輪状りんじょうしゅ

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輪状りんじょうしゅ(りんじょうしゅ)あるいは環状かんじょうしゅ(かんじょうしゅ)とは生物せいぶつがくで、隣接りんせつする集団しゅうだん雑種ざっしゅしょうじることのできる類縁るいえん関係かんけいにあるいちつづきの個体こたいぐんのことをす。輪状りんじょうでない場合ばあいにはふたつの「はし」の集団しゅうだんがあり、それらは雑種ざっしゅしょうじることができない。輪状りんじょうしゅ集団しゅうだん遺伝いでんてき分岐ぶんきするときにどのようなことがきるかを明示めいじしており、進化しんか重要じゅうよう証拠しょうこ提供ていきょうする。

概説がいせつ[編集へんしゅう]

輪状りんじょうしゅ分布ぶんぷのモデル

輪状りんじょうしゅは、進化しんかあたらしいたねつくることはないとかんがえている人々ひとびとおおきな問題もんだいきつける。と同時どうじ生命せいめい世界せかいを「たね」によって分類ぶんるいしようとこころみる研究けんきゅうしゃにも興味深きょうみぶか問題もんだい提示ていじする。「輪状りんじょうしゅ」と「別個べっこしゅ」を区別くべつするのは、輪状りんじょうしゅりょうはしつないでいる中間ちゅうかん集団しゅうだんである。中間ちゅうかん集団しゅうだんおおくがねば、輪状りんじょうしゅは「別個べっこしゅ」となる。

おおきな問題もんだいは、これらをひとつのたねとすべきか(すべての個体こたい同士どうしつくれるわけではないにもかかわらず)、それぞれの集団しゅうだんことなるしゅとすべきか(隣接りんせつした集団しゅうだん同士どうし交配こうはい可能かのうであるのにもかかわらず)である。輪状りんじょうしゅは、一般いっぱん理解りかいされているほどたねという概念がいねん単純たんじゅんでも明確めいかくでもないことをしめ好例こうれいである。

輪状りんじょうしゅ分布ぶんぷのモデル[編集へんしゅう]

ちゅういちつながりになっているバー(A,B,C)が輪状りんじょうしゅあらわす。あかあおなどのそれぞれのいろ地域ちいき個体こたいぐん亜種あしゅあらわす。Aのように直線ちょくせんじょうならんでいる場合ばあいもあれば(たとえばやま斜面しゃめん沿って)、Bのようにえんじょう分布ぶんぷしている場合ばあいもあり(たとえばみずうみ周囲しゅうい沿って)、Cのように終端しゅうたん同士どうし重複じゅうふくして生息せいそくしている場合ばあいもある。そして終端しゅうたん個体こたいぐん同士どうし遺伝いでんてきもしくは物理ぶつりてき生殖せいしょくてき隔離かくり成立せいりつしており、交雑こうざつ出来できないか、してもまれたにんとなり子孫しそんのこせない。

カモメのれい[編集へんしゅう]

ひだり: セグロカモメ Larus argentatus,
みぎ: ニシセグロカモメ Larus fuscus
北極ほっきょくかこむカモメの分布ぶんぷ:
  1. ニシセグロカモメ
  2. シベリアニシセグロカモメ
  3. ホイグリンカモメ
  4. ビルライカモメ
  5. ヴェガセグロカモメ
  6. アメリカセグロカモメ
  7. セグロカモメ
マゼンダの矢印やじるし交雑こうざつ関係かんけい

輪状りんじょうしゅ典型てんけいれい北極ほっきょくかこむように生息せいそくしているカモメぞく構成こうせいしゅである。セグロカモメおもグレートブリテンとうアイルランドんでいるが、きたアメリカにんでいるアメリカセグロカモメと交雑こうざつすることができる。 アメリカセグロカモメはひがしシベリアにむヴェガセグロカモメと交雑こうざつでき、ヴェガセグロカモメは西にしシベリアにむビルラカモメと交雑こうざつできる。 ビルラカモメはホイグリンカモメと交雑こうざつでき、ホイグリンカモメはシベリアニシセグロカモメと交雑こうざつでき、最後さいごに、シベリアニシセグロカモメは北欧ほくおうニシセグロカモメ交雑こうざつできる。 しかしながらニシセグロカモメとセグロカモメは、明確めいかくことなっているうえ通常つうじょう交雑こうざつしない。

このようにヨーロッパでかさなる“りょうはし”の部分ぶぶんのぞき、カモメのれは連続れんぞくした集団しゅうだん形作かたちづくっている。

れい[編集へんしゅう]

ヒマラヤかこヤナギムシクイ分布ぶんぷことなるいろことなる亜種あしゅしめす。

関連かんれん項目こうもく[編集へんしゅう]