ピューマ

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ピューマ
ピューマ
ピューマ Puma concolor
保全ほぜんじょうきょう評価ひょうか[1][2][3]
LEAST CONCERN
(IUCN Red List Ver.3.1 (2001))
ワシントン条約じょうやく附属ふぞくしょII
分類ぶんるい
ドメイン : かく生物せいぶつ Eukaryota
さかい : 動物界どうぶつかい Animalia
もん : 脊索せきさく動物どうぶつもん Chordata
もん : 脊椎動物せきついどうぶつもん Vertebrata
つな : 哺乳ほにゅうつな Mammalia
: 食肉しょくにく Carnivora
: ネコ Felidae
: ネコ Felinae
ぞく : (ネコぞく Felini)
ぞく : ピューマぞく Puma
たね : ピューマ P. concolor
学名がくめい
Puma concolor (Linnaeus, 1771)[3][4]
シノニム

Felis concolor Linnaeus, 1771[3][5]

和名わみょう
ピューマ[4][6]
英名えいめい
Cougar[3][4][6][7]
Deer tiger[3]
Mountain lion[3][4][6][7]
Puma[3][4][6][7]
Red tiger[3]

分布域

ピューマPuma concolor)は、哺乳ほにゅうつな食肉しょくにくネコピューマぞく分類ぶんるいされる食肉しょくにくるい英名えいめいはcougar(クーガー)。

分布ぶんぷ[編集へんしゅう]

カナダブリティッシュコロンビアしゅうから、チリにかけて[4]

形質けいしつ[編集へんしゅう]

あたまどうちょう体長たいちょう)オス107 - 168センチメートル、メス96 - 141センチメートル[4]尾長おなが57 - 92センチメートル[4]体重たいじゅうオス39 - 80キログラム、メス22.7 - 50キログラム[4]おおきさは緯度いど気候きこう獲物えものりょうなどによって変異へんいがあり、分布ぶんぷいき北端ほくたん南端なんたん温帯おんたいいき個体こたいぐん大型おおがた[4]ねつ帯域たいいき個体こたいぐん小型こがた[4][6]ながく、円筒えんとうがた[4][7]

背面はいめんあわ褐色かっしょく褐色かっしょくで、斑紋はんもんはいらない[4]みみかい外側そとがわ先端せんたんは、くろ褐色かっしょく[4]出産しゅっさん直後ちょくごようじゅうには、褐色かっしょく斑点はんてん斑紋はんもんはい[4]おおくの個体こたいは、生後せいご9 - 12かげつ斑紋はんもん消失しょうしつする[4]ようじゅうからだちゅうくろから黒褐色こっかっしょくヒョウのような斑紋はんもんがあり、にはくろがあるが、これらは成長せいちょうとともにえていく。

嗅覚きゅうかくするどく、ネコ大型おおがた肉食にくしょくじゅうなかではとく眼球がんきゅうおおきく、視力しりょくたかい。

分類ぶんるい[編集へんしゅう]

以前いぜんは32亜種あしゅけるせつもあったが、形態けいたいのわずかな差異さいしかなく亜種あしゅをまとめるせつ有力ゆうりょくとされる[4]。2000ねん発表はっぴょうされたミトコンドリアDNA16SrRNAなどの分子ぶんし系統けいとう解析かいせきから、以下いか亜種あしゅけるせつもある[8]

以下いか亜種あしゅ分類ぶんるい分布ぶんぷは、IUCN SSC Cat Specialist Group(2017)にしたが[8]

Puma concolor concolor (Linnaeus, 1771)
みなみアメリカ大陸あめりかたいりく北部ほくぶおよび西部せいぶ
Puma concolor cabrerae (Pocock, 1940)
みなみアメリカ大陸あめりかたいりく南東なんとう
Puma concolor capricornensis (Molina, 1782)
みなみアメリカ大陸あめりかたいりく北東ほくとう
Puma concolor costaricensis (Merriam, 1901)
コスタリカ、パナマ
Puma concolor couguar (Kerr, 1792)
きたアメリカ
P. c. coryiフロリダパンサー)はシノニムとされる(フロリダしゅう個体こたいぐん個体こたいぐん隔離かくりされたのがやく100ねんほどまえで、分子ぶんし系統けいとう解析かいせきでも支持しじされなかった)[4]
Puma concolor puma (Molina, 1782)
みなみアメリカ大陸あめりかたいりく南部なんぶ

以下いかの2亜種あしゅのみとするせつもある。以下いか分類ぶんるい分布ぶんぷも、IUCN SSC Cat Specialist Group(2017)にしたが[8]

Puma concolor concolor (Linnaeus, 1771)
みなみアメリカ(アンデス山脈あんですさんみゃく以西いせい個体こたいぐんのぞ可能かのうせいもある)
Puma concolor couguar (Kerr, 1792)
きたアメリカおよび中央ちゅうおうアメリカ(アンデス山脈あんですさんみゃく以西いせい個体こたいぐんふく可能かのうせいもある)

生態せいたい[編集へんしゅう]

森林しんりん低木ていぼくりん草原そうげんサバンナパンタナルパンパなどもふくむ)・いわおお植生しょくせい点在てんざいする砂漠さばくなど、様々さまざま環境かんきょう生息せいそくする[4]基本きほんてき単独たんどく行動こうどうであり、オスでは平均へいきんひろさ250 km2半径はんけい9 kmのえん程度ていど縄張なわばりをつとされる。くらべ、メスの縄張なわばりはせま面積めんせきはその半分はんぶんから3ぶんの1程度ていどとなる。ただし、縄張なわばりのひろさは環境かんきょう左右さゆうされ、えさ豊富ほうふ条件じょうけんがよい地域ちいきではオスの縄張なわばりが1とうあたり25 km2半径はんけい3 kmのえん程度ていど地域ちいきもあるという。敏捷びんしょう瞬発しゅんぱつりょくすぐれ、たかさ4 m、はば12 mほどの跳躍ちょうやくした記録きろくのこされている。

おも中型ちゅうがたから大型おおがたゆう蹄類をべる[4]きたアメリカではオジロジカヘラジカおもわかしし)、ミュールジカシロイワヤギ、ドールシープ、ビッグホーンプロングホーンクビワペッカリーなどをべる[4]アライグマウサギアメリカビーバー、オグロプレーリードッグリスキタオポッサムなどの小型こがた動物どうぶつべる。チリ中部ちゅうぶではグアナコしょくせいの88.5 %、トレスデルパイネ国立こくりつ公園こうえんではグアナコがしょくせいの59 %をめていたという報告ほうこくれいもある[4]みなみアメリカでは一方いっぽうマザマジカぞくペッカリーるいバクるいアルマジロるい、ウサギるいアグーチカピバラヌートリア・アメリカヤマアラシるいなどのかじるいハナグマぞくサルるいアリクイるいタテガミオオカミ・およびナマケモノるいといった有毛ありげなどの小型こがた獲物えものべる[4]鳥類ちょうるい大型おおがたのものではレア)や爬虫類はちゅうるい大型おおがたのものではアメリカアリゲーターカイマンるい)を捕食ほしょくすることもあるが、おも獲物えものではない[4]りの方法ほうほうは、地面じめんせて獲物えものしのり、うしろや物陰ものかげから瞬発しゅんぱつりょく利用りようして一気いっきびかかるというもの。大型おおがた獲物えもののどみついて窒息ちっそくさせ、小型こがた獲物えもの頭部とうぶや頸部にみついてころ[4]獲物えもの行動こうどうめるため、あご喉笛のどぶえいついたり、獲物えもの転倒てんとうさせて、腹部ふくぶいついたりもする。ヤマアラシたいするかたは、はりのない腹部ふくぶつめくというもの。捕食ほしょくされた動物どうぶつなかには、びつかれたさい衝撃しょうげきによる骨折こっせつ死因しいんのものもつかっている。ころした獲物えもの保存ほぞん肉食にくしょく動物どうぶつからまもるために、ゆきをかぶせてかくすこともある[4]。こうした獲物えものすうかい(3にち - 4週間しゅうかん寒冷かんれい大型おおがた獲物えもの場合ばあい>)にわけて、べることもある[4]アメリカグマヒグマオオカミに、仕留しとめた獲物えものうばわれてしまうこともある[4]

妊娠にんしん期間きかんは82 - 98にち[4]。1かいに1 - 4とう平均へいきん3 - 4とう)のようじゅう[4]飼育しいくでは、最大さいだい6とうようじゅうんだれいがある[4]飼育しいくでの寿命じゅみょうながくても20ねん[4][5]

人間にんげんとの関係かんけい[編集へんしゅう]

ライオンのメスにていることから、生息せいそくではライオンを意味いみする呼称こしょうれいとしてアメリカ合衆国あめりかがっしゅうこく西部せいぶではLion)でばれることもある[4]

家畜かちくや、郊外こうがいではイヌ・ネコなどのペットをおそうこともある[4]。ごくまれに人間にんげんころすこともあり、1890 - 2012ねんアメリカ合衆国あめりかがっしゅうこくおよびカナダでほんしゅによる死亡しぼうれいは23れい(うち2れい狂犬病きょうけんびょうによる死亡しぼうれい)とされる[4]

狩猟しゅりょうがいじゅうとしての駆除くじょ道路どうろ建設けんせつによる生息せいそく分断ぶんだんおよび交通こうつう事故じこ(フロリダしゅう顕著けんちょ)などにより生息せいそくすう減少げんしょうしている[3][4]アメリカ合衆国あめりかがっしゅうこく東部とうぶでは、フロリダしゅうのぞいて絶滅ぜつめつした[4]。1975ねんのワシントン条約じょうやく発効はっこうからワシントン条約じょうやく附属ふぞくしょI・ワシントン条約じょうやく附属ふぞくしょIIに掲載けいさいされている亜種あしゅもいたが、2017ねん分類ぶんるい変更へんこうともな掲載けいさいされていたぜん亜種あしゅ亜種あしゅP. c. couguarふくまれるということになりこれらの掲載けいさい抹消まっしょうされている[2]。1977ねんにネコ単位たんいでワシントン条約じょうやく附属ふぞくしょIIに掲載けいさいされ、2019ねんにコスタリカとパナマ個体こたいぐんがワシントン条約じょうやく附属ふぞくしょIに掲載けいさいされている[2]

日本にっぽんでは2020ねん時点じてんでプマぞく(ピューマぞく単位たんいで、特定とくてい動物どうぶつ指定していされており、2019ねん6がつには愛玩あいがん目的もくてきでの飼育しいく禁止きんしされた(2020ねん6がつ施行しこう[9]

インカ帝国ていこく存在そんざいしたクスコまちはピューマをもとにできている[10]

呼称こしょう[編集へんしゅう]

分類ぶんるいがくじょうほんたねをピューマぞくとせず、ネコぞく下位かいいて「ピューマぞく」とする学説がくせつもあり、その場合ばあい学名がくめいシノニムとしての Felis concolor である。

ぞくめい Puma英名えいめいpuma(プーマ)の語源ごげん辿たどると、スペインめいているが、そもそもの由来ゆらいみなみアメリカのペルーやエクアドルにらす先住民せんじゅうみんぞくケチュアの言語げんごでのそのめい pumaに源流げんりゅうがある[よう出典しゅってん]

アメリカライオンともばれる[11]民俗みんぞく学者がくしゃ南方みなかた熊楠くまぐす著書ちょしょじゅう支考しこう』のなかでピューマにたいして亜米利加あめりかべいという漢字かんじてている[12]

画像がぞう[編集へんしゅう]

出典しゅってん[編集へんしゅう]

  1. ^ Appendices I, II and III (valid from 26 November 2019)<https://cites.org/eng> (downroad 07/27/2020)
  2. ^ a b c UNEP (2020). Puma concolor. The Species+ Website. Nairobi, Kenya. Compiled by UNEP-WCMC, Cambridge, UK. Available at: www.speciesplus.net. (downroad 07/27/2020)
  3. ^ a b c d e f g h i Nielsen, C., Thompson, D., Kelly, M. & Lopez-Gonzalez, C.A. 2015. Puma concolor (errata version published in 2016). The IUCN Red List of Threatened Species 2015: e.T18868A97216466. doi:10.2305/IUCN.UK.2015-4.RLTS.T18868A50663436.en, Downloaded on 27 July 2020.
  4. ^ a b c d e f g h i j k l m n o p q r s t u v w x y z aa ab ac ad ae af ag ah ai aj ak Luke Hunter 「ピューマ」山上やまかみ圭子けいこやく野生やせいネコの教科書きょうかしょ今泉いまいずみ忠明ただあき監修かんしゅう、エクスナレッジ、2018ねん、155-164ぺーじ
  5. ^ a b Mary Jean P. Currier, "Felis concolor," Mammalian Species, No. 200, American Society of Mammalogists, 1983, Pages 1-7.
  6. ^ a b c d e 成島なりしま悦雄えつお 「ネコ分類ぶんるい」『世界せかい動物どうぶつ 分類ぶんるい飼育しいく2 (食肉しょくにく)』今泉いまいずみよしのり監修かんしゅう東京とうきょう動物どうぶつえん協会きょうかい、1991ねん、150-171ぺーじ
  7. ^ a b c d Anupama Shivaraju, 2003. "Puma concolor" (On-line), Animal Diversity Web. Accessed February 28, 2020 at https://animaldiversity.org/accounts/Puma_concolor/
  8. ^ a b c IUCN SSC Cat Specialist Group, "Puma concolor," Cat News, Spacial Issue 11, 2017, Pages 33-34.
  9. ^ 特定とくてい動物どうぶつリスト (動物どうぶつ愛護あいご適切てきせつ管理かんり)環境省かんきょうしょう・2020ねん7がつ27にち利用りよう
  10. ^ クスコ/ ペルー”. NHK. 2024ねん4がつ17にち閲覧えつらん
  11. ^ 今泉いまいずみ忠明ただあき. “ピューマ”. 日本にっぽんだい百科全書ひゃっかぜんしょ(ニッポニカ)(コトバンク). 2021ねん8がつ9にち閲覧えつらん
  12. ^ 南方みなかた熊楠くまぐす. “じゅう支考しこう:01 とらかんする史話しわ伝説でんせつ民俗みんぞく”. 青空あおぞら文庫ぶんこ. 2021ねん8がつ9にち閲覧えつらん

関連かんれん項目こうもく[編集へんしゅう]

  • プーマ - スポーツ用品ようひんメーカー。