促成そくせい栽培さいばい

促成そくせい栽培さいばい（そくせいさいばい）とは、露地ろじでの栽培さいばい（露地ろじ栽培さいばい）よりも成長せいちょう・収穫しゅうかく・出荷しゅっかを早はやくする栽培さいばい法ほう。対義語たいぎごは抑制よくせい栽培さいばい。また、温度おんどや光線こうせんなどを調節ちょうせつすることで野菜やさい・花卉かきの発育はついくを促うながし、普通ふつう栽培さいばいよりも早はやく収穫しゅうかくする栽培さいばい法ほう。農作物のうさくもつなどを人工じんこう的てきに早はやく成長せいちょうさせる栽培さいばい。出荷しゅっか時期じきを早はやめることで、商品しょうひん価値かちを高たかめることにつながる。夏なつ野菜やさいをハウス栽培さいばい等とうにより、春はるに収穫しゅうかくするなどの例れいがある。

一般いっぱん的てきな促成そくせい栽培さいばいは、夏なつの作物さくもつを春はるに出荷しゅっかしたり、春はるの作物さくもつを冬ふゆに出荷しゅっかしたりするために、ビニールハウスや温室おんしつなどを利用りようして保温ほおん・加か温あつしする。逆ぎゃくに、秋冬あきふゆの作物さくもつを夏秋なつあきに前倒まえだおしする促成そくせい栽培さいばいは、冷却れいきゃくが困難こんなんなため行おこなわれていない。成育せいいく期間きかん中ちゅう、石油せきゆヒーターによる温風おんぷう暖房だんぼうなどを利用りようして加か温あつしする場合ばあいには、余分よぶんな燃料ねんりょう費ひがかかることになるので生産せいさんコストが上昇じょうしょうするが、市場いちば取引とりひきでの出荷しゅっか価格かかくが高水準こうすいじゅんで維持いじされる限かぎり露地ろじ栽培さいばいよりも多おおくの収益しゅうえきを上あげることが可能かのうである。

温暖おんだんな宮崎平野みやざきへいやや高知平野こうちへいやは、中学校ちゅうがっこう社会しゃかい科かの学習がくしゅうで取とり上あげられるほど促成そくせい栽培さいばいが顕著けんちょな地域ちいきである。キュウリ・ナス・ピーマンなど夏なつ野菜やさいが中心ちゅうしんで、春はるから出荷しゅっかを始はじめ、東京とうきょう市場いちば・大阪おおさか市場いちば近郊きんこうの茨城いばらき県けん・栃木とちぎ県けん・兵庫ひょうご県けん産さんの露地ろじ物ぶつが出回でまわり始はじめる初夏しょかまで出荷しゅっかを継続けいぞくする。温暖おんだんな気候きこうを活いかし、生産せいさんを早はやめたり、燃料ねんりょう費ひを抑おさえたりすることで、遠隔えんかく地ちでありながら出荷しゅっかが可能かのうである。

宮崎みやざき県けんとキュウリ生産せいさん量りょう日本一にっぽんいちを争あらそう群馬ぐんま県けんは、東京とうきょう市場いちばに近ちかく輸送ゆそう費ひの少すくない地域ちいき性せいを活いかし、冷涼れいりょうでありながら冬期とうきのうちに加か温ゆたか式しきの促成そくせい栽培さいばいを始はじめる。さらに、露地ろじ栽培さいばいに向むかない盛夏せいかを過すぎてから、晩夏ばんか〜秋あきの残暑ざんしょを利用りようした加か温ゆたか式しきの抑制よくせい栽培さいばいを行おこない、秋あきの出荷しゅっかで大おおきく挽回ばんかいする。

春作はるさく物ぶつの促成そくせい栽培さいばいも、ハウスを利用りようした加か温ゆたか式しきであるが、秋あきに植うえて冬ふゆ越ごしをする際さいに花芽かがを形成けいせいする種たねがあり、単純たんじゅんに加か温ぬくしても花はなが咲さかず、結実けつじつしない。12月のクリスマス商戦しょうせんを見越みこしたイチゴの促成そくせい栽培さいばいでは、秋あきのうちに苗なえを冷蔵れいぞうし、人工じんこう的てきに冬ふゆの環境かんきょうを作つくり出だして花芽かがを形成けいせいさせ、その後ごにハウスへ定植ていしょくする手間てまが加くわえられている。

歴史れきし的てきには、江戸えど時代じだいにおいて、油紙あぶらがみを張はった気密きみつ性せいの高たかい小屋こやが作つくられ、その中なかで炭すみを燃もやし、促成そくせい栽培さいばいが行おこなわれていたが、これは近世きんせい期きに初物はつものが好このまれる社会しゃかい風潮ふうちょうが生しょうじたことからいち早はやく出荷しゅっかするために行おこなわれるようになったとされる。明治めいじ時代じだいになると、明治めいじ42年ねんに高知こうち県けんの各地かくちに蔬菜そさい促進そくしん指導しどう地ちができ、油あぶらを引ひいた土佐とさ和紙わしで温床おんしょうを作つくり、胡瓜きゅうり・西瓜すいか・茄子なすびの栽培さいばいが始はじまった。高知こうちではその後ごも、大正たいしょう7年ねん（1918年ねん）に田内たうち銀ぎん喜きが冷床れいしょう促成そくせい栽培さいばいを成功せいこうさせ、戦後せんごは進駐軍しんちゅうぐんの塩化えんかビニールを、前川まえかわ宗はじめ喜きや下山しもやま忠雄ただおが研究けんきゅうして、園芸えんげい資材しざいへの転用てんよう化かに成功せいこうした。

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