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はん単純たんじゅんリー代数だいすう

出典しゅってん: フリー百科ひゃっか事典じてん『ウィキペディア(Wikipedia)』

数学すうがくにおいてリー代数だいすうはん単純たんじゅんであるとは単純たんじゅんリー代数だいすう自分じぶん自身じしんと0以外いがいイデアルたないようなかわリー代数だいすう)の直和なおかずとなることをいう。

この記事きじないではとく注意ちゅういしないかぎしるべすう0のからだじょう有限ゆうげん次元じげんリー代数だいすうとする。以下いか条件じょうけんすべ同値どうちである。

  • はん単純たんじゅん
  • キリング形式けいしき κかっぱ(x,y) = tr(ad(x)ad(y)) が退化たいか
  • は0でないかわイデアルをたない
  • は0でないかいイデアルをたない
  • 根基こんき (最大さいだいかいイデアル) は0

以下いかはん単純たんじゅんリー代数だいすうれいは、ディンキン図形ずけい分類ぶんるい由来ゆらいする記法きほうもちいてあらわされている。

これらのリー代数だいすうn がランクとなるように番号ばんごうけられている。てい次元じげんでの例外れいがいのぞき、これらのだい部分ぶぶん単純たんじゅんリー代数だいすうである。これらよっつのぞくいつつの例外れいがいがた (E6、E7、E8、F4、G2)で複素数ふくそすうたいじょう単純たんじゅんリー代数だいすうくされている。

分類ぶんるい

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単純たんじゅんリー代数だいすう連結れんけつディンキン図形ずけいによって分類ぶんるいされる。

代数だいすう閉体じょうはん単純たんじゅんリー代数だいすう定義ていぎより単純たんじゅんリー代数だいすう直和なおかずであり、また単純たんじゅんリー代数だいすうよっつのぞく(An、Bn、Cn、Dn)といつつの例外れいがい( E6、E7、E8、F4、G2)でくされる。単純たんじゅんリー代数だいすうみぎしめした連結れんけつディンキン図形ずけいによって分類ぶんるいされ、はん単純たんじゅんリー代数だいすうかならずしも連結れんけつとはかぎらないディンキン図形ずけい対応たいおうしている。

分類ぶんるいカルタン部分ぶぶん代数だいすう(最大さいだいかわリー代数だいすう)とそれにたいする随伴ずいはん表現ひょうげん調しらべることによりすすめられる。その作用さようルートけいもとのリー代数だいすう決定けっていし、またつよ制約せいやくたすことからディンキン図形ずけいにより分類ぶんるいされる。

単純たんじゅんリー代数だいすう分類ぶんるい数学すうがくにおけるもっともエレガントな結果けっかひとつであるとひろかんがえられており、簡潔かんけつないくつかの公理こうり比較的ひかくてきみじか証明しょうめいにより完全かんぜんかつ自明じめいおどろくべき構造こうぞうそなえた分類ぶんるいしている。これはより複雑ふくざつ有限ゆうげん単純たんじゅんぐん分類ぶんるいとも比較ひかくされるべきである。

重複じゅうふくのない単純たんじゅんリー代数だいすう列挙れっきょが、 Anたい、 Bnたい、Cnたい、Dnたい とすることによりられる。よりていつぎ部分ぶぶんはディンキン図形ずけい同型どうけいにより重複じゅうふく発生はっせいする。また En添字そえじを6よりもちいさくすることも可能かのうであるが、その場合ばあい例外れいがいてきではないほかのディンキン図形ずけい同型どうけいになる。

代数だいすう閉体でない場合ばあいには分類ぶんるいはより複雑ふくざつである。その場合ばあいには、代数だいすう閉体じょう単純たんじゅんリー代数だいすう分類ぶんるいし、その各々おのおのたいして(代数だいすう閉包へいほううえで)おなじキリング形式けいしきつようなリー代数だいすう分類ぶんるいする。たとえば単純たんじゅんじつリー代数だいすう分類ぶんるいするにはあたえられた複素ふくそつようなじつリー代数だいすう複素ふくそリー代数だいすうじつかたちばれる)を分類ぶんるいする必要ひつようがある。これは佐武さたけ図形ずけいばれる付加ふか構造こうぞうきのディンキン図形ずけいもちいることによる可能かのうとなる。

歴史れきし

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複素数ふくそすうたいじょうはん単純たんじゅんリー代数だいすうヴィルヘルム・キリング (1888–90)によりはじめて分類ぶんるいされたが、かれ証明しょうめい厳密げんみつせいいていた。 エリ・カルタン (1894) はその学位がくい論文ろんぶんなかでキリングの証明しょうめい厳密げんみつし、さらはん単純たんじゅんじつリー代数だいすう分類ぶんるいあたえた。これはさらに洗練せんれんされ、現在げんざいのディンキン図形ずけいによる分類ぶんるいは22さいユージン・ディンキン により1947ねんあたえられた。

性質せいしつ

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完全かんぜんやくせい

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はん単純たんじゅんせい帰結きけつひとつは、すべての有限ゆうげん次元じげん表現ひょうげん完全かんぜんやくになるというワイル完全かんぜんやくせい定理ていりである。はん単純たんじゅんリー代数だいすう無限むげん次元じげん表現ひょうげん一般いっぱんかならずしも完全かんぜんやくとならない。

中心ちゅうしんがゼロとなること

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リー代数だいすう 中心ちゅうしんかわイデアルとなるため、もし はん単純たんじゅんであれば、その中心ちゅうしんはゼロである。たとえば 自明じめい中心ちゅうしんつのではん単純たんじゅんではない。べつのいいかたをすれば 随伴ずいはん表現ひょうげん たんしゃである。さらに うえ微分びぶんからなるリー代数だいすう 同型どうけいになる。これはホワイトヘッドの補題ほだい特別とくべつ場合ばあいである。またはん単純たんじゅんリー代数だいすうのイデアル、しょうせきすべはん単純たんじゅんとなる。

ジョルダン分解ぶんかい

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代数だいすう閉体じょう有限ゆうげん次元じげんベクトル空間くうかん任意にんい自己じこじゅん同型どうけい xたいし、たいかく可能かのう部分ぶぶん sべきれい部分ぶぶん nただひと存在そんざいsnかわかつ

となる。 よりつよsnx多項式たこうしきとなる。これはジョルダン分解ぶんかいからしたがう。

たいx随伴ずいはん写像しゃぞうでのぞうのジョルダン分解ぶんかい

あたえられる。 sn は、 nべきれいsはん単純たんじゅんnsかわ となる唯一ゆいいつもとである。この抽象ちゅうしょうてきなジョルダン分解ぶんかい任意にんい表現ひょうげん ρろーたいしてもジョルダン分解ぶんかいあたえる。つまり

表現ひょうげん自己じこ同型どうけいたまきにおける ρろー(x) のジョルダン分解ぶんかいあたえている。

複素ふくそはん単純たんじゅんリー代数だいすうのランクはそのカルタン部分ぶぶん代数だいすう次元じげん一致いっちする。

重要じゅうようせい

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はん単純たんじゅんせいだいいち重要じゅうようせいは、任意にんい有限ゆうげん次元じげんリー代数だいすうかいイデアルとはん単純たんじゅんリー代数だいすうはん直積ちょくせきとなることをべたレヴィ分解ぶんかいからている。

かいイデアルの場合ばあいとは対照たいしょうてきに、はん単純たんじゅんリー代数だいすう非常ひじょうにエレガントな分類ぶんるいっている。代数だいすう閉体じょうはん単純たんじゅんリー代数だいすうはルートけいによって、またルートけいはディンキン図形ずけいによって完全かんぜん分類ぶんるいされてしまう。

またはん単純たんじゅんリー代数だいすう有限ゆうげん次元じげん表現ひょうげん分類ぶんるい一般いっぱんのリー代数だいすう分類ぶんるいくら簡単かんたんである。たとえばはん単純たんじゅんリー代数だいすうのジョルダン分解ぶんかいはその表現ひょうげんにおけるジョルダン分解ぶんかい一致いっちする。これは一般いっぱんのリー代数だいすうでは成立せいりつしないことである。

はん単純たんじゅんであれば となる。とく線形せんけいはん単純たんじゅんリー代数だいすうすべ特殊とくしゅ線形せんけいリー代数だいすう 部分ぶぶん代数だいすうとなる。構造こうぞう研究けんきゅうはん単純たんじゅんリー代数だいすう表現ひょうげんろん重要じゅうよう一部分いちぶぶんである。

一般いっぱん

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はん単純たんじゅんリー代数だいすうにはいくつかの一般いっぱんがある。まずはん単純たんじゅんリー代数だいすうたいして成立せいりつするおおくの命題めいだいが、より一般いっぱん簡約かんやくリー代数だいすうたいしても成立せいりつする。抽象ちゅうしょうてきには簡約かんやくリー代数だいすうとはその随伴ずいはん表現ひょうげん完全かんぜんやくとなるものであり、具体ぐたいてきには簡約かんやくリー代数だいすうとははん単純たんじゅんリー代数だいすうかわリー代数だいすう直和なおかずである。たとえば はん単純たんじゅんリー代数だいすうであり 簡約かんやくリー代数だいすうである。

はん単純たんじゅん/簡約かんやく複素ふくそリー代数だいすう性質せいしつおおくが、代数だいすう閉体とはかぎらないからだじょう分裂ぶんれつはん単純たんじゅん/簡約かんやく)リー代数だいすうたいして成立せいりつする。代数だいすう閉体じょうの(はん単純たんじゅん/簡約かんやく)リー代数だいすうかなら分裂ぶんれつするがからだではかならずしもそうではない。分裂ぶんれつはん単純たんじゅんリー代数だいすう代数だいすう閉体じょうはん単純たんじゅんリー代数だいすう本質ほんしつてきおな表現ひょうげんろんっている。たとえば分裂ぶんれつカルタン部分ぶぶん代数だいすう代数だいすう閉体じょうカルタン部分ぶぶん代数だいすうおな役割やくわりたす。これはたとえば (Bourbaki 2005) でとられたアプローチである。

脚注きゃくちゅう

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参考さんこう文献ぶんけん

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  • Bourbaki, Nicolas (2005), “VIII: Split Semi-simple Lie Algebras”, Elements of Mathematics: Lie Groups and Lie Algebras: Chapters 7–9, https://books.google.co.jp/books?id=Yh1RHnYCDNsC&pg=PA69&redir_esc=y&hl=ja 
  • Erdmann, Karin; Wildon, Mark (2006), Introduction to Lie Algebras (1st ed.), Springer, ISBN 1-84628-040-0 .
  • Humphreys, James E. (1972), Introduction to Lie Algebras and Representation Theory, Berlin, New York: Springer-Verlag, ISBN 978-0-387-90053-7 .
  • Varadarajan, V. S. (2004), Lie Groups, Lie Algebras, and Their Representations (1st ed.), Springer, ISBN 0-387-90969-9 .