化学かがくてき酸素さんそ要求ようきゅうりょう

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化学かがくてき酸素さんそ要求ようきゅうりょう(かがくてきさんそようきゅうりょう、COD, Chemical Oxygen Demand)とは、水中すいちゅう酸化さんかせい物質ぶっしつ酸化さんかするために必要ひつようとする酸素さんそりょうしめしたものである。代表だいひょうてき水質すいしつ指標しひょうひとつであり、酸素さんそ消費しょうひりょうともばれる。

概要がいよう[編集へんしゅう]

CODは排水はいすい基準きじゅんもちいられ、海域かいいき湖沼こしょう環境かんきょう基準きじゅんもちいられている[1]。CODのは、試料しりょう水中すいちゅう酸化さんかせい物質ぶっしつりょう一定いってい条件下じょうけんか酸化さんかざいにより酸化さんかし、そのさい使用しようした酸化さんかざいりょうから酸化さんか必要ひつよう酸素さんそりょうもとめて換算かんさんしたものであり、単位たんいは mg/L(またはppm)を使用しようする。酸化さんか物質ぶっしつには、各種かくしゅ有機物ゆうきぶつ硝酸塩しょうさんえん硫化りゅうかぶつなどの無機物むきぶつがあるが、おもな酸化さんかぶつ有機物ゆうきぶつである。そのため、CODがたかいほど有機物ゆうきぶつりょうおおいといえる。類似るいじした指標しひょうBODがあるが、BODとのちがいは、CODが有機物ゆうきぶつ無機物むきぶつ両方りょうほう要求ようきゅう酸素さんそりょうであるのにたいし、BODは生物せいぶつ分解ぶんかいせい有機物ゆうきぶつのみの酸素さんそ要求ようきゅうりょうであるというてんである。また、CODは30ふん~2あいだ程度ていど短期間たんきかんもとめられるのにたいし、BODはなが時間じかん(20くらところに5日間にちかん保存ほぞん)をようするため、CODがBODの代替だいたい指標しひょうとしてもちいられることもある。

有機物ゆうきぶつおお水質すいしつ悪化あっかしたみずほどCODはたかくなるが、還元かんげんせい無機物むきぶつによってもCODはたかくなるため一概いちがい水質すいしつわるいとはれない。また、酸化さんかざい種類しゅるい濃度のうど酸化さんか温度おんど時間じかん有機物ゆうきぶつ種類しゅるい濃度のうどによっても測定そくていことなることがあるため、一義的いちぎてきにCODを比較ひかくすることはむずかしい。 一方いっぽう過去かこ国内こくないにおける環境かんきょう施策しさくとして、生活せいかつ工業こうぎょう排水はいすい水質すいしつ規制きせい農業のうぎょう肥料ひりょう使用しよう抑制よくせい畜産ちくさんぎょう家畜かちく糞尿ふんにょう適正てきせい処理しょりなどのりくいき負荷ふか削減さくげんつとめてきているが、海域かいいきのCOD濃度のうど低下ていかせずに横這よこばいの状況じょうきょうであり、りくいき負荷ふか削減さくげん効果こうか海域かいいきのCOD濃度のうどにはあらわれていない。この要因よういん海域かいいき普遍ふへんてき発生はっせいする植物しょくぶつプランクトンなどが有機物ゆうきぶつとして検出けんしゅつされることによる。

日本にっぽんにおけるCOD[編集へんしゅう]

日本にっぽん環境かんきょう基準きじゅんとうにおいて使用しようされる酸化さんかざいは、測定そくてい長時間ちょうじかんようするBODの代替だいたい指標しひょうとの意味合いみあいから、比較的ひかくてき酸化さんかりょくよわ生物せいぶつ分解ぶんかいせい有機物ゆうきぶつ酸化さんかちかマンガンさんカリウムによる酸性さんせい高温こうおんマンガンさんほう (CODMn) が採用さいようされている。

これにたいして、有機物ゆうきぶつ全量ぜんりょう推定すいていするものとして、強力きょうりょく酸化さんかざいであるクロムさんカリウムによるクロムさんほう (CODCr) がある(クロムのかん数字すうじの2。かつては、じゅうクロムさんカリウムとばれた)。

日本にっぽんにおいてCODMn採用さいようしたことには、生物せいぶつ分解ぶんかい不可能ふかのう有機ゆうき物質ぶっしつは「酸素さんそ消費しょうひ」という環境かんきょう問題もんだい原因げんいん物質ぶっしつでないことから、環境かんきょう基準きじゅんをはじめとして環境かんきょう規制きせい対象たいしょうとしなかったとの経緯けいいがある。また、典型てんけいてき環境かんきょう問題もんだい公害こうがい問題もんだいとしてろくクロム汚染おせんがあるなか、このろくクロム(クロムさんカリウムはそのひとつ)を使用しようする測定そくてい方法ほうほう採用さいようしにくかったこともCODMn採用さいよう消極しょうきょくてき理由りゆうとされる。このように、様々さまざま解釈かいしゃく評価ひょうかのあるCODMnであるが、とくにCODMn長期間ちょうきかんBOD(たとえばBOD20)などとのあいだには、その水中すいちゅう物質ぶっしつ物質ぶっしつ構成こうせいによってはその測定そくてい相当そうとうひらきがあることもあり、その代替だいたい指標しひょうせいについて疑問ぎもんていせられる場合ばあいがある。

また、有機ゆうき炭素たんそ簡易かんい測定そくていできるTOC普及ふきゅうしたことにより、CODCrわりとく学術がくじゅつてきにはTOCがぜん有機物ゆうきぶつあらわ指標しひょうとして採用さいようされる状況じょうきょうにある。


酸化さんかざい種類しゅるいによる測定そくてい方法ほうほう種類しゅるい[編集へんしゅう]

CODCrクロムさんほうクロムさんカリウムによる酸素さんそ要求ようきゅうりょう
欧米おうべいひろもちいられる方法ほうほうで、もっと酸化さんかりょくつよいためほぼ全量ぜんりょう有機物ゆうきぶつ分解ぶんかいされる。このため、2あいだ還流かんりゅうによる加熱かねつ操作そうさ必要ひつようとなる。また、塩化えんかぶつイオンによる影響えいきょうふせぐため、硫酸りゅうさんぎん (Ag2SO4) をもちいる。
CODMn酸性さんせい高温こうおんマンガンさんほう、100℃におけるマンガンさんカリウムによる酸素さんそ要求ようきゅうりょう
日本にっぽんにおける法定ほうてい試験しけん方法ほうほうであるため、国内こくないもっとひろもちいられる。この方法ほうほうは、検査けんさすい混合こんごうした5 mmol/Lマンガンさんカリウム溶液ようえき沸騰ふっとうみずで30分間ふんかんねっしたときに酸化さんかされたマンガンさんカリウムのりょう測定そくていすることで、消費しょうひされた酸素さんそりょう算出さんしゅつする[2]塩化えんかぶつイオンによる影響えいきょうふせぐため、硝酸銀しょうさんぎん (AgNO3) をもちいる。有害ゆうがい物質ぶっしつのクロムを使用しようしない、測定そくてい操作そうさ短時間たんじかんなどのメリットはあるが、酸化さんかりょくよわくCODCrよりもひく数値すうちとなることがおおい。
CODOHアルカリ性あるかりせいマンガンさんカリウムによる酸素さんそ要求ようきゅうりょう
塩化えんかぶつイオンがおお海水かいすいなどにもちいられる方法ほうほう
COD-アルカリ性あるかりせいアルカリ性あるかりせい100℃におけるマンガンさんカリウムによる酸素さんそ要求ようきゅうりょう
硝酸銀しょうさんぎん使用しようする必要ひつようがなく、CODOHくらべて残留ざんりゅうするマンガンさんカリウムのしずくじょう簡素かんそなため、海水かいすい混入こんにゅうするおそれがある場所ばしょ日常にちじょうてき試験しけんおこな場合ばあいもちいられる。
COD-硫酸りゅうさんぎん硫酸りゅうさんぎんもちいる100℃におけるマンガンさんカリウムによる酸素さんそ要求ようきゅうりょう
マンガンさんカリウムを酸化さんかざいとしてもちいたとき塩化えんかぶつイオンによる影響えいきょうふせぐため、硝酸銀しょうさんぎんわりに硫酸りゅうさんぎんもちいる方法ほうほう

関連かんれん項目こうもく[編集へんしゅう]

出典しゅってん[編集へんしゅう]

  1. ^ 用語ようご解説かいせつ化学かがくてき酸素さんそ要求ようきゅうりょう(COD)” (2013-1-22にち). 2018ねん2がつ14にち閲覧えつらん
  2. ^ 編集へんしゅうしゃ大沢おおさわはじめ内海うつみ英雄ひでお環境かんきょう衛生えいせい科学かがく南江堂なんこうどう、2006ねん、382ぺーじ

参考さんこう文献ぶんけん[編集へんしゅう]