九きゅう三さん式しき水中すいちゅう聴音ちょうおん機き

九きゅう三さん式しき水中すいちゅう聴音ちょうおん機き（93しきすいちゅうちょうおんき、旧きゅう字体じたい：九きゅう三さん式しき水中すいちゅう聽音ちょうおん機き）は、大日本帝国だいにっぽんていこく海軍かいぐん（日本にっぽん海軍かいぐん）が開発かいはつした艦艇かんてい搭載とうさい用ようの水中すいちゅう聴音ちょうおん機き（パッシブ・ソナー）。

開発かいはつの経緯けいい

日本にっぽん海軍かいぐんは第だい一いち次じ世界せかい大戦たいせん中なかにイギリス政府せいふの要請ようせいに基もとづいて船団せんだん護衛ごえいを目的もくてきとする第だい二に特務とくむ艦隊かんたいを地中海ちちゅうかいに派遣はけんし､その際さいにイギリス海軍かいぐんの駆逐くちく艦かんが使用しようしていた曳航えいこう式しきの水中すいちゅう聴音ちょうおん機きを初はじめて見聞けんぶんした。現地げんち部隊ぶたいがこうして得えた情報じょうほうは帰国きこく後ごに海軍かいぐん省しょうに報告ほうこくされ､これを重視じゅうしした海軍かいぐん省しょうは大戦たいせん終了しゅうりょう後ごに英国えいこく駐在ちゅうざいの大使館たいしかん付づけ武官ぶかんや監督かんとく官かんに装置そうちの調査ちょうさを実施じっしさせると同時どうじに､米国べいこくにも水中すいちゅう聴音ちょうおん機きの現状げんじょう調査ちょうさと資料しりょう入手にゅうしゅを目的もくてきに富川とみかわ機関きかん少佐しょうさと毛利もうり大尉たいいを派遣はけんしてアメリカ海軍かいぐんの潜水せんすい艦かん基地きちがあるニューロンドンで富川とみかわ少佐しょうさが技術ぎじゅつ面めんを､毛利もうり大尉たいいが用法ようほう面めんの調査ちょうさを実施じっしした。これらの調査ちょうさ結果けっかに基もとづいて1920年ねん(大正たいしょう9年ねん)頃ごろから米国べいこくの「K・チューブ」､1921年ねん（大正たいしょう10年ねん）頃ごろからイギリスの「C・チューブ」などの海外かいがい製せいの水中すいちゅう聴音ちょうおん機きを輸入ゆにゅうし､前者ぜんしゃを潜水せんすい艦かんに､後者こうしゃを防備ぼうび隊たいに供給きょうきゅうして使用しようした。

その後ご1928年ねん（昭和しょうわ3年ねん）頃ごろより国内こくないでも主しゅとして潜水艦せんすいかん用ようの物ものを対象たいしょうに基礎きそ的てき研究けんきゅうを実施じっしするようになり､捕と音おと器きに関かんしては炭素たんそ粒つぶ型がた、可動かどう鉄片てっぺん型がた､可動かどう線せん輪わ型がた､コンデンサ型がたなどの研究けんきゅう試作しさくを行おこなったが､技術ぎじゅつ的てき困難こんなんから満足まんぞくのいく物ものを得えられず､また指向しこう性せいを得えるための電気でんき的てき位相いそう調整ちょうせい器き(整せい相しょう器き）の回路かいろおよび構造こうぞうが当時とうじとしては複雑ふくざつだったため実用じつよう化かは難航なんこうした。

このため海外かいがいからの技術ぎじゅつ導入どうにゅうが行おこなわれる事ことになり､1929年ねん(昭和しょうわ4年ねん)に久山ひさやま造兵ぞうへい大尉たいいがアメリカのサブマリンシグナル社しゃへ監督かんとく官かんとして派遣はけんされ､1930年ねん（昭和しょうわ5年ねん）に同社どうしゃのMV式しき水中すいちゅう聴音ちょうおん機き10台だいを潜水せんすい艦かん用ようとして輸入ゆにゅうした。また､同おなじ頃ごろにドイツ駐在ちゅうざい武官ぶかんの野村のむら直ただし邦くに大佐たいさからキール軍港ぐんこうにあるエレクトロアクスティック社しゃで開発かいはつされた新あたらしい水中すいちゅう聴音ちょうおん機きの存在そんざいが海軍かいぐん省しょうに報告ほうこくされると､急遽きゅうきょ米国べいこく駐在ちゅうざいの久山ひさやま監督かんとく官かんがドイツに派遣はけんされて調査ちょうさが実施じっしされ､この結果けっか、1932年ねん（昭和しょうわ7年ねん）に同社どうしゃの保ほ式しき水中すいちゅう聴音ちょうおん機き潜水せんすい艦かん用ようが導入どうにゅうされて実用じつよう性せい検討けんとうのための実験じっけん等とうに使用しようされた。その後ご､この保ほ式しき水中すいちゅう聴音ちょうおん機きをモデルとした国産こくさんの水中すいちゅう聴音ちょうおん機きの開発かいはつが進すすめられ､1933年ねん（昭和しょうわ8年ねん）にこれを九きゅう三さん式しき水中すいちゅう聴音ちょうおん機きとして制式せいしき化かし､潜水せんすい艦かんや駆潜艇くせんていなど各種かくしゅ艦艇かんていへ装備そうびした。尚なおこの間あいだに来日らいにちしたドイツ人じん技術ぎじゅつ者しゃよりドイツ式しき水中すいちゅう聴音ちょうおん機きの装備そうび法ほうや試験しけん方法ほうほうも指導しどうされ､大おおいに得える処しょがあったと言いわれる。

装置そうち概要がいよう

本ほん機きの構成こうせいは主おもに､捉とらえた音波おんぱを電気でんき振動しんどうに変成へんせいする「捕と音おと器き」、音源おんげんの方位ほういを測定そくていする「電気でんき整せい相しょう機き」､聴音ちょうおん周波数しゅうはすうが選択せんたく可能かのうな「低てい周波しゅうは増幅器ぞうふくき」、整せい相しょうされた電気でんき振動しんどうを聴きく「受聴器き」からなっており、聴音ちょうおん方式ほうしきには最大さいだい感度かんど方式ほうしきを採用さいようしていた。

この方式ほうしきは音源おんげん方向ほうこうの判定はんていに､一定いっていの形式けいしき(主おもに円形えんけい)に配列はいれつされた多数たすうの捕と音おと器きに音波おんぱが到達とうたつする際さいの時間じかん差さを利用りようするもので､その原理げんりはある捕と音おと器き群ぐんに音波おんぱが到来とうらいした時ときに､音源おんげん方向ほうこうから最もっとも遠とおい位置いちにある捕と音おと器きに音波おんぱが到達とうたつする時刻じこくを基準きじゅんとして､他たの捕と音おと器きに音波おんぱが早はやく到達とうたつする分ぶんだけ各かく捕と音おと器きの電気でんき信号しんごうの伝達でんたつを電気でんき的てき遅延ちえん回路かいろによって遅延ちえんさせ､全すべての信号しんごうが同時どうじに受聴器きに流ながれて単一たんいつの最大さいだい音おんとなった時ときの各かく捕と音おと器き信号しんごうの遅延ちえん時間じかんの調節ちょうせつ量りょうから目標もくひょうの方向ほうこうを判定はんていするというものだった。

本ほん機きは最初さいしょに当時とうじの第だい2潜水せんすい戦隊せんたいに配備はいびされた後のち、海軍かいぐんの主要しゅような潜水せんすい艦かんに装備そうびされ､さらに1937年ねん（昭和しょうわ12年ねん）頃ごろからは対たい潜せん用ようとして駆逐くちく艦かんや駆潜艇くせんていにも装備そうびされるようになった。しかし､これらの艦艇かんていは航こう走はし中なかの自己じこ発生はっせい雑音ざつおんの抑制よくせいが不十分ふじゅうぶんであった為ため､しばしば微速びそくまたは主あるじ機き停止ていしの上うえで聴音ちょうおんする事ことが必要ひつようとなり､用兵ようへい上じょうの要求ようきゅうを十分じゅうぶん満足まんぞくすることができず､また補ほ機きの振動しんどうによって発生はっせいした雑音ざつおんのせいで聴音ちょうおん機きがほとんど使用しようできなくなるという事こともあった。

仕様しようや構造こうぞうが若干じゃっかん異ことなる幾いくつかの派生はせい型がたがあり、「九きゅう三さん式しき水中すいちゅう聴音ちょうおん機き 甲乙こうおつ 潜水せんすい艦かん用よう」「同どう一いち型がた 甲乙こうおつ 潜水せんすい艦かん用よう」、「同どう一いち型がた改あらため一いち 甲乙こうおつ 潜水せんすい艦かん用よう」､「同どう二に型がた 甲乙こうおつ 潜水せんすい艦かん用よう」､「 同小どうしょう艦艇かんてい用よう」などが存在そんざいした。

捕と音おと器き

捕と音おと器き(マイクロフォン)は水中すいちゅうの到来とうらい音波おんぱを捉とらえて電気でんき信号しんごうに変成へんせいする装置そうちであり､本ほん機きでは可動かどう線せん輪わ型がた捕と音おと器きを片かた舷ふなばたに8個こ、合計ごうけいで16個こが常時じょうじ水みずに接せっする艦かん首くび付近ふきん艦かん底そこ外がい板いたに直径ちょっけい3mの円えんに近ちかい楕円だえん形がたに装備そうびされていた。この捕と音おと器きは1932年ねん(昭和しょうわ7年ねん)から1933年ねん(昭和しょうわ8年ねん)頃ごろにドイツより輸入ゆにゅうした製品せいひんを模倣もほうした物もので､その永久えいきゅう磁石じしゃくには当時とうじ国内こくないで最もっとも優秀ゆうしゅうといわれたKS鋼こうが使用しようされていた。磁石じしゃく鋼こうについてはその後ごも感度かんど上昇じょうしょうの為ために改良かいりょうが行おこなわれ､東北とうほく帝みかど大だい金属きんぞく材料ざいりょう研究所けんきゅうじょと住友金属すみともきんぞく株式会社かぶしきがいしゃの協同きょうどうを得えて1940年ねん(昭和しょうわ15年ねん)に新しんKS鋼こうによる磁石じしゃくの試作しさくに成功せいこうした。また振動しんどう板ばんの材料ざいりょうは当初とうしょ､ドイツ製せいに倣ならって高級こうきゅうニッケル青銅せいどうを使用しようしていたが日にち中ちゅう戦争せんそうの進展しんてんにともなって不足ふそくした為ため、1941年ねん（昭和しょうわ16年ねん）1月がつ以降いこうは転換てんかん材料ざいりょうとしてアルミニウム青銅せいどうの研究けんきゅうを開始かいしした。しかし完成かんせいの頃ころになると主成分しゅせいぶんであるアルミニウムも節約せつやくせざるを得えない情勢じょうせいとなったため、マンガン青銅せいどうの試作しさくに着手ちゃくしゅし1941年ねん（昭和しょうわ16年ねん）11月に完成かんせいして実用じつよう化かされた。

整せい相しょう機き

整せい相しょう機きは電気でんき的てき遅延ちえん回路かいろにより各かく捕と音おと器きに与あたえる遅延ちえん量りょうを音波おんぱ到来とうらい方向ほうこうに応おうじて適当てきとうに管制かんせいし､それによって音源おんげんの方向ほうこうを決定けっていする装置そうちで､本ほん機きでは直流ちょくりゅうモーターのコミュテーターのように導体どうたいと絶縁ぜつえん体たいとを交互こうごに積つみ重かさねたものが使用しようされていた。この各かく導体どうたい間あいだに捕と音おと器きの信号しんごうに遅延ちえん量りょうを与あたえる為ための遅延ちえん回路かいろを挿入そうにゅうし、捕と音おと器きの配置はいち状じょう況きょうをそのまま縮小しゅくしょうしたブラシ盤ばんを回転かいてんさせ､各かく捕と音おと器きの入力にゅうりょくが全すべてアディティブに働はたらいた時ときに最大さいだい出力しゅつりょくが得えられた。

装置そうち前面ぜんめんには遅延ちえん量りょうの調整ちょうせいに使用しようする調整ちょうせい用よう把手とってと音源おんげんの方向ほうこうを読よみ取とるための方向ほうこう角度かくど目盛めもり盤ばんがあり､調整ちょうせい用よう把手とってを回まわせばブラシ盤ばんの回転かいてんと連動れんどうして目盛めもり盤ばんの指針ししんも回転かいてんするため、受聴音おんが最大さいだいとなった時ときに指針ししんが示しめす方位ほういを読取よみとる事ことで音源おんげんの方向ほうこうを判定はんていする事ことができた。また聴測した音源おんげん方向ほうこう角度かくどは整せい相しょう機き内部ないぶに設もうけられた角度かくど通報つうほう用よう発信はっしん装置そうちによって､艦橋かんきょうおよび探さがせ信しん室しつに装備そうびされた角度かくど受信じゅしん機きに電気でんき的てきに通報つうほうする事ことができた。整せい相しょう器きは甲かぶと型がたに2組くみ､乙おつ型がたには1組くみが備そなえられ､角度かくど受信じゅしん機きの目盛めもり盤ばんも甲かぶと型がたは２ふたつ､乙おつ型がたは１ひとつとなっていた。

増幅器ぞうふくき

増幅器ぞうふくきは捕と音おと器きから変成へんせいされた非常ひじょうに微弱びじゃくで、そのまま受聴器きに流ながしては聴測には適てきさない電流でんりゅうを聴測に適てきするように増幅ぞうふくする装置そうちであり、本ほん器きでは3本ほんの真空しんくう管かんを使用しようする抵抗ていこう結合けつごう型がた低てい周波しゅうは増幅器ぞうふくきが使用しようされた。この増幅器ぞうふくきの筐体きょうたいは軽けい合金ごうきん製せいで前面ぜんめんには音量おんりょう調節ちょうせつ用ようのハンドルがあり､真空しんくう管かんが収おさめられている部分ぶぶんの蓋ぶたは交換こうかんがしやすいように簡単かんたんに着脱ちゃくだつできるようになっていた。

濾波器き

濾波器きは変成へんせいされた電気でんきの中なかから任意にんいの周波数しゅうはすう帯たいの電流でんりゅうを濾波する装置そうちで、聴測の邪魔じゃまになる背景はいけい雑音ざつおんを低減ていげんして音源おんげん音色ねいろの判別はんべつを良好りょうこうにしたり､聴測の精度せいどを向上こうじょうさせる為ために使用しようされ、軽けい合金ごうきん製せいの筐体きょうたい前面ぜんめんに装備そうびされた転換てんかん用ようハンドルを操作そうさする事ことで遮断しゃだん周波数しゅうはすうを切換きりかえる事ことができた。

受聴器き

本ほん機きで使用しようされていた受聴器きは海軍かいぐん制式せいしきのテー式しき一いち號ごう受聴器きで､これは無線むせん兵器へいきに附属ふぞくされる物ものと同一どういつの物ものであり電気でんき定数ていすうは直流ちょくりゅう抵抗ていこう2000オーム×2、インピーダンス10000オーム×2、共振きょうしん周波数しゅうはすうは約やく1000サイクルとなっていた。

九三式水中聴音機主要目

装備そうび艦かん種しゅ				大艦だいかん 哨戒しょうかい艦艇かんてい
捕と音おと器き配列はいれつ	捕と音おと器き数すう			16
	配列はいれつ法ほう			楕円だえん
	配列はいれつ直径ちょっけい(m)			3(長ちょう軸じく)
	指向しこう性せい(度ど)			約やく5
	副ふく最大さいだい値ち(%)			約やく50
	装備そうび場所ばしょ			舷側げんそく外がい
捕と音おと器き	型かた			可動かどう線せん輪わ
	振動しんどう板ばん直径ちょっけい(mm)			145
	重量じゅうりょう(kg)			18
	感度かんど(db)			35
	周波数しゅうはすう範囲はんい(C/B)			500~2500
	耐爆たいばく距離きょり(m)			35
聴音ちょうおん装置そうち	整せい相しょう機き	遅延ちえん回路かいろ網もう	制御せいぎょ方式ほうしき	格子こうし状じょう
			型かた	T
			素子そし数すう	50
			全ぜん遅延ちえん量りょう(μみゅー sec)	2000
			L(mH)	80
			C(μみゅー)	0.02
			M(ｍH)	6.64
			Zo(Ωおめが)	2000
		捕と音おと器き刷すり子こ縮小しゅくしょう率りつ		1/15
		均整きんせい抵抗ていこう(hΩおめが)		2～15.5
		角度かくど通報つうほう器き		あり
	増幅器ぞうふくき	型式けいしき		抵抗ていこう結合けつごう3段だん
		真空しんくう管かん		600×3
		増巾ぞうふく度ど(db)		85~90
	沪波器き		遮断しゃだん周波数しゅうはすう(C/S)	(HP)全通ぜんつう 550 700 　　　1200 1700 (LP)全通ぜんつう 700　900 　　　1200　3000
	受聴器き数すう			可動かどう鉄片てっぺん×4
	電源でんげん		種別しゅべつ	DC100V　220V(潜せん)
			整流せいりゅう器き
			沪波器き	あり
他た装置そうち	接続せつぞく筐かたみ			2
	切断せつだん器き			1

探知たんち性能せいのう

同機どうきの性能せいのうは、潜水せんすい艦かんに装備そうびした場合ばあい､敵艦てきかんの音おとを単たん艦かんで10000m、複数ふくすうなら30000m先さきからキャッチできたといわれ､測はか角かく精度せいどは約やく5度どだったがこれは用兵ようへい的てきには不十分ふじゅうぶんで2度ど程度ていどまで向上こうじょうするよう要求ようきゅうがあった。潜水せんすい艦かんに対たいする探知たんち能力のうりょくは気象きしょう条件じょうけんが良よければ深度しんど18mを2ノットで走はしる潜水せんすい艦かんの音おとを30000m先さきから探知たんちできたとされるが、ソナーの能力のうりょくは水中すいちゅうや気象きしょう、自艦じかんの状況じょうきょうによって大おおきな差さが発生はっせいした。また雑音ざつおん抑制よくせいが不十分ふじゅうぶんだった事こともあり､停止ていしして聴音ちょうおんする場合ばあい等とうを除のぞいて確実かくじつに探知たんち可能かのうな距離きょりは1000m程ほどだった。ただし潜水せんすい艦かんの場合ばあいは一般いっぱん的てきに襲撃しゅうげき運動うんどう時じの速力そくりょくは低ひくかった為ため、水上みずかみ艦艇かんていに比くらべて聴音ちょうおん機きの能力のうりょくをより発揮はっきする事ことができた。

九きゅう三さん式しき水中すいちゅう聴音ちょうおん機き(小しょう艦艇かんてい用よう)能力のうりょく標準ひょうじゅん

自艦じかん速力そくりょく	停止ていし		6kt		8kt
潜航せんこう潜水せんすい艦かん速力そくりょく	3kt	5kt	3kt	5kt	3kt	5kt
確実かくじつ可聴かちょう距離きょり	1,000m	2,000m	500m	1,000m	－	500m
最大さいだい可聴かちょう距離きょり	2,000m	4,000m	1,000m	2,000m	500m	1,500m

潜水せんすい艦かんによる聴知能力のうりょくの一いち例れい

	九きゅう三さん式しき水中すいちゅう聴音ちょうおん機き 甲きのえ、乙おつ 潜水せんすい艦かん用よう		九きゅう三さん式しき水中すいちゅう聴音ちょうおん機き 一いち型がた 甲かぶと､乙おつ 潜水せんすい艦かん用よう		九きゅう三さん式しき水中すいちゅう聴音ちょうおん機き 一いち型がた 甲かぶと､乙おつ 改あらため一いち 潜水せんすい艦かん用よう
精せい　　　　度ど	5度ど以下いか	目標もくひょう艦かん：山城やましろ型がた(18kt) 聴音ちょうおん艦かん：潜水せんすい艦かん(水中すいちゅう3kt以下いか)	5度ど	目標もくひょう艦かん：伊い3潜せん(水上すいじょう12kt) 聴音ちょうおん艦かん：伊い2潜せん(3kt)	5度ど	目標もくひょう艦かん：呂りょ65潜せん(水上すいじょう12kt) 聴音ちょうおん艦かん：伊い74潜せん(水中すいちゅう3.5kt)
最大さいだい聴知距離きょり	37000m		10000m		12000m
確実かくじつ聴知距離きょり	25000m				11500m

探知たんち能力のうりょくの向上こうじょう

同機どうきは、制式せいしき化かから太平洋戦争たいへいようせんそうの終結しゅうけつまで装置そうち自体じたいに大おおきな改良かいりょうは行おこなわれなかったが､一方いっぽうで装備そうび艦かんの各種かくしゅ機関きかんなどから発生はっせいする雑音ざつおんを抑おさえることで可聴かちょう距離きょりを向上こうじょうさせる試こころみが実施じっしされた。

代表だいひょう的てきな例れいが海防かいぼう艦かんや駆潜艇くせんていの主おも機きおよび補ほ機きへの”防ぼう振ふゴム”（防ぼう振ふ間あいだ座ざとも）の装着そうちゃくであり、1942年ねん(昭和しょうわ17年ねん)1月がつに海軍かいぐん技術ぎじゅつ研究所けんきゅうじょ音響おんきょう研究けんきゅう部ぶを中心ちゅうしんとして学識がくしき経験けいけん者しゃも含ふくめた防ぼう振ふゴム研究けんきゅう委員いいん会かいが発足ほっそくし､たまたま入手にゅうしゅしたドイツのフェニックス社しゃ製せいの防ぼう振ふ材ざい金属きんぞくゴムの説明せつめい書しょを参考さんこうとして研究けんきゅうに着手ちゃくしゅした。1943年ねん（昭和しょうわ18年ねん）末まつから海防かいぼう艦かんを中心ちゅうしんとする対たい潜せん艦艇かんていの所要しょよう補ほ機きに防ぼう振ふ対策たいさくが施ほどこされ､1943年ねん10月がつに海防かいぼう艦かん「御蔵おぐら」の80kwディーゼル発電はつでん機きに防ぼう振ふゴムを装着そうちゃくしたところ可聴かちょう距離きょりが500mから3000mと向上こうじょうし良好りょうこうな成績せいせきを示しめした。1945年ねん（昭和しょうわ20年ねん）からは主おも機きに装備そうびしての試験しけんも実施じっしされ鵜う来らい型がた海防かいぼう艦かん｢保ほ高だか｣の主おも機きに平ひらめ角かく型がた90mm×180mm×60mm(ゴム部厚ぶあつ40mm)の合成ごうせいゴム製せい防ぼう振ふゴムを加重かじゅうによる圧縮あっしゅくが0.1mm程度ていどになるように装備そうびして潜水せんすい艦かん聴音ちょうおん実験じっけんをおこなった結果けっか､防ぼう振ふゴムを使用しようしない場合ばあいと比くらべて航こう走はし中なかの海中かいちゅう騒音そうおん量りょうが約やく10デシベル減げん少すこし､未み装備そうびの同型どうけい艦かん｢奄美あまみ｣の可聴かちょう距離きょりが1500mだったのに対たいして｢保ほ高だか｣は8500ｍ(9000mとも)と言いう結果けっかを示しめして聴音ちょうおん機きの能力のうりょくに格段かくだんの向上こうじょうが認みとめられた。

参考さんこう文献ぶんけん

• 千せん藤ふじ, 三さん千せん造づくり『機密きみつ兵器へいきの全貌ぜんぼう』原はら書房しょぼう、1976年ねん6月がつ25日にち。 
• 海軍かいぐん水雷すいらい史し刊行かんこう会かい 編へん『海軍かいぐん水雷すいらい史し』海軍かいぐん水雷すいらい史し刊行かんこう会かい、1979年ねん3月がつ。 
• 田丸たまる, 直吉なおきち『日本にっぽん海軍かいぐんエレクトロニクス秘史ひし 兵へいどもの夢ゆめの跡あと』原はら書房しょぼう、1979年ねん11月。 
• 戸原とばら, 春彦はるひこ「ゴム製品せいひんのむかしばなししりいず（10）防ぼう振ふゴム」『日本にっぽんゴム協会きょうかい誌し』第だい55巻かん第だい7号ごう、日本にっぽんゴム協会きょうかい、1982年ねん、416-422頁ぺーじ、NAID 130001280057。 
• 木俣きまた, 滋しげる郎ろう『潜水艦せんすいかん入門にゅうもん 海底かいていの王者おうじゃ徹底てってい研究けんきゅう』光人みつひと社しゃ、2005年ねん11月1日にち。ISBN 9784769821991。 
• 木俣きまた, 滋しげる郎ろう『小しょう艦艇かんてい入門にゅうもん 海軍かいぐんを支ささえた小しょう艦かん徹底てってい研究けんきゅう』光人みつひと社しゃ、2007年ねん12月1日にち。ISBN 9784769822547。 
• 隈部くまべ, 五夫いつお『海防かいぼう艦かん激闘げきとう記き - 護衛ごえい艦艇かんていの切きり札ふだ海防かいぼう艦かんの発達はったつ変遷へんせんと全貌ぜんぼう -』潮しお書房しょぼう光人みつひと社しゃ、2016年ねん12月1日にち。ISBN 9784769816355。 
• 『海軍かいぐん電気でんき技術ぎじゅつ史し 第だい6部ぶ』名和なわ武たけしほか、技術ぎじゅつ研究けんきゅう本部ほんぶ、1969年ねん10月がつ。
• 『無線むせん並なみ音響おんきょう兵器へいき概要がいよう一覧いちらん 昭和しょうわ１８．９』海軍かいぐん艦かん政せい本部ほんぶ、1943年ねん9月がつ。 防衛ぼうえい研究所けんきゅうじょ戦史せんし研究けんきゅうセンター
• 『取扱とりあつかい説明せつめい書しょ　九三式水中聴音機二型甲乙潜水艦用』海軍かいぐん技術ぎじゅつ研究所けんきゅうじょ音響おんきょう研究けんきゅう部ぶ。  国立こくりつ公文書こうぶんしょ館かん