凍結とうけつ融解ゆうかい作用さよう

凍結とうけつ融解ゆうかい作用さよう（とうけつゆうかいさよう）とは、周しゅう氷河ひょうが作用さようの一ひとつ。土壌どじょうや岩石がんせきが凍結とうけつと融解ゆうかいを繰くり返かえすことで地表ちひょうに多様たような効果こうかを及およぼす作用さようのことをいう。

概要がいよう

凍結とうけつ融解ゆうかい作用さようは、現在げんざい、地表ちひょうの70%近ちかくに及およぶ広ひろさでこの作用さようが見みられると言いわれている。熱帯ねったいの山地さんちでは昼夜ちゅうやの周期しゅうきで凍結とうけつ融解ゆうかい作用さようが働はたらくことで日にち周しゅう的てき凍土とうどが、また温帯おんたいの山地さんちではそれに加くわえて季き節ぶし的てき凍土とうどが生しょうじる。寒帯かんたいの永久えいきゅう凍土とうど地帯ちたいでも、夏なつになると地表ちひょう部ぶ1m前後ぜんこうが融解ゆうかいする。水みずは凍こおると体積たいせきが約やく9%増加ぞうかする。このことにより割われ目めに入はいり込こんだ水分すいぶんの凍結とうけつで起おこる岩石がんせきの破砕はさい（凍結とうけつ破砕はさい作用さよう）、地下ちかに向むかって冷却れいきゃくが進すすむことで起おこる凍結とうけつ面めんの凍上とうじょう、また凍上とうじょうに伴ともなって起おこる作用さようによって様々さまざまな地形ちけいが形成けいせいされる。凍結とうけつ融解ゆうかい作用さようによる効果こうかが顕著けんちょな地形ちけいの多おおくが周しゅう氷河ひょうが地形ちけいと呼よばれる。

凍結とうけつ作用さようのプロセス

凍結とうけつ融解ゆうかい作用さようの中なかでも、凍結とうけつ作用さようのプロセスについて記述きじゅつする。大地だいちの熱ねつ的てき収縮しゅうしゅく・凍結とうけつ割われ目めの発達はったつが促うながされる。凍結とうけつ割われ目めには多おおく分わけて以下いかの3つのタイプがある。

• 氷こおりによって満みたされた凍結とうけつ割われ目め。アイスウェッジ(氷こおり楔くさび)。
• 砂すなによって満みたされた凍結とうけつ割われ目め。サンドウェッジ。
• 無機質むきしつの土壌どじょうによって満みたされた凍結とうけつ割われ目め。ソイルウェッジ。

氷こおり晶あきら分離ぶんり

土壌どじょう凍結とうけつの際さい、土壌どじょうの中なかに存在そんざいする水分すいぶんが氷こおり晶あきら分離ぶんりを起おこす。氷こおり晶あきら分離ぶんりについてTaberの研究けんきゅうにより、以下いかの2点てんが明あきらかにされている。氷こおり晶あきら分離ぶんりは直径ちょっけい0.01mm以下いかの組成そせいを持もつ物質ぶっしつで生しょうじやすい。氷こおり晶あきらは、表面ひょうめんに垂直すいちょくな方向ほうこうに成長せいちょうする。これは、熱ねつがもっとも速はやく伝達でんたつされる方向ほうこうである。

凍結とうけつ・融解ゆうかいのサイクル

気候きこう帯たいによって凍結とうけつと融解ゆうかいのサイクル周期しゅうきが異ことなっている。

長期ちょうき的てきな作用さよう

Chambers により凍結とうけつが生しょうじる境界きょうかいを示しめす温度おんどとして±0.5℃の漸やや移うつり帯たいが採用さいようされた。長期ちょうき的てきな作用さようの特徴とくちょうとして、深ふかさ120cm以上いじょうの場所ばしょでは、土壌どじょうは年間ねんかんを通つうじて凍結とうけつしていることと、春はる・夏なつに融解ゆうかいする土壌どじょうであっても、土壌どじょう下か半分はんぶんの温度おんどは融解ゆうかい温度おんど帯たいには無なく、ほぼ通年つうねんで漸やや移うつり帯たい内ないにあることが挙あげられる。これらの理由りゆうとして次つぎの点てんがある。

• 秋あきの凍結とうけつで土壌どじょうに解放かいほうされた潜熱せんねつが、気温きおん低下ていかによる上方かみがたへの熱ねつ移動いどうを相殺そうさいすることで一時いちじ的てきな地温ちおんの安定あんてい化かが図はかられるから。
• 春はるの土壌どじょう融解ゆうかい期きに生しょうじる潜熱せんねつの吸収きゅうしゅうにより、気温きおん上昇じょうしょうに伴ともなう地温ちおんの上昇じょうしょうが遅おくらされるから。
• 永久えいきゅう凍土とうどの頂いただき部ぶを通とおって連続れんぞく的てきに土壌どじょう深部しんぶにもたらされる水分すいぶんが、温度おんど変化へんかを小ちいさくさせるから。

通常つうじょう、春はるの融解ゆうかい作用さようは速すみやかに行おこなわれる。気温きおんが初はじめて0℃を越こえた月つきの最初さいしょの5週間しゅうかんで、土壌どじょうの75%以上いじょうが融解ゆうかいする速はやさである。この急激きゅうげきな融解ゆうかいは、重力じゅうりょくで土壌どじょう中ちゅうに浸透しんとうした融とおる水すいが下層かそうの凍土とうどに熱ねつを伝達でんたつすることで生しょうじる。秋あきの凍結とうけつ作用さようには、地表ちひょうから下方かほうに向むかって進すすむ凍結とうけつと、下層かそうの永久えいきゅう凍土とうどから上方かみがたに向むかって進すすむ凍結とうけつとが存在そんざいする。春はるの融解ゆうかい作用さようと比くらべると、凍結とうけつにかかる期間きかんは長ながめであり、8-10週間しゅうかんを越こえる場合ばあいもある。

短期たんき的てきな作用さよう

上述じょうじゅつした長期ちょうき的てきな凍結とうけつ融解ゆうかい作用さようと併あわせて起おこる作用さようである。短期たんき的てきな作用さようでは、日にち的てきに生しょうじるものと天気てんきの変化へんかによるものに区分くぶんされる。日にち的てきに生しょうじる変化へんかでは、主おもに太陽たいよう高度こうどと太陽たいようの方位ほうい角かくの変化へんかによりもたらされる日射にっしゃ・地表ちひょうでの熱量ねつりょうの変化へんかと関係かんけいしている。また、雲くもの通過つうかや少量しょうりょうの降雨こううといった局地きょくち的てきな天気てんきの変化へんかでも、地温ちおんに変動へんどうをもたらし、凍結とうけつや融解ゆうかいに影響えいきょうを及およぼすことが多おおい。

形成けいせいされる地形ちけい

構造こうぞう土ど

凍結とうけつ融解ゆうかい作用さようにより地面じめんの凍上とうじょうが起おこると、地中ちちゅうの礫つぶてや砂すなが地上ちじょうに持もち上あげられ、氷こおりが融解ゆうかいすることで移動いどうする。この働はたらきで構造こうぞう土ど(patterned ground)と呼よばれる、地表ちひょうに礫つぶて・砂すなの模様もようのある地面じめんが作つくられる。構造こうぞう土どは主おもに裸はだか地ちや草地くさじででき、草地くさちにおいては草本そうほんの助たすけをかりて作つくられる構造こうぞう土ども存在そんざいする。また土地とちの傾斜けいしゃの程度ていどにより作つくられる構造こうぞう土どが異ことなる。凍結とうけつ・融解ゆうかいが著いちじるしく起おこる亜あ極きょく気候きこう下かでは、活動かつどう上層じょうそう部ぶが融解ゆうかい・再さい凍結とうけつ/加水かすい・脱水だっすい/湿潤しつじゅん化か・乾燥かんそう化か など様々さまざまな反作用はんさようを毎年まいとし経験けいけんすることが調査ちょうさ研究けんきゅうにより明あきらかになった。これらの作用さようが顕著けんちょな構造こうぞう土どを作つくり出だしていると言いえる。

円形えんけい土ど

平坦へいたんな土地とち（傾斜けいしゃが1-2°以下いか）で見みられる。円形えんけいの構造こうぞう土ど。

多角たかく形がた土ど

平坦へいたんな土地とちで見みられる。多角たかく形がたの構造こうぞう土ど。大だい規模きぼなものは一いち辺へんの長ながさが数かずmから数すう十じゅうmに及およぶものもある。

条じょう線せん土ど

数すう度どの傾斜けいしゃがある土地とちで見みられる。礫つぶてや砂すなによる線せんが間隔かんかくを置おいて連つらなる形かたちになっている、縞しま模様もようの構造こうぞう土ど。

階かい状じょう土ど

数すう度どの傾斜けいしゃがある土地とちで見みられる。波なみ型がた模様もようの構造こうぞう土ど。

凍結とうけつ・融解ゆうかいに伴ともなって起おこる作用さよう

凍結とうけつ破砕はさい作用さよう

隙間すきまや層そう理り面めんなどに存在そんざいする水分すいぶんの凍結とうけつにより、岩石がんせきが機械きかい的てきな破壊はかい・分解ぶんかいを起おこす作用さようである。周しゅう氷河ひょうが地域ちいきでは、凍結とうけつ破砕はさいを受うけた角かく礫つぶて・岩石がんせき等とうからなる地形ちけいが数多かずおおく見みられる。実験じっけんにより、大量たいりょうの水分すいぶんを供給きょうきゅうされる岩石がんせきの方ほうが、少量しょうりょうしか供給きょうきゅうされない岩石がんせきよりも分解ぶんかい量りょうがはるかに多おおいことが明あきらかになっている。詳くわしくは凍結とうけつ破砕はさい作用さようの項目こうもくを参照さんしょう。

凍結とうけつ淘汰とうた作用さよう

移動いどうする粒子りゅうしを均一きんいつな粒つぶ径みちに淘汰とうたする作用さようである。この作用さようについてCorteにより、以下いかの事項じこうが明あきらかになっている。

• 淘汰とうた作用さようは、ゆっくりした凍結とうけつ速度そくどで飽和ほうわした土壌どじょうにおいて最もっとも活発かっぱつに働はたらく。対たいして、急速きゅうそくに凍結とうけつした堆積たいせき物ぶつにはほとんど作用さようは生しょうじない。
• 凍結とうけつ・融解ゆうかい面めんの方向ほうこうを変かえることで、水平すいへい的てきに淘汰とうたされた層そう(垂直すいちょく的てき淘汰とうた作用さよう)は、垂直すいちょく的てきに淘汰とうたされた層そう(側がわ方かた淘汰とうた作用さよう)に変化へんかする。
• 垂直すいちょく的てき淘汰とうた作用さようを受うけた土壌どじょうは、側がわ方かたからの凍結とうけつにさらされると、ドーム状じょうになり、マウンドを形成けいせいする。

建造けんぞう物ぶつへの被害ひがい

寒冷かんれい地ちでも、建造けんぞう物ぶつを構成こうせいするコンクリート内うちに同様どうようの作用さようが見みられ、それに伴ともなって生しょうじる冷害れいがいが問題もんだい視しされている。欠陥けっかん部ぶ等とうよりコンクリート中ちゅうに入はいり込こんだ水分すいぶんが凍結とうけつし、体積たいせきの膨張ぼうちょうにより欠陥けっかん部ぶが拡大かくだいすることでコンクリートが劣化れっか、凍結とうけつと融解ゆうかいの作用さようが繰くり返かえして行おこなわれることで建造けんぞう物ぶつの損傷そんしょうは更さらに拡大かくだいする、といったものである。冷害れいがい対策たいさくとして、コンクリート内ないへの水分すいぶん侵入しんにゅうを防ふせぐために表面ひょうめん舗装ほそうを行おこなったり、冷害れいがいによる劣化れっかへの耐たい性せいに特とく化かしたコンクリートや石材せきざいの使用しよう等とうがなされている。

参考さんこう文献ぶんけん

• 「発達はったつ史し地形ちけい学がく」貝塚かいづか爽平著ちょ　東京とうきょう大学だいがく出版しゅっぱん会かい　1998
• 「周しゅう氷河ひょうが環境かんきょう」H.M.フレンチ著ちょ　小野おの有ゆう五ご訳やく　古今ここん書院しょいん　1984
• 「新版しんぱん地学ちがく教育きょういく講座こうざ9 地表ちひょう環境かんきょうの地学ちがく-地形ちけいと土壌どじょう」小池こいけ一之かずゆき・坂上さかがみ寛一かんいち・佐瀬させ隆たかし・高野たかの武男たけお・細野ほその衛まもる著ちょ　東海大学とうかいだいがく出版しゅっぱん会かい

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• 周しゅう氷河ひょうが地形ちけい