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シミュレーション

出典しゅってん: フリー百科ひゃっか事典じてん『ウィキペディア（Wikipedia）』
曖昧さ回避 「シミュレーション」のその他たの用法ようほうについては「シミュレーション (曖昧あいまいさ回避かいひ)」をご覧らんください。

シミュレーション（英えい: simulation）は、何なんらかのシステムの挙動きょどうを、それとほぼ同おなじ法則ほうそくに支配しはいされる他ほかのシステムや計算けいさんによって模擬もぎすること[1][2]。simulationには「模擬もぎ実験じっけん」や「模擬もぎ訓練くんれん」という意味いみもある[3]。

なお、「シュミレーション」は「シミュレーション」の語頭ごとうの2音おとを音おと位い転換てんかんさせたことによって生しょうじた語形ごけいであり、誤あやまりである[注ちゅう 1]。また、同化どうかによって「シミレーション」と発音はつおんされることがある。「シミュレイション」と表記ひょうきすることもまれにある。

コンピュータを用もちいたエンジンの燃焼ねんしょう室しつ内ないのガスの流ながれのシミュレーション

概要がいよう

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モデルを立たてるプロセス。実験じっけん、シミュレーション、理論りろんの相互そうご作用さようの説明せつめい。

ラテン語らてんごの 「similis シミリス（似にている）」「simulare シミュラーレ（模倣もほうする）」「simulat（真似まねた、コピーした）」といった用語ようごから生うまれた概念がいねんである。

シミュレーションは、対象たいしょうとなるシステムで働はたらいている法則ほうそくを推定すいてい・抽出ちゅうしゅつし、それを真似まねるようにして組くみ込こんだモデル、模型もけい、コンピュータプログラムなどを用もちいて行おこなわれる。[2][5]

現実げんじつのシステムを動うごかしてその挙動きょどうや結果けっかを確たしかめることが困難こんなん、不可能ふかのう、または危険きけんである場合ばあいにシミュレーションが用もちいられる。[2][5]

例たとえば、社会しゃかい現象げんしょうなどにおける問題もんだいの解決かいけつ方法ほうほうを探さぐる時ときなど、（悪影響あくえいきょうがあるので実社会じっしゃかいではとりあえず試ためせないので）実際じっさいの社会しゃかいと似にた状況じょうきょうを数式すうしきなどで作つくりだし、コンピュータ等とうを用もちいて模擬もぎ的てきに動うごかし、その特性とくせいなどを把握はあくするのに用もちいる[6]。例たとえば風洞ふうどう実験じっけん、水槽すいそう実験じっけんで働はたらいている法則ほうそくを数学すうがく的てきなモデルに置おき換かえて行おこなう[6][2][5][7][8]。また例たとえば経営けいえいに関かんする様々さまざまな事象じしょうを数学すうがく的てきなモデルに置おき換かえてみて、様々さまざまな数値すうちを入力にゅうりょくしたり変化へんかさせることで、結果けっかを推定すいていする[6][9]。

シミュレーションのための装置そうちやプログラムをシミュレータ (英えい: simulator) と言いう[10]。ただし、きわめて単純たんじゅんなシステムを模倣もほうするためのシミュレーション、特とくに単純たんじゅん化かされたモデルを用もちいる場合ばあいなどは（とりあえず）紙しと鉛筆えんぴつ（やホワイトボードとペン）だけを用もちいて手作業てさぎょうで行おこなわれるものもある。

対象たいしょうとなるシステムにおいて働はたらいている法則ほうそくをどれほど忠実ちゅうじつに模倣もほうするかによって、シミュレーションの精度せいどは異ことなる。シミュレーションの質しつは、シミューレーションを設計せっけいする者ものの技量ぎりょうや、どの程度ていどまで法則ほうそくを見抜みぬき、どこまでそれらの法則ほうそくを模倣もほうさせたか、ということによって異ことなるのである。現実げんじつの法則ほうそくを十分じゅうぶんに模倣もほうしていないシミュレーションは、現実げんじつとは異ことなった挙動きょどうを示しめす。

また、コンピュータを用もちいて連続れんぞく現象げんしょうを離散りさん化かした積算せきさんによるシミュレーションは必かならず誤差ごさが生しょうじ、その誤差ごさは蓄積ちくせきする[11][12]。従したがってコンピュータによるシミュレーションによって良好りょうこうな結果けっかを得える為ためには、モデル化かによる誤差ごさ見積みつもりが重要じゅうようとなる。モデル化かによるシミュレーションは、現象げんしょうについてどの程度ていど正確せいかくに真似まねるかによって計算けいさん量りょうを調整ちょうせいすることが可能かのうであり、現象げんしょうについての完全かんぜんな知識ちしきは必要ひつようとされないなどのメリットがある。

システムのモデル化かを行おこなわず、完全かんぜんな模倣もほうを目的もくてきとする場合ばあいは、シミュレーションと言いわずエミュレーションということもある[13]。エミュレーションは、模倣もほうしたいシステムにおいて、予測よそくできる現象げんしょうより予測よそくできない現象げんしょうが支配しはい的てきである場合ばあいなどに使つかわれる。

目的もくてき・用途ようと

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模型もけいを用もちいた、地震じしん時どきの建物たてものの挙動きょどうのシミュレーション
  1. 建築けんちく物ぶつや自動車じどうしゃなどの製品せいひんの機構きこうに内在ないざいする欠陥けっかん（負荷ふかや強度きょうどなど）を模型もけいやコンピュータによって探さがして取とり除のぞく。
  2. ビジネスにおいて客層きゃくそうや商品しょうひん、時間じかん帯たい、店舗てんぽ等とうの調査ちょうさ結果けっかをシミュレーションに取とり入いれることで、効率こうりつ的てきな販売はんばいをする。
  3. 災害さいがいの発生はっせいや規模きぼの予知よち。地震じしん、[14]津波つなみ、[15][16]火災かさいなどの自然しぜん災害さいがいや、原子力げんしりょく発電はつでん所しょのメルトダウンや航空機こうくうき事故じこなどの人災じんさいなどの防災ぼうさい。
  4. 自動車じどうしゃにおけるドライブシミュレータや航空機こうくうきにおけるフライトシミュレータ等ひとし、各種かくしゅの操縦そうじゅう、操作そうさを学まなぶ手立てだてとしての利用りよう。いろいろな状況じょうきょう、特とくに実機じっきでは危険きけんを伴ともなうような場面ばめんを体験たいけんすることが可能かのうとなる。[17][18][19][20][21][22]
  5. シミュレーションゲームではシミュレーションを娯楽ごらくとして行おこなう。ボードやコマやカードを使つかい事象じしょうを再現さいげんするようなルールに基もとづいてプレイするものと、コンピュータを使つかって事象じしょうの再現さいげんを行おこなわせるものとがある。ウォーゲーム、戦略せんりゃくゲーム、経営けいえいゲームなど[23][24][25]。前項ぜんこうのドライブ、フライトシミュレータはレース、戦闘せんとうなどの形かたちでゲームとしても存在そんざいする。
  6. その他た、天気てんき予報よほうや人口じんこうの推移すいい、予測よそく、分析ぶんせき、医療いりょうの分野ぶんやでも広ひろく使つかわれている。[26][27][28][29][30]

模型もけいなどによるシミュレーション

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木製もくせいの馬うまを用もちいたシミュレーション訓練くんれん。（第だい一いち次じ世界せかい大戦たいせん当時とうじ）

ミニチュア(相似そうじ模型もけい)による実験じっけんなど、何なんらかの物理ぶつり的てきな物体ぶったいで実物じつぶつを置おき換かえることもシミュレーションの一種いっしゅである。これを「物理ぶつり的てきシミュレーション」と言いうこともある。置換ちかんする物体ぶったいとしては、実物じつぶつよりも小ちいさいものや安価あんかなものが選えらばれる。このとき、相似そうじ則そくが成立せいりつするかどうかの指標しひょうとなるのがパイナンバーという無む次元じげん量りょうである[要よう検証けんしょう – ノート][31]。

航空機こうくうき（零れい戦せんのエルロンフラッターなど）や自動車じどうしゃの空気くうき特性とくせいの予測よそく[32]や交通こうつう事故じこの状況じょうきょう再現さいげん[33]などにおいて模型もけい実験じっけんが活用かつようされたが、再現さいげん性せいにかかわる要因よういんが不足ふそくしていると現実げんじつの現象げんしょうを正ただしく近似きんじできないため、ある意味いみで職人しょくにん的てきな素養そようを要求ようきゅうされる。

WSG

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ウォー・シミュレイション・ゲームの略りゃく。「図上ずじょう演習えんしゅう」とも言いわれる。詳細しょうさいはゲーデザイナーである鈴木すずき銀ぎん一郎いちろうなどを参照さんしょうのこと。 模型もけい（図表ずひょうと駒こま）を使つかった戦争せんそうシミュレーションの例れいとして、『戦国せんごく策さく』『墨ぼく子こ』には、墨ぼく子こが公おおやけ輸盤と戦争せんそうを論ろんじ合あい、楚すわえ王おうの前まえで模型もけいを使つかって勝負しょうぶをし、公おおやけ輸盤が新しん兵器へいきである雲梯うなてを使つかって9回かい攻せめたが、墨ぼく子この守まもりは固かたく攻せめ落おとすことができず、これを見みた王おうは宋そうを侵略しんりゃくしないことを約束やくそくしたという逸話いつわが記しるされている。これは模型もけいを使つかったシミュレーションによって戦争せんそうを防ふせいだ（守もり城じょう戦せんを見みせつけた）逸話いつわである。また日本にっぽんでも戦国せんごく時代じだいの大名だいみょう・上杉うえすぎ謙信けんしんは2メートル四方しほうもある城しろの模型もけいを用もちいて合戦かっせんのシミュレーションを行おこなっていたとい伝いつたえられている[34]。

コンピュータ・シミュレーション

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コンピュータシミュレーションとは、その名なの通とおりコンピュータを用もちいたシミュレーションのことである。いくつかの種類しゅるいがあり、微分びぶん方程式ほうていしきに基もとづく数値すうち計算けいさんによるもの（天体てんたい力学りきがくにおける、解析かいせき的てきに解とけない場合ばあいの軌道きどう計算けいさんなど）、物理ぶつりモデルに基もとづくもの（レイトレーシングなど）、システム・ダイナミクスに基もとづくもの（成長せいちょうの限界げんかいなど）などが知しられている。

コンピュータ・シミュレーションの種類しゅるい

コンピュータ・シミュレーションには、一旦いったんシミュレーションが始はじまるとあとはコンピュータだけで完結かんけつしてシミュレーションを行おこなう「非ひ対話たいわ型がたシミュレーション」と、シミュレーション中ちゅうに人間にんげんがなんらかの形かたちで（コンピュータ内ないに模擬もぎ的てきに作つくられた世界せかいに）介入かいにゅうし影響えいきょうを与あたえることのできる「対話たいわ型がたシミュレーション」がある[35][36]（その応用おうよう形がたのひとつの形かたちが、フライトシミュレータやドライビングシミュレータなどである）。

モデル開発かいはつとモデルの質しつの重要じゅうよう性せい

コンピュータ・シミュレーションは、実じつ世界せかいや何なんらかの仮説かせつ的てき状況じょうきょうをコンピュータ上じょうでモデル化かするもので、それによってそのシステムがどのように作用さようするのかを研究けんきゅうすることができる[2][5]。変数へんすうを変化へんかさせることで、システムの振ふる舞まいについて予測よそくを立たてることができる[2][5]。

コンピュータ・シミュレーションは、自然しぜん科学かがく的てきシステムのモデル化かを行おこない（たとえば物理ぶつり学がく/化学かがく/生物せいぶつ学がくにおける様々さまざまなモデル化か[7][8][37][38][39]、経済けいざい学がく/社会しゃかい科学かがくにおける人間にんげんに関かかわるシステムのモデル化か、[40][41]さらには工学こうがくにおけるシステムのモデル化かなど）、それをコンピュータで計算けいさんすることで、システムの作用さようについて洞察どうさつを得える助たすけとなる。シミュレーションにコンピュータを使つかうことの利便りべん性せいを表あらわす例れいは多数たすうある。人々ひとびとによく知しられ、日々ひび実感じっかんされている例れいとしては数値すうち予報よほう（en:Numerical weather prediction）、メッシュ予報よほうのために各国かっこくの気象きしょう機関きかんでスーパーコンピューターを使つかって行おこなわれているシミュレーションが挙あげられる。ほかにも「ネットワーク交通こうつう量りょうシミュレーション」を挙あげる人ひと[42]もいる。異ことなった数値すうちモデルを使つかうと振ふる舞まい、結果けっかが異ことなり、また環境かんきょうの初期しょき設定せっていを変更へんこうしてもモデルの振ふる舞まいが変化へんかする。

なお気候きこう変動へんどうの予測よそくには、適切てきせつな気候きこうモデルを用もちいたコンピュータシミュレーションが不可欠ふかけつである。2021年ねんには、はじめて大気たいき海洋かいよう結合けつごうモデルを開発かいはつし地球ちきゅう温暖おんだん化かについて具体ぐたい的てきな温度おんど変化へんかの数字すうじもコンピュータではじき出だして科学かがく的てき研究けんきゅうを可能かのうにした眞鍋まなべ淑郎よしろうにノーベル物理ぶつり学がく賞しょうが授与じゅよされた。

en:Numerical modeling (geology)　も参照さんしょう。

コンピュータ・シミュレーションには様々さまざまなタイプがあるが、それらに共通きょうつうするのは、システムが取とりうる全すべての状態じょうたいを列挙れっきょするのが不可能ふかのうあるいは現実げんじつ的てきでない場合ばあいに、そのモデルの代表だいひょう的てきシナリオの標本ひょうほんを生成せいせいしようとするという点てんである。

モンテカルロ法ほうや確率かくりつ論ろん的てきモデリングによるコンピュータ・シミュレーションは、モデル化かが非常ひじょうに簡単かんたんという特徴とくちょうがある。[43][44][45][46]

計算けいさん理論りろんなど

コンピュータに関係かんけいするシミュレーションであるが、前まえの節ふしで説明せつめいしているものとはおもむきが大おおきくことなるものなので、節ふしを分わけて説明せつめいする。計算けいさん理論りろんでは、たとえば万能ばんのうチューリングマシン（のような、模倣もほうする能力のうりょくを持もつ機械きかい）が、模倣もほう対象たいしょう（たとえば、なんらかのチューリングマシン）の状態じょうたい遷移せんいと入力にゅうりょくと出力しゅつりょくを記述きじゅつした状態じょうたい遷移せんい表ひょう[注ちゅう 2]を実行じっこうすること（現代げんだい風ふうに言いうと、コンピュータがそのようなプログラムを走はしらすこと）を、シミュレーションと言いう。これは、状態じょうたい遷移せんい系けい間あいだの関係かんけいといった、意味いみ論ろんの研究けんきゅうなどで使つかわれている。

コンピュータ・シミュレーションの応用おうよう

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コンピュータの登場とうじょうによって、人間にんげんの手てによる計算けいさんではほとんど不可能ふかのうな膨大ぼうだいな量りょうの総そう当あたりでしか行おこなえない計算けいさんが比較的ひかくてき短時間たんじかんで行おこなえるようになったため、コンピュータによるシミュレーションは自然しぜん現象げんしょうや経済けいざい活動かつどうや人口じんこうの推移すいいといったものに使用しようされるようになった。コンピューターの演算えんざん能力のうりょくの発展はってんは、以前いぜんは縮小しゅくしょう模型もけいや実物じつぶつ大だい模型もけいなどによって行おこなわれていた実験じっけんを計算けいさんによる仮想かそう空間くうかんのみで実験じっけん・予測よそくすることが可能かのうになってきている。

物理ぶつり学がく

例たとえば、木この葉はが舞まい落おちる動うごきを通常つうじょうの手て計算けいさんで導みちびき出だす事ことは不可能ふかのうであった。これは重力じゅうりょくや空気くうき抵抗ていこうだけでなく、木この葉は自体じたいの動うごきによる空気くうきの状態じょうたい変化へんかなどが複雑ふくざつに絡からみ合あっているからである。この、カオティックな振ふる舞まいに対たいして、単純たんじゅん計算けいさんを膨大ぼうだいに繰くり返かえす事ことの出来できるコンピュータによって、ある程度ていどの周期しゅうき性せいや規則きそく性せいを見出みいだされうる。[5][47]

気象きしょう学がく・気象きしょう予報よほう
「メッシュ予報よほう」も参照さんしょう

最近さいきんの気象きしょう予報よほうには、コンピュータ・シミュレーションは欠かかせない。地球ちきゅうという球体きゅうたい上じょうを格子こうし（メッシュ）に区切くぎったモデルを用もちいて、スーパーコンピュータを用もちいてシミュレーションを行おこなっている。コンピュータの性能せいのうが向上こうじょうするにつれて次第しだいに格子こうしの大おおきさを小ちいさくすることができるようになるとともに、予測よそく精度せいどが向上こうじょうした。[48][49]

  • コンピュータを用いた竜巻のシミュレーション
    コンピュータを用もちいた竜巻たつまきのシミュレーション
  • コンピュータによる、台風の48時間の動きのシミュレーション
    コンピュータによる、台風たいふうの48時じ間あいだの動うごきのシミュレーション
天文学てんもんがく

数値すうちシミュレーションは天文学てんもんがくにおいては第だい三さんの手法しゅほうと見みなされている。天文てんもん現象げんしょうというのは時じの長ながさや空間くうかん的てきなスケールの大おおきさのせいで実験じっけん室しつで実験じっけんすることが不可能ふかのうなため、コンピュータシミュレーションが必要ひつようになる。天体てんたい物理ぶつり学者がくしゃはコンピュータのなかに宇宙うちゅうを創つくり出だしその中なかで天文てんもん現象げんしょうを再現さいげんしその挙動きょどうを確たしかめる[50]。

コンピュータの実機じっきのシミュレーション（模倣もほう）

コンピュータを使つかったコンピュータのシミュレートというものもある。エミュレータと呼よばれるシミュレータも使つかわれる（たとえば実機じっきで走はしらせるのが困難こんなんな場合ばあいや面倒めんどうな場合ばあいや、制御せいぎょされたテスト環境かんきょう下かでプログラムを実行じっこうして実害じつがいが出でない安全あんぜんな状態じょうたいで結果けっかを事前じぜんに確認かくにんするためなどに使つかわれる。）

仮想かそう化かというのもシミュレーションの一種いっしゅである。たとえば、マイクロプログラムやアプリケーションプログラムを、実機じっきに送おくり込こむ前まえにデバッグするのに使つかう。コンピュータの動作どうさがシミュレートなので、コンピュータの動作どうさの全すべての情報じょうほうをプログラマが直接的ちょくせつてきに利用りようでき、速度そくどを変かえたりステップ実行じっこうしたりなど好すきなようにできる。一方いっぽうでいわゆる「ゲートレベル」の完全かんぜんなエミュレーションは現実げんじつ的てきでないことが多おおく、また普通ふつうはそこまで厳密げんみつにエミュレーションする必要ひつようはないことも多おおいが、例たとえばエミュレートしきれない部分ぶぶんの実機じっきにバグがある場合ばあいのデバッグまではできない。プログラムによるシミュレーションでは速度そくど的てきに不十分ふじゅうぶんな必要ひつような場合ばあいは、FPGAなどのプログラマブルなハードウェアによって、エミュレーションないしシミュレーションを行おこなうこともある。VMware、VirtualBox、Hyper-Vなどを用もちいて、バーチャルにOSを構築こうちくし、さまざまな環境かんきょうを設定せっていしてOSの挙動きょどうを安全あんぜんな環境かんきょう下かで確たしかめる手法しゅほうも一般いっぱん化かしている。

エミュレータ、命令めいれいセットシミュレータ、仮想かそう化か、仮想かそう機械きかいなども参照さんしょうのこと。
通信つうしんプロトコルのシミュレーション

TCP/IP等ひとしの通信つうしんプロトコルの分野ぶんやでは日々ひび新あたらしい方式ほうしきが提案ていあんされている。IEEEやITU、あるいは日本にっぽんの電波でんぱ産業さんぎょう会かい（ARIB）などで次世代じせだいの通信つうしんプロトコルの標準ひょうじゅん規格きかくが議論ぎろんされるが、このとき各かく提案ていあん者しゃの案あんとして提示ていじされている規格きかくが、さまざまな条件下じょうけんかでどのような特性とくせいを持もっているのかを比較ひかく検討けんとうする必要ひつようがある。このような局面きょくめんで通信つうしんプロトコルのシミュレーション が必須ひっすとなっている。2層そう（データリンク層そう）以上いじょうの通信つうしんプロトコルの規格きかくは状態じょうたい遷移せんい図ずで記載きさいされることが多おおいが、記述きじゅつされた状態じょうたい遷移せんい等とうの処理しょり、条件じょうけんをコンピュータ上じょうで疑似ぎじし、スループットやエラー処理しょりなどの評価ひょうかを行おこなう。

学術がくじゅつ機関きかんで用もちいられるシミュレータはns[51] 等ひとしのオープンソースソフトウェアが多おおいが、民間みんかん企業きぎょうや民間みんかん研究所けんきゅうじょのような、資金しきんに余裕よゆうがあり応用おうように近ちかい研究けんきゅうを行おこなう組織そしきでは、大だい規模きぼトポロジ構築こうちくなどを容易よういに行おこなえるツール群ぐんが整備せいびされ、より迅速じんそくに現実げんじつに即そくした解析かいせきが可能かのうなQualnet[52][53]、OPNET Modeler[54][55] 等ひとしの商用しょうようのシミュレータを使用しようするケースが多おおい。

この分野ぶんやのシミュレーションでは信号しんごう処理しょりの部分ぶぶんをMATLAB/Simulink、[56]電波でんぱ伝搬でんぱんの部分ぶぶんをWirelessInSight, Winprop, Atoll等とうの他ほかのシミュレータや計算けいさんソフトと連携れんけいさせたりする場合ばあいもある。また特とくに無線むせん、移動いどう体たいの分野ぶんやでは各かく通信つうしん機きの動うごきも重要じゅうような要素ようそとなるためその部分ぶぶんに関かんして他たのツールや実際じっさいの計測けいそく値ちなどと連携れんけいさせる試こころみもなされている。

Qualnet、OPNET Modeler[57]等ひとしの商用しょうようツールでは実際じっさいのネットワーク上じょうを流ながれる通信つうしんパケットをシミュレータと接続せつぞくできるものもあり、仮想かそうのネットワークを利用りようした時ときの動画どうが品質ひんしつも確認かくにんなどにも使つかわれている。

電子でんし回路かいろの設計せっけい・実験じっけん

コンピューター上じょうで電子でんし回路かいろの設計せっけいや実験じっけんをするのに、SPICEやSPICEを起源きげんとする電子でんし回路かいろシミュレーション・ソフトウェア等とうが使つかわれている。電子でんし回路かいろを所定しょていの書式しょしきでシミュレーターに入力にゅうりょく（GUIによる入力にゅうりょくが可能かのうなものも多おおい）すると、各かく電子でんし部品ぶひんの電気でんき的てき特性とくせいを元もとに回路かいろの動作どうさが計算けいさんされ、回路かいろの動作どうさを調しらべることができる。[58]

マイクロプロセッサなど高度こうどに複雑ふくざつなディジタルLSIの論理ろんり設計せっけいも、実際じっさいに製造せいぞうに入はいる前まえにシミュレータでテストされる。

アンテナのシミュレーション

無線むせん工学こうがくにおいては、アンテナの設計せっけいをするのにアンテナ・シミュレーション・ソフトウェアが用もちいられる。アマチュア用途ようとではMMANAやMMANA-GAL等とうのフリーソフトがある。アンテナの物理ぶつり的てきな形状けいじょうを入力にゅうりょくすると、自由じゆう空間くうかんや特定とくていの地上ちじょう高だかにおけるアンテナ上じょうの電圧でんあつ分布ぶんぷ、電流でんりゅう分布ぶんぷ、共振きょうしん周波数しゅうはすう、給電きゅうでん点てんにおけるインピーダンス特性とくせい、SWR特性とくせいなどを計算けいさんにより求もとめることができる。短縮たんしゅく型がたアンテナやマルチバンド・アンテナの設計せっけいのために、延長えんちょうコイル、短縮たんしゅくコンデンサ、LCトラップ等とうを挿入そうにゅうした場合ばあいのリアクタンス値ちを求もとめることもできる。

電波でんぱ伝播でんぱのシミュレーション

無線むせん工学こうがくにおいて、電波でんぱ伝播でんぱ（電波でんぱの伝つたわり方かた）をシミュレーションするのに電波でんぱ伝播でんぱシミュレーション・ソフトウェアが用もちいられる。VHFやUHFのテレビ放送ほうそう局きょくや中継ちゅうけい局きょくのサービスエリアを調しらべるために、アメリカの研究けんきゅう者しゃ A. G. Longley と P. L. Rice とが1968年ねんにLongley-Rice Modelアルゴリズムを開発かいはつ・発表はっぴょうした。このアルゴリズムは 20 MHz - 20 GHz の周波数しゅうはすうに適用てきようでき、これを基もとにした電波でんぱ伝播でんぱシミュレーション・ソフトウェアが、日本にっぽんのいくつかの電気でんき通信つうしんコンサルタント会社かいしゃにより開発かいはつされている。[59]

シミュレーションするには、ソフトウェアに、大地だいちの導しるべ電でん率りつと比ひ誘電ゆうでん率りつ、大気たいきの屈折くっせつ率りつ、送信そうしん場所ばしょや受信じゅしん場所ばしょの標高ひょうこう、周波数しゅうはすう、電波でんぱの偏へん波面はめん、アンテナの利得りとくや地上ちじょう高だか、送信そうしん機きの出力しゅつりょく、受信じゅしん機きの感度かんどなどの値ねを与あたえる。また、シミュレーション対象たいしょう地域ちいきのデジタル地形ちけいデータ（たとえばNASAのFTPサイト[60] からダウンロードできる）を与あたえる。すると、電波でんぱの大気たいきによる屈折くっせつ、地形ちけいによる反射はんしゃや回折かいせつ、電波でんぱが伝つたわるうえで受うける減衰げんすい等ひとしを計算けいさんし、電波でんぱの届とどく範囲はんいをシミュレーションする。結果けっかは、数値すうちや、地図ちず上じょうに電波でんぱの強つよさごとにグラフィカルに色分いろわけして示しめされる。[59]

フリーソフトとしてはカナダのアマチュア無線むせん家か Roger Coude（VE2DBE）が1988年ねんに開発かいはつした Radio Mobile[61] がある。[59]

軍事ぐんじ

軍事ぐんじ分野ぶんやにおいては戦闘せんとう状じょう況きょうをシミュレートしたモデル研究けんきゅうが行おこなわれており、地形ちけい、時間じかん、損害そんがい率りつ、兵員へいいん数すう、戦闘せんとう価値かち、移動いどう速度そくど、発見はっけん率りつ、命中めいちゅう率りつなどの要素ようそから戦闘せんとうの推移すいい、両りょう軍ぐんの損害そんがいなどを導みちびき出だすことができる。また指揮しき官制かんせい、補給ほきゅう計画けいかく立案りつあん、戦術せんじゅつ研究けんきゅう、海うみ空軍くうぐんの訓練くんれんなどでシミュレーションは用もちいられている。[62][63]

また、最近さいきんの戦争せんそうにおいては情報じょうほうを伝達でんたつするための通信つうしんの確保かくほは戦況せんきょうを左右さゆうする重要じゅうような要素ようそであるため、部隊ぶたい展開てんかい時じに山間さんかん部ぶや市街地しがいちなどにおいても兵員へいいん同士どうしが途切とぎれることなく通信つうしんできることをシミュレーションするシステム（JCSS：旧称きゅうしょう NetWars）をアメリカ国防こくぼう情報じょうほうシステム局きょく(DISA)が開発かいはつしている[64][65]。

歴史れきし的てきには軍事ぐんじ学がく的てきな研究けんきゅうに由来ゆらいの一部いちぶを持もつオペレーションズ・リサーチでは、数理すうり的てきなモデル化かとコンピュータシミュレーションは両輪りょうりんをなしており、経済けいざいなど社会しゃかい活動かつどうの分析ぶんせきに現代げんだいでは広ひろく活用かつようされていて、今いまではむしろ軍事ぐんじは単たんにその応用おうよう分野ぶんやのたった一ひとつに過すぎない。[66][67][68]

他た

シミュレータを使つかってフォルトツリー解析かいせきを行おこなうこともある[69][70][71]。

最適さいてき化か問題もんだいの分野ぶんやでは、物理ぶつりプロセスのシミュレーションが進化しんか的てき計算けいさんと共ともに使つかわれ、制御せいぎょ戦略せんりゃくの最適さいてき化かを行おこなう。

訓練くんれんとしてのシミュレーション

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大型おおがた車しゃのシミュレータで訓練くんれん中ちゅうの兵士へいし

シミュレーションは一般いっぱん市民しみんや兵士へいしの訓練くんれんに使つかわれることが多おおい。これは、実際じっさいの装置そうちや兵器へいきを訓練くんれんに使用しようするのがコスト的てきに高価こうかすぎたり、単たんに非常ひじょうに危険きけんであるという理由りゆうからである。この場合ばあい、安全あんぜんな仮想かそう環境かんきょうで意味いみの有ある訓練くんれんが行おこなわれる。特とくに、実際じっさいなら生命せいめいに関かかわるような失敗しっぱいをしても許ゆるされる点てんは重要じゅうようである。

訓練くんれんにおけるシミュレーションは3つに分類ぶんるいされる。

  • 「ライブ」シミュレーション - 実地じっちでシミュレートされた装備そうびを身みにつけた人間にんげんが訓練くんれんを行おこなう。
  • 「仮想かそう」シミュレーション - 仮想かそう環境かんきょうでシミュレートされた装備そうびを身みにつけた人間にんげんが訓練くんれんを行おこなう。
  • 「構築こうちく型がた」シミュレーション - 仮想かそう環境かんきょうでシミュレートされた装備そうびを身みにつけたシミュレートされた人間にんげんが訓練くんれんを行おこなう。これは、ウォーゲームと呼よばれるものが進化しんかしたものである。

フライトシミュレータ

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詳細しょうさいは「フライトシミュレーション」を参照さんしょう

フライトシミュレータは、地上ちじょうで操縦そうじゅう士しが航空機こうくうきの操縦そうじゅう訓練くんれんに用もちいる。再現さいげんの度合どあいにより異ことなるが一定いっていの訓練くんれん時間じかんが飛行ひこう時間じかんとして認みとめられる。実際じっさいの航空機こうくうきよりも低てい価格かかくながらエンジンが停止ていしした状態じょうたいでの着陸ちゃくりく、離陸りりく直後ちょくごのトラブルなど、実地じっちでは困難こんなんな訓練くんれんが可能かのうである。[17][18][19][20][21][22]

現在げんざいでは、機種きしゅ癲癇てんかんにおいてフライトシミュレータが用もちいられているという。

ドライブシミュレータ

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詳細しょうさいは「ドライビングシミュレーター」を参照さんしょう

ドライブシミュレータは実際じっさいの自動車じどうしゃの特性とくせいを仮想かそう環境かんきょう内ないで再現さいげんする。外的がいてき要因よういんや条件じょうけんを再現さいげんし、さまざまな車両しゃりょう運転うんてん状じょう況きょうが体感たいかん可能かのうである。[72][73]

船舶せんぱくシミュレータ

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船舶せんぱくシミュレータは、船員せんいんの訓練くんれんに用もちいる[74][75]。特とくに大型おおがたの船舶せんぱくをシミュレートするものが多おおく、操船そうせん訓練くんれんを行おこなう操船そうせんシミュレーター、エンジンプラントの運転うんてん訓練くんれんを行おこなうエンジントラブルシミュレーター、荷役にやく訓練くんれんを行おこなう荷役にやくシミュレーターなどがある。

プラントシミュレータ

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化学かがくプラントのプラントシミュレータは、物理ぶつりモデルに基もとづいて化学かがくプラントの動的どうてきな挙動きょどうを模擬もぎするものである．さまざまな条件下じょうけんかで挙動きょどうを再現さいげんし、主おもにプラントを運転うんてんするオペレータの運転うんてん操作そうさ訓練くんれんに用もちいる．

教育きょういくにおけるシミュレーション

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教育きょういくにおけるシミュレーションも訓練くんれんの一種いっしゅと考かんがえられ、特定とくていの主題しゅだいに沿そって行おこなわれる。[76][77][78]ビデオを鑑賞かんしょうし、問題もんだいの解決かいけつ策さくを話はなし合あい、ロールプレイを行おこなうなどの手法しゅほうがある。ロールプレイング方式ほうしきで行おこなうものは、ゲームの一種いっしゅとしてゲーミング・シミュレーション（あるいは単たんにゲーミング）と呼よばれることが多おおい[79]。企業きぎょうによるビジネス教育きょういくの一環いっかんとしてもシミュレーションが採用さいようされつつある。リスクのない仮想かそう環境かんきょうでビジネス戦略せんりゃくの実験じっけんをしたり、ケーススタディーの学習がくしゅうにおける拡張かくちょう手段しゅだんとして用もちいられる。

軍事ぐんじ教練きょうれんにおけるシミュレーション

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兵士へいしが行軍こうぐんや歩兵ほへい戦闘せんとうなどをシミュレーションするもの。Operation Flashpoint: Cold War CrisisやArmA: Armed Assaultから発展はってんしたVBS1・VBS2が米べい豪ごう等とうの軍ぐんで採用さいようされている。

班はん単位たんいでの射撃しゃげき訓練くんれんが可能かのうな大型おおがたシミュレータも登場とうじょうしており、陸上りくじょう自衛隊じえいたいでは10名めいが同時どうじに利用りようできる「普通ふつう科か部隊ぶたい戦闘せんとう射撃しゃげき訓練くんれんシミュレーター（GICCS）」を導入どうにゅうしている[80]。

危機きき管理かんりシミュレーション

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　危機きき管理かんり（crisis management)に際さいして、予測よそく困難こんなんな事象じしょうに対たいして複数ふくすう主体しゅたい間あいだでそれぞれの目標もくひょうを達成たっせいしようとするシミュレーションが危機きき管理かんりシミュレーションである。キューバ危機きき（1962年ねん）で危機ききを回避かいひした歴史れきしをもとに、キューバ危機ききをめぐるゲーミング・シミュレーションがアメリカをはじめ過去かこに遡及そきゅうし歴史れきしをなぞる形かたちで実施じっしされてきた。他ほかにも、台湾たいわん海峡かいきょう危機きき、冷戦れいせん期きの核かく戦争せんそう回避かいひ、北朝鮮きたちょうせんの核かく開発かいはつをめぐる6カ国かこく協議きょうぎ、2010年ねんの漁船ぎょせん衝突しょうとつ事件じけん、などが主題しゅだいとなる。

　現実げんじつ世界せかいは時間じかんが連続れんぞくし「一難いちなん去さってまた一難いちなん」ということがありうるが、ゲーミング・シミュレーションには1)必かならず「終おわり」があり、2)予定よてい調和ちょうわが埋うめ込こまれ「箱庭はこにわ」的てきである[81]。そのためゲーミングの終了しゅうりょうを見越みこして駆かけ込こみで行動こうどうする（これ自体じたいは合理ごうり的てきな行為こういである）プレイヤーが生うまれ、勝かち逃にげ（例たとえば「駆かけ込こみ核かく戦争せんそう」）が発生はっせいする一因いちいんとなる[82]。むろん現実げんじつの世界せかいでも政治せいじ的てきな時間じかん軸じくには「節目ふしめ」があり（例たとえば大統領だいとうりょうの任期にんき）、駆かけ込こみ的てき行動こうどうがみられる。そのため、シミュレーション上じょうで駆かけ込こみの制御せいぎょをいかに条件じょうけんづけるが課題かだいとなる。

　ゲーミング上じょうでの想定そうてい外がいの行動こうどう（事象じしょう）をどのように評価ひょうかするかがゲーミング・シミュレーションでは問とわれる[83]。現実げんじつに多おおくの専門せんもん家かが予想よそうを外はずした朝鮮ちょうせん戦争せんそう（1950年ねん）、ソ連それん崩壊ほうかい（1991年ねん）、911テロ事件じけん（2001年ねん）、対たいテロ戦争せんそう後ごのカブール陥落かんらく（2021年ねん）、ロシアのウクライナ侵攻しんこう（2022年ねん）といった「想定そうてい外がい」の事実じじつに対抗たいこうして、仮想かそう世界せかいで同様どうような大だい規模きぼな変化へんかをアクターがおこすことがある。想定そうてい外がいゆえに捨象しゃしょうしたり除外じょがいするのでは危機きき管理かんりの意味いみがない。しかし想定そうてい外がいが多発たはつするのも現実げんじつ的てきではない。箱庭はこにわとしてのゲーミングではとらえきれないルール・ジェネレート的てき発想はっそうが必要ひつようとされる所以ゆえんである[81]。

　また危機ききに際さいしては誤認ごにん・誤解ごかい、疑心暗鬼ぎしんあんき、相互そうご不信ふしんが高たかまる中なか[84]、短みじかい時間じかんでの政策せいさく決定けっていが後のちに甚大じんだいな惨禍さんかをもたらすことがある。グレアム・アリソンの第だい2モデル（組織そしき過程かていモデル）、第だい3モデル（政治せいじ過程かていモデル）に加くわえて、認知にんち的てきアプローチが必要ひつようとなる。集団しゅうだん思考しこう(groupthink）の可能かのう性せいも想定そうていせねばならない。完備かんび情報じょうほう下したの合理ごうり的てき行動こうどうとは異ことなる、こうした危機ききにおける行動こうどうの特性とくせいを理解りかいするためにゲーミング・シミュレーションは有用ゆうようである[85]。

宇宙うちゅう開発かいはつとシミュレーション

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プールを用もちいたシミュレーション

宇宙うちゅう開発かいはつの船ふね外がい活動かつどうのシミュレーションとしては、ひとつはプールを使つかう方法ほうほうがある。NASAなどで採用さいようされている。水みずの浮力ふりょくによって、宇宙うちゅう空間くうかんの無む重力じゅうりょく状態じょうたいに、若干じゃっかん似にた状態じょうたいを作つくりだすことができ、船ふね外がい作業さぎょうの体験たいけん・訓練くんれんを行おこなうことができる[注ちゅう 3]。ロボットアームの動うごき、作業さぎょう手順てじゅんなどのシミュレーションは、コンピュータを用もちいたものも用もちいられ、実際じっさいの操作そうさレバーと、コンピュータ画面がめん内ないに作つくりだされた映像えいぞうで模倣もほう・確認かくにんしつつ訓練くんれんを行おこなうものである。

医療いりょう・救急きゅうきゅう用ようシミュレータ

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心肺しんぱい蘇生そせい法ほう習得しゅうとくのためのダミー人形にんぎょうを用もちいたシミュレーション

医療いりょうシミュレータは、医療いりょうに従事じゅうじする者ものへの治療ちりょう法ほう/診断しんだん法ほう/概念がいねん/意思いし決定けっていについての教育きょういくの目的もくてきで、近年きんねん開発かいはつが盛さかんになってきている[86][87][88]。医療いりょうシミュレータによる訓練くんれんは、単純たんじゅんな血液けつえき採取さいしゅから腹腔ふくこう鏡きょう手術しゅじゅつまで各種かくしゅ存在そんざいする。また、新型しんがた医療いりょう機器ききの開発かいはつにおいてもシミュレーションは重要じゅうようである。医療いりょうシミュレータでもコンピュータが重要じゅうような役割やくわりを担になっている。実物じつぶつ大だいの人形にんぎょうを用もちいたシミュレータでは、人形にんぎょうへの薬物やくぶつ投与とうよなどによって適切てきせつな反応はんのうを示しめすようにプログラムされている。視覚しかくをコンピュータグラフィックスで擬似ぎじする場合ばあい、触覚しょっかくは訓練くんれん者しゃの動作どうさに反応はんのうするようプログラムされたフィードバック機器ききで再現さいげんする。この場合ばあい、現実げんじつ性せいを増ますために実際じっさいの患者かんじゃのCTやMRIのデータを用もちいることが多おおい。より簡便かんべんなシミュレーションとして、ウェブブラウザで操作そうさできるものもあるが、触覚しょっかくは再現さいげんされず、キーボードとマウスで操作そうさすることになる [1]。

諏訪すわ邦夫くにおは、麻酔ますいのシミュレータをみずからプログラムを書かいて開発かいはつしたという。

経済けいざい・金融きんゆう

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最近さいきんの経済けいざい学がく的てき研究けんきゅうによって、実際じっさいには（古典こてん経済けいざい学がくとは異ことなって）人々ひとびとの個々ここの行動こうどうの動機どうきは実じつに様々さまざまであることが明あきらかになってきているが、仮かりに、古典こてん経済けいざい学がく的てきなモデル、つまり「人ひとは全すべて自分じぶんの利益りえき追求ついきゅうだけを求もとめる」とするような極端きょくたんな（本当ほんとうの科学かがくとしては、事実じじつとは異ことなり、かなり問題もんだい含ふくみの）モデルを採用さいようした場合ばあいでも、社会しゃかい全体ぜんたいとしての動うごきを知しる事ことは出来できない。単純たんじゅんが複数ふくすう集あつまるとそこには、様々さまざまな性質せいしつが生うまれるという複雑ふくざつ系けいであるためで、これもまた、コンピュータの膨大ぼうだいな計算けいさんのシミュレーションによって予想よそうされうるものであるが、実際じっさいのところ株価かぶかや物価ぶっかの変動へんどうなど、経済けいざいの動うごきを予測よそくすることは容易よういではない。

金融きんゆうにおいては、コンピュータシミュレーションを用もちいてシナリオ立案りつあんが行おこなわれる。例たとえば、リスクを考慮こうりょした正味しょうみ現在げんざい価値かち (NPV) は計算けいさん方法ほうほうは確立かくりつしているが、入力にゅうりょく値ちは不明ふめいな場合ばあいがある。評価ひょうか対象たいしょうのプロジェクトの性能せいのうを擬似ぎじすることで、シミュレーションによって様々さまざまな場合ばあいの NPV が求もとめられる。

デザイン・都市とし景観けいかん

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コンピュータグラフィックス（CG）によって作成さくせいされたバーチャルリアリティ映像えいぞうを、工業こうぎょうデザインや建築けんちくデザインの成果せいか物ぶつを事前じぜん評価ひょうかするのに用もちいる[89][90]。例たとえば建築けんちく物ぶつや構造こうぞう物ぶつによる景観けいかんへの影響えいきょうを予測よそくする景観けいかんシミュレーションの場合ばあい、実写じっしゃ風景ふうけいの上うえで建物たてもののCGと組くみ合あわせたり、建物たてものや背景はいけいの全すべてをCGで構築こうちくし、実際じっさいに建築けんちくした様子ようすに近ちかい景観けいかんを観察かんさつすることが出来できる。コンピュータの計算けいさん能力のうりょくが実用じつように達たっするまでは、手て作業さぎょうにより遠近えんきん法ほうにそって書かかれたパース画がを作成さくせいし評価ひょうかしていた。

都市とし計画けいかくのツールとして都市としシミュレータを使つかって、様々さまざまなポリシーの決定けっていによって都市としがどのように変かわるかを把握はあくすることができる。大だい規模きぼな都市としシミュレータの例れいとしては、UrbanSim[91][92]（ワシントン大学だいがく[要よう曖昧あいまいさ回避かいひ]で開発かいはつ）、ILUTE[93]（トロント大学だいがくで開発かいはつ）、Distrimobs[94]（ボローニャ大学だいがくで開発かいはつ）などがある。都市としシミュレータはエージェントに基もとづくシミュレーションが一般いっぱん的てきで、土地とちの利用りよう計画けいかくや交通こうつう機関きかんなどが入力にゅうりょくとして設定せっていされる。

景観けいかんシミュレータと都市としシミュレータの開発かいはつを行おこなう研究けんきゅう分野ぶんやは、一般いっぱん的てきに計画けいかく支援しえんシステムと呼よばれている。

工学こうがく（技術ぎじゅつ）シミュレーションとプロセスシミュレーション

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シミュレーションは、工学こうがくシステムや多おおくのプロセスから構成こうせいされるシステムの重要じゅうような機能きのうである。例たとえば電子でんし工学こうがくでは、遅延ちえん線せんを使つかって実際じっさいの伝送でんそう線路せんろにおける遅延ちえんや位相いそうのずれをシミュレートする。また、擬似ぎじ負荷ふか（ダミーロード）を用もちいてインピーダンスのシミュレートが行おこなわれる。シミュレータは一般いっぱんにシミュレート対象たいしょうの一部いちぶの操作そうさや機能きのうだけを擬似ぎじする。一方いっぽう、エミュレータは対象たいしょうの全ぜん機能きのうを擬似ぎじするのが一般いっぱん的てきである。

多おおくの工学こうがくシミュレーションは、数学すうがく的てきモデルを用もちいて、コンピュータを利用りようして行おこなわれる[2][5]。しかし、その数学すうがく的てきモデルが信頼しんらいできない場合ばあいも多おおい。流体りゅうたい力学りきがくのシミュレーションは数学すうがく的てきなシミュレーションと物理ぶつり的てきなシミュレーションの両方りょうほうを必要ひつようとすることが多おおい（数値すうち流体りゅうたい力学りきがくも参照さんしょう）[95]。この場合ばあい、物理ぶつり的てきモデルは動的どうてき相似そうじ性せい（Dynamic Similitude）を要求ようきゅうされる。物理ぶつり的てきシミュレーションや化学かがく的てきシミュレーションは、研究けんきゅう目的もくてきだけでなく、具体ぐたい的てきな実用じつよう目的もくてきを持もつ。例たとえば、化学かがく工学こうがくにおけるプロセスシミュレーションによって得えられたプロセスのパラメータは、石油せきゆ精製せいせいなどの化学かがく工場こうじょうの運用うんように即座そくざに活用かつようできる[96][97]。

離散りさん事象じしょうシミュレーション

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「制約せいやく条件じょうけんの理論りろん」、「ボトルネック」、および「コンサルティング」も参照さんしょう

生産せいさん技術ぎじゅつ・オペレーション・オペレーションズリサーチの分野ぶんやでよく使つかわれる離散りさん事象じしょうシミュレーションは、様々さまざまなシステムのモデル化かに使つかわれる[98][99]。例たとえば、ビジネスにおいて各かく個人こじんが30のタスクを実行じっこう可能かのうで、数すう千せんの製品せいひんやサービスがあり、各かく製品せいひん/サービスには数すう十じゅうのタスクを逐次ちくじ的てきに行おこなう必要ひつようがあり、顧客こきゃくがどの製品せいひん/サービスを求もとめるかは季き節ぶしによって変動へんどうしたり、将来しょうらい的てきに変化へんかしていく。このような状況じょうきょうをシミュレーションすることで経営けいえい上じょうの様々さまざまな意思いし決定けっていの助たすけとなる。

参考さんこう文献ぶんけん

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関連かんれん項目こうもく

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ウィキメディア・コモンズには、シミュレーションに関連かんれんするカテゴリがあります。

関連かんれん団体だんたい・研究けんきゅう集会しゅうかい

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国内こくない

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海外かいがい

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関連かんれん分野ぶんや

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ソフトウェア

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脚注きゃくちゅう

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[脚注きゃくちゅうの使つかい方かた]

注釈ちゅうしゃく

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  1. ^ 石綿いしわた敏雄としおは、日本語にほんごの（漢語かんご由来ゆらいの）拗音ようおんには歯音しおん系けいのシュ・ジュが多おおく、唇音しんおん系けいのミュ・ヒュ・ビュが少すくないことから、日本人にっぽんじんにとって「シミュレーション」より「シュミレーション」のほうがずっと発音はつおんしやすく、このことが誤あやま表記ひょうき・誤あやま発音はつおんの要因よういんとなっているのではと推測すいそくしている[4]。
  2. ^ 英語えいご版ばんのSimulationの記事きじがこれを「状態じょうたい遷移せんい表ひょう」としている。等価とうか性せいとしては多分たぶんそれでもいいと思おもうが普通ふつうは、万能ばんのうチューリングマシンの議論ぎろんでは、状態じょうたい遷移せんい表ひょうは万能ばんのう機械きかいを記述きじゅつする遷移せんい表ひょうとし、対象たいしょう機械きかいの記述きじゅつはテープの初期しょき状態じょうたいとして与あたえる。
  3. ^ 完全かんぜんには同おなじではないが、宇宙うちゅう飛行ひこう士しは、自分じぶんの身体しんたいが浮ういてしまっている状況じょうきょうでの作業さぎょうの困難こんなんさを体験たいけんすることができる。

出典しゅってん

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  32. ^ この場合ばあい、大型おおがた風洞ふうどうがあれば原寸げんすん大だいのモックアップが使つかわれることもある。
  33. ^ 自動車じどうしゃの衝突しょうとつは塑性そせい衝突しょうとつに近ちかいという。詳細しょうさいは江守えもり『交通こうつう事故じこ工学こうがく』（技術ぎじゅつ書院しょいん）を参照さんしょうされたい。
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外部がいぶリンク

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