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生物 せいぶつ の命名 めいめい 法 ほう におけるシノニム (英語 えいご : synonym )とは、同一 どういつ と見 み なされる分類 ぶんるい 群 ぐん (種 たね や属 ぞく など)に付 つ けられた学名 がくめい が複数 ふくすう ある場合 ばあい に、そのそれぞれをいう[ 1] [ 2] 。ある学名 がくめい がシノニムであると言 い う場合 ばあい 、一般 いっぱん 的 てき な文脈 ぶんみゃく では「正 ただ しい」学名 がくめい [ 3] ではないという意味 いみ を包含 ほうがん していることが多 おお いが[ 4] 、命名 めいめい 規約 きやく の上 うえ では「正 ただ しい」学名 がくめい もシノニムに含 ふく まれる[ 1] [ 2] 。「syn. 」と略記 りゃっき されることもある。和訳 わやく は異名 いみょう (旧訳 きゅうやく では同 どう 物 もの 異名 いみょう )である。
シノニムは元来 がんらい 「同義語 どうぎご 」という意味 いみ であるが、生物 せいぶつ の命名 めいめい 法 ほう の場合 ばあい には複数 ふくすう あるシノニムは交換 こうかん 不可 ふか で、どれを使 つか っても良 よ いというわけではない。ある特定 とくてい の分類 ぶんるい 群 ぐん に対 たい して「正 ただ しい」学名 がくめい [ 3] は「一 いち 時 じ 点 てん に1つだけ」であり、それはシノニムの中 なか から命名 めいめい 規約 きやく に従 したが って決定 けってい される。ただしその決定 けってい 方法 ほうほう は分類 ぶんるい 学 がく 上 うえ の見解 けんかい に依存 いぞん する部分 ぶぶん があり、そのため分類 ぶんるい 学者 がくしゃ によってどのシノニムが「正 ただ しい」のかの判断 はんだん が分 わ かれることがよくある。また命名 めいめい 規約 きやく の変更 へんこう により「正 ただ しい」学名 がくめい が変更 へんこう されることもある。
例 たと えば、アサガオ の学名 がくめい にはIpomoea nil やPharbitis nil があり、これらはアサガオという1種 しゅ を指 さ す二 ふた つの名 な 、すなわち片方 かたがた はもう片方 かたがた の別名 べつめい であり、相互 そうご にシノニムの関係 かんけい にある。しかし有効 ゆうこう な学名 がくめい は1つしか認 みと められないので、基本 きほん 的 てき に先 さき につけられた名 な (senior synonym , 古参 こさん 異名 いみょう ・先行 せんこう 異名 いみょう /古参 こさん シノニム・先行 せんこう シノニム)が有効 ゆうこう となり、後 ご からつけられた名 な (junior synonym , 新参 しんざん 異名 いみょう ・後 ご 行 ぎょう 異名 いみょう /新参 しんざん シノニム・後 ご 行 ぎょう シノニム)は無効 むこう となる。しかし、実際 じっさい にはこのような単純 たんじゅん な例 れい ばかりではなく、複数 ふくすう の学名 がくめい が指 さ すものが本当 ほんとう に同 どう 一 いち 種 しゅ であるかどうかといった分類 ぶんるい 学 がく 的 てき な意見 いけん の相違 そうい などもあり、どのシノニムが有効 ゆうこう か、研究 けんきゅう 者 しゃ によって意見 いけん が異 こと なる場合 ばあい もある。
シノニムの成立 せいりつ には、命名 めいめい 法 ほう 上 じょう の過程 かてい と分類 ぶんるい 学 がく 上 じょう の過程 かてい の2つがある。前者 ぜんしゃ は、より古 ふる く先 さき 名 めい 権 けん のある学名 がくめい が発見 はっけん されたとか、あるいは命名 めいめい 規約 きやく そのものが変更 へんこう されたといった、純粋 じゅんすい に命名 めいめい 法 ほう 上 じょう の理由 りゆう によって生 しょう じる。一方 いっぽう 後者 こうしゃ は、科学 かがく 的 てき 知見 ちけん の蓄積 ちくせき により分類 ぶんるい 群 ぐん の定義 ていぎ (限界 げんかい 、circumscription )、位置 いち 、階級 かいきゅう などが変更 へんこう された場合 ばあい である。これらは学名 がくめい が対応 たいおう しているタイプ が同 おな じかどうかで区別 くべつ できる。
同 どう タイプ異名 いみょう (homotypic synonym)
動物 どうぶつ 命名 めいめい 規約 きやく と細菌 さいきん 命名 めいめい 規約 きやく では「客観 きゃっかん 異名 いみょう 」(objective synonym)、植物 しょくぶつ 命名 めいめい 規約 きやく では「命名 めいめい 法 ほう 上 じょう の異名 いみょう 」(nomenclatural synonym)とも呼 よ ばれる。同 おな じタイプ標本 ひょうほん に対 たい して新 あら たな名前 なまえ が再 さい 命名 めいめい されることにより生 しょう じるシノニム。≡ で表記 ひょうき されることがある。
以下 いか のような例 れい がそれにあたる。
既 すで に新種 しんしゅ 記載 きさい されているのを知 し らずに、あらためて記載 きさい してしまった。
先 さき につけられていた名前 なまえ が別種 べっしゅ のホモニム だと判明 はんめい し、それに代 か わる別名 べつめい をつけた。
種 たね 内 ない の変異 へんい を亜種 あしゅ や変種 へんしゅ と判断 はんだん して記載 きさい したが、後 のち に独立 どくりつ 種 しゅ に昇格 しょうかく した。
異 い タイプ異名 いみょう (heterotypic synonym)
動物 どうぶつ 命名 めいめい 規約 きやく と細菌 さいきん 命名 めいめい 規約 きやく では「主観 しゅかん 異名 いみょう 」(subjective synonym)、植物 しょくぶつ 命名 めいめい 規約 きやく では「分類 ぶんるい 学 がく 上 じょう の異名 いみょう 」(taxonomic synonym)とも呼 よ ばれる。元々 もともと 異 こと なるタイプ標本 ひょうほん に対 たい して命名 めいめい された名前 なまえ が、それらのタイプ標本 ひょうほん が同 おな じ種類 しゅるい だと判断 はんだん されることにより生 しょう じるシノニム。同 おな じ物 ぶつ に対 たい する名前 なまえ であるかどうかは研究 けんきゅう 者 しゃ の立場 たちば により判断 はんだん が分 わ かれる。= で表記 ひょうき されることがある。
以下 いか のような例 れい がそれにあたる。
別種 べっしゅ と判断 はんだん して記載 きさい した種 たね が、後 ご の見直 みなお しで同種 どうしゅ であると見 み なされた。
種 たね 内 ない の変異 へんい を亜種 あしゅ や変種 へんしゅ と判断 はんだん して記載 きさい したが、それが分 わ ける必要 ひつよう なしと判断 はんだん された。
分類 ぶんるい 体系 たいけい の見直 みなお しで、属 ぞく 名 めい が変更 へんこう された。アサガオはこれに当 あ たる。
最後 さいご の例 れい では、アサガオという種 たね のタイプ標本 ひょうほん は同 おな じ物 ぶつ だが、Ipomoea 属 ぞく のタイプ標本 ひょうほん とPharbitis 属 ぞく のタイプ標本 ひょうほん が同 おな じと判断 はんだん されたため生 しょう じたシノニムなので、異 い タイプ異名 いみょう となる。
命名 めいめい 法 ほう に関 かん する議論 ぎろん と直接 ちょくせつ 関 かか わらないような一般 いっぱん 的 てき な文脈 ぶんみゃく (たとえば教科書 きょうかしょ や図鑑 ずかん など)では、シノニムという語 かたり を「かつて使 つか われていたが現在 げんざい 正 ただ しくない学名 がくめい 」という意味 いみ で用 もち いることが多 おお い。
たとえばニジマス はかつてSalmo 属 ぞく に分類 ぶんるい されていたが、1989年 ねん にOncorhynchus 属 ぞく に移 うつ された[ 5] 。そこで図鑑 ずかん などでニジマスの学名 がくめい Oncorhynchus mykiss を記載 きさい する場合 ばあい に、かつての学名 がくめい を付記 ふき することが読者 どくしゃ にとって便利 べんり である。このような場合 ばあい に、
Oncorhynchus mykiss (syn. Salmo gairdneri )
Salmo gairdneri はOncorhynchus mykiss のシノニム
のように表記 ひょうき することがよくある。厳密 げんみつ にはOncorhynchus mykiss とSalmo gairdneri はどちらもお互 たが いのシノニムであって、この表記 ひょうき からだけではどちらが「現在 げんざい 正 ただ しい」学名 がくめい かを判断 はんだん することはできないはずであるが、便宜上 べんぎじょう は「現在 げんざい 正 ただ しくない」学名 がくめい をシノニムと表現 ひょうげん することが行 おこな われている。
分類 ぶんるい 学 がく の文献 ぶんけん において、pro parte シノニムという拡張 かくちょう された概念 がいねん が用 もち いられることがある。ある分類 ぶんるい 群 ぐん を分割 ぶんかつ して新 あら たな分類 ぶんるい 群 ぐん を設 もう けたとき、新 あら たな分類 ぶんるい 群 ぐん から見 み ると学名 がくめい が変 か わったことになるが、元 もと の分類 ぶんるい 群 ぐん に付 つ けられた学名 がくめい は引 ひ き続 つづ き「正 ただ しい」という状況 じょうきょう が生 しょう じる。この2つの分類 ぶんるい 群 ぐん はもはや別個 べっこ のものであるので、それぞれに付 つ けられた学名 がくめい はシノニムではない。しかし新 あら たな分類 ぶんるい 群 ぐん がかつては別 べつ の学名 がくめい で呼 よ ばれていたことを付記 ふき することは便利 べんり であるし、状況 じょうきょう はシノニムであるときと似 に ているので一貫 いっかん した表現 ひょうげん が望 のぞ まれる。このような場合 ばあい 、新 あら たな分類 ぶんるい 群 ぐん の学名 がくめい を「元 もと の分類 ぶんるい 群 ぐん の一部 いちぶ 」のシノニムであると解釈 かいしゃく し、pro parte (ラテン語 らてんご で「一部分 いちぶぶん の」の意味 いみ )またはp. p. と注記 ちゅうき してシノニムと同様 どうよう に扱 あつか うことが行 おこな われている[ 注釈 ちゅうしゃく 1] 。
^ pro parte という語句 ごく 自体 じたい は分類 ぶんるい 群 ぐん の分割 ぶんかつ とは直接 ちょくせつ 関係 かんけい が無 な く、何 なに かを一部分 いちぶぶん に限定 げんてい する際 さい に広 ひろ く使 つか われている。ここでの説明 せつめい は、分類 ぶんるい 群 ぐん の分割 ぶんかつ によって変更 へんこう された元 もと の学名 がくめい について表記 ひょうき するときに、pro parte を用 もち いることでシノニムと一貫 いっかん した表記 ひょうき が可能 かのう であるということ。