仮想かそう敵てき

仮想かそう敵てき（かそうてき、英えい: virtual enemy）は、仮想かそう上うえの敵てきのこと。仮かりに想定そうていした敵てき。

概要がいよう

仮想かそう敵てきはさまざまに利用りようされている。

たとえば企業きぎょうで製品せいひんの新規しんき開発かいはつや販売はんばいの計画けいかくを立たてる場合ばあいに、あらかじめ"敵てき"（ライバル）となる企業きぎょうがいることや、新あらたに現あらわれることを想定そうていして、その場合ばあいの対処たいしょのしかたも含ふくめて計画けいかくを立たてるということはあるのだが、漠然ばくぜんと"ライバル企業きぎょう"と名称めいしょうで呼よんでいるだけでは計画けいかくを練ねるのには不十分ふじゅうぶんなので、仮かりに具体ぐたい的てきなライバルの像ぞうをいくつかのパターンで設定せっていするか、すでに実在じつざいする企業きぎょうでその市場いちばに参入さんにゅうしてくる可能かのう性せいのある企業きぎょうから数すう社しゃなどをとりあげて、その企業きぎょうが仮かりに参入さんにゅうしてきたと想定そうていして、その企業きぎょうの具体ぐたい的てきなリソース（資本しほん金額きんがくや当とうセグメントに投入とうにゅうしてくる可能かのう性せいのある資金しきんの額がく、従業じゅうぎょう員いんの総数そうすうや当とうセグメントに投入とうにゅうしてくる可能かのう性せいのある人数にんずう、所有しょゆうしている具体ぐたい的てきな技術ぎじゅつ・特許とっきょなど）を特定とくていした上うえで、自社じしゃが対抗たいこうする場合ばあいの具体ぐたい的てきな計画けいかくを練ねってみるということがある。そのような、仮かりの、だが具体ぐたい的てきに設定せっていしている"敵てき"の企業きぎょう（ライバル企業きぎょう）が、企業きぎょうが計画けいかく立案りつあんの際さいに用もちいる仮想かそう敵てきである。

軍事ぐんじの場合ばあいは、仮想かそう敵国てきこくというものを想定そうていし、実在じつざいする具体ぐたい的てきな国くにを設定せっていする。よくあるのは近隣きんりんの国くにを（たとえばフィンランド側がわが想定そうていする場合ばあいならソ連それん/ロシアを、トルコ共和きょうわ国こく側がわが想定そうていする場合ばあいならギリシャやイラクを、台湾たいわん側がわが想定そうていするなら中華人民共和国ちゅうかじんみんきょうわこくを）仮想かそう敵国てきこくとして具体ぐたい的てきに設定せっていする。そして机上きじょうの兵へい棋演習えんしゅう（近年きんねんの米国べいこくなどではコンピュータ上じょうでのシミュレーション）を、自国じこくとその仮想かそう敵国てきこくに分わかれて行おこない、その仮想かそう敵国てきこくがこちらを攻撃こうげきする場合ばあいに選択せんたくする可能かのう性せいがある戦術せんじゅつと、それに対たいする自国じこくがとりうる戦術せんじゅつをリスト化かし、各かく組くみ合あわせの場合ばあいの両りょう軍ぐんに発生はっせいする損害そんがいの具体ぐたい的てきな規模きぼ（双方そうほうそれぞれで負傷ふしょうする兵へいの数かず、破壊はかいされる兵器へいきのリスト）や確かく率りつによってブレうる幅はば、戦争せんそうが続つづく期間きかんの長ながさなどを推定すいていし、そのシミュレーションによって洗あらい出だされたことをふまえて、悲惨ひさんな結果けっかを避さけできるだけ望のぞむ結果けっかが得えられるように、普段ふだんから自軍じぐんを配備はいびしたり自軍じぐんの改善かいぜんをはかるということが行おこなわれている。

スポーツの場合ばあいも仮想かそう敵てきが利用りようされる。たとえば卓球たっきゅうで世界せかいチャンピオンになろうとしている選手せんしゅなどは、世界せかいランキング上位じょうい5名めいなり10名めいなりの選手せんしゅをひとりひとり取とり上あげて、そのひとりが仮かりに対戦たいせん相手あいてになったと想定そうていして対策たいさくを練ねるということを繰くり返かえし、どの上位じょうい選手せんしゅが対戦たいせん相手あいてとなっても勝かてるようにしようとする。中国ちゅうごくではわざわざ仮想かそう敵てきとそっくりのプレーができる「コピー選手せんしゅ」を育成いくせいすることまでして、その選手せんしゅと実際じっさいに対戦たいせんを重かさねることで対応たいおう作さくを練ねる。卓球たっきゅうに限かぎらず、たいていの競技きょうぎ種目しゅもくで上位じょういの選手せんしゅは多おおかれ少すくなかれ仮想かそう敵てきを思おもい描えがいて対策たいさくを練ねりトレーニングを行おこなう。