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中華人民共和国ちゅうかじんみんきょうわこく物権ぶっけんほう

出典しゅってん: フリー百科ひゃっか事典じてん『ウィキペディア(Wikipedia)』

中華人民共和国ちゅうかじんみんきょうわこく物権ぶっけんほう(ちゅうかじんみんきょうわこくぶっけんほう)とは、中華人民共和国ちゅうかじんみんきょうわこくにおける不動産ふどうさん動産どうさん両者りょうしゃを「もの」と総称そうしょうする)の占有せんゆう使用しよう収益しゅうえき処分しょぶんにかかわるほう規則きそくさだめ、実質じっしつ民法みんぽう一部いちぶ構成こうせいする基本きほんてき法律ほうりつである[1]2007ねん3月16にちだい10全国ぜんこく人民じんみん代表だいひょう大会たいかいだい5かい会議かいぎにおいて採択さいたく公布こうふされ、2007ねんに10がつ1にちより施行しこうされた(本法ほんぽう附則ふそくだい247じょう)。なお中国ちゅうごく原文げんぶん表記ひょうきは、「ちゅう人民じんみん共和きょうわこくぶつ权法」である。

概要がいよう[編集へんしゅう]

本法ほんぽうは、5つのへんけい19しょうぜん247じょう[注釈ちゅうしゃく 1]からなる[2]だい1へんは、「総則そうそく(总则)」であり、だい1しょうからだい3しょうまでからなる[2]だい1しょうは、「基本きほん原則げんそく」(だい1じょうからだい8じょう)である。だい2しょう物権ぶっけん設定せってい変更へんこう譲渡じょうとおよ消滅しょうめつもの权的设立、变更、转让しょう灭)」は、だい1せつ不動産ふどうさん登記とうき动产とう记)」(だい9じょうからだい22じょう)、だい2せつ動産どうさん引渡ひきわたし(动产交付こうふ)」(だい23じょうからだい27じょう)、だい3せつ「その規定きてい(其他规定)」(だい28じょうからだい31じょう)にかれる[2]だい3しょうは「物権ぶっけん保護ほごもの权的护)」(だい28じょうからだい31じょう)である[2]だい2へんは、「所有しょゆうけん所有しょゆう权)」であり、だい4しょうからだい9しょうまでからなる[2]だい4しょう一般いっぱん規定きてい一般いっぱん规定)」、だい5しょう国家こっか所有しょゆうけんおよ集団しゅうだん所有しょゆうけん私人しじん所有しょゆうけん国家こっか所有しょゆう权和しゅうからだ所有しょゆう权、私人しじん所有しょゆう权)」(だい45じょうからだい69じょう)、だい6しょう建物たてもの所有しょゆうしゃ建物たてもの区分くぶん所有しょゆうけん(业主てきけん筑物区分くぶん所有しょゆう权)」(だい70じょうからだい83じょう)、だい7しょうあいとなり関係かんけいあい邻关けい)」(だい84じょうからだい92じょう)、だい8しょう共有きょうゆう共有きょうゆう)」(だい93じょうからだい105じょう)、だい9しょう所有しょゆうけん取得しゅとく特別とくべつ規程きてい所有しょゆう取得しゅとくてきとく别规じょう)」(だい106じょうからだい116じょう)である[2]だい3へんは、「用益ようえき物権ぶっけん用益ようえきぶつ权)」であり、だい10しょうからだい14しょうまでからなる[2]だい10しょう一般いっぱん規定きてい一般いっぱん规定)」(だい117じょうからだい123じょう)、だい11じょう土地とち請負うけおい経営けいえいけん土地とちうけたまわつつみ经营权)」(だい124じょうからだい134じょう)、だい12しょう建設けんせつ用地ようち使用しようけんけん用地ようち使用しよう权)」(だい135じょうからだい151じょう)、だい13しょう宅地たくち使用しようけんたく基地きち使用しよう权)」(だい152じょうからだい155じょう)、だい14しょう地役ちえきけん」(だい156じょうからだい169じょう)である[2]だい4へんは、「担保たんぽ物権ぶっけん担保たんぽぶつ权)」であり、だい15しょうからだい18しょうまでからなる[2]だい15しょうは、「一般いっぱん規定きてい一般いっぱん规定)」(だい170じょうからだい178じょう)である[2]だい16しょう抵当ていとうけん(抵押权)」は、だい1せつ一般いっぱん抵当ていとうけんいち般抵押权)」(だい179じょうからだい207じょう)、だい2せつ最高さいこうがく抵当ていとうけん最高さいこう额抵押权)」にかれる[2]だい17しょうしつけん(质权)」は、だい1せつ動産どうさんしつけん(动产质权)」(だい208じょうからだい222じょう)、だい2せつ権利けんりしつけん(权利质权)」(だい223じょうからだい229じょう)にかれる[2]だい18しょうは、「留置とめおきけん留置とめおき权)」(だい230じょうからだい240じょう)である[2]だい5へん占有せんゆう占有せんゆう)」であり、だい19しょう、「占有せんゆう占有せんゆう)」(だい241じょうからだい245じょう)からなる[2]

沿革えんかく[編集へんしゅう]

物権ぶっけんほう制定せいてい以前いぜんは、社会しゃかい主義しゅぎほうきゅうソ連それんほう)の影響えいきょう、すなわち所有しょゆう利用りよう主体しゅたいつね一致いっちしており、それゆえ用益ようえき物権ぶっけん観念かんねんする必要ひつようはないというかんがえから、そもそも物権ぶっけんという概念がいねん自体じたい否定ひていされてきた[3]中国ちゅうごくにおける法学ほうがく学界がっかいにおいても、物権ぶっけん概念がいねんみとめるか、物権ぶっけん債権さいけん峻別しゅんべつ必要ひつようかどうかについても見解けんかい帰一きいつされていなかった[4]。とはいえ、物権ぶっけんほう制定せいてい以前いぜん個別こべつ立法りっぽうたとえば農村のうそん土地とち請負うけおいほうとうで、物権ぶっけん概念がいねん事実じじつじょうみとめる規定きていがあった[5]。2005ねん7がつ物権ぶっけんほう草案そうあん公表こうひょうされたのち社会しゃかい一般いっぱんからの意見いけん聴取ちょうしゅおこなわれ、一般いっぱん市民しみんから手紙てがみ電子でんしメールなどで1まんけん以上いじょう意見いけんせられるなどのおおきな反響はんきょうんだ[5][6]。パブリック・コメントとわれる手法しゅほうであり、ほん物権ぶっけんほう制定せいていがとくに「民主みんしゅてき」にすすめられ、立法りっぽう透明とうめいせいたかめたと喧伝けんでんされるゆえんでもある[6]。しかし、この意見いけん聴取ちょうしゅおもわぬアクシデントをこす[6]北京ぺきん大学だいがくほう学院がくいん教授きょうじゅの鞏献が、物権ぶっけんほう草案そうあん社会しゃかい主義しゅぎ公有こうゆうせい崩壊ほうかいみちびくもので憲法けんぽう違反いはんするとの反対はんたい意見いけん全国ぜんこくじんだい常務じょうむ委員いいんかいあて公開こうかい書簡しょかんおくり、インターネットじょうにもこれを公表こうひょうした[5][6]。これがきっかけとなり、物権ぶっけんほう草案そうあん憲法けんぽう違反いはんかどうかのだい論争ろんそうこった[7]。鞏教授きょうじゅは、草案そうあん私有しゆう財産ざいさんせい保護ほご革新かくしんとしており、これは憲法けんぽう規定きていする社会しゃかい主義しゅぎ公共こうきょうざい不可侵ふかしんという社会しゃかい主義しゅぎもっと本質ほんしつてき特徴とくちょう侵犯しんぱんするものであり、社会しゃかい主義しゅぎ規定きていにほかならず、草案そうあん採択さいたくは、一層いっそう私有しゆう貧富ひんぷ格差かくさ拡大かくだいをもたらすと主張しゅちょうした[7]。この鞏教授きょうじゅ主張しゅちょうは、原理げんりてき社会しゃかい主義しゅぎ理念りねん忠実ちゅうじつ典型てんけいてき保守ほしゅ主張しゅちょうではあったが、進行しんこうする貧富ひんぷ格差かくさ拡大かくだい背景はいけい学界がっかい官界かんかいからも賛同さんどうしゃすくなからず[7]。こうして物権ぶっけんほう制定せいてい作業さぎょうはにわかに体制たいせい選択せんたく直結ちょっけつするイデオロギー論争ろんそうまれ、全国ぜんこくじんだいでの審議しんぎやく1年間ねんかん中断ちゅうだんした[5][8]。しかし、同年どうねん全国ぜんこく人民じんみん代表だいひょう大会たいかい物権ぶっけんほうは2006年度ねんど立法りっぽう計画けいかくのトップにまれ、2007ねんはる採択さいたくけて全国ぜんこく人民じんみん代表だいひょう大会たいかい常務じょうむ委員いいんかい審議しんぎ再開さいかいされた[5][8]。これ以降いこう草案そうあんでは保守ほしゅからの批判ひはんをかわすため、「憲法けんぽうももとづき本法ほんぽう制定せいていする」という文言もんごんだい1じょうれ、憲法けんぽう基本きほんてき経済けいざいシステムとして明記めいきする公有こうゆうせい経済けいざい主体しゅたいてき地位ちい堅持けんじすることをかさねて規定きていするなどの軌道きどう修正しゅうせいはかった。他方たほう国家こっか集団しゅうだん私人しじん物権ぶっけん平等びょうどう保障ほしょうすると(いわゆる「さんふん所有しょゆうけんシステム」)の文言もんごんのこすことで、左右さゆう両派りょうは配慮はいりょし、バランスを微妙びみょうりながら、2007ねん3がつ16にち全国ぜんこくじんだい採択さいたくされた[5][8]

本法ほんぽう制定せいてい意義いぎ[編集へんしゅう]

本法ほんぽう制定せいていにより、上述じょうじゅつしたとおり事実じじつじょうでしかみとめられていなかった物権ぶっけん概念がいねんが、正式せいしき肯定こうていされ、物権ぶっけんかんする一般いっぱんほうもうけられた意義いぎおおきい[5]。これまでルールが空白くうはくであったところが、本法ほんぽうによりめられた部分ぶぶんおお[9]学問がくもんてきには、中国ちゅうごく物権ぶっけん法体ほうたいけいソ連それんほう法理ほうりろんからドイツ・パンデクテン・システムへ接近せっきんしたと評価ひょうかすることができる[9]

だい1へん総則そうそく」について[編集へんしゅう]

物権ぶっけん法定ほうてい主義しゅぎ[編集へんしゅう]

本法ほんぽうだい5じょうは、「物権ぶっけん種類しゅるいおよび内容ないようは、法律ほうりつによってさだめる」と規定きていする[10][11]狭義きょうぎ法律ほうりつによらなければ物権ぶっけん創設そうせつできないという、厳格げんかく物権ぶっけん法定ほうてい主義しゅぎ採用さいようしている[12]。ここでいう法律ほうりつとは、基本きほんほうたる物権ぶっけんほうのほか、土地とちほう水利すいりほう海洋かいようほうとう特別とくべつほうふくまれる[11]

物権ぶっけん変動へんどう登記とうき制度せいど[編集へんしゅう]

不動産ふどうさん物権ぶっけん変動へんどう原則げんそくとして登記とうき発効はっこう要件ようけんとする(だい9じょうだい1こう[13]動産どうさん物権ぶっけん変動へんどうは引渡を発効はっこう要件ようけんとする(だい23じょう[14]

物権ぶっけん保護ほご[編集へんしゅう]

物権ぶっけん侵害しんがいがされた場合ばあい物権ぶっけん確認かくにん請求せいきゅうけんだい33じょう)、現物げんぶつ返還へんかん請求せいきゅうけんだい34じょう)、妨害ぼうがい排除はいじょ請求せいきゅうけんだい35じょう)、原状げんじょう回復かいふく請求せいきゅうけんだい36じょう)、損害そんがい賠償ばいしょう請求せいきゅうけんだい37じょうとうしょうじさせることが明記めいきされた[15]。このような物権ぶっけんてき請求せいきゅうけんみとめられたことにより、物権ぶっけん侵害しんがいたいする保護ほごもとめるさいに、契約けいやく責任せきにん不法ふほう行為こうい責任せきにん請求せいきゅうことなり侵害しんがいしゃ故意こい過失かしつ立証りっしょう必要ひつようとしないとほぐされる[15]。また時効じこうによる消滅しょうめつもないので、物権ぶっけん保護ほご強化きょうかおおきく貢献こうけんするとほぐされ、本法ほんぽう眼目がんもくとなる[15]

だい2へん所有しょゆうけん」について[編集へんしゅう]

さんふん所有しょゆうけんシステム[編集へんしゅう]

ソ連それんりゅう民法みんぽう理論りろんでは所有しょゆう主体しゅたいのカテゴリーべつさん種類しゅるい所有しょゆうけん観念かんねんするという多元的たげんてき所有しょゆうけん制度せいど特徴とくちょうとしていた。本法ほんぽう制定せいてい過程かていでも、議論ぎろんすえ、この特徴とくちょう維持いじされ、国家こっか所有しょゆうけん集団しゅうだん所有しょゆうけん私人しじん所有しょゆうけんというさん種類しゅるい所有しょゆうけん規定きていされた(だい5しょう[15]ぜんしゃがいわゆる社会しゃかい主義しゅぎてき公有こうゆうせい法的ほうてき裏付うらづけるものであり、これが国民こくみん経済けいざい主体しゅたい位置付いちづけられる(だい3じょうだい1こう[15]。ただし、法文ほうぶんでは、このさん種類しゅるい所有しょゆうけん平等びょうどう保護ほごうたわれ(だい3じょうだい3こうだい4じょう)、とく国家こっか所有しょゆうけん優越ゆうえつてき保護ほごあたえられているわけでない[15]みっつの所有しょゆうけんちがいは、所有しょゆう対象たいしょうとなる財産ざいさん種類しゅるいにあり、都市とし土地とち天然てんねん資源しげん森林しんりん草原そうげん野生やせい動植物どうしょくぶつ国防こくぼう社会しゃかい資本しほんなどの所有しょゆうけん原則げんそく国家こっかにのみ帰属きぞくしうる(だい46じょうからだい52じょう[15]農村のうそん土地とち農民のうみん集団しゅうだん所有しょゆうぞくすとした(だい58じょうからだい60じょう[15]本法ほんぽうのもとでも法律ほうりつじょうは、およそ土地とちについて私的してき所有しょゆう成立せいりつ余地よちはない[15]。すなわち、ソ連それんりゅうさんふん所有しょゆうけんシステムを墨守ぼくしゅするものであり、このてんではソ連それんほう影響えいきょうがなおつづいているといえる[16]本法ほんぽうが「さんふん所有しょゆうけんシステム」を維持いじした理由りゆう以下いかである。だいいちに、社会しゃかい主義しゅぎ経済けいざいシステムのメルクマールを公有こうゆう主体しゅたいであることにもとめていることから、なに公有こうゆうぞくするかを明確めいかくにしておく必要ひつようがあるとかんがえられている[16]だいに、農村のうそん土地とち基本きほんてき農民のうみん集団しゅうだん集団しゅうだん所有しょゆう、それ以外いがい土地とち国有こくゆうとするという所有しょゆう客体かくたいたいする制限せいげん依然いぜんとして維持いじされており、そのかぎりでは権利けんり種類しゅるいちがうという論理ろんり[16]。いかなる意味いみにおいても私人しじん土地とち所有しょゆうけん取得しゅとくする可能かのうせいはなく、せいぜい用益ようえき物権ぶっけんまるのである[16]

農村のうそん土地とちほう特殊とくしゅ構造こうぞう[編集へんしゅう]

農村のうそん土地とちについて本法ほんぽうさだめる秩序ちつじょきゅうソ連それんにもなかった独特どくとくなものである[16]。まず、農村のうそん土地とち所有しょゆうけん農村のうそん集団しゅうだん構成こうせいいんによる集団しゅうだん所有しょゆうぞくするものとし(だい58じょう)、集団しゅうだん構成こうせいいんたる農民のうみんは、集団しゅうだんとのあいだ土地とち請負うけおい契約けいやく締結ていけつして期限きげんきの土地とち用益ようえき物権ぶっけん取得しゅとくする(だい125じょう[16]耕地こうち場合ばあい期限きげんは30ねんとされ期限きげん満了まんりょう契約けいやく更新こうしん可能かのうとしている[17]土地とち請負うけおい経営けいえいけん一定いってい範囲はんい譲渡じょうとゆるされるが、許可きょかなく農地のうち転用てんようすることや、荒蕪こうぶなどをのぞ抵当ていとうけん設定せっていすることはみとめられていない(だい128じょうだい133じょう[17]農民のうみん居住きょじゅうよう住宅じゅうたく用地ようちについては、宅地たくち使用しようけんという用益ようえき物権ぶっけん用意よういし(だい152じょう)、それは土地とち管理かんりほうとうにもとづき行政ぎょうせいてき手続てつづきにより配分はいぶんされ、市場いちば自由じゆう流通りゅうつうすることは想定そうていされていない[17]農民のうみん集団しゅうだん土地とち所有しょゆうけんをもつとっても、国家こっかによる収用しゅうようのぞいては、それを処分しょぶんすることを想定そうていしていない(だい132じょう)。くわえて、建物たてものてるための用益ようえき物権ぶっけんである建設けんせつ用地ようち使用しようけんは、国有こくゆう土地とちかぎってのみ設定せっていでき(だい153じょう)、集団しゅうだん所有しょゆうのままでは、建物たてもの建設けんせつのための土地とち利用りようけん設定せっていして、それをすことはできない[17]毛沢東もうたくとう中国ちゅうごく革命かくめいは、「たがやもの土地とちを」をスローガンとし、建国けんこく前後ぜんごには全国ぜんこく土地とち改革かいかくおこない、地主じぬしから土地とちげ、小作農こさくのう無償むしょう分配ぶんぱいした。その結果けっか、1950年代ねんだいはじめには中国ちゅうごく農民のうみん土地とち所有しょゆうする自作農じさくのうとなった[17]。しかし、ほどなく土地とち所有しょゆう集団しゅうだん運動うんどう展開てんかいされ、1958ねんには人民公社じんみんこうしゃにまで規模きぼ拡大かくだいされた[17]。この過程かてい農民のうみんたちは「自主じしゅてきに」農地のうち現物げんぶつ出資しゅっしし、合作がっさくしゃ高級こうきゅう合作がっさくしゃ人民公社じんみんこうしゃによる土地とち集団しゅうだん所有しょゆうという枠組わくぐみができた[18]本法ほんぽう規定きていする土地とち集団しゅうだん所有しょゆうけんおよび請負うけおい経営けいえいけん宅地たくち使用しようけんは、かつての現物げんぶつ出資しゅっししゃのなれのてとかいされる[18]農地のうち農地のうちへの転用てんよう、そして直接的ちょくせつてき譲渡じょうと可能かのうせいうばわれた土地とち所有しょゆうけんには経済けいざいてきなうまとぼしく、放出ほうしゅつによる利益りえきがほとんどこくころがり仕組しくみになっている[18]

私人しじん所有しょゆうけん[編集へんしゅう]

本法ほんぽうさだめるだいさん所有しょゆうけんは「私人しじん所有しょゆうけん」である[18]。この「私人しじん所有しょゆうけん」の「私人しじん」とはだれすのかにつき、ほう定義ていぎおこなっていない[18]複数ふくすう存在そんざいした草案そうあんにおいては、「公民こうみん所有しょゆうけん」、「個人こじん財産ざいさん」「個人こじん財産ざいさん所有しょゆうけんとう文言もんごん登場とうじょうし、これらの草案そうあんにおいては、まさに市民しみん個人こじん財産ざいさんたいする所有しょゆうけんみとめることは明白めいはくである[18]本法ほんぽう採用さいようした「私人しじん」という用語ようごが、国家こっかおよび集団しゅうだんとの対比たいひ使つかわれていることも明白めいはくである[18]。だとすれば国家こっか集団しゅうだん以外いがい主体しゅたいが「私人しじん」ということになるのか、が問題もんだいとなる[18]市場いちば経済けいざいひろがる以前いぜん中国ちゅうごく企業きぎょうはほとんどが国有こくゆう集団しゅうだん所有しょゆうであった[19]。この時代じだいにはこれらの企業きぎょう財産ざいさんは、国有こくゆう集団しゅうだん所有しょゆうかんがえられ、これらがまさに公有こうゆうせい構成こうせいしていた[19]今日きょうくに出資しゅっしして設立せつりつした国有こくゆう企業きぎょうないしくに支配しはいかぶをもつ株式会社かぶしきがいしゃも、国庫こっことは区分くぶんされた独立どくりつした法人ほうじんとみなされている[19]。しかし、個々ここ企業きぎょう構成こうせいする不動産ふどうさん動産どうさん知的ちてき財産ざいさんなどのしょ財産ざいさんは、法人ほうじん自身じしん帰属きぞくするはずである[19]だい68じょうが「企業きぎょう法人ほうじんはその不動産ふどうさんおよ動産どうさんたいして、法律ほうりつ行政ぎょうせい法規ほうきおよ定款ていかんしたが占有せんゆう使用しよう収益しゅうえきおよ処分しょぶんをする権利けんりゆうする」と規定きていするとおりである[19]問題もんだいは、この「権利けんり」と「私人しじん所有しょゆうけん」との関係かんけいであり、それが所有しょゆうけんなのかどうかである[19]。このてん逐条ちくじょう解説かいせつしょ教科書きょうかしょるいをみてもはっきりとしたこたえがいだせず、えて明言めいげんけているかのようである[19]問題もんだいは、公有こうゆうせい国有こくゆう集団しゅうだん所有しょゆうからなると説明せつめいすることと、経済けいざい実態じったいがすでに国庫こっことは区分くぶんされた法人ほうじんとしての会社かいしゃ主体しゅたいとするものになっていることとの矛盾むじゅん起因きいんするからと説明せつめいされる[20]くに出資しゅっししゃであっても、それと独立どくりつした法人ほうじんかくをもつ会社かいしゃ組織そしきした以上いじょう市場いちばという「」において、それはもはや「おおやけ」ではありえず、「わたし」にならない[20]。しかし、中国ちゅうごく政治せいじ体制たいせいはこの市場いちば道理どうり正面しょうめんから承認しょうにんすることができないのであり、社会しゃかい主義しゅぎ市場いちば経済けいざいのカップリングを論理ろんりてき整合せいごうさせることの困難こんなん象徴しょうちょうである[20]

脚注きゃくちゅう[編集へんしゅう]

注釈ちゅうしゃく
  1. ^ 附則ふそくの2じょうふく
出典しゅってん
  1. ^ 鈴木すずき(2007ねん)1ページ
  2. ^ a b c d e f g h i j k l m n 鈴木すずき(2007ねん目次もくじ
  3. ^ 宇田川うだがわ(2012ねん)150ページ
  4. ^ 鈴木すずき(2007ねん)3ページ
  5. ^ a b c d e f g 宇田川うだがわ(2012ねん)151ページ
  6. ^ a b c d 鈴木すずき(2010ねん)191ページ
  7. ^ a b c 鈴木すずき(2010ねん)192ページ
  8. ^ a b c 鈴木すずき(2010ねん)193ページ
  9. ^ a b 鈴木すずき(2007ねん)13ページ
  10. ^ 鈴木すずき(2007ねん)18ページ
  11. ^ a b 小口おぐち(2012ねん)182ページ
  12. ^ 鈴木すずき(2007ねん)7ページ
  13. ^ 鈴木すずき(2007ねん)19ページ
  14. ^ 鈴木すずき(2007ねん)22ページ
  15. ^ a b c d e f g h i 鈴木すずき(2007ねん)8ページ
  16. ^ a b c d e f 鈴木すずき(2010ねん)195ページ
  17. ^ a b c d e f 鈴木すずき(2010ねん)196ページ
  18. ^ a b c d e f g h 鈴木すずき(2010ねん)197ページ
  19. ^ a b c d e f g 鈴木すずき(2010ねん)198ページ
  20. ^ a b c 鈴木すずき(2010ねん)199ページ

参考さんこう文献ぶんけん[編集へんしゅう]

  • 鈴木すずきけんちぇひかりにちやく中国ちゅうごく物権ぶっけんほう 条文じょうぶん解説かいせつ』(2007ねん成文せいぶんどう(「中国ちゅうごく物権ぶっけんほう制定せいてい背景はいけい意義いぎについて」執筆しっぴつ担当たんとう鈴木すずきけん
  • 本間ほんま正道せいどうちょ現代げんだい中国ちゅうごくほう入門にゅうもんだい6はん)』(2012ねん有斐閣ゆうひかく執筆しっぴつ担当たんとう宇田川うだがわ幸則ゆきのり
  • 高見澤たかみざわ麿まろ鈴木すずきけんちょ叢書そうしょ中国ちゅうごくてき問題もんだいぐん3中国ちゅうごくにとってほうとはなにか 統治とうち道具どうぐから市民しみん道具どうぐへ』(2010ねん岩波書店いわなみしょてんだい8しょう現代げんだい中国ちゅうごくにおける市場いちば経済けいざいささえるほう執筆しっぴつ担当たんとう鈴木すずきけん
  • 小口おぐち彦太田中たなか信行のぶゆき現代げんだい中国ちゅうごくほうだい2はん)』(2012ねん成文せいぶんどうだい6しょう物権ぶっけんほう執筆しっぴつ担当たんとう小口こぐち彦太)

外部がいぶリンク[編集へんしゅう]