野生やせい動物どうぶつ

野生やせい動物どうぶつ（やせいどうぶつ）とは、飼養しよう動物どうぶつでないもの。つまり所有しょゆう者しゃ、占有せんゆう者しゃが明確めいかくになっていないもの。

本来ほんらいは原野げんやなど人ひとの手ての入はいらない領域りょういきに生息せいそくしている・人間にんげんに養やしなわれていない・人間にんげん社会しゃかいの存在そんざいに依存いぞんしていない動物どうぶつ全般ぜんぱんを指さす。

また、生態せいたい学がくの見地けんちからは人間にんげんに改良かいりょうされた品種ひんしゅとしての飼育しいく動物どうぶつ（生産せいさん動物どうぶつを含ふくむ）以外いがいの、本来ほんらい自然しぜん界かいに生息せいそくするのが自然しぜんな状態じょうたいである動物どうぶつ全般ぜんぱんを指さす。

• 対義語たいぎごは飼養しよう動物どうぶつ　
• 類似るいじ語ごは自然しぜん・天然てんねん

ふつう野生やせい動物どうぶつの英訳えいやくとして使つかわれる wildlife には野生やせい動物どうぶつだけでなく、野生やせい植物しょくぶつも含ふくまれる。

概要がいよう

これに類るいする動物どうぶつは、人間にんげんの世話せわになっていない動物どうぶつとされるが、その一方いっぽうで近代きんだい以降いこうに人間にんげんが積極せっきょく的てきに自然しぜん保護ほごの活動かつどうを行おこなっている点てんで、やや曖昧あいまいな概念がいねんを含ふくむ傾向けいこうも見みられる。これらは動物どうぶつの種たねとしては動物どうぶつ園えん等とうで飼育しいくされている動物どうぶつと、遺伝子いでんし等ひとしの上うえでも違ちがいは無ないが、その所有しょゆうを持もって区分くぶんされる。

野生やせい動物どうぶつという語かたりに対たいする明確めいかくな定義ていぎは無ない。対義語たいぎごと比較ひかくし、人ひとに飼養しようされ、かつ行動こうどうが人ひとによって抑制よくせいまたは制限せいげんあるいは監督かんとくされているもの、つまり所有しょゆう者しゃ、占有せんゆう者しゃが明確めいかくになっているものは野生やせい動物どうぶつではないとされる。その個体こたいが仮かりに遺伝いでん的てきに野生やせい動物どうぶつであったとしても、個体こたいは野生やせいの動物どうぶつであるがそれは家畜かちくやペットとなる（飼養しよう動物どうぶつ）。

人ひとに給餌きゅうじされていたとしても、その行動こうどうが人ひとによって抑制よくせいまたは制限せいげんあるいは監督かんとくされていないもの、例たとえば釧路くしろのタンチョウヅル、鹿児島かごしま県けん出水いずみ市しの鶴づるなどは野生やせい動物どうぶつとされる。大分おおいた県けん高崎たかさき山さんのサルも餌付えづけされているが野生やせい動物どうぶつである。大だい規模きぼな例れいとしてこの他ほかに奈良公園ならこうえんの鹿しかも餌付えづけされているが同おなじく無主むしゅ物ぶつであるので野生やせい動物どうぶつである。特定とくていの所有しょゆう者しゃ、占有せんゆう者しゃが明確めいかくになっているか否ひかで分別ふんべつされる。

もっとも顕著けんちょな例れいとしては、犬いぬやイエネコ（猫ねこ）が挙あげられる。犬いぬやイエネコは明確めいかくな所有しょゆう者しゃである人間にんげんに飼育しいくされている物ものは給餌きゅうじを受うけ行動こうどうが人ひとによって抑制よくせいまたは制限せいげんあるいは監督かんとくされているためペット（飼養しよう動物どうぶつ）、給餌きゅうじを受うけていたとしても特定とくていの誰だれかに所有しょゆう、飼育しいくされていないが人間にんげんの社会しゃかいに依存いぞんして自由じゆうに生活せいかつしていれば野良犬のらいぬや野良猫のらねこ（野生やせい動物どうぶつ）、野良犬のらいぬや野良猫のらねこのうち、原野げんやで狩かりをして自分じぶんで食糧しょくりょうを得えて人間にんげんに頼たよらない生活せいかつを送おくるものを鳥獣ちょうじゅう保護ほご法ほうでは野犬やけん（のいぬ）や野の猫ねこ（のねこ）と呼よび（野生やせい動物どうぶつ）　　同おなじ野生やせい動物どうぶつの中なかで区別くべつされている。

また、元来がんらいはそれら動物どうぶつの生息せいそく域いきではなかった地域ちいきに人為じんい的てきに放はなたれて生活せいかつしている場合ばあいは、帰化きか動物どうぶつ（外来がいらい種しゅ）となるが、これも飼養しよう動物どうぶつか野生やせい動物どうぶつかは特定とくていの所有しょゆう者しゃの有無うむで分別ふんべつされる。他たの外来がいらい種しゅの例れいに漏もれず、生態せいたい系けいのバランスを崩くずす事ことも多おおい。

また、家畜かちくは家畜かちく化かされる過程かていで、自然しぜん選択せんたくの圧力あつりょくを受うけなくなった事ことで野生やせい動物どうぶつの頃ころとは異ことなる形質けいしつを獲得かくとくしており、その点てんにおいても野生やせい動物どうぶつとは異質いしつである（家畜かちく化か#家畜かちく化かに伴ともなう変化へんかも参照さんしょう）。ホルスタインなどはこれにあたる。

野生やせい動物どうぶつと家畜かちく

生態せいたい系けいの保全ほぜんにおいて、その問題もんだいを正ただしく捉とらえるためには、人間にんげんの利用りようの為ために改良かいりょうされた愛玩あいがん動物どうぶつや家畜かちくを野生やせい動物どうぶつと分わけて考かんがえる事ことが大切たいせつであるとされる。特とくに20世紀せいきの後半こうはんから環境かんきょう破壊はかいで生息せいそく域いきを破壊はかいされ、危機ききに陥おちいっているのはあくまでも野生やせい動物どうぶつに限定げんていされた問題もんだいであり、家畜かちくを引ひき合あいに出だすのは無意味むいみである。

野生やせいと人間にんげん

人ひとであっても、人間にんげんの社会しゃかいから隔絶かくぜつされて自然しぜん環境かんきょうの中なかで文化ぶんかとは無縁むえんの生活せいかつをおくっている場合ばあいには野人やじん（野生やせいの人間にんげん）と呼よぶことができる。ただしヒトという動物どうぶつが社会しゃかい的てき動物どうぶつであり、家族かぞくなどのような極小きょくしょうの社会しゃかいに帰属きぞくしている場合ばあいには、あまり野人やじんだなどと呼称こしょうすることはない。

他方たほうでは同様どうように独自どくじ社会しゃかい（群むれ）を形成けいせいする動物どうぶつも存在そんざいするが、こちらはそれが習性しゅうせいに沿そっている限かぎりにおいて野生やせい動物どうぶつと呼よばれる。

人ひとにあってもごく稀まれに、個人こじんのレベルで人間にんげんの社会しゃかいから断絶だんぜつし、人間にんげんとしてのアイデンティティを持もたず、野生やせい動物どうぶつに育そだてられたり、または独力どくりょくで生存せいぞんしていた事例じれいが報告ほうこくされており、厳密げんみつな意味いみでの野生やせいの人間にんげんとして野生やせい児じまたは野生やせい人じんと呼よばれる。

研究けんきゅう

野生やせい動物どうぶつの生態せいたいを確認かくにんするために、野生やせい動物どうぶつ写真しゃしんの写真しゃしん家か、学者がくしゃが設置せっちする遠隔えんかくで写真しゃしんを撮影さつえいするトレイルカメラ、動物どうぶつにカメラや観測かんそく機きを設置せっちするバイオロギングなどによって、野生やせい動物どうぶつが観察かんさつされる。

野生やせい動物どうぶつ写真しゃしんは、野生やせい動物どうぶつ写真しゃしん家か大賞たいしょうや面白おもしろい野生やせい動物どうぶつの姿すがたを収おさめたものはコメディー野生やせい動物どうぶつ写真しゃしん賞しょう（Comedy Wildlife Photography Awards）で評価ひょうかされる。

備考びこう

かつて奴隷どれい制度せいどがあった時代じだいには、未開みかい民族みんぞくを指さして野生やせい動物どうぶつだと見みなしていた。この時代じだいには、現代げんだいでは人種じんしゅ差別さべつ・民族みんぞく差別さべつ思想しそうとして忌避きひされる所ところであるが、相手あいての人種じんしゅや民族みんぞくの持もっていた文化ぶんかを否定ひていないし破壊はかいした上うえで、それらを隷属れいぞくさせる行為こういが横行おうこうしていた。

差別さべつを被こうむった彼かれらにしてみれば、社会しゃかいがそれ以上いじょうの発展はってんを必要ひつようとせず、周囲しゅういの環境かんきょうによく順応じゅんのうして生活せいかつしていたに過すぎず、また文明ぶんめいが破壊はかいされたことに関かんしても、そのような破壊はかい行為こういに対抗たいこうする手段しゅだんを発達はったつさせる必要ひつようが無なかった（平和へいわ的てきであった）と言いうこともできる。

詳細しょうさいは「人種じんしゅ差別さべつ」を参照さんしょう

関連かんれん項目こうもく

• 家畜かちく - ペット - コンパニオンアニマル
• 自然しぜん（野生やせい）
• 野生やせい動物どうぶつ管理かんり - 鳥獣ちょうじゅう管理かんり士し
• 野生やせい動物どうぶつに起おきる苦難くなん、絶滅ぜつめつ、生息せいそく地ちの破壊はかい
• 野生やせい動物どうぶつに餌えさを与あたえないでください
• ネイチャードキュメンタリー（自然しぜん番組ばんぐみ、動物どうぶつ番組ばんぐみ）
• ワイルドライフ・ツーリズム、サファリパーク
• 世界せかい野生やせい生物せいぶつの日ひ

外部がいぶリンク

• NPO法人ほうじん野生やせい生物せいぶつ保全ほぜん論ろん研究けんきゅう会かい（JWCS）