分ぶん知ち

分ぶん知ち（ぶんち）とは、武家ぶけの知行ちぎょうの一部いちぶを親族しんぞくに分与ぶんよすること。分地ぶんちとも。江戸えど時代じだいの幕まく藩はん体制たいせい下したで行おこなわれたものを指さすことが多おおい。

形式けいしき上じょうにおいては知行ちぎょうは主従しゅうじゅう関係かんけいと引換ひきかえに1代だい限かぎり授さづけられたものであったため、分ぶん知ちを希望きぼうする者ものは知行ちぎょうを与あたえてくれた主君しゅくん（大名だいみょう・旗本はたもとは将軍しょうぐん、藩士はんしは大名だいみょう）に許可きょかを得える必要ひつようがあり、また分ぶん知ちを受うけた者ものは主君しゅくんと新あらたに主従しゅうじゅう関係かんけいを結むすぶ必要ひつようがあった。このため、分ぶん知ちの実施じっしは新あらたな分家ぶんけ・家臣かしんを創出そうしゅつする効果こうかがあった。

概要がいよう

ある程度ていどの所領しょりょうを持もつ武家ぶけにおいては、将来しょうらいにおける家名かめい断絶だんぜつの事態じたいを避さけるために次男じなん以下いかを分家ぶんけさせるために分ぶん知ちを実施じっしすることがあった。また、後継こうけい争あらそいの防止ぼうしや分ぶん知ちを受うける者ものの身分みぶんを引ひき上あげる意図いとで行おこなわれることもあった。大名だいみょうの子弟していは分ぶん知ちを受うけることで、石高いしたかに応おうじて新あらたな譜代ふだい大名だいみょうもしくは直ちょく臣しん旗本はたもととしての扱あつかいを受うけることができたのである。分ぶん知ちの対象たいしょうとなる土地とちは自己じこの知行ちぎょう地ちだが、新あらたに知行ちぎょう地ち内ないで開発かいはつされた新田しんでんや先代せんだいが別途べっと隠居いんきょ料りょうなどの名目めいもくで授さづけられた土地とちが宛あてがわれることもあった。

通常つうじょう、分ぶん知ちを行おこなう場合ばあいには主君しゅくんの許可きょかを得えて、分ぶん知ちを受うける者ものは新あらたに家臣かしんに取とり立たてられて宛あて行状ぎょうじょう（大名だいみょうの場合ばあいは将軍しょうぐんの朱印しゅいん状じょうがこれに相当そうとうする）を交付こうふされることになるが、実際じっさいには宛あて行状ぎょうじょうの交付こうふは行おこなわれないこともあった。後者こうしゃのケースは本家ほんけからの半はん独立どくりつ状態じょうたいの分家ぶんけとみなされ、これを内分ないぶんまたは内分ないぶん分ぶん知ちといった。

通常つうじょう、分ぶん知ち後ごの分家ぶんけは主君しゅくんへの願ねがい・届とどけは単独たんどくで行おこなわれ、万まんが一いち改易かいえき・断絶だんぜつに至いたった場合ばあいにはその知行ちぎょうは主家しゅかに回収かいしゅうされたが、内分ないぶん分ぶん知ちによる分家ぶんけは半はん独立どくりつ扱あつかいとみなされたために本家ほんけの一定いっていの関与かんよが認みとめられ、主君しゅくんへの願ねがい・届とどけは本家ほんけの当主とうしゅを通つうじて出だすこととされ、また改易かいえきや無む嗣断絶だんぜつの時ときには本家ほんけの知行ちぎょうに復ふくすることとなっていた。

参考さんこう文献ぶんけん

• 鈴木すずき寿ひさし「分ぶん知ち」（『国史こくし大だい辞典じてん 12』（吉川弘文館よしかわこうぶんかん、1991年ねん） ISBN 978-4-642-07721-7）
• 上野うえの秀治しゅうじ「分ぶん知ち」（『日本にっぽん史し大だい事典じてん 5』、平凡社へいぼんしゃ、1993年ねん ISBN 978-4-582-13105-5）
• J・F・モリス「分ぶん知ち」（『日本にっぽん歴史れきし大だい事典じてん 3』（小学館しょうがくかん、2001年ねん） ISBN 978-4-09-523003-0）

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• 新田にった分ぶん知ち