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たね (分類ぶんるいがく)

出典しゅってん: フリー百科ひゃっか事典じてん『ウィキペディア(Wikipedia)』

たね(しゅ、species)とは、生物せいぶつ分類ぶんるいうえ基本きほん単位たんいである。2004ねん時点じてん命名めいめいみのたねだけで200まんしゅあり、実際じっさいはそのすうばいからじゅうすうばい以上いじょうたね存在そんざい推定すいていされる。あたらしいたね形成けいせいされる現象げんしょう、メカニズムをたね分化ぶんかという。

ラテン語らてんごの species より、単数たんすう場合ばあい省略形しょうりゃくけい sp. で、複数ふくすう場合ばあい省略形しょうりゃくけい spp. であらわす。「イヌぞくのあるしゅ」であれば「Canis sp.」、「ネコぞくのいくつかのたね」であれば、「Felis spp.」と表現ひょうげんする。

基本きほん理念りねん

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生物せいぶつは、無数むすう個体こたいからなるが、それらが非常ひじょう多様たよう形質けいしつつと同時どうじに、一定いってい類型るいけいけられることをひとふるくから経験けいけんてきっており、それらに名前なまえけていた。たとえばむしさかなとりくさこけなどである。さらにそれらのおおまかの分類ぶんるいなかにも多様たよう形質けいしつ観察かんさつすることができ、よりこまかい不連続ふれんぞく集団しゅうだんけられることにがつく。つまり、形質けいしつのかなり細部さいぶまでが共通きょうつうする集団しゅうだん見分みわけられ、それらの集団しゅうだんあいだには不連続ふれんぞくせいられる。たとえばミカンにつく青虫あおむしそだてれば、そこからてくるチョウは、黄色おうしょくのまだらのものか、くろ羽根はねのものかである。前者ぜんしゃアゲハチョウで、後者こうしゃクロアゲハであるが、それらはいろだけでなく、羽根はねかたち幼虫ようちゅう姿すがたでもすこことなっている。また、このような形質けいしつ世代せだいえて維持いじされる。そのような集団しゅうだんたねという。博物学はくぶつがく生物せいぶつがく知識ちしき蓄積ちくせきともなって、すべての生物せいぶつがこのような集団しゅうだん区分くぶんできることがあきらかとなっていった。それぞれのたね体系たいけいてきけ、分類ぶんるい体系たいけいきずこうとしたのがリンネである。その100ねんにはダーウィン進化しんかたね分化ぶんか理論りろん提唱ていしょうし、リンネの「形態けいたいもとづく分類ぶんるい体系たいけい」がなぜそのようになっているか、理論りろんてき説明せつめいあたえた。

しかし、リンネの時代じだいには生物せいぶつ現在げんざいうところのEukaryote(かく生物せいぶつ)しかられていなかった。現在げんざいそれ以外いがいにもMonera(モネラ、真正しんしょう細菌さいきん、いわゆる狭義きょうぎ細菌さいきん)、Archaea(アーキア、細菌さいきん)、そして生物せいぶつかどうかの異論いろんもある、Virus(ウイルス)やViroid(ウイロイド)といった存在そんざいがあることがられている。そしていわゆるかく生物せいぶつとはMonera とArchaea、見方みかたによっては Virusが複数ふくすう共生きょうせいしたふくあい生命せいめいたいであることが定説ていせつになっている(細胞さいぼうない共生きょうせいせつミトコンドリアみどりたいレトロウイルスひとし参照さんしょう)。このため、リンネのかんがえたたね概念がいねんかく生物せいぶつでは比較的ひかくてきよく適合てきごうするが、それ以外いがいのMonera、Archaea、Virus、Viroidといったものには適合てきごうせいくない。Monera、Archaea はリンネのとなえた2めいほうによるたねめいいているが、その概念がいねん範囲はんいかく生物せいぶつにおけるものとはまったことなることに留意りゅういすべきである。Virus、Viroidではそもそも2めいほうによるたねめいけられていない。

有性ゆうせい生殖せいしょく役割やくわり

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個体こたいあいだ生殖せいしょく可能かのうかどうかはしゅ判断はんだん重視じゅうしされる。これは、たね特徴とくちょう世代せだいえて維持いじされるものであること、ふるくは同種どうしゅであれば子供こどものこせるはず、との素朴そぼく判断はんだんがあったためである。しかし、現在げんざいでは有性ゆうせい生殖せいしょく理解りかい変化へんかしている。つまり有性ゆうせい生殖せいしょくは、それぞれの個体こたいぞくする系統けいとうあいだたがいの遺伝子いでんし交換こうかん行為こういであり、たがいに交配こうはい可能かのうであれば、いつかは実際じっさいにその遺伝子いでんし交換こうかんされる可能かのうせいがある。そのような関係かんけいむすびついた個体こたい集団しゅうだんは、おな遺伝子いでんしプール形成けいせいする。どういち範囲はんい遺伝子いでんし集団しゅうだん所有しょゆうするかぎりは、形態けいたいてきにもその同一どういつせい保証ほしょうされるはずとかんがえることができる。

しかしたねにおける重要じゅうよう概念がいねんの「有性ゆうせい生殖せいしょく(による遺伝子いでんし交換こうかん)」そのものがかく生物せいぶつ特有とくゆう概念がいねんである。たとえば真正しんせい細菌さいきんでは、有性ゆうせい生殖せいしょくにあたる接合せつごうだけではなく、プラスミドの交換こうかんなどをとおして相当そうとう遠縁とおえんでも遺伝いでん情報じょうほう交換こうかんができる。接合せつごうられていないものもきわめておおく、相当そうとう遠縁とおえん同士どうしでも接合せつごうこることがある。また、外形がいけいきわめて変化へんかとぼしいが、遺伝いでんてきにはきわめて多様たようなことがられている。つまり、リンネの定義ていぎでは、たね非常ひじょうこまかくけることも、非常ひじょうにおおざっぱにけることもできてしまう。現在げんざい細菌さいきんたね定義ていぎかく生物せいぶつ分類ぶんるい比較ひかくすると非常ひじょうおおきい集団しゅうだんしているものとおもわれる。たとえば細菌さいきんたね分類ぶんるい基準きじゅんとしてもちいられることのおおDNA - DNA分子ぶんし交雑こうざつほうさい結合けつごうりつが70%以上いじょうであることや、核酸かくさん塩基えんき配列はいれつあい同性どうせいが90%程度ていどなどをもちいた場合ばあい動植物どうしょくぶつではレベルの分類ぶんるいぐんすべ同一どういつたねぞくすることになるであろう。たね定義ていぎ概念がいねんは、現在げんざい、22以上いじょうあり、研究けんきゅうすすむほどに増加ぞうかしている[1]

たね定義ていぎ

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昆虫こんちゅうたね分類ぶんるい多様たようである

以下いかにはよりなじみのふかかく生物せいぶつ分類ぶんるい、より厳密げんみつえば動物どうぶつ中心ちゅうしんたね分類ぶんるいじょう留意りゅういてんについて記述きじゅつする。ここにはかく生物せいぶつでも植物しょくぶつ (Plant)、菌類きんるい (Fungi)、原生げんせい生物せいぶつ (Protista) などでは成立せいりつしない定義ていぎおおふくまれている。上述じょうじゅつした「有性ゆうせい生殖せいしょく役割やくわり」も植物しょくぶつ菌類きんるい原生げんせい生物せいぶつでは成立せいりつしないケースがある。これらでは有性ゆうせい生殖せいしょくがほとんどみとめられなかったり、交配こうはいできない和合わごう接合せつごうがた(クローンや親子おやこ兄弟きょうだいなどおなじもしくはちかかたあいだでは有性ゆうせい生殖せいしょく成立せいりつしない)がみとめられたりするれい多数たすうある。このため「交配こうはい可能かのうかどうか」はたね分類ぶんるい使つかいにくい場面ばめんおおい。専門せんもんあいだ完全かんぜん同意どういられるようなたね定義ていぎはない。つまり、生物せいぶつ集団しゅうだんをどうとらえるかは、研究けんきゅうしゃ分類ぶんるいぐん研究けんきゅう目的もくてきによってことなり、すべての生物せいぶつ分類ぶんるい適用てきよう可能かのうたね概念がいねん存在そんざいしないということである[2]

形態けいたいてきしゅ概念がいねん

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様々さまざま生物せいぶつ分類ぶんるいするにあたって、外観がいかん解剖かいぼうがくてき特徴とくちょうによって区別くべつすることはもっとふるくからおこなわれてきた。生物せいぶつ形態けいたいによってたね区別くべつすることを形態けいたいてきしゅ概念がいねんう。形態けいたいてきたね同定どうてい基準きじゅんもちいることは分類ぶんるい主観しゅかんてきになりすぎる問題もんだいがある。とく視覚しかくてき基準きじゅんもちいるのは人間にんげん視覚しかく発達はったつしているためでしかない。生物せいぶつ個体こたいのどのような特徴とくちょう判断はんだん基準きじゅんとするかがあいまいである。また性的せいてきがたのようなかた別種べっしゅ誤解ごかいする可能かのうせいがある。しかし、現在げんざい記載きさいされているたねのほとんどは形態けいたいてきしゅで、とく化石かせき生物せいぶつすべ形態けいたいてきしゅである。なお、このような分類ぶんるいでは生殖せいしょく構造こうぞうとく交接こうせつ構造こうぞう重視じゅうしされる。これは生殖せいしょく物理ぶつりてき差異さい配偶はいぐう困難こんなんにし、生殖せいしょくてき隔離かくりをもたらす可能かのうせいたかいと推定すいていできるためで、生物せいぶつ学的がくてきしゅ同定どうてい基準きじゅんとなりうるからである。

きたアメリカでは複数ふくすうしゅ同属どうぞくホタルがおり、それらは外見がいけんじょう区別くべつ困難こんなんであるが、それぞれの発光はっこうパターンがことなる。このパターンによる雌雄しゆうのやりとりで交尾こうびおこなわれるので、たねあいだ生殖せいしょく隔離かくり成立せいりつしている。このような生物せいぶつ隠蔽いんぺいしゅえいcryptic species)とばれ、形態けいたいによって区別くべつすることはできないから、概念がいねん適用てきようすることでその存在そんざいられる。その場合ばあいでも、そこにたねちがいが存在そんざいすることをったうえ研究けんきゅうおこなわれれば、わずかの形態けいたいちがいで区別くべつ可能かのうとなる場合ばあいもある。

生物せいぶつ学的がくてきしゅ概念がいねん

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ヤナギムシクイ輪状りんじょうしゅ証明しょうめいするたねひと

マイヤーによって1942ねん提案ていあんされた、生物せいぶつがくではもっと一般いっぱんもちいられているたね概念がいねん。この定義ていぎでは、どう地域ちいき分布ぶんぷする生物せいぶつ集団しゅうだん自然しぜん条件下じょうけんか交配こうはいし、子孫しそんのこすならば、それを同一どういつたねとみなす。

ぎゃくに、どう地域ちいき分布ぶんぷしても遺伝子いでんし交流こうりゅうがなされない、あるいは交流こうりゅうがなされても子孫しそん存続そんぞくしないならば、ことなるたねとされる(=生殖せいしょくてき隔離かくり完了かんりょうしている)。たとえばロバウマ交雑こうざつによってラバという雑種ざっしゅまれるが、ラバはほとんど繁殖はんしょくりょくたず、世代せだいつづくことはない。よってロバとウマはべつたね做される。

それぞれの生物せいぶつ集団しゅうだんことなる地域ちいきぞくしていたり、ちが時代じだいぞくしている場合ばあい生殖せいしょくてき隔離かくり検証けんしょう出来できないため、その生物せいぶつ形態けいたい比較ひかく集団しゅうだんレベルでの交配こうはいおよび受精じゅせい可能かのうせい検証けんしょう雑種ざっしゅにんせいみのりせい)の確認かくにんつうじて、同一どういつたねであるかが検討けんとうされる。

ただし雑種ざっしゅすべ生殖せいしょく能力のうりょくおとるわけではない。とくに、植物しょくぶつでは従来じゅうらい見解けんかいでは異種いしゅであった個体こたいぐん交配こうはいさせて園芸えんげい品種ひんしゅつくることは頻繁ひんぱんおこなわれている。このようなときは、この定義ていぎ厳密げんみつてはめた場合ばあいしゅではなく亜種あしゅとして分類ぶんるいしなおすことになる。野生やせいでの交配こうはい可能かのうせいのみを問題もんだいにする立場たちばからしても、イヌぞくカモぞくキジぞくなどの場合ばあい亜種あしゅとしてあつかうことになる。

生物せいぶつ学的がくてきしゅ普遍ふへんてきなものとしてあつかいたい場合ばあいもっと根本こんぽんてき問題もんだいとなるのは交配こうはいせず無性むしょう生殖せいしょくのみをおこな生物せいぶつである。この定義ていぎ適用てきようすればすべての個体こたい系統けいとうことなるたね分類ぶんるいされることになり、現実げんじつてきではない。はるかむかし絶滅ぜつめつしたたねあつか生物せいぶつがくにも適用てきようできない。また実際じっさいてき問題もんだいとして、無数むすう生物せいぶつわせすべてで実際じっさい交配こうはいおこなわれるかどうかを確認かくにんするのは不可能ふかのうである。

さらに輪状りんじょうしゅ存在そんざい生物せいぶつ学的がくてきしゅ困難こんなんをもたらす。輪状りんじょうしゅとは近接きんせつして生息せいそくする個体こたいぐんAとB、BとCが交配こうはい可能かのうであるが、はなれて生息せいそくする個体こたいぐんAとCのあいだ生殖せいしょくてき隔離かくり存在そんざいする亜種あしゅ混合こんごう個体こたいぐんのことである。この場合ばあいAとCは生物せいぶつがくてき別種べっしゅであるが、AとB、BとCは定義ていぎじょう同種どうしゅである。すべてのたね時間じかんてきには連続れんぞくした存在そんざいだが、輪状りんじょうしゅはそれを空間くうかんてきているとうことができる。

生態せいたい学的がくてきしゅ

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生物せいぶつをその生活せいかつしているまたはニッチ生態せいたいてき地位ちい)でかれているかどうかを判断はんだんする立場たちば実験じっけんしつないでは交雑こうざつ可能かのうであっても、その生息せいそくいき行動こうどうから、交配こうはい可能かのうせいがなく、べつ個体こたいぐんとしてふるまっていれば、別種べっしゅとみなす。たとえば、ニホンザルタイワンザル交配こうはい可能かのうであり、その子孫しそん繁殖はんしょくりょくがあるが、地域ちいきてき完全かんぜん隔離かくりされており、そのかぎりでは形態けいたいてきにもがあり、別種べっしゅなしていと判断はんだんする。また、イヌオオカミはしばしばおな地域ちいき生息せいそく交配こうはい可能かのうであるが、繁殖はんしょくサイクル、行動こうどう学習がくしゅうパターン、おも食料しょくりょうなどのてんまったことなるニッチにぞくしているため生態せいたい学的がくてきには別種べっしゅといえる。

地理ちり学的がくてきしゅ

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地理ちりてき隔離かくりされているもの別種べっしゅなす。たね分化ぶんかはどんなかたちであれ、最初さいしょ地理ちりてき隔離かくりきたのだとかんがえるせつ有力ゆうりょくであるが、それにもとづけば、「地理ちりてきたね」は生物せいぶつ学的がくてきには分化ぶんかであっても、いくらかの遺伝子いでんし差異さい存在そんざいし、いずれは完全かんぜんことなるたねになりうる。一般いっぱんてきにこの地理ちり学的がくてきしゅ定義ていぎもちいられるのは生物せいぶつ地域ちいきてき変異へんい(の保護ほごなど)に言及げんきゅうする場合ばあいおおい。しかしこの定義ていぎでは(定義ていぎ以上いじょうに)亜種あしゅたね区別くべつ困難こんなんであり、恣意しいてきもちいることになる。上述じょうじゅつのニホンザルとタイワンザルも厳密げんみつには地理ちり学的がくてきしゅである。

進化しんかがく(系統けいとうがく)てきしゅ

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たん系統けいとうぞくし、系統けいとうことなる特徴とくちょう進化しんかてき傾向けいこう生物せいぶつぐん系統けいとうたねとする。この場合ばあい進化しんかてき傾向けいこう恣意しいてきであること、個体こたいぐんしんたねあいだ区別くべつができないことなどが問題もんだいとなる[3]

時間じかんてきしゅ

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時間じかんてきしゅたね誕生たんじょう終焉しゅうえんによって定義ていぎされる。たね誕生たんじょうたね分化ぶんかあるいはたん系統けいとう漸進ぜんしんてき変遷へんせんであり、終焉しゅうえんとは絶滅ぜつめつあるいは漸進ぜんしんてき変遷へんせんである。この定義ていぎ形態けいたいてきしゅ生物せいぶつ学的がくてきしゅ進化しんかてき時間じかん考慮こうりょしていないことから提案ていあんされたが、たね分類ぶんるいには形態けいたいもちいられるというてん同様どうよう欠点けってんがある。とくおやしゅからの漸進ぜんしんてき変遷へんせんまごしゅへの漸進ぜんしんてき変遷へんせんきた場合ばあい、どこでたね区別くべつをするかが恣意しいてきにならざるをない[4]

それ以外いがいたね概念がいねん

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Maydenによる分類ぶんるいからいくつか引用いんようする[5]

  • 無性むしょうしゅ概念がいねん
  • 分岐ぶんき学的がくてきしゅ概念がいねん
  • 認識にんしきしゅ概念がいねん
  • 系統けいとう発生はっせいしゅ概念がいねん
  • 生態せいたい学的がくてきしゅ概念がいねん
  • 進化しんかてき重要じゅうよう単位たんい
  • 遺伝いでんてきたね概念がいねん
  • 繁殖はんしょく競争きょうそう概念がいねん
  • 遺伝子いでんしがたクラスター定義ていぎ
  • ヘニッヒてきたね概念がいねん

たね下位かい分類ぶんるい

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研究けんきゅうげがすすんだなかから、現実げんじつてきにはしゅけてことがまない場合ばあい多々たたつかる。たとえば同種どうしゅないとはかんがえられるものの、はっきりとのあるぐん発見はっけんされ、たね以下いか分類ぶんるいかんがえる必要ひつようしょうじ、亜種あしゅ変種へんしゅ品種ひんしゅなどの階級かいきゅうつくられた。たとえばことなる地域ちいき分布ぶんぷする集団しゅうだんからなるしゅでは、たね内部ないぶことなる形態けいたいてき特徴とくちょう地域ちいき集団しゅうだん存在そんざいすることがある。これを亜種あしゅぶ。 日本にっぽん列島れっとう棲息せいそくする大型おおがた哺乳類ほにゅうるいおおくは、大陸たいりくさん同種どうしゅとはことなる亜種あしゅとして分類ぶんるいされている。ただし、亜種あしゅ認定にんていされる基準きじゅんかならずしも客観きゃっかんてきでない場合ばあいがある。

品種ひんしゅ作物さくもつ家畜かちくなどの人間にんげん飼育しいくした生物せいぶつなかで、生物せいぶつ集団しゅうだんより区別くべつできる生物せいぶつ集団しゅうだんす。ハイブリッド品種ひんしゅなど、ある品種ひんしゅ子孫しそんおやおな品種ひんしゅとされないこともおおい。

なお、人種じんしゅ形態けいたいがくてき特徴とくちょうなかでも毛髪もうはつ皮膚ひふいろ骨格こっかくなど外部がいぶから容易ようい観察かんさつできる形質けいしつによってヒトというたね下位かい分類ぶんるいする概念がいねんである。現生げんなまするすべての人種じんしゅふく現生げんなま人類じんるいヒトヒトヒトぞくホモ・サピエンスただいちしゅである。ただし古人こじんるいがく化石かせき人類じんるいにホモ・サピエンス以外いがいたねをいくつかみとめている。人種じんしゅあいだでの生殖せいしょく隔離かくりられないこと、人種じんしゅあいだにみられる遺伝いでん情報じょうほう多様たようせいよりも人種じんしゅない遺伝いでん情報じょうほう多様たようせいほうたかいこと、また人種じんしゅ差別さべつへの懸念けねんから、生物せいぶつがくてき文脈ぶんみゃくでは人種じんしゅ有効ゆうこうせいきわめて限定げんていてきだとされている。

たね問題もんだい

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たね定義ていぎ実在じつざいせいかかわる議論ぎろんたね問題もんだいという。

たね実在じつざいせい

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進化しんかがく立場たちばから、時間じかんてき空間くうかんてき距離きょりなどによりたね変化へんかしたりべつ複数ふくすうしゅかれたりするものであることはもはや定説ていせつである。リンネの時代じだいにはすべて、あるいはおおくのたね別個べっこ創造そうぞうされ、変種へんしゅすが別種べっしゅさないとかんがえられていた。しかしそのようなたね不変ふへんせいという立場たちばることはもはやできない。現在げんざいところたね概念がいねんそのものはおおよそみとめられてはいる。しかしながら、それをまったみとめない立場たちばふくめ、さまざまな議論ぎろんがある。この論争ろんそうは13世紀せいき普遍ふへん論争ろんそうにまでさかのぼることができる。

たね本質ほんしつ主義しゅぎ

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ある生物せいぶつが「その生物せいぶつたらしめているなんらかの“本質ほんしつ”をおやからいでいるからそのたねなのだ」という概念がいねんたね本質ほんしつ主義しゅぎぶ。ダーウィン以前いぜん分類ぶんるい定義ていぎ(それはおも形態けいたい学的がくてきしゅ概念がいねんであるが)は本質ほんしつ主義しゅぎふくめられる。本質ほんしつ主義しゅぎではたねたねない変異へんい人工じんこうてき品種ひんしゅすが、ことなるたね変化へんかすることはないと仮定かていする。本質ほんしつ主義しゅぎ厳密げんみつにはただしくないが、形態けいたい学的がくてきしゅ概念がいねんふくめて現在げんざいのいくつかのたね概念がいねんことなる程度ていど本質ほんしつ主義しゅぎ仮定かていしている[5]

たね問題もんだい原因げんいん

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たね問題もんだい原因げんいんつぎのようにまとめられている[6]

  1. 観察かんさつされる生物せいぶつのパターンは、人間にんげん認識にんしき判断はんだん能力のうりょく産物さんぶつである。人間にんげん認識にんしき能力のうりょくべつ用途ようとのために進化しんかしたので、自然しぜんすべてを精巧せいこう関知かんちできるわけではない。
  2. 生物せいぶつ集団しゅうだん明確めいかくかれているとはかぎらない。重複じゅうふくしたり、内部ないぶべつ構造こうぞう存在そんざいすることもある。
  3. 人間にんげん認識にんしきできる生物せいぶつのパターンはそれぞれの生物せいぶつ進化しんかてき過去かこきた進化しんか産物さんぶつであるが、進化しんかのプロセスは現在げんざい継続けいぞくちゅうである。

関連かんれん文献ぶんけん

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脚注きゃくちゅう

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  1. ^ Mayden R. L. A hierarchy of species concepts: the denouemant in the saga of the species problem. In: Claridge M. F. , Dawah H. A. and Wilson M. R. (eds),1997. Species: the Units of Biodiversity. Chapman & Hall, London, 381-424.
  2. ^ 河田かわたまさけい『1しょう 個体こたい行動こうどう進化しんか』 行動こうどう生態せいたい進化しんか(シリーズ進化しんかがく だい6かん). 長谷川はせがわ 眞理子まりこ河田かわた まさけいつじ 和希かずき田中たなか よしみなり佐々木ささき あらわ長谷川はせがわ 寿一ひさいち (eds). 2006ねん6がつ. 岩波書店いわなみしょてん. ISBN 4-00-006926-8
  3. ^ エルンスト・マイア進化しんかろん生物せいぶつ哲学てつがく』pp309-310 東京とうきょう化学かがく同人どうじん
  4. ^ エルンスト・マイア 『進化しんかろん生物せいぶつ哲学てつがく』pp310-312 東京とうきょう化学かがく同人どうじん
  5. ^ a b Mayden R.L. Consilience and a Hierarchy of Species Concepts:Advances Toward Closure on the Species Puzzle Journal of Nematology 31(2):95–116. 1999
  6. ^ Hey J. The mind of the species problem TRENDS in Ecology & Evolution Vol.16 No.7 326-329 July 2001

関連かんれん項目こうもく

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外部がいぶリンク

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