朱印しゅいん状じょう

織田おだ信長のぶなが朱印しゅいん状じょう/兵庫ひょうご県立けんりつ歴史れきし博物館はくぶつかん蔵ぞう

織田おだ信長のぶなが朱印しゅいん状じょう/今井いまい郷さと惣中そうなか宛あて赦免しゃめん

徳川とくがわ家康いえやす朱印しゅいん状じょう/オランダ国立こくりつ公文書こうぶんしょ館かん蔵ぞう

朱印しゅいん状じょう（しゅいんじょう）とは、日本にっぽんにおいて（花押かおうの代かわりに）朱印しゅいんが押おされた公的こうてき文書ぶんしょ（印判いんばん状じょう）のことである。

主おもに戦国せんごく時代じだいから江戸えど時代じだいにかけて戦国せんごく大名だいみょう・藩主はんしゅや将軍しょうぐんにより発給はっきゅうされた。

特とくに、江戸えど時代じだいにおいて将軍しょうぐんが公家くげ・武家ぶけ・寺社じしゃの所領しょりょうを確定かくていさせる際さいに発給はっきゅうしたものは、領地りょうち朱印しゅいん状じょうとも呼よばれる。

概要がいよう

武家ぶけ文書ぶんしょである朱印しゅいん状じょうの初はつ見みは今川いまがわ氏し親おやが発給はっきゅうした「永えい正ただし九年三月二十四日今川氏親棟別役免除朱印状」とされている。この最古さいこの朱印しゅいん状じょうは永えい正ただし9年ねん（1512年ねん）に氏し親おやが西光寺さいこうじの棟むね別べつ銭ぜにを免除めんじょするために発給はっきゅうした文書ぶんしょである。以後いご、印判いんばん状じょうは北条ほうじょう氏し、武田たけだ氏し、上杉うえすぎ氏し、長尾ながお氏し、里見さとみ氏し、伊達だて氏しなど東国とうごくの有力ゆうりょく戦国せんごく大名だいみょうの間あいだで用もちいられ、さらに織田おだ信長のぶなが、豊臣とよとみ秀吉ひでよし、徳川とくがわ家康いえやすも朱印しゅいん状じょうを用もちいた。

印判いんばん状じょうは民政みんせい・軍事ぐんじ両面りょうめんで多おおくの公文書こうぶんしょ発給はっきゅうに迫せまられた大名だいみょう領国りょうごく制せいの元もとで花押かおう署しょ記きの手間てまを省はぶく手段しゅだんとして用もちいられた。朱印しゅいん・黒くろ印しるしの2種しゅの種別しゅべつは各かく大名だいみょう家かによって異ことなっていたが、使用しように区分くぶんを設もうけたかどうかは判明はんめいしていない。織田おだ信長のぶながも公文書こうぶんしょに黒くろ印しるし・朱印しゅいんを用もちいたが、外交がいこう文書ぶんしょなどの重要じゅうような文書ぶんしょには「天下てんか布ぬの武ぶ」の4字じが入はいった朱印しゅいん状じょうを用もちいたが、黒くろ印しるし状じょうによる例れいもあった。続つづく豊臣とよとみ秀吉ひでよしは朱印しゅいんのみを用もちいた。徳川とくがわ家康いえやすは更さらに楕円だえん形がたの朱印しゅいんと四角形しかっけいの朱印しゅいんの使つかい分わけを行おこなった。海外かいがい貿易ぼうえきを許可きょかする際さいには後者こうしゃを押おした朱印しゅいん状じょうを授さづけたことから、この朱印しゅいん状じょうを受うけて貿易ぼうえきを行おこなった船ふねを朱印船しゅいんせんと呼よび、後のちに「朱印船しゅいんせん貿易ぼうえき」の呼称こしょうが発生はっせいする。

江戸えど時代じだいには特とくに将軍家しょうぐんけや諸しょ大名だいみょうが武士ぶしに対たいして知行ちぎょう充たかし行ぎょうや知行ちぎょう安堵あんどをした証あかし、または寺社じしゃに対たいして土地とち寄進きしんをするときの文書ぶんしょとして利用りようされた。

家康いえやす以来いらい、10万まん石せきもしくは四よん位い以上いじょうの大名だいみょう・摂関せっかん家か及および清華せいか家か・大臣だいじん家か・従したがえ一いち位いの公家くげに対たいする知行ちぎょう安堵あんどは花押かおうを署しょ記しるした判はん物ぶつ、10万まん石せき以下いかの武士ぶしの知行ちぎょう安堵あんどや寺社じしゃ領りょうの寄進きしん・安堵あんどは朱印しゅいん状じょう、将軍しょうぐんの私的してきな書状しょじょうや軽微けいびな事項じこうでは黒くろ印しるし状じょうによって発給はっきゅうされた。ただし、初期しょきの頃ころは例外れいがい的てきな発給はっきゅうも多おおくあった。後のちに旗本はたもとには朱印しゅいん状じょうの交付こうふはされなくなり、小規模しょうきぼ寺社じしゃに対たいする寄進きしんなどには黒くろ印しるし状じょうが用もちいられるなどの変遷へんせんもあり、一定いっていの格式かくしきが定さだまるのは徳川とくがわ家綱いえつなの時代じだいとされている。なお、藩主はんしゅにおいても朱印しゅいん状じょうと黒くろ印しるし状じょうの使つかい分わけが行おこなわれていた（朱印しゅいん状じょうを発給はっきゅうできるのは将軍しょうぐんのみという説せつは俗説ぞくせつである）。

参考さんこう文献ぶんけん

• 荻野おぎの三さん七なな彦「朱印しゅいん状じょう」（『国史こくし大だい辞典じてん 7』（吉川弘文館よしかわこうぶんかん、1986年ねん） ISBN 978-4-642-00507-4）
• 岩澤いわさわ愿すなお彦「朱印しゅいん状じょう」（『日本にっぽん史し大だい事典じてん 3』（平凡社へいぼんしゃ、1993年ねん） ISBN 978-4-582-13103-1）
• 神崎かんざき彰利あきとし「朱印しゅいん状じょう」（『日本にっぽん歴史れきし大だい事典じてん 2』（小学館しょうがくかん、2000年ねん） ISBN 978-4-09-523002-3）

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