(Translated by https://www.hiragana.jp/)
囲い罠 - Wikipedia コンテンツにスキップ

がこわな

出典しゅってん: フリー百科ひゃっか事典じてん『ウィキペディア(Wikipedia)』

がこわな(かこいわな、英語えいご:corral trap)とは、がこじょう構造こうぞうぶつなか複数ふくすう野生やせい動物どうぶつおも哺乳類ほにゅうるい)をめていち捕獲ほかくするわなのことである。

概要がいよう

[編集へんしゅう]

がこわなシカなどの大型おおがた哺乳類ほにゅうるいイノシシウサギなどの大量たいりょう捕獲ほかく利用りようされる[1]わな木材もくざいもしくは立木たちき支柱しちゅうとして金属きんぞくばん木版もくはんぬの、ネットなどでかこまれた常設じょうせつ構造こうぞうぶつとなっている[2]大掛おおがかりながこわなおおく、きたアメリカビッグホーン捕獲ほかくでは2エーカー(8000平方へいほうm)もの面積めんせき巨大きょだいがこわな設置せっちされ[3]日本にっぽん数少かずすくない事例じれいとしては北海道ほっかいどう洞爺湖とうやこ中島なかじまエゾシカ捕獲ほかく使用しようされたがこわなそう周囲しゅういちょうが300mをえる[4]がこわなには動物どうぶつ出入でいりできる侵入しんにゅうこう(ゲート)がそなけられており、一定いっていかず動物どうぶつなかはいるのを確認かくにんしたのち侵入しんにゅうこうじて捕獲ほかくする。侵入しんにゅうこうかたはさまざまで、手動しゅどうじるものもあれば遠隔えんかく操作そうさによってめられるものもある[2]。また、そとからは自由じゆう侵入しんにゅうできるが、わななかからは脱出だっしゅつできないような仕組しくみをもつ場合ばあいもある[5]構造こうぞうてきには「屋根やねのない大型おおがたはこわな」といえる[3]

動物どうぶつおびせるえさには、アルファルファなどの乾草かんそうリンゴしおるいみずなどが利用りようされる[2]なかめられた動物どうぶつ複数ふくすう人間にんげん勢子せことしてむなどして行動こうどう制限せいげんし、麻酔ますいなどでうごきをふうじる。さらにかこわな一方いっぽう漏斗ろうとじょうせばめて暗室あんしつやクローバーしきわななどのはこわなわせることで捕獲ほかくをより安全あんぜんおこなえるよう改良かいりょうがなされる[2]

アルパインキャプチャー

[編集へんしゅう]

アルパインキャプチャーはかこわな一種いっしゅであるが、その形態けいたい捕獲ほかく方法ほうほう通常つうじょうがこわなとはおおきくことなる。基本きほんてき六角形ろっかっけいもしくは四角形しかっけい構成こうせいするかたちで6ほんもしくは4ほん支柱しちゅうっておりそれぞれをむすぶようにぬのやネットがはられているが、そのぬのやネットは最初さいしょ段階だんかいでは地面じめんろされていて四方しほうのどこからでも動物どうぶつ出入でいりできる状態じょうたいにある[6]。ある程度ていどまとまったかず動物どうぶつ誘引ゆういんされてわなないはいむのを確認かくにんすると同時どうじに、外部がいぶからワイヤーを直接ちょくせつるか、遠隔えんかく操作そうさをすることでりていたぬの・ネットが一斉いっせいがり、動物どうぶつらえるという仕組しくみになっている。

利点りてん欠点けってん

[編集へんしゅう]

はこわなくくわなといった基本きほんてきいち個体こたいしか捕獲ほかくできないわなことなり、がこわないち大量たいりょう動物どうぶつ捕獲ほかくすることが可能かのうすぐれた捕獲ほかく効率こうりつしめす。北海道ほっかいどう洞爺湖とうやこ中島なかじまではかこわなによってエゾシカいちに100とう以上いじょう捕獲ほかくすることに成功せいこうしている[4]。そうしたメリットがある一方いっぽうで、がこわな自体じたい誘因ゆういんもちいる大量たいりょうえさ高額こうがくとなりコストがたかく、設置せっちにも時間じかん人力じんりき浪費ろうひし、ひろ場所ばしょ必要ひつようとなるなどデメリットもおお指摘してきされている[5]。アルパインキャプチャーを利用りようすることで簡便かんべんせいはある程度ていど向上こうじょうされるが、アルパインキャプチャーは雨風あめかぜゆきよわ気象きしょう左右さゆうされる問題もんだいがある[7]。また、はこわな同様どうよう捕獲ほかくじょうによるストレス捕獲ほかくせいすじ疾患しっかん発症はっしょうしたりするほか[8]がこわなない動物どうぶつあばれまわり怪我けがをするなどして結果けっかてきにその動物どうぶつ死亡しぼうする事例じれい報告ほうこくされている[3]

規制きせい

[編集へんしゅう]

日本にっぽん国内こくないではかこわなもちいた動物どうぶつ哺乳類ほにゅうるい鳥類ちょうるい)の捕獲ほかくには、鳥獣ちょうじゅう保護ほごおよ狩猟しゅりょう適正てきせいかんする法律ほうりつしたがってわなりょう免許めんきょ所有しょゆうしたものわな設置せっちしなければならない[9]

免許めんきょ不要ふよう捕獲ほかくできるがこわな設置せっち条件じょうけん

農林のうりんぎょう従事じゅうじしゃは、けんまたは市町村しちょうそん許可きょかとうけずに、「がこわな」をもちいて野生やせいじゅう捕獲ほかくすることができます。ただし、以下いかの4項目こうもくすべてをたす場合ばあいかぎられます。4項目こうもくすべてをたさずに、野生やせい鳥獣ちょうじゅう捕獲ほかくした場合ばあい法律ほうりつ違反いはんし、罰則ばっそく規定きてい適用てきようされることがありますので注意ちゅういしましょう。

1.使用しようする猟具りょうぐが「がこわな」であること

はこわな」や「くくりわな」など、がこわな以外いがいわな使用しようできません。なお、おりなどでつくられたはこなか獲物えものはいってトリガーが作動さどうすると、出入口でいりぐちまって獲物えものめるわなのことをはこわなびますが、天井てんじょうめん半分はんぶん以上いじょう開口かいこうしているものははこわなではなくがこわなとしてあつかわれます。

2.「みずからが事業じぎょうとしてっている」作物さくもつとう被害ひがい防止ぼうし目的もくてきであること

事業じぎょう販売はんばいとう目的もくてきでなく、もっぱ自家じか消費しょうひのために栽培さいばいしている作物さくもつとう被害ひがい防止ぼうしではみとめられません。みずからが事業じぎょうとしてっている作物さくもつとう被害ひがい防止ぼうし目的もくてき使用しようする場合ばあいかぎり、「がこわな」はほうさだめるりょうほうから除外じょがいされます。

3.捕獲ほかくする鳥獣ちょうじゅうが「狩猟しゅりょう鳥獣ちょうじゅう」であること

がこわな」で捕獲ほかくできるのは、狩猟しゅりょうすることがみとめられている狩猟しゅりょう鳥獣ちょうじゅうかぎられます。その野生やせい鳥獣ちょうじゅう捕獲ほかくすることはできません。

4.「狩猟しゅりょう期間きかん」に「狩猟しゅりょう可能かのう区域くいき」で捕獲ほかくすること

捕獲ほかくできるのは、「狩猟しゅりょう期間きかん」に、鳥獣ちょうじゅう保護ほご公道こうどうなど狩猟しゅりょう禁止きんしされた場所ばしょのぞく「狩猟しゅりょう可能かのう区域くいき」である場合ばあいかぎられます。

参考さんこう文献ぶんけん

[編集へんしゅう]
  1. ^ Nova J. Silvy (2012-02). Nova J. Silvy. ed. The Wildlife Techniques Manual: Research (7th edition ed.). The Johns Hopkins University Press. ISBN 978-1421401591 
  2. ^ a b c d 日本にっぽん野生やせい動物どうぶつ学会がっかい野生やせい生物せいぶつ保護ほご学会がっかい監修かんしゅう鈴木すずき正嗣まさつぐへんやく)『野生やせい動物どうぶつ研究けんきゅう管理かんり技術ぎじゅつぶんえいどう出版しゅっぱん、2001ねん11月。ISBN 978-4830031854 
  3. ^ a b c 伊藤いとう健雄たけおかじ光一こういち丸山まるやま直樹なおき「シカ・カモシカの捕獲ほかくほう」『哺乳類ほにゅうるい科学かがくだい29かんだい1ごう、1989ねん、106-112ぺーじ 
  4. ^ a b 高橋たかはし裕史ゆうじかじ光一こういち田中たなかじゅんたいら淺野あさのげん大沼おおぬままなぶ上野うえの真由美まゆみ平川ひらかわ浩文ひろふみ赤松あかまつ里香りかがこいワナをもちいたニホンジカの大量たいりょう捕獲ほかく」『哺乳類ほにゅうるい科学かがくだい44かんだい1ごう、2004ねん、1-15ぺーじ 
  5. ^ a b Corral Traps for Feral Hogs AgriLIFE EXTENSION
  6. ^ 宇野うの裕之ひろゆきかじ光一こういち鈴木すずき正嗣まさつぐ山中やまなか正美まさみ増田ますだやすし「アルパインキャプチャーによるニホンジカの大量たいりょう捕獲ほかくほう検討けんとう」『哺乳類ほにゅうるい科学かがくだい36かんだい1ごう、1996ねん、25-32ぺーじ 
  7. ^ 高橋たかはし裕史ゆうじかじ光一こういち吉田よしだ光男みつおつりいちさん車田くるまだ利夫としお鈴木すずき正嗣まさつぐ大沼おおぬままなぶ「シカ捕獲ほかくワナ アルパインキャプチャーシステムの改良かいりょう」『哺乳類ほにゅうるい科学かがくだい42かんだい1ごう、2002ねん、45-51ぺーじ 
  8. ^ 鈴木すずき正嗣まさつぐ捕獲ほかくせいすじ疾患しっかん(capture myopathy)にかんする総説そうせつ —さらに安全あんぜん捕獲ほかく作業さぎょうのために—」『哺乳類ほにゅうるい科学かがくだい39かんだい1ごう、1999ねん、1-8ぺーじ 
  9. ^ 池田いけだあきら花井はないただしこう野生やせい獣類じゅうるい捕獲ほかく関連かんれん法令ほうれいじょう手続てつづきについて」『哺乳類ほにゅうるい科学かがくだい28かんだい2ごう、1988ねん、27-38ぺーじ 

関連かんれん項目こうもく

[編集へんしゅう]