収穫しゅうかく祭さい作戦さくせん

収穫しゅうかく祭さい作戦さくせん（独どく：Aktion Erntefest, アクチオン・エルンテフェスト）は、ナチス・ドイツが1943年ねん11月3日にちと11月4日にちの2日間にちかんにルブリン強制きょうせい収容しゅうよう所しょ（マイダネク）においてユダヤ人じんを大量たいりょう銃殺じゅうさつした事件じけんのドイツ側がわの作戦さくせん名めいである。ユダヤ人じん側がわは「血ちの水曜日すいようび」と呼よんだ。

虐殺ぎゃくさつ

1943年ねん10月がつ、ドイツ内相ないしょう・親衛隊しんえいたい全国ぜんこく指導しどう者しゃハインリヒ・ヒムラーがルブリン・ユダヤ人じんの虐殺ぎゃくさつを目的もくてきとする「収穫しゅうかく祭さい作戦さくせん」を行おこなうよう命令めいれいを下くだした。この命令めいれいは「ポーランド総督そうとく府ふ」親衛隊しんえいたい及および警察けいさつ高級こうきゅう指導しどう者しゃフリードリヒ・ヴィルヘルム・クリューガーを通つうじて「ルブリン」親衛隊しんえいたい及および警察けいさつ指導しどう者しゃヤーコプ・シュポレンベルクに伝達でんたつされた。

この時ときルブリン地区ちくのユダヤ人じんはルブリン強制きょうせい収容しゅうよう所しょ、トラヴニキ強制きょうせい労働ろうどう収容しゅうよう所しょ (de) 、ポニアトーヴァ強制きょうせい労働ろうどう収容しゅうよう所しょ (de) のいずれかで働はたらかされていた。ルブリン強制きょうせい収容しゅうよう所しょの付属ふぞく収容しゅうよう所しょには「東方とうほう工業こうぎょう所しょ」があり、ここで1万まん6000人にんのユダヤ人じん囚人しゅうじんが労働ろうどうしていた。トラヴニキとポニアトーヴァのユダヤ人じん囚人しゅうじんは解体かいたいされたワルシャワ・ゲットーから連つれてこられた人々ひとびとで、それぞれシュルツ社しゃとテベンス社しゃで労働ろうどうしていた。

1943年ねん10月がつ末まつ頃ごろ「防空壕ぼうくうごう」と称しょうしてルブリン強制きょうせい収容しゅうよう所しょの死体したい焼却しょうきゃく場じょうの近ちかくの第だい5地区ちくと第だい6地区ちくに突然とつぜん穴あなが掘ほられた。作業さぎょうを行おこなったのは囚人しゅうじんたちであり、深ふかさ2メートル以上いじょう、長ながさ100メートルの穴あなが3つ掘ほられたという。

11月3日にち朝あさからルブリン収容しゅうよう所しょにいるユダヤ人じん囚人しゅうじん8400人にん、呼よび戻もどされた外部がいぶ作業さぎょう班はんやトラヴニキ・ポニアトーヴァから連つれてこられたユダヤ人じん囚人しゅうじんたち1万まん人にんほどが長ながい隊列たいれつを組くんで第だい5地区ちくへ向むかわされた。彼かれらは第だい5地区ちくのバラックで裸はだかにされ、50人にんから100人にんずつ穴あなに入いれられ、そこにうつぶせに寝ねかせられて銃殺じゅうさつされていった。次つぎのグループはその死体したいの上うえに寝ねるよう命めいじられ、また銃殺じゅうさつされた。この繰くり返かえしで穴あながいっぱいになるまで銃殺じゅうさつが続つづけられ、11月3日にちだけで1万まん8000人にんが殺ころされたという。さらに11月4日にちに殺害さつがいされたユダヤ人じんの数すうとあわせて犠牲ぎせい者しゃ数すうは総計そうけい4万まん人にん以上いじょうにおよぶという。

背景はいけい

歴史れきし学者がくしゃジェラルド・ライトリンガー (en) は、ヒムラーが東方とうほう工業こうぎょう所しょの生産せいさん性せいの低ひくさに激怒げきどして突発とっぱつ的てきに下くだした虐殺ぎゃくさつ命令めいれいではないかと考察こうさつしている。

ドイツ軍需ぐんじゅ相しょうアルベルト・シュペーアは親衛隊しんえいたい内部ないぶの対立たいりつ（ユダヤ人じんを奴隷どれい労働ろうどう力りょくとして利用りようしたい経済けいざい管理かんり本部ほんぶとユダヤ人じんを絶滅ぜつめつさせたい国家こっか保安ほあん本部ほんぶ）が背景はいけいにあり、この作戦さくせんを起おこした犯人はんにんは国家こっか保安ほあん本部ほんぶ及およびそのバックであるアドルフ・ヒトラーとマルティン・ボルマンではないかと推測すいそくしている。

神戸大学こうべだいがく教授きょうじゅ栗原くりはら優ゆうは、1943年ねん8月がつ2日にちにトレブリンカ絶滅ぜつめつ収容しゅうよう所しょ、ついで10月がつ14日にちにソビボル絶滅ぜつめつ収容しゅうよう所しょで起おこった二ふたつのユダヤ人じんの反乱はんらんにヒムラーが刺激しげきされたのではないかと考察こうさつしている。

参考さんこう文献ぶんけん

• グイド・クノップ 著しる、高木たかぎ玲れい、藤島ふじしま淳一じゅんいち 訳わけ『ホロコースト全ぜん証言しょうげん―ナチ虐殺ぎゃくさつ戦せんの全体ぜんたい像ぞう』原はら書房しょぼう、2004年ねん。ISBN 978-4562037261。 
• 栗原くりはら優ゆう 著しる、石川いしかわ順子じゅんこ/高橋たかはし宏ひろし 訳わけ『ナチズムとユダヤ人じん絶滅ぜつめつ政策せいさく ホロコーストの起源きげんと実態じったい』ミネルみねるヴァ書房ぁしょぼう、1997年ねん。ISBN 978-4623027019。 
• ヴォルフガング・ベンツ 著しる、中村なかむら浩平こうへい・中村なかむら仁ひとし 訳やく『ホロコーストを学まなびたい人ひとのために』柏書房かしわしょぼう、2004年ねん。ISBN 978-4760124794。 
• マルセル・リュビー 著しる、菅野かんの賢治けんじ 訳わけ『ナチ強制きょうせい・絶滅ぜつめつ収容しゅうよう所しょ 18施設しせつ内ないの生なまと死し』筑摩書房ちくましょぼう、1998年ねん。ISBN 978-4480857507。