ペット

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曖昧さ回避 この項目こうもくでは、愛玩あいがん動物どうぶつについて説明せつめいしています。その他たの用法ようほうについては「PET」をご覧らんください。
ペットを抱だきしめる人ひと
ハムスター

ペット（英語えいご: pet）とは、愛玩あいがんを目的もくてきとして飼育しいくされる動物どうぶつ（愛玩あいがん動物どうぶつ）である[1]。

概要がいよう[編集へんしゅう]

ウサギ

ペットは、人ひとの心しんを和なごませたり楽たのしませてくれたりするといった理由りゆうで飼育しいくされる動物どうぶつである。人ひとはペットとの様々さまざまなやり取とりを楽たのしんだり、その姿すがたやしぐさ、鳴なき声ごえなどを鑑賞かんしょうしたりする。ペットは生命せいめいをもった動物どうぶつで、モノではない（ペットに似にせたロボット[2]を除のぞく）。ゆえに飼かい主ぬしは、ペットが健康けんこうで快適かいてきに暮くらせるよう、栄養えいようや環境かんきょうなど様々さまざまなことに配慮はいりょして、ペットのために餌えさや飼養しよう施設しせつを用意よういするなど世話せわをする必要ひつようがある。ペットの歴史れきしは古ふるく、ネコ（猫ねこ）は古代こだいエジプトの時代じだいから現在げんざいのペットのような位置いちづけや、鼠ねずみの駆除くじょなどの実用じつよう目的もくてきで飼かわれていたことが推測すいそくされている。また、イヌ（犬いぬ）に関かんしても太古たいこから、実用じつようと愛玩あいがん目的もくてきも兼かねて飼かわれていたことが推測すいそくされている。

ペットは、人ひとの人生じんせいの質しつの向上こうじょうに貢献こうけんする。ペットは人ひとを癒いやし、孤独こどく感かんを解消かいしょうする。さらに、思おもいやりの心しんなどが育そだつなどの情操じょうそう教育きょういくの効果こうかもあるとされる。ペットを飼かうことで、癒いやし、孤独こどくの解消かいしょう、思おもいやりの心しんが育はぐくまれるといった実利じつりが得えられる。研究けんきゅうからも、ペットが子こどもの健全けんぜんな心しんを育そだてることが判明はんめいしている[3]。子供こどもは、自分じぶん自身じしんを動物どうぶつたちとのコミュニティに属ぞくしているととらえている[4]。ペット飼育しいく者しゃの多おおくは、フラストレーションの解消かいしょうを目的もくてきに、話はなしを聞きいてくれる相手あいてとして人間にんげんと同おなじようにペットに話はなしかける[5]。米国べいこくペンシルベニア大学だいがくの調査ちょうさでは、ペット飼育しいく者しゃの98 %は動物どうぶつに話はなしかけた経験けいけんがあり、そのうちの80 %はペットに対たいして人間にんげんと同様どうように話はなしかけていたという。抑そもそもうつや引びきこもり、精神せいしんの矯正きょうせいに及およぼすペットの癒いやしの効果こうかは精神せいしん分析ぶんせき医いやソーシャルワーカーに着目ちゃくもくされ、老人ろうじんホームや刑務所けいむしょでペットが効果こうかを上あげた例れいもある[5]。ペットのイヌが飼かい主ぬしに運動うんどうを促うながすように、ペットとの交流こうりゅうは延命えんめいの一因いちいんとなり得える[5]。人間にんげんとペットが交流こうりゅうしている時間じかん中ちゅう、双方そうほうの血圧けつあつと心拍しんぱく数すうが低下ていかするという実験じっけん結果けっかがある。水槽すいそうの魚さかなを眺ながめているだけでも医学いがく的てきに有意ゆういな血圧けつあつ低下ていかが見みられるという実験じっけん結果けっかもある[5]。

ペットの飼育しいくには責任せきにんが伴ともなう。それらを理解りかいしないと、近隣きんりんや周囲しゅういの人々ひとびとに迷惑めいわくを及およぼし、またペットそのものに害がいを及およぼすこともある。「#ペットにまつわる諸しょ問題もんだいTemplate:Broken anchor」参照さんしょう。動物どうぶつ虐待ぎゃくたいの防止ぼうしや公衆こうしゅう衛生えいせいの観点かんてんから、ペットの取とり扱あつかいを規定きていする法律ほうりつがある。日本にっぽんでは、「動物どうぶつの愛護あいご及および管理かんりに関かんする法律ほうりつ」や「狂犬病きょうけんびょう予防よぼう法ほう」などの法令ほうれいがある。「#各国かっこくにおけるペット関連かんれん規制きせい」参照さんしょう。ペットの入手にゅうしゅ方法ほうほうは、ペットショップで購入こうにゅうする以外いがいにも、保護ほごされた動物どうぶつを引ひき取とるなどの方法ほうほうがある。

なお、ペットは基本きほん的てきに人間にんげんが愛玩あいがんの対象たいしょうとし飼育しいくする動物どうぶつを指さす語かたりである。しかし、一部いちぶの霊長れいちょう類るいなどのある程度ていど高度こうどな知性ちせい・情動じょうどうがその行動こうどうに感かんじられる動物どうぶつでは、異種いしゅの動物どうぶつの特定とくていの個体こたいに対たいし、愛着あいちゃくを感かんじさせる行動こうどうを見みせることがある。手話しゅわを理解りかいしたゴリラのココは、自身じしんの欲求よっきゅうとして子猫こねこを飼かいたいと表明ひょうめいし、愛着あいちゃくを持もって世話せわをした。さらには、この猫ねこが交通こうつう事故じこにあって死しんだ際さいには、深ふかい悲かなしみを訴うったえ泣ないたことが伝つたえられている。

諸しょ概念がいねんの定義ていぎ[編集へんしゅう]

セキセイインコ
熱帯魚ねったいぎょ

愛玩あいがん動物どうぶつ[編集へんしゅう]

愛玩あいがん動物どうぶつ（あいがんどうぶつ）とは、一般いっぱんに「愛玩あいがん用ように家庭かていなどで飼育しいくされている動物どうぶつのうち、特とくに愛玩あいがん飼育しいくを目的もくてきとして改良かいりょう・繁殖はんしょくが行おこなわれてきた動物どうぶつ種しゅ」のことをいう[6]。

愛玩あいがん動物どうぶつは従来じゅうらいからの愛玩あいがん動物どうぶつ、学校がっこう飼育しいく動物どうぶつ、エキゾチックペットなどに分類ぶんるいされる[6]。

従来じゅうらいからの愛玩あいがん動物どうぶつ
従来じゅうらいからの愛玩あいがん動物どうぶつは、イヌ、ネコ、ウサギ、 小鳥ことり（ブンチョウなど）、金魚きんぎょなど、古ふるくから愛玩あいがん動物どうぶつとして親したしまれてきた動物どうぶつをいう[6]。イヌやネコは愛玩あいがん動物どうぶつとしてヒトに飼育しいくされるようになってから数すう千せん年ねんから1万まん年ねん以上いじょうの時間じかんが経過けいかしている代表だいひょう的てきな愛玩あいがん動物どうぶつで、その間あいだにヒトにとって好適こうてきな愛玩あいがん動物どうぶつとして適応てきおうした[6]。また、従来じゅうらいからの愛玩あいがん動物どうぶつの一部いちぶには、盲導犬もうどうけんや聴導犬ちょうどうけんのように人間にんげんの生活せいかつを補助ほじょする補助ほじょ動物どうぶつもいる[6]（ほかに介助かいじょ犬けん、身体しんたい障害しょうがい者しゃ補助ほじょ犬けん、介助かいじょ猿ざるなど）。
学校がっこう飼育しいく動物どうぶつ
学校がっこう飼育しいく動物どうぶつとは、小学校しょうがっこうや幼稚園ようちえんなどで教育きょういく的てき・社会しゃかい心理しんり的てき効果こうかから教育きょういく・愛玩あいがん目的もくてきで飼育しいくされる動物どうぶつをいう[6]。代表だいひょう種しゅはウサギ、ニワトリ、カメ、金魚きんぎょなどである[6]。児童じどうは動物どうぶつ由来ゆらい感染かんせん症しょうに対たいする抵抗ていこう力りょくの不十分ふじゅうぶんな可能かのう性せいもあるため衛生えいせい管理かんりなどに注意ちゅういを要ようする[6]。
エキゾチックペット
エキゾチックペットとは、カメ、イグアナ、ヘビ、リスザル、リス、鳥類ちょうるい（オウムなど）、野生やせい由来ゆらいの魚類ぎょるいなど比較的ひかくてき新あたらしく愛玩あいがん目的もくてきで飼育しいくされるようになった動物どうぶつをいう[6]。エキゾチックペットは野生やせい動物どうぶつを捕獲ほかくした個体こたいであることも多おおく、飼育しいく・管理かんり方法ほうほうが確立かくりつされていない、感染かんせん症しょうなどの原因げんいん・症状しょうじょう・診断しんだん法ほう・検査けんさ法ほう・治療ちりょう法ほうの知見ちけんが少すくないなどのリスクがある[6]。

コンパニオンアニマル[編集へんしゅう]

人々ひとびとの動物どうぶつに対たいする接せっし方かたが、より細ささやかで密接みっせつになる傾向けいこうを反映はんえいして「ペット」という概念がいねん（モノや所有しょゆう物ぶつのようにみなす概念がいねん）に替かわって伴侶はんりょ動物どうぶつ（はんりょどうぶつ）やコンパニオンアニマル（英語えいご: companion animal、人生じんせいの伴侶はんりょとしての動物どうぶつ）という概念がいねんも普及ふきゅうしてきている。

歴史れきし[編集へんしゅう]

レオナルド・ダ・ヴィンチが描えがいた『白しろ貂てんを抱いだく貴婦人きふじん』

太古たいこのペットは、野生やせい動物どうぶつを捕獲ほかくしたものである。人間にんげんが太古たいこからペットを飼かっていた証拠しょうこは、いずれの大陸たいりくからも発見はっけんされる。最古さいこの痕跡こんせきは、3万まん前まえの石器せっき時代じだいの遺跡いせきにあるホラアナグマの飼育しいく跡あと（洞窟どうくつの檻おり）である。ただし、狩猟しゅりょうで捕獲ほかくしたものを一時いちじ的てきに生いきたまま保管ほかんしたのか、継続けいぞく的てきに餌えさを与あたえて飼がっていたのかは不明ふめいである。ペットとして手当てあてたり次第しだいに飼かい始はじめた野生やせい動物どうぶつの中なかから、家畜かちくとして有用ゆうようなものが見みいだされたと考かんがえられる[7]。

以下いかでは、一部いちぶに家畜かちくの歴史れきしも含ふくめて解説かいせつする。オオカミ（イヌ）の家畜かちく化かが3万まん年ねん - 1万まん5000年ねん前まえから行おこなわれ、狩猟しゅりょうの際さいの助たすけとして用もちいられた。以下いか、トナカイ、ヒツジ、イノシシ（ブタ）、ヤギ、ウシ、ニワトリ、ハト、ウマ、ラクダなどが家畜かちくとして飼育しいくされるようになった。また農耕のうこうの始はじまりとともに、害がい獣じゅうとなるネズミなどを駆除くじょしてくれるネコやイタチのような小型こがた肉食にくしょく獣じゅうが珍重ちんちょうされるようになった。

上述じょうじゅつの通とおりペットの歴史れきしは家畜かちくに先行せんこうしていると考かんがえられるが、明確めいかくに愛玩あいがん動物どうぶつとして飼育しいくされた最初さいしょの例れいとして史料しりょうが残のこっているのは、5000年ねん前まえの古代こだいエジプトのピューマである。南米なんべいのインディオはインコやサル（猿さる）を飼かっていた[8]。

人間にんげんの飼育しいく下かで繁殖はんしょくさせたペットが普及ふきゅうするのは、家畜かちくが定着ていちゃくするよりも後ごである。狩猟しゅりょう目的もくてきのイヌ、害がい獣じゅう駆除くじょ目的もくてきのネコなど、実用じつよう目的もくてきの家畜かちくだったものが、その目的もくてきで飼かわれなくなって以降いこうも人間にんげんに飼かわれるようになった。それらが、人間にんげんの飼育しいく下かで繁殖はんしょくしたペットの最初さいしょとなる。ただし、どの段階だんかいで実用じつようでなくなったのか明確めいかくな境界きょうかい線せんを引ひくのは困難こんなんである。日本にっぽんにおけるニワトリのように、食しょくのタブーでいったんはペットとされたものが、再ふたたび食用しょくようの家畜かちく（家禽かきん）へと変遷へんせんした例れいもある。

古代こだい - 近代きんだい[編集へんしゅう]

特とくにイヌの場合ばあいは、はっきりした主従しゅうじゅう関係かんけいを好このむ習性しゅうせいから、家族かぞくの一員いちいんとして扱あつかわれた歴史れきしが長ながいとされる。石器せっき時代じだいにおけるイヌの墳墓ふんぼ（埋葬まいそうに際さいして添そえられたと見みられる花はなの花粉かふんが見みられたり、なんらかの食料しょくりょうの残骸ざんがいが一緒いっしょに発見はっけんされたりするなどの特徴とくちょうも見みられる）も発見はっけんされている。その一方いっぽうで、所有しょゆう物ぶつという概念がいねんもあったようで、殉死じゅんしによって飼かい主ぬしとともに埋葬まいそうされたと思おもわれるケースも見みられる。欧米おうべいでは、古来こらいから現代げんだいまで王侯おうこう貴族きぞくや歴代れきだい大統領だいとうりょうから一般いっぱん市民しみんの間あいだで愛玩あいがん用よう、護衛ごえい用よう、狩猟しゅりょう用ようなどとして飼かわれている。ジェームズ2世せい（イングランド王おう）やアメリカ合衆国あめりかがっしゅうこく大統領だいとうりょうクーリッジなど多数たすうの愛犬あいけん家かがいる。

古代こだいエジプトでは、ネコ科かの動物どうぶつは今日きょうのペットに近ちかい存在そんざいであったとされる。それらは神格しんかく化かされたせいもあって（例れい：バステト）、高貴こうきな身分みぶんにふさわしい愛玩あいがん動物どうぶつとして扱あつかわれた。丁寧ていねいに埋葬まいそうされたネコのミイラも発見はっけんされており、同どう時代じだいに於おける同種どうしゅ動物どうぶつの地位ちいが如何いかに高たかかったかを感かんじさせる。

また農耕のうこう文化ぶんかにも関連かんれんして、ネコやイタチ、キツネのような小型こがた動物どうぶつを捕食ほしょくする肉食にくしょく獣じゅうを、穀物こくもつを食害しょくがいから守まもる益えき獣じゅうとして珍重ちんちょうしていた文化ぶんかが世界せかい各地かくちに見出みいだされている。今日きょうのアメリカ合衆国あめりかがっしゅうこくでも、納屋なやに住すみ着つくネコを「barn cat」と呼よび珍重ちんちょうするなどの風習ふうしゅうが見みられる。

近代きんだい - 現代げんだい[編集へんしゅう]

今日きょうペットは、心しんを癒いやしたり、あるいは愛玩あいがんされたり、共生きょうせいしたりするなど、様々さまざまな面めんを持もつ。ペットは、家族かぞく同様どうようの存在そんざいやパートナー、仲間なかまとして人ひとの暮くらしに密接みっせつに関かかわる。

現代げんだいの日本にっぽんの2人ふたり以上いじょうの世帯せたいでは、48%の世帯せたいが、何なにかしらのペットを飼かっているという調査ちょうさ結果けっかがある[9]。日本にっぽんの2010年ねん（平成へいせい22年ねん）における飼育しいくペットの割合わりあいは、犬いぬ59%、猫ねこ31%、魚類ぎょるい19%、鳥類ちょうるい6%（複数ふくすう回答かいとう）である[10][注釈ちゅうしゃく 1]。

動物どうぶつを尊重そんちょうする人々ひとびとの中なかには、言葉ことばの用法ようほうに人間にんげんとの同どう一いち視しが見みられることがある。たとえば、ペットの性別せいべつを「オス」「メス」ではなく「男おとこの子こ」「女おんなの子こ」と呼よんだり「餌えさをやる」ではなく「ごはんをあげる」と表現ひょうげんしたりする。

中なかにはペットに遺産いさんを残のこしたいと望のぞみ、負担ふたん付づけ遺贈いぞう・負担ふたん付づけ死因しいん贈与ぞうよや遺言ゆいごん信託しんたくの形式けいしきをとる場合ばあいもある[注釈ちゅうしゃく 2]。

統計とうけい[編集へんしゅう]

犬いぬと猫ねこ。飼育しいくされているペットの種類しゅるいの1位いと2位い。

動物どうぶつ別べつ[編集へんしゅう]

2015年ねんの「ペット飼育しいく率りつ調査ちょうさ」によると、世界せかいでペットとして飼育しいくされている動物どうぶつは、犬いぬが33％、猫ねこが23％、魚さかなが12％、鳥とりが6％だった[12]。

ペットフード協会きょうかいによれば、日本にっぽんでの推定すいてい飼育しいく数すうは、1994年ねんのイヌは906万まん7,000匹ひき、ネコは717万まん8,000匹ひきである。イヌのピークは2008年ねんの1,310万まん匹ひきで、その後ご、減少げんしょう傾向けいこうにある。2017年ねんにネコ（952万まん匹ひき）が、イヌ（892万まん匹ひき）を追おい抜ぬいた。2018年ねんのイヌは890万まん3,000匹ひき、ネコは964万まん9,000匹ひきである[13]。

ペットフード協会きょうかいの「2015年ねん犬いぬと猫ねこの飼育しいく実態じったい調査ちょうさ結果けっか」によると、日本にっぽんで飼育しいくされている犬いぬの平均へいきん寿命じゅみょうは14.85歳さい、猫ねこの平均へいきん寿命じゅみょうは15.75歳さいで寿命じゅみょうは毎年まいとし延のびる傾向けいこうにある[12]。

地域ちいき別べつ[編集へんしゅう]

2015年ねんの「ペット飼育しいく率りつ調査ちょうさ」によると、世界せかいで最もっともペットが飼育しいくされている地域ちいきは中南米ちゅうなんべい（75％～80％）で、最もっとも飼育しいく率りつの低ひくかった地域ちいきはアジア（30％～40％）とされている[12]。

種類しゅるい[編集へんしゅう]

飼育しいくされているカブトムシ

動物どうぶつ福祉ふくし[編集へんしゅう]

ベッドで眠ねむる猫ねこ

ペットの健康けんこう問題もんだい[編集へんしゅう]

ペットをその性質せいしつに即そくした飼かい方かたが成なされていない場合ばあいも少すくなくはない。たとえば肉食にくしょく性せいの動物どうぶつに、菜食さいしょく主義しゅぎ者ものの飼かい主ぬしが野菜やさいを主体しゅたいとした餌えさを与あたえて、適切てきせつな消化しょうか酵素こうそを持もたないこれら肉食にくしょくのペットが健康けんこう被害ひがいを受うける場合ばあいも見みられる。中なかには、偏食へんしょくとなるエサを与あたえてしまう飼かい主ぬしがおり、結果けっかとして糖尿とうにょう病びょうなど人間にんげんの生活せいかつ習慣しゅうかん病びょう的てき症状しょうじょうで動物どうぶつ病院びょういんに通院つういんするペットがいる。よく懐なついている犬いぬの場合ばあい、飼かい主ぬしが与あたえた餌えさを食たべると飼かい主ぬしが喜よろこぶことを犬いぬが理解りかいして、満腹まんぷくであっても飼かい主ぬしを喜よろこばせようと餌えさを食たべる場合ばあいが見みられる。これらの犬いぬは肥満ひまんに陥おちいったり、肥満ひまんが引ひき起おこす健康けんこう被害ひがいを受うけたりすることもあるとされる。

また、過度かどに愛玩あいがんされた結果けっかとして神経しんけい性せいの円形えんけい脱毛だつもう症しょうや胃潰瘍いかいように陥おちいるペットもいる。また、飼かい主ぬしが自分じぶんのストレス解消かいしょうや鬱憤うっぷん晴ばらしに行おこなう動物どうぶつ虐待ぎゃくたいの被害ひがいを受うける場合ばあいもある。

飼育しいく環境かんきょう[編集へんしゅう]

過密かみつ飼育しいく

管理かんり能力のうりょくがない飼育しいく者しゃが多数たすうのペットを飼育しいくし、その結果けっか、衛生えいせいを維持いじできずにひたすらに繁殖はんしょくしてしまったりする事態じたいが起おきる。これは多た頭あたま飼育しいく崩壊ほうかい（アニマルホーディング）と呼よばれる。

犬いぬの繋つなぎ飼かいも福祉ふくし上じょうの問題もんだいとなる。米国べいこく農務のうむ省しょう（USDA）は1996年ねん、犬いぬの繋つなぎ飼がいについて、次つぎの声明せいめいを発表はっぴょう。「動物どうぶつ福祉ふくし法ほうの施行しこうにおける私わたしたちの経験けいけんから、綱つなによる犬いぬの継続けいぞく的てきな拘束こうそくは非ひ人道的じんどうてきであるという結論けつろんに至いたった。繋つなぎは犬いぬの動うごきを著いちじるしく制限せいげんする。繋つなぎ飼かいはまた、犬いぬのシェルター構造こうぞうやその他たの物ものに絡からまったり引ひっ掛かかったりする可能かのう性せいがあり、犬いぬの動うごきをさらに制限せいげんし、怪我けがを引ひき起おこす可能かのう性せいがある」[14]。日本にっぽんには規制きせいがないが、多おおくの地域ちいきが犬いぬの繋つなぎ飼かいに規制きせいを設もうけている[15]。スウェーデンでは、屋外おくがいで犬いぬをつなぐ場合ばあいは最高さいこう2時じ間あいだまでと決きめられている[16]。

飼育しいく放棄ほうき[編集へんしゅう]

管理かんりできなくなったペットを放棄ほうきする行為こういが問題もんだいとなっている[17]。日本にっぽんの警察庁けいさつちょうによると「落おとし物もの」として届とどけられた動物どうぶつは、2019～2022年ねんだけ10万まん匹ひきを超こえる[18]。

放棄ほうきされたペットは野生やせい化かしさらなる問題もんだいを発生はっせいさせる（後述こうじゅつ）。フランスではバカンスの間あいだに面倒めんどうを見みることが出来できないという理由りゆうで捨すてることが多おおいため、5月から8月がつにかけて捨すてられるペットが増加ぞうかすることから、前述ぜんじゅつの販売はんばい規制きせいに繋つながった[17]。

動物どうぶつの手術しゅじゅつ[編集へんしゅう]

人間にんげんの都合つごうによる断だん耳みみ、断だん尾お、声帯せいたい切除せつじょ、牙きばの抜歯ばっし、爪つめ除去じょきょ（指ゆびごと除去じょきょ）などは、動物どうぶつ虐待ぎゃくたいにあたるとする考かんがえもある。ドイツでは脊椎動物せきついどうぶつについて麻酔ますいなしの手術しゅじゅつ、（医療いりょう目的もくてき以外いがいで）肢体したいや臓器ぞうきの摘出てきしゅつを原則げんそく禁止きんしとしている[19]。スウェーデンは断だん耳みみ・断だん尾お、声帯せいたいの除去じょきょを禁止きんし、健康けんこう上じょうの理由りゆうがない限かぎり、犬いぬの体からだにメスをいれてはならないと法律ほうりつで規定きていされている[16]。

動物どうぶつの老後ろうご[編集へんしゅう]

犬いぬ猫ねこは野生やせいよりは長生ながいきしてその平均へいきん寿命じゅみょうも倍ばい以上いじょうに差さが付ついている[20][21]。老ろう犬いぬなどを世話せわする老ろう犬いぬホームなどのサービスが登場とうじょうしてきている。

ペット産業さんぎょうと課題かだい[編集へんしゅう]

ペット産業さんぎょう（英語えいご版ばん）とは、ペットに関かかわる様々さまざまな産業さんぎょうのことである[22]。

2014年ねんの調査ちょうさでは一いち年間ねんかんに犬いぬ猫ねこ2万まん3千せん匹ひきが、2015年ねんの調査ちょうさでは2万まん5千せん匹ひきが、犬いぬ猫ねこ販売はんばいの流通りゅうつう過程かていで死しんでいることが分わかった。死因しいんの報告ほうこく義務ぎむはないため、死因しいんは不明ふめいとなっている[23][24]。ブリーダーによる繁殖はんしょく犬けん（子犬こいぬを供給きょうきゅうするために飼育しいくされる犬いぬ）の使つかい捨すて、放置ほうち死しも問題もんだいになっている。2019年ねんに動物どうぶつ愛護あいご管理かんり法ほうが改正かいせいされ、犬いぬの飼育しいく頭数とうすうや出産しゅっさんできる年齢ねんれいなどに制限せいげんが設もうけられるようになってからは、山林さんりんに捨すてられるケースも相次あいついだ[25][26]。

無理むりな繁殖はんしょくや近親きんしん交配こうはい[編集へんしゅう]

パピーミル

珍めずらしい種類しゅるいや人気にんきがある種類しゅるいの犬いぬ・猫ねこでは、ブリーダーが近親きんしん交配こうはいによる繁殖はんしょくを行おこなうことがある。それらの中なかには近親きんしん交配こうはいによって発生はっせいした、畸形や遺伝いでん的てきな異常いじょうを持もつ個体こたいが販売はんばいされ、飼かい主ぬしとペットショップの間あいだで品質ひんしつ面めんの問題もんだいが係争けいそうされるなどの現象げんしょうも起おこっており、これを憂うれう向むきもある。しかしながら、近親きんしん交配こうはいは品種ひんしゅ改良かいりょうや品種ひんしゅのスタンダード維持いじの重要じゅうような手段しゅだんでもあり、一律いちりつ禁止きんしは大おおきな弊害へいがいを伴ともなうとされる。また、商業しょうぎょう的てきに利益りえきをあげるために、劣悪れつあくな環境かんきょうで工業こうぎょう的てきに大量たいりょう繁殖はんしょくさせるブリーダー、ペット業者ぎょうしゃが動物どうぶつ福祉ふくしの観点かんてんから問題もんだいとなっている。こうした行おこないはパピーミル(子犬こいぬ工場こうじょう)と呼よばれる[27]。

「パピーミル」も参照さんしょう

ペットの入手にゅうしゅ方法ほうほうと規制きせい[編集へんしゅう]

インドのムンバイにあるCrawford Marketのペット屋や

ペットの入手にゅうしゅ方法ほうほうは、ペットショップで購入こうにゅうする、譲渡じょうと会かいで入手にゅうしゅする、友人ゆうじん・知人ちじんから譲ゆずり受うける、屋外おくがいで拾ひろうなどの方法ほうほうがある[28]。日本にっぽんでは、公共こうきょうの動物どうぶつ収容しゅうよう施設しせつ（動物どうぶつ愛護あいごセンターなど）や飼かえなくなった飼かい主ぬしなどが、犬いぬや猫ねこの新あたらしい飼かい主ぬしを募集ぼしゅうしているイベント譲渡じょうと会かい（英語えいご版ばん）をオンライン上じょうや施設しせつで開催かいさいする場合ばあいがある[29][30]。

アメリカでは、25州しゅうで8週しゅう齢よわい未満みまんの子犬こいぬの販売はんばいに規制きせいがある[31]。日本にっぽんでは生後せいご56日にち以内いないの販売はんばいが禁止きんしされる[32]。一方いっぽう、専門せんもん家かの間あいだでは「生後せいご49日にち」が妥当だとうとされている[32]。

ペットショップや繁殖はんしょく業者ぎょうしゃに対たいしては、動物どうぶつ福祉ふくしの観点かんてんから、飼育しいく環境かんきょうや業態ぎょうたいそのものに対たいして批判ひはんや規制きせいが向むけられることもある。日本にっぽんの環境省かんきょうしょうは2021年ねん6月がつ、犬いぬ・猫ねこについてケージの広ひろさや従業じゅうぎょう員いん1人にん当あたりの管理かんり頭数とうすう、雌めすの交配こうはい上限じょうげん年齢ねんれいに数値すうち基準きじゅんを設もうけた飼養しよう管理かんり基準きじゅん省令しょうれいを施行しこうした[33]。環境省かんきょうしょうは、動物どうぶつの命いのちに配慮はいりょし、ペットを迎むかえる際さいには譲渡じょうとという選択肢せんたくしを考かんがえて欲ほしいと広報こうほうしている[34]。アメリカのカリフォルニア州しゅうやニューヨーク州しゅうなどはペットショップでの犬いぬや猫ねこなどの販売はんばいを禁止きんしする[35]。フランスでは2021年ねん11月18日にちに制定せいていした動物どうぶつ愛護あいご法ほうで、ペットショップでの犬いぬ・猫ねこの販売はんばいが2024年ねん1月がつ以降いこうは禁止きんしされる[36]。「ペット#各国かっこくにおけるペット関連かんれん規制きせい」も参照さんしょう。

日本にっぽんで最近さいきん、ペットショップがペットを販売はんばいせず、ペット関連かんれん商品しょうひんの販売はんばいだけで利益りえきを上あげ、保護ほごペット譲渡じょうとに舵かじを切きる動うごきもある[37]。

ペットの殺ころせ処分しょぶん[編集へんしゅう]

保健所ほけんじょ

ペットの扱あつかいには国こくごとに差異さいがある。平成へいせい25年ねんに改正かいせいされた動物どうぶつ愛護あいご管理かんり法ほうにおいて、飼かい主ぬしに「終生しゅうせい飼養しよう」の責任せきにんがあることが明記めいきされた[38]。しかし同どう法ほうは、自治体じちたいが動物どうぶつを引ひき取とり殺ころせ処分しょぶんをすることが認みとめられている。ガス室しつを用もちいた殺ころせ処分しょぶんは日本にっぽんでは禁止きんしされないが、アメリカ合衆国あめりかがっしゅうこくの一部いちぶの州しゅうでは禁止きんしされている（後述こうじゅつ）。

日本にっぽん[編集へんしゅう]

日本にっぽんでは、保健所ほけんじょが野良犬のらいぬや迷まよい犬けんを捕獲ほかく・収容しゅうようしたり、飼かい主ぬしから直接ちょくせつ持もち込こまれた動物どうぶつを収容しゅうようしたりする。収容しゅうようされた動物どうぶつは、数日すうじつの保管ほかん期間きかんをおいて殺ころせ処分しょぶんされる。殺ころせ処分しょぶん数すうは、過去かこには毎年まいとし数すう十じゅう万まん頭とうに及およぶこともあったが、2015年度ねんど（平成へいせい27年度ねんど）以降いこうは毎年まいとし10万まん頭とう以下いかに減少げんしょうしている[39]。

保健所ほけんじょは、殺ころせ処分しょぶんを減へらすために飼かい主ぬしを探さがす努力どりょくもしている。たとえば、当該とうがい犬けんを収容しゅうようしている旨むねを公示こうじして飼かい主ぬしを探さがす、譲渡じょうと会かい等とうで飼かい主ぬしを募集ぼしゅうする、譲渡じょうと希望きぼう者しゃに気きに入いった個体こたいを引ひき渡わたすなどが行おこなわれる[40]。

実際じっさいに熊本くまもと市し動物どうぶつ愛護あいごセンターでは、2002年度ねんどの段階だんかいでは56.38%であった処分しょぶん率りつを、2008年度ねんどには12.86%にまで引ひき下さげることに成功せいこうした[41]。こうした成功せいこう事例じれいが知しられるようになり、「熊本くまもとのようにやる気きになりさえすればペットの命いのちが救すくえるのに、なぜ他たの自治体じちたいでは同様どうようのことをやろうともせず問題もんだいを放置ほうちするのか」という声こえが出でるようになった。

環境省かんきょうしょうは、2009（平成へいせい21）年度ねんどより、犬いぬや猫ねこの殺ころせ処分しょぶんの半減はんげんを目標もくひょうに、新あたらしい飼かい主ぬし探さがしを促進そくしんするための施設しせつを、都道府県とどうふけん（や政令せいれい指定してい都市としに）、年間ねんかん約やく10か所しょ整備せいびする計画けいかくを、また2017年ねん（平成へいせい29年ねん）までに90か所しょ整備せいびする計画けいかくを立たて、それに着手ちゃくしゅした。9年間ねんかんで殺ころせ処分しょぶんの数かずの半減はんげんを目指めざすという。新あたらしい飼かい主ぬし探さがしを促進そくしんするための施設しせつ整備せいびなどを行おこなうという。また、ペットの不ふ妊にん手術しゅじゅつの推進すいしんや、（ペットが迷子まいごになってしまったときに飼かい主ぬしのもとに戻もどることができるように）マイクロチップ装着そうちゃくなども推進すいしんするという[41]。

アメリカ合衆国あめりかがっしゅうこく[編集へんしゅう]

アメリカ合衆国あめりかがっしゅうこくでは、アニマルシェルターにいる動物どうぶつの中なかで、毎年まいとし約やく153万まん頭とう（犬いぬ67万まん頭とう、猫ねこ86万まん頭とう）が殺ころせ処分しょぶんされる[42]。また、殺ころせ処分しょぶん方法ほうほうの規制きせいは州しゅうによって異ことなる。ガス室しつを用もちいた犬いぬ猫ねこの殺ころせ処分しょぶんは、23州しゅうで禁止きんしされている[43]。

その他た諸しょ問題もんだい[編集へんしゅう]

外来がいらい生物せいぶつ[編集へんしゅう]

外来がいらい生物せいぶつであろうとなかろうと、最後さいごまで飼かい主ぬしは責任せきにんをもって飼育しいくすることが求もとめられる。外来がいらい生物せいぶつを野外やがいに放はなって定着ていちゃくさせてしまった場合ばあいは、人間にんげんの生命せいめい・身体しんたい、農林のうりん水産すいさん業ぎょう、日本にっぽん固有こゆうの生態せいたい系けいに対たいして大おおきな影響えいきょうを与あたえるため、外来がいらい生物せいぶつ法ほうで放流ほうりゅう・販売はんばい・頒布はんぷ・購入こうにゅうは禁止きんしされている（責任せきにんをもって飼育しいくできる人ひとや団体だんたいへの無償むしょう譲渡じょうとは可か）[44]。また、以前いぜんから飼育しいくしていた特定とくてい外来がいらい生物せいぶつは許可きょかがあれば飼育しいく可能かのうである[45]。

闇取引やみとりひき[編集へんしゅう]

珍めずらしい動物どうぶつを飼かいたいという需要じゅようを満みたすために、動物どうぶつが違法いほうに捕獲ほかくされ売買ばいばいされることもある。野生やせいのオランウータンはワシントン条約じょうやくで商しょう取引とりひきが禁きんじられているが、これすら密猟みつりょうされた事例じれいがある[46]。また、動物どうぶつ園えんなどから珍めずらしい動物どうぶつが盗ぬすまれる事件じけんも発生はっせいしている[47]。日本にっぽんでは、2003年ねん（平成へいせい15年ねん）に動植物どうしょくぶつ園えんからレッサーパンダとワタボウシタマリンが盗ぬすまれる事件じけんが起おきた（4か月げつ後ごに返還へんかんされた）[48]。盗ぬすんだはいいが飼かい方かたがわからず死しなせてしまうといった事件じけんも起おきている[要よう出典しゅってん]。

周囲しゅういの人々ひとびとに対たいする配慮はいりょ[編集へんしゅう]

香港の飲食店にて
香港ほんこんの飲食いんしょく店てんにて
日本のショッピングセンターにて
日本にっぽんのショッピングセンターにて
日本の団地にて
日本にっぽんの団地だんちにて

ペットの飼かい主ぬしは、周囲しゅういの人々ひとびとへの配慮はいりょも求もとめられる。路上ろじょうや公園こうえんに放置ほうちされたペットの糞尿ふんにょうは、人ひとを不快ふかいにさせる。糞尿ふんにょうの始末しまつは、飼かい主ぬしの責任せきにんである。また、ペットが苦手にがてな人ひともいる。特とくに、動物どうぶつアレルギー（英語えいご版ばん）(ネコアレルギー（英語えいご版ばん）など)の人ひとにとっては健康けんこうにもかかわる。したがって、「ペット禁止きんし」との表示ひょうじがある場所ばしょにペットを持もち込こまないということは守まもるべき当然とうぜんのマナーとされる。あるいは、特とくに表示ひょうじがなくても、不ふ特定とくてい多数たすうの人々ひとびとが出入でいりする場所ばしょではケージなどに入いれ、ペットを管理かんり下かに置おくことはマナーとされる。また、ケージなどに入いれた状態じょうたいで鉄道てつどう等ひとしの公共こうきょう交通こうつう機関きかんに持もち込こむ際さいには手回てまわり品ひん切符きっぷが必要ひつようとなる場合ばあいがある。ペットが人ひとに被害ひがいを与あたえた場合ばあい、刑事けいじ・民事みんじの責任せきにんを問とわれることがある。日本にっぽんの刑法けいほう上うえでは、ペットをけしかけるなどして他人たにんに危害きがいを与あたえた場合ばあいは、軽犯罪法けいはんざいほうや傷害しょうがい罪ざいで罰ばっせられる。民事みんじ上じょうでは、ペットの管理かんり者しゃは、ペットが他人たにんに加くわえた損害そんがいを賠償ばいしょうする責任せきにんを負おう（民法みんぽう第だい718条じょう）。また、人ひとに危害きがいを加くわえる恐おそれのある動物どうぶつを逃にがすことも同様どうようの責任せきにんが生しょうじる[49]。

ペットによる健康けんこう被害ひがい[編集へんしゅう]

病原びょうげん体たい[編集へんしゅう]

ペットとして供きょうされる動物どうぶつが、病原びょうげん体たいを媒介ばいかいすることがある。動物どうぶつ由来ゆらい感染かんせん症しょうまたは人ひと獣じゅう共通きょうつう感染かんせん症しょうと呼よばれる伝染でんせん病びょうや寄生虫きせいちゅうによる被害ひがいは、飼かい主ぬし自身じしんのみならず周囲しゅういの人々ひとびとに及およぶ場合ばあいもあり、致死ちし率りつの高たかい感染かんせん症しょうも存在そんざいする。日本にっぽんでは気候きこうや飼育しいく下かにある動物どうぶつへの衛生えいせい対策たいさくなどにより、動物どうぶつ由来ゆらい感染かんせん症しょうの罹患りかんは多おおくはない[50]。

致死ちし率りつの高たかい感染かんせん症しょうとして狂犬病きょうけんびょうがある。齧かじ歯は類るいは通常つうじょう、狂犬病きょうけんびょうに罹患りかんした捕食ほしょく動物どうぶつに噛かまれた際さいに死亡しぼうしてしまうため、きわめて稀まれな事例じれいではあるが、南米なんべいボリビアでは、2003年ねんにペルー産さんのペット用ようハムスターが狂犬病きょうけんびょうを発症はっしょうした[51]。日本にっぽんでは、飼かい犬いぬに年とし1回かいの狂犬病きょうけんびょう予防よぼう注射ちゅうしゃを受うけさせることが法律ほうりつで義務ぎむ化かされている[52]。

咬傷こうしょう等とう[編集へんしゅう]

足あしを噛かんでいる犬いぬ

ペットが噛かみつくなどして人ひとに危害きがいを加くわえることがある。日本にっぽんでは、犬いぬによる咬傷こうしょう事故じこは減少げんしょうしているが、毎年まいとし約やく4,000件けん発生はっせいしている[53]。野犬やけんが少すくない日本にっぽんではほとんどが飼かい犬いぬによる被害ひがいになっている。

屋外おくがいに犬いぬを連つれていくときは、犬いぬによる危害きがいを防ふせぐためにリードをつけることが求もとめられる[54]。日本にっぽんでは、飼育しいく責任せきにん者しゃの指示しじを受うけた活動かつどう中ちゅうの使役しえき犬けんなどの一部いちぶの例外れいがいを除のぞき、屋外おくがいにおける犬いぬの放はなし飼がいは条例じょうれいで禁止きんしされる[55]。

ペットが逃にげ出だし、人ひとへ重大じゅうだいな危害きがいを加くわえるなど緊急きんきゅう性せいがある場合ばあいは、警察官けいさつかんに射殺しゃさつされることがある[56]。隔離かくり命令めいれい、保健所ほけんじょへの届出とどけで、狂犬病きょうけんびょうの検診けんしん証明しょうめい書しょ提出ていしゅつなど行政ぎょうせい処分しょぶんが下くだされることもある[57]。アメリカ合衆国あめりかがっしゅうこくでは、老人ろうじんがピットブル4頭とうに噛かまれて死亡しぼうし、飼かい主ぬしが殺人さつじん罪ざいで起訴きそされた事件じけんがある[58]。

野生やせい化か[編集へんしゅう]

ペットが野のに放はなたれ、外来がいらい種しゅが生うみ出だされるという問題もんだいも世界中せかいじゅうで発生はっせいしている。たとえば日本にっぽんでは、アライグマが野生やせい化かし、農作物のうさくもつを食くい荒あらす、住宅じゅうたくの天井てんじょう裏うらに住すみ着つき糞尿ふんにょうをするなどの被害ひがいが発生はっせいしている[59]。アライグマがペットとして人気にんきとなったのは、1977年ねん（昭和しょうわ52年ねん）に放映ほうえいされた『あらいぐまラスカル』というテレビ番組ばんぐみの影響えいきょうであるとされる[60]。しかしアライグマの成獣せいじゅうは気性きしょうが荒あらく、飼育しいくは難むずかしい。世話せわに手てを焼やく飼かい主ぬしが捨すてたことで、野生やせいのアライグマが全国ぜんこくに急速きゅうそくに増加ぞうかした[60]。そのような実情じつじょうを経へて日本にっぽんではアライグマは飼育しいく禁止きんしになっており、野生やせいの個体こたいを捕獲ほかく・保護ほごした場合ばあいにも飼育しいくは不可能ふかのうである。

野生やせい化かしたペットは狩猟しゅりょう対象たいしょうとなることがある。ドイツでは、同国どうこくの狩猟しゅりょう法ほうにおいて、野生やせいの犬いぬ猫ねこの駆除くじょは野生やせい生物せいぶつの保護ほごを名目めいもくに合法ごうほう化かされている[61]。年間ねんかん40万まん匹ひきのノネコ、4 - 6万まん頭とうのノイヌ（野犬やけん）が民間みんかんのハンターによって狩猟しゅりょうの対象たいしょうとされているが、野生やせい化かした動物どうぶつも単たんに戸外こがいを歩あるき回まわるペットも見分みわけが付つかないことにも絡からんで、狩猟しゅりょう区域くいきに入はいり込こんだペットが捕獲ほかくされたり罠わなにかかったりするトラブルも報ほうじられている[62][63][64]。

日本にっぽんでも、鳥獣ちょうじゅう保護ほご法ほうにより野生やせい化かしたノイヌ、ノネコ（野の猫ねこ）は狩猟しゅりょう対象たいしょうである。しかし、それらは非ひ狩猟しゅりょう鳥獣ちょうじゅうの野良犬のらいぬ、野良猫のらねことの判別はんべつが困難こんなんなため[65]、それらを主要しゅような狩猟しゅりょう対象たいしょうとして活動かつどうする者ものはほとんどいないとされる。

その他た[編集へんしゅう]

ペットの健康けんこうのために金銭きんせんや労力ろうりょく等とうを費ついやしながら、畜産ちくさんや動物どうぶつ実験じっけんを許容きょようするのは、「道理どうりに反はんする」「不誠実ふせいじつな振ふる舞まい」といった批判ひはんがある[66]。猫ねこは肉食にくしょく動物どうぶつとされ、菜食さいしょく仕様しようのキャットフードでも、タウリンなどが補充ほじゅうされタンパク質たんぱくしつを多おおく含ふくむものなら大丈夫だいじょうぶであるという指摘してきもある[4]。

各国かっこくにおけるペット関連かんれん規制きせい[編集へんしゅう]

一部いちぶの国くにと地域ちいきでは、行政ぎょうせいの免許めんきょがないと犬いぬをペットとして迎むかえ入いれられないことがある。こうした免許めんきょはドッグライセンスと呼よばれる。

日本にっぽん[編集へんしゅう]

ペット販売はんばいにおける対面たいめん説明せつめいの義務ぎむ

イギリス[編集へんしゅう]

動物どうぶつ取扱とりあつかい業ぎょうは免許めんきょ制せいであり、動物どうぶつの飼養しようや利用りように関連かんれんする法令ほうれいは70以上いじょう[67]。6歳さい未満みまんはペット購入こうにゅう不可能ふかのう[68]。RSPCA（王立おうりつ動物どうぶつ虐待ぎゃくたい防止ぼうし協会きょうかい）という動物どうぶつ保護ほご団体だんたいがある。

アメリカ[編集へんしゅう]

動物どうぶつ取扱とりあつかい業ぎょうは免許めんきょ制せい。

フランス[編集へんしゅう]

2024年ねんから規制きせいが許可きょかされ、ペットショップでの店頭てんとう販売はんばい。ショーケースでの展示てんじ。一般人いっぱんじんによるネット販売はんばいが禁止きんしされる[17]。入手にゅうしゅは正規せいきのペットショップからインターネットで購入こうにゅう、ブリーダーから直接ちょくせつ購入こうにゅう、保護ほご施設しせつから引ひき取とりなどに限かぎられる[17]。

ペットを題材だいざいとする作品さくひん[編集へんしゅう]

テレビドラマ[編集へんしゅう]

脚注きゃくちゅう[編集へんしゅう]

[脚注きゃくちゅうの使つかい方かた]

注釈ちゅうしゃく[編集へんしゅう]

  1. ^ ペットフード協会きょうかいの調査ちょうさでも飼育しいくペットの種類しゅるいの順位じゅんいについて、内閣ないかく府ふ調査ちょうさと整合せいごう性せいのある結果けっかが出でている。1位いが犬いぬ、2位いが猫ねこ、3位いが金魚きんぎょである。
  2. ^ ペットの家族かぞく化かが進すすむにつれ、「ペットに遺産いさんを相続そうぞくさせたい」という要望ようぼうが出でるようになった。日本にっぽんでは法律ほうりつ上じょう、ペットは物ものとして扱あつかわれるため相続そうぞく人じんにはできない。そこで、「負担ふたん付づけ遺贈いぞう」でペットの世話せわを条件じょうけんに、世話人せわにんに遺産いさんを相続そうぞくする」という手法しゅほうで、飼かい主ぬしの死後しごもペットの生活せいかつを守まもる遺言ゆいごんを作成さくせいできる[11]。その際さい、世話人せわにんがペットの世話せわをきちんとするかを監視かんしする遺言ゆいごん執行しっこう者しゃを置おき、世話せわをきちんとしない場合ばあいには遺産いさんを取とり消けすようにすれば「遺産いさんだけもらって世話せわをしない」といった事態じたいへの予防よぼう策さくになる[11]。

出典しゅってん[編集へんしゅう]

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  59. ^ “特定とくてい外来がいらい生物せいぶつの解説かいせつ”. 環境省かんきょうしょう. 2020年ねん5月がつ31日にち閲覧えつらん。
  60. ^ a b “【関西かんさいの議論ぎろん】「ラスカル」どころか害がい獣じゅう 近畿きんきでエスカレートするアライグマ被害ひがい”. 産経新聞さんけいしんぶん. 2020年ねん5月がつ31日にち閲覧えつらん。
  61. ^ “諸しょ外国がいこくにおける犬いぬ猫ねこ殺ころせ処分しょぶんをめぐる状況じょうきょう ―イギリス、ドイツ、アメリカ―”. 遠藤えんどう 真弘まさひろ. 2020年ねん5月がつ31日にち閲覧えつらん。
  62. ^ German hunters under fire for killing domestic cats（The Daily Telegraph）
  63. ^ Jagd/Was kann ich tun, wenn mein Haustier von einem Jäger verletzt oder getötet wurde? Dürfen streunende Katzen getötet werden? Wir haben für Sie alle wichtigen Urteile zum Thema Jagd und Katzen gesammelt.(Ein HerzfürTiere Media GmbH)
  64. ^ Haustiere「狩猟しゅりょう廃止はいしへの取とり組くみ ペット」(Initiative zur Abschaffung der Jagd)
  65. ^ “第だい43回かい国会こっかい　衆議院しゅうぎいん 農林のうりん水産すいさん委員いいん会かい 第だい17号ごう”. 林野庁りんやちょう指導しどう部長ぶちょうによる発言はつげん. 2020年ねん5月がつ31日にち閲覧えつらん。
  66. ^ スー・ドナルドソン、ウィル・キムリッカ『人ひとと動物どうぶつの政治せいじ共同きょうどう体たい』尚なお学がく社しゃ、2016年ねん、197頁ぺーじ。 
  67. ^ “ペットをめぐる法律ほうりつ（2）海外かいがい編へん”. 2009年ねん12月26日にち閲覧えつらん。:
  68. ^ “Caring for pets”. GOV.UK. 2020年ねん6月がつ2日にち閲覧えつらん。

参考さんこう文献ぶんけん[編集へんしゅう]

  • B.ガンター、安藤あんどう孝敏たかとし、金児かねこ恵めぐみ、種市たねいち康太郎やすたろう 訳やく『ペットと生いきる ペットと人ひとの心理しんり学がく』北大路きたおおじ書房しょぼう ISBN 4762825034

関連かんれん文献ぶんけん[編集へんしゅう]

  • 宇都宮うつのみや直子なおこ『ペットと日本人にっぽんじん』文藝春秋ぶんげいしゅんじゅう〈文春ぶんしゅん新書しんしょ075〉、1999年ねん11月20日にち。ISBN 978-4-16-660075-5。 
  • エリザベス・オリバー『日本にっぽんの犬いぬ猫ねこは幸しあわせか　動物どうぶつ保護ほご施設しせつアークの25年ねん』集英社しゅうえいしゃ〈集英社しゅうえいしゃ新書しんしょ0805〉、2015年ねん10月がつ16日にち。ISBN 978-4-08-720805-4。 
  • ジェフリー・M・マッソン（英語えいご版ばん） 著しる、青樹あおき玲れい 訳やく『ペットが死しについて知しっていること――伴侶はんりょ動物どうぶつとの別わかれをめぐる心しんの科学かがく』草くさ思おもえ社しゃ、2021年ねん10月がつ4日にち。ISBN 978-4-7942-2540-5。 

関連かんれん項目こうもく[編集へんしゅう]

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