儒学じゅがく者しゃ

儒学じゅがく者しゃ（じゅがくしゃ）とは、儒教じゅきょうを自みずからの行為こうい規範きはんにしようと儒教じゅきょうを学まなんだり、研究けんきゅう・教授きょうじゅする人ひとのことである。一般いっぱん的てきには儒者じゅしゃ（じゅしゃ、ずさ）と称しょうされ、特とくに儒学じゅがくを学まなぶものは儒生じゅせい（じゅせい）と呼よばれる。

概要がいよう

周しゅう代だいの初はじめごろより、六芸りくげいを講こうじる者ものが「儒」と呼よばれており、のちに転てんじて学者がくしゃを指さす言葉ことばとなった。諸子しょし百ひゃく家いえの学説がくせつが興おこるようになると、特とくに孔子こうしの門流もんりゅうのことを儒家じゅかと称しょうするようになり、その学者がくしゃを儒者じゅしゃと称しょうした。

儒教じゅきょうを宗教しゅうきょうとして信仰しんこうせずに儒教じゅきょうを研究けんきゅうする学者がくしゃは、「儒学じゅがく者しゃ」と呼よばずに、「儒教じゅきょう研究けんきゅう者しゃ」と呼よぶべきとする見方みかたもある。ただし京都きょうと大学だいがく教授きょうじゅの吉川よしかわ幸次郎こうじろうや、評論ひょうろん家かの呉ご智英ともひでは、自みずからを儒者じゅしゃであると主張しゅちょうし、儒教じゅきょうの立場たちばからさまざまな立論りつろんを行おこなっている。

日本にっぽんにおける儒者じゅしゃ

「日本にっぽんの儒教じゅきょう」を参照さんしょう

儒教じゅきょうが日本にっぽんに伝来でんらいした古代こだいから中世ちゅうせいには、紀伝きでん・明あかり経けい・明あかり法ほう・算さん道どうの四よん道みちを講こうじる者ものを四よん道みち儒者じゅしゃと呼称こしょうし、清原きよはら氏し、中原なかはら氏しなどの博士はかせが儒者じゅしゃのこの頃ころの儒者じゅしゃの代表だいひょう例れいである。ただしこの頃ころは経典きょうてんは漢籍かんせきの一環いっかんとして博士はかせ・仏ふつ僧そう・神職しんしょくなどの各かく職域しょくいき・身分みぶんにおいて学まなばれており、「儒者じゅしゃ」という職業しょくぎょうや身分みぶんは存在そんざいしなかった。儒者じゅしゃの職しょく・社会しゃかい的てき身分みぶんが成立せいりつするのは近世きんせい以降いこうのことである。

戦国せんごく時代じだいの末すえから江戸えど時代じだい初期しょきに、政治せいじ・学術がくじゅつ的てき知識ちしきが儒学じゅがくに求もとめられ、中国ちゅうごく・朝鮮ちょうせんの漢字かんじ文献ぶんけんの輸入ゆにゅう・流通りゅうつうが拡大かくだいした。それによって儒学じゅがくの転籍てんせきを読解どっかい・講釈こうしゃくする専門せんもん家かが出現しゅつげんし、これが儒者じゅしゃと呼よばれるようになった。江戸えど幕府ばくふが林はやし羅山らざんを登用とうようして以来いらい、幕府ばくふに御ご儒者じゅしゃ（おじゅしゃ、おずさ）という役職やくしょくが設もうけられた。これは将軍しょうぐんに経典きょうてんを講こうじ、文学ぶんがくや学問がくもんを司つかさどる職しょくであった。林家はやしやは3代目だいめの林はやし信篤のぶあつ以降いこうは従したがえ五ご位いに叙じょされ家か禄ろく3500石せきを受うけた。また、新井あらい白石はくせきは1000石せきの禄ろくを得えている。このような林家はやしや・新井あらいの待遇たいぐうの例れいはあるものの、一般いっぱんの御ご儒者じゅしゃの家いえ禄ろくは200から300石せき程度ていどであり、天保てんぽう以降いこうは教授きょうじゅ所しょに勤つとめる儒者じゅしゃは15～30人にん扶持ふちであった。諸しょ藩はんにおいても、野中のなか兼山けんざんが10000石せき、熊沢くまさわ蕃山ばんざんが3000石せきを執政しっせい・番頭ばんがしらの禄ろくとして得えていた例れいをのぞけば、200石せき以下いかが一般いっぱん的てきであった。

これらの儒者じゅしゃの出身しゅっしん身分みぶんは江戸えど時代じだい初期しょきには浪人ろうにん、中期ちゅうき以降いこうには商人しょうにん・医家いかが多おおく、武士ぶし以下いかの階層かいそうから出でて精神せいしん的てきに武士ぶしを指導しどうする地位ちいに立たつことができた。また中江なかえ藤樹とうじゅや伊藤いとう仁斎じんさいのような在野ざいやで儒を説とく町まち儒者じゅしゃが出現しゅつげんし、彼かれらはしばしば窮乏きゅうぼうしたものの、出仕しゅっしせずに大名だいみょうに儒学じゅがくを講こうじ社会しゃかい的てき地位ちいを得える者ものもあった。享とおる保ほ以降いこうは儒学じゅがくの研究けんきゅうが経学けいがく・史学しがく・考証こうしょう学がくなどに分化ぶんかし、儒者じゅしゃと称しょうするものの一様いちようではなくなった。中国ちゅうごく・朝鮮ちょうせんのように為政者いせいしゃが率先そっせんして儒学じゅがくの担にない手てになることがなく、儒者じゅしゃの生活せいかつ基盤きばんは弱よわいものであり、中なかには漢学かんがく者しゃとして儒教じゅきょう以外いがいのテキストを用もちいて蘭学らんがく・兵学へいがくなどの諸しょ学がくに転換てんかんする者ものもあった。

参考さんこう文献ぶんけん

• 黒住くろずみ真しん「儒者じゅしゃ」『日本にっぽん大だい百科全書ひゃっかぜんしょ』第だい11巻かん、小学館しょうがくかん、1986年ねん、2016年ねん4月がつ4日にち閲覧えつらん。  （ジャパンナレッジLibにて）
• 山本やまもと武夫たけお「儒者じゅしゃ」『国史こくし大だい辞典じてん』第だい7巻かん、吉川弘文館よしかわこうぶんかん、1987年ねん、2016年ねん4月がつ4日にち閲覧えつらん。  （ジャパンナレッジLibにて）
• 「儒者じゅしゃ」『日本にっぽん国語こくご大だい辞典じてん』第だい6巻かん、小学館しょうがくかん、2001年ねん、2016年ねん4月がつ4日にち閲覧えつらん。 （ジャパンナレッジLibにて）

関連かんれん項目こうもく

• 儒学じゅがく者しゃ一覧いちらん

外部がいぶリンク

• 『儒者じゅしゃ』 - コトバンク