命名めいめい

命名めいめい（めいめい）、ネーミング（英語えいご: naming）、名付なづけ（なづけ）とは、人ひと・物もの・商品しょうひん・土地とち・時代じだい・気候きこう、ほか概念がいねん化か可能かのうな対象たいしょう一般いっぱんに対たいして、それを他たから区別くべつし、指示しじできるようにする為ために、一意的いちいてきな記号きごう（一般いっぱんに言葉ことば・文字もじ）を与あたえる行為こういである。

概説がいせつ

一般いっぱんに命名めいめいは無名むめいの対象たいしょうに名前なまえをつける行為こういを指さし、既すでに名前なまえがある対象たいしょうに名前なまえをつけなおす場合ばあいは、改名かいめいと呼よばれることが多おおい。偉人いじんの名前なまえにちなんだ命名めいめいはエポニムという。

またすでに誰だれかが使用しようしている人名じんめいを、他たの誰だれかが引ひき継つぐ場合ばあいは襲名しゅうめいと呼よばれる。命名めいめいは「正式せいしき名称めいしょうを決定けっていする」という厳格げんかくな行為こういを指さすのに使つかわれることが多おおく、略称りゃくしょう、愛称あいしょう、蔑称べっしょうなどを新あたらしく作つくり出だしても、命名めいめい行為こういと呼よばれることはあまりない。

さらに正式せいしきな命名めいめい権けん者しゃによる命名めいめいの過程かていを経へずに生うまれた名称めいしょうが広ひろく使用しようされていて、かつ公的こうてきにその名称めいしょうを正式せいしき名称めいしょうとする判断はんだんがまだなされていない場合ばあい、そのような名称めいしょうは通称つうしょうと呼よばれるが（それが社会しゃかいの中なかの一部いちぶの集団しゅうだんにしか理解りかいできない場合ばあいであれば隠語いんごと呼よばれる）、このような名称めいしょうを新あたらしく作つくり出だすこともまた命名めいめい行為こういとは言いわない。

物ものなどの命名めいめい規則きそく

→「en:Nomenclature codes」も参照さんしょう

名前なまえを付つける対象たいしょうが膨大ぼうだいな数かずにのぼる場合ばあい、または名前なまえによって対象たいしょうを厳密げんみつに管理かんりしたい場合ばあいなど、いくつかの分野ぶんやにおいては名前なまえを付つけるさいに従したがうべき規則きそく（命名めいめい規則きそく、nomenclature）が存在そんざいしている。以下いかにその一いち例れいを示しめす。

生物せいぶつ種しゅ - 2006年ねん現在げんざい、確認かくにんされている生物せいぶつ種しゅの数かずは200万まんに上のぼる。未み確認かくにんのものまで含ふくめると全体ぜんたいで1000万まん種しゅ近ちかい生物せいぶつが存在そんざいすると考かんがえられている。命名めいめい規則きそくの詳細しょうさいについては記事きじ:学名がくめいを参照さんしょうのこと。
化合かごう物ぶつ - 2006年ねん4月がつ現在げんざい、確認かくにんされている化合かごう物ぶつの種類しゅるいは2780万まん種類しゅるいに上のぼる。これら全すべての化合かごう物ぶつに対たいして、重複じゅうふくしないように名前なまえを付つけておかないと、混乱こんらんが生しょうじることから、化合かごう物ぶつの命名めいめいにさいしては一定いっていの命名めいめい規則きそくが存在そんざいする。詳くわしくは記事きじ:IUPAC命名めいめい法ほう・CAS登録とうろく番号ばんごうを参照さんしょうのこと。
天体てんたい - 2006年ねん現在げんざい、確認かくにんされている天体てんたいの数かずは10億おくを超こえる。これら天体てんたいに対たいする命名めいめい規則きそくの詳細しょうさいについては、記事きじ:国際こくさい天文学てんもんがく連合れんごうを参照さんしょうのこと。
コンピュータ・プログラミング - プログラムの変数へんすう名な、関数かんすう名な、ファイル名ななどの識別子しきべつしについて、プロジェクト単位たんいや企業きぎょう / 組織そしき単位たんいで命名めいめい規則きそくを定さだめることが多おおい。命名めいめい規則きそく (プログラミング)を参照さんしょうのこと。
商品しょうひん - 大だい企業きぎょうでは、取とり扱あつかっている商品しょうひんが膨大ぼうだいな数かずにのぼるため、混乱こんらんを避さける目的もくてきで一定いっていの規則きそくに従したがった管理かんり名めいを付与ふよしていることが多おおい。ここでは一いち例れいとして自動車じどうしゃメーカートヨタがエンジンの型式けいしきに対たいして用もちいている、エンジン型式けいしきの命名めいめい規則きそくを挙あげておく。
中国ちゅうごく料理りょうり ‐ 使つかっている材料ざいりょう、加工かこう・調理ちょうり方法ほうほうなどから一定いっていの法則ほうそくで名前なまえが付つけられる^[1]^[2]^[3]。
軍用ぐんよう機き - 各国かっこくの軍隊ぐんたいや航空機こうくうきメーカーなどが、軍用ぐんよう機きに対たいして命名めいめいする際さいの一定いっていの規則きそく。詳くわしくは記事きじ:軍用ぐんよう機きの命名めいめい規則きそくを参照さんしょう
ミサイル・ロケット - 各国かっこくの軍隊ぐんたいや政府せいふ機関きかんが、ミサイルやロケットに対たいして命名めいめいする際さいの一定いっていの規則きそく。アメリカ軍ぐんの命名めいめい規則きそくについての詳細しょうさいは記事きじ:ミサイル・ロケットの命名めいめい規則きそくを参照さんしょうのこと。
軍用ぐんよう電子でんし機器きき - 各国かっこくの軍隊ぐんたいが、軍用ぐんよう電子でんし機器ききに対たいして命名めいめいする際さいの一定いっていの規則きそく。アメリカ軍ぐんの命名めいめい規則きそくについての詳細しょうさいは記事きじ:軍用ぐんよう電子でんし機器ききの命名めいめい規則きそくを参照さんしょうのこと。
艦船かんせん -艦船かんせんの命名めいめい規則きそくについては記事きじ:船ふね名めいを参照さんしょうのこと。
ネーミングライツ - 野球やきゅう場じょうやサッカー場じょうなど、公共こうきょう施設しせつや著名ちょめいな建物たてものの命名めいめい権けんが、年とし単位たんいで契約けいやく行為こういとしてスポンサーに売買ばいばいされる商業しょうぎょう実践じっせんが、アメリカの先行せんこう事例じれいにならって日本にっぽんでも21世紀せいきには見みられるようになってきた^[4]。

人名じんめいの命名めいめい

現代げんだい日本にっぽん

→「人名じんめい」も参照さんしょう

日本にっぽんでは名なは戸籍こせき法ほう上じょうの出生しゅっしょうの届出とどけでによって定さだめられることになる。名なに用もちいることのできる文字もじは「常用じょうよう平易へいいな文字もじ」に限かぎられており（戸籍こせき法ほう50条じょう1項こう）、その範囲はんいは法務省ほうむしょう令れいにより常用漢字じょうようかんじ（2136字じ）、人名じんめい用よう漢字かんじ（862字じ）、片仮名かたかな又または平仮名ひらがな（変体へんたい仮名がなを除のぞく）と定さだめられている（戸籍こせき法ほう施行しこう規則きそく60条じょう）。

名前なまえに用もちいることのできる文字もじには制限せいげんがあるものの、その読よみ方かたには制限せいげんはない。漢字かんじの場合ばあい、通常つうじょうの音読おんよみや訓読くんよみ（常つね訓くん）以外いがいに名乗なのりと呼よばれる人名じんめいにのみ用もちいられる漢字かんじの伝統でんとう的てきな読よみ方かたが用もちいられることもある。例たとえば「真しん」の字じは、通常つうじょう、音読おんよみでは「シン」、訓読くんよみでは「ま」あるいは「まこと」の読よみしかないが、伝統でんとう的てきな名乗なのりでは「ただし」や「さね」などの読よみでも用もちいられる（例れいとして菅原すがわら道真みちざね）。さらに、伝統でんとう的てきな名乗なのりからも離はなれた読よみ方かたが人名じんめいに用もちいられることもある。なお、人名じんめいの文字数もじすうに制限せいげんはない。

命名めいめいされた名なは命名めいめい紙しなどに清書せいしょされて神棚かみだなや床ゆかの間あいだなどに飾かざられることもある。また、命名めいめい軸じくとして掛軸かけじくにしたり、命名めいめい額がくとして額がく装そうして飾かざられることもある。出産しゅっさん後ごの贈答ぞうとう品ひん（内祝うちいわいの品しななど）に命名めいめい紙しが添そえられることもある。

中ちゅう近世きんせい日本にっぽん

中世ちゅうせいのイエズス会かい士し・ロドリゲスの著書ちょしょ^[5]によれば、近世きんせいの貴人きじんや武士ぶしは「仮名かめい（けみょう、かりな）」、「実名じつめい（じつみょう）」の二ふたつを持もっており、一方いっぽう、庶民しょみんは「仮名かめい（けみょう、かりな）」しか持もつことができなかったという。以下いか同書どうしょに述のべられていることの概要がいようを示しめす。

主おもな仮名かめい

仮名かめい（かりな、けみょう）は元服げんぷく時ときにつけられるもので、それまでの幼名ようみょう（出生しゅっしょう時じに命名めいめいされる）に代かわるものである。この名なは、出世しゅっせして役職やくしょくに就つくときに付与ふよされる百官ひゃっかん名めい（ひゃっかんな）を得えるまでの代用だいようであって、百官ひゃっかん名めいを取得しゅとく後ごは、仮名かめいは用もちいられずに、もっぱら百官ひゃっかん名めいのみが用もちいられる。ここで、百官ひゃっかん名めいとは武士ぶしが称しょうした官職かんしょく風ふうの名なである。（たとえば大蔵おおくら少しょう輔（おおくらのしょう）、兵部ひょうぶ少しょう輔（ひょうぶのしょう）、主計しゅけい頭あたま（かぞえのかみ）、図書としょ助すけ（づしょのすけ）、左衛門尉さえもんのじょう（さえもんのじょう）・・・など。）

仮名かめいの合成ごうせいは「太郎たろう、次郎じろう、三郎さぶろう、…、十郎じゅうろう」という輩やから行ぎょう名めいまたは、その短縮形たんしゅくけい「太ふとし、次つぎ、三さん、…、十じゅう」を基本きほんとし、「特定とくていの漢字かんじ」一文字ひともじを輩やから行ぎょう名めいの前まえにつけて合成ごうせいする。「特定とくていの漢字かんじ」を二に文字もじを組くみ合あわせて使用しようする場合ばあいには、輩やから行ぎょう名めいのほうを短縮形たんしゅくけいとする。（例れい）弥太郎やたろう、小次郎こじろう、・・、平三郎へいざぶろう、新あたらし十郎じゅうろう、・・、小しょう源太げんた、喜平きへい次じ、・・・。また輩やから行ぎょう名めいを先行せんこうさせることもできる。この場合ばあいの後列こうれつは以下いかの4種しゅの文字もじ列れつが多おおく用もちいられる。「兵衛ひょうえ」「右みぎ衛門えもん」「左衛門さえもん」「大夫たいふ」（例れい）太郎たろう兵衛ひょうえ、太郎たろう右みぎ衛門えもん、太郎左衛門たろうざえもん、太郎たろう大夫たいふ、・・・。

特定とくていの漢字かんじ例れい

「弥わたる、又また、小しょう・・・」の系列けいれつおよび「源みなもと、平ひらめ、藤ふじ、吉よし、新しん、甚、善よし・・・」の系列けいれつ

主おもな実名じつめい

実名じつめい（じつみょう）は戦場せんじょうで名乗なのりを上あげるときに用もちいられたり、書簡しょかんや公文書こうぶんしょに書かく際さいの正式せいしき名めいとしても用もちいられた。通常つうじょう漢字かんじ二に文字もじ（四よん音節おんせつ）にて、仮名かめいと実名じつめいは同時どうじに付与ふよされる。

参考さんこう文献ぶんけん

^ 文ぶん, 楚すわえ雄ゆう、陳ちん, 敏さとし「中華ちゅうか料理りょうり名めいの構造こうぞうについて」2018年ねん3月がつ、doi:10.34382/00006512。
^ Huo, Caiqiao; Du, Xiaomei; Gu, Weichen (2020). “The Metaphor and Translation of the Dish Names in Chinese Food Culture”. Open Journal of Modern Linguistics 10 (05): 423–428. doi:10.4236/ojml.2020.105025. ISSN 2164-2818.
^ “中国ちゅうごく文化ぶんかセンター”. 2023年ねん8月がつ3日にち閲覧えつらん。
^ 水野みずの, 由ゆかり多た加か「ネーミングは広告こうこくである : ネーミングライツの意義いぎと公共こうきょう性せい」『都市とし問題もんだい』第だい114巻かん第だい1号ごう、2023年ねん1月がつ1日にち、54–63頁ぺーじ、doi:10.32286/00027809。
^ ロドリゲス『日本語にほんご小しょう文典ぶんてん（下した）』池上いけがみ岑夫　訳わけ、岩波書店いわなみしょてん（岩波いわなみ文庫ぶんこ）1993年ねん、130,131,139,197～201頁ぺーじなど