ワールドコム

ワールドコム（Worldcom）は、アメリカ合衆国あめりかがっしゅうこくにあった大手おおて電気でんき通信つうしん事業じぎょう者しゃである。2002年ねん7月がつ21日にちにニューヨーク連邦れんぽう倒産とうさん裁判所さいばんしょに対たいして、連邦れんぽう倒産とうさん法ほう第だい11章しょう（日本にっぽんの会社かいしゃ更生こうせい法ほうに相当そうとうする）適用てきようを申請しんせいした。負債ふさい総額そうがくは410億おくドル（約やく4兆ちょう7000億おく円えん）、資産しさん総額そうがくは連結れんけつベースで1070億おくドル（約やく12兆ちょう4000億おく円えん）にのぼり、2001年ねん12月2日にちに破綻はたんしたエンロンを大おおきく超こえ、2008年ねんに経営けいえい破綻はたんした投資とうし銀行ぎんこうのリーマン・ブラザーズに抜ぬかれるまで、アメリカ合衆国あめりかがっしゅうこく史上しじょう最大さいだいの経営けいえい破綻はたんだった。

歴史れきし

創設そうせつ

1983年ねん、バーニー・エバーズにより、ワールドコムの前身ぜんしんとなるLDDS（Long Distance Discount Service）社しゃが創設そうせつされる。1993年ねんにメトロメディア社しゃを買収ばいしゅうし、準じゅん大手おおての長距離ちょうきょり電話でんわ会社かいしゃとなった。さらに、1994年ねんに国際こくさい通信つうしん会社かいしゃであるIDBワールドコムを買収ばいしゅうし、社名しゃめいをワールドコムとする。その後ごもM&Aを繰くり返かえし行おこない急きゅう成長せいちょうし、後のちに6万まん人にん以上いじょうの従業じゅうぎょう員いんと、世界せかい65ヶ国かこくで事業じぎょうを展開てんかいするアメリカ有数ゆうすうの大だい企業きぎょうへと成長せいちょうしていった。

1997年ねんには大手おおてISPのUUNetの親会社おやがいしゃのMFS Communications社しゃを買収ばいしゅうしたほか、1997年ねんには大手おおて通信つうしん会社かいしゃのMCIを買収ばいしゅうし、合併がっぺいを行おこない社名しゃめいをMCI Worldcomに変更へんこう。1999年ねんにはスプリントとの合併がっぺいを発表はっぴょうした。2000年ねん4月がつにはこの合併がっぺい準備じゅんびのため社名しゃめいを元もとのWorldcomに戻もどした。

破綻はたん

CEOのエバーズは、ワールドコム株かぶの上昇じょうしょうで巨きょ万まんの富とみを得えていた。しかし、1998年ねんのMCI獲得かくとくの直後ちょくごから、ITバブル崩壊ほうかいによりアメリカにおける通信つうしん産業さんぎょうは下降かこうに入はいっていた。また、スプリントとの合併がっぺいは「独占どくせん禁止きんし法ほう違反いはんの疑うたがいがある」とのことでアメリカ合衆国あめりかがっしゅうこく司法省しほうしょうの認可にんかを得えられず、2000年ねん7月がつに両社りょうしゃは合併がっぺいの白紙はくし撤回てっかいを余儀よぎなくされ、これに伴ともない、ワールドコムの成長せいちょう戦略せんりゃくは重大じゅうだいな打撃だげきを受うけた。2000年ねん11月には会社かいしゃを「MCI」と「Worldcom」に2分割ぶんかつするなどの組織そしき改編かいへんを発表はっぴょうしたが、株価かぶか低下ていかは止とまらなかった。エバーズは他たの所有しょゆうしていたビジネスへの融資ゆうし資金しきんとして保有ほゆうしていたワールドコム株かぶについて、証拠しょうこ金きん請求せいきゅうをカバーするように銀行ぎんこうから圧力あつりょくを受うけていた。2001年ねん、エバーズは自身じしんに社内しゃない融資ゆうしを提供ていきょうするようワールドコムの取締役とりしまりやく会かいに諮はかり、証拠しょうこ金きん請求せいきゅうをカバーするため4億おくドル以上いじょうを保証ほしょうしたが、結果けっか的てきにこの戦略せんりゃくは失敗しっぱいに終おわった。エバーズは2002年ねん4月がつにCEOの座ざから追おわれた。

この間あいだ、1999年ねんから2002年ねん5月がつにかけて、ワールドコムは自社じしゃ株かぶの価格かかくを下した支ささえするため、自社じしゃの成長せいちょう性せいと収益しゅうえき性せいを良よく見みせかけ劣化れっかしていた財務ざいむ状況じょうきょうを隠蔽いんぺいする粉飾ふんしょく会計かいけいを行おこなっていた。

粉飾ふんしょく会計かいけいは、主おもに以下いかの2つの方法ほうほうで行おこなわれていた。

• 「ラインコスト」（他たの通信つうしん会社かいしゃとの相互そうご接続せつぞく費ひ）について、本来ほんらいは費用ひようとして申告しんこくすべきところを、資産しさんとして計上けいじょうした。即すなわち、費用ひようをラインコスト全額ぜんがくではなく当年度とうねんどの減価げんか償却しょうきゃく費ひのみにとどめ、費用ひよう計上けいじょうの先送さきおくりを図はかった。
• 「会社かいしゃ未み分配ぶんぱい売上うりあげ科目かもく」(corporate unallocated revenue accounts) という偽にせの勘定かんじょう科目かもくを計上けいじょうすることで、収益しゅうえきを粉飾ふんしょくした。

ワールドコムの内部ないぶ監査かんさ部門ぶもんは定例ていれいの支出ししゅつ検査けんさの過程かていにおいて、2002年ねん6月がつ、およそ38億おくドルの粉飾ふんしょくを発見はっけんし、アーサー・アンダーセンに代かわって新任しんにんの監査かんさ法人ほうじんとなっていたKPMGに注意ちゅういを促うながした。その後ご間あいだもなくして、ワールドコムの検査けんさ委員いいん会かいおよび経営けいえい陣じんに粉飾ふんしょく会計かいけいが報告ほうこくされ、責任せきにん者しゃの厳正げんせいな処罰しょばつが行おこなわれた。また、証券しょうけん取引とりひき委員いいん会かい (SEC) も2002年ねん6月がつ26日にちに調査ちょうさに乗のり出だした。そして2003年ねんには、会社かいしゃの総そう資産しさんがおよそ110億おくドル過大かだい計上けいじょうされていたことが明あきらかになった。

破綻はたん後ご

2002年ねんの経営けいえい破綻はたん後ご、同社どうしゃは社名しゃめいをMCIに変更へんこうし、2003年ねん4月がつ14日にちに本社ほんしゃをミシシッピ州しゅうからバージニア州しゅうのダレスに移転いてんした。同社どうしゃは、粉飾ふんしょく会計かいけいの被害ひがい者しゃである投資とうし家かへの補償ほしょう資金しきんとして、SECに現金げんきんおよび株式かぶしきで7億おく5000万まんドルを支払しはらった。2003年ねん5月がつには、アメリカ合衆国あめりかがっしゅうこく国防総省こくぼうそうしょうから、イラクにおける携帯けいたい電話でんわ網もうを構築こうちくするためのノービッド契約けいやくを獲得かくとくした。この取引とりひきについては、同社どうしゃのイラク地域ちいきでの経験けいけん不足ふそくをもとに競合きょうごう他社たしゃなどから批判ひはんを浴あびた。2005年ねんにはベライゾン・コミュニケーションズに買収ばいしゅうされ、以後いごはベライゾンの一いち部門ぶもんとなっている。

日本にっぽん法人ほうじん

日本にっぽんにおいては1997年ねん4月がつに日本にっぽん法人ほうじんのワールドコム・ジャパン株式会社かぶしきがいしゃ（後のちにアメリカ本社ほんしゃに倣ならい、MCIワールドコム・ジャパン株式会社かぶしきがいしゃに社名しゃめいを変更へんこう）を設立せつりつして営業えいぎょうを開始かいし。1998年ねんには外資がいし100%企業きぎょうとしては初はつの第だい一いち種しゅ電気でんき通信つうしん事業じぎょう者しゃの免許めんきょを受うけ、同年どうねん11月がつより東京とうきょう都内とないで独自どくじの光ひかりケーブル網もうによるサービスを開始かいしした。1999年ねん10月がつには森もりビルと提携ていけいを結むすび、同社どうしゃの保有ほゆうするビル間あいだに光ひかりファイバによる通信つうしん網もうを敷設ふせつしたほか、2001年ねんにスタートした「マイライン」にも当初とうしょから参加さんかしている。2006年ねん1月がつには、ベライゾンによるMCIの買収ばいしゅうに伴ともない社名しゃめいをベライゾンジャパン株式会社かぶしきがいしゃに変更へんこうした。

関連かんれん項目こうもく

• トレッドウェイ委員いいん会かい支援しえん組織そしき委員いいん会かい