
ピーター・ポール&マリー（フォーク・グループ）

外部がいぶリンク[編集へんしゅう]

『ワシントン大だい行進こうしん』 - コトバンク

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