ナマケモノ

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ナマケモノ
分類ぶんるい
ドメイン : かく生物せいぶつ Eukaryota
さかい : 動物界どうぶつかい Animalia
もん : 脊索せきさく動物どうぶつもん Chordata
もん : 脊椎動物せきついどうぶつもん Vertebrata
つな : 哺乳ほにゅうつな Mammalia
: 有毛ありげ Pilosa
: ナマケモノ Folivora
学名がくめい
Folivora
Delsuc, Catzeflis, Stanhope, and Douzery, 2001[1][2]
シノニム

Phyllophaga Owen, 1842[2][3]

和名わみょう
ナマケモノ[4]
英名えいめい
Sloth
[5]

ナマケモノものぐさ)は、哺乳ほにゅうつな有毛ありげナマケモノ(Folivora)の総称そうしょう。ミユビナマケモノとフタユビナマケモノ現生げんなまし、にいくつかの絶滅ぜつめつがある。分類ぶんるいぐんとしては、別名べつめいしょく[6]

概要がいよう[編集へんしゅう]

にしがみついているナマケモノ
名前なまえ身体しんたい
そのゆっくりとした動作どうさから「なまもの」というがついた。英語えいごめいSlothおなじく、怠惰たいだやものぐさを意味いみする。体長たいちょうやく41-74センチメートル。四肢ししながく、前肢ぜんしのほうが後肢あとあしよりなが発達はったつしている。ながかぎつめち、これをえだけてぶらがっている。
生態せいたい
みなみアメリカ中央ちゅうおうアメリカ熱帯ねったいりん生息せいそくする。生涯しょうがいのほとんどをにぶらがってごす。食事しょくじ睡眠すいみんから交尾こうび出産しゅっさんまでもにぶらがったままでおこなう。主食しゅしょく新芽しんめなど。またえたこけ食用しょくようとする。しゅうに1かい程度ていどじょうからり、地上ちじょう排便はいべん排尿はいにょうおこなう。
地上ちじょうりて排泄はいせつおこなうのは、ナマケモノのなかむナマケモノガとばれるメイガクリプトセスぞく排泄はいせつぶつ産卵さんらんじょうしょかつ幼虫ようちゅうえさとして利用りようしやすいようにするためで、ナマケモノガはその見返みかえりとしてナマケモノの食料しょくりょうとなるこけえやすいように環境かんきょうととのえるあい共生きょうせい関係かんけいにある可能かのうせいたかい、との研究けんきゅう結果けっかウィスコンシン大学だいがくマディソンこう生物せいぶつ学者がくしゃジョナサン・パウリにより発表はっぴょうされている[7][8]
擬態ぎたい
にちちゅうあたまぜんあしあいだれ、えだくようにしてまるくなってねむるため、遠目とおめには一部いちぶのようにえる。これがジャガーピューマなどの捕食ほしょくしゃからまも擬態ぎたいとなっている。また、年齢ねんれいかさねた個体こたいには藻類そうるいえることもあり、これも樹皮じゅひへの擬態ぎたい一部いちぶとなる。
捕食ほしょくしゃ
機敏きびんうごくことができないじょう社会しゃかいせい動物どうぶつであることから、オウギワシには簡単かんたん捕食ほしょくされてしまう。パナマバロ・コロラドとうでの観察かんさつでは、オウギワシの獲物えものうち重量じゅうりょうにして50%以上いじょうがナマケモノであった[9]
およ
地上ちじょうでの動作どうさおそいが、およぎは上手じょうずである。これは生息せいそくのアマゾン近辺きんぺんでは雨季うき乾季かんきがあり、雨季うきには生息せいそく洪水こうずいにさらされることもしばしばあるため、およ技術ぎじゅつにつけていない個体こたい生存せいぞんできないからである。
食事しょくじ
16世紀せいきヨーロッパはじめて紹介しょうかいされた当初とうしょは、えさまったらず、かぜから栄養えいよう摂取せっしゅする動物どうぶつだとかんがえられていた[10]。しかし実際じっさいには1にちに10gほどの植物しょくぶつ摂取せっしゅしている[11]
外気がいきわせて体温たいおん変化へんかさせることにより代謝たいしゃおさえている。つまり、現生げんなま哺乳類ほにゅうるいではめずらしい変温動物へんおんどうぶつである[12]。このことや前述ぜんじゅつのように行動こうどうおそいため基礎きそ代謝たいしゃりょう非常ひじょうひく[13]、ごく少量しょうりょう食物しょくもつ摂取せっしゅでも生命せいめい活動かつどう可能かのうとなっている。なおよく生態せいたい体重たいじゅうであるコアラ恒温動物こうおんどうぶつであり、その日当ひあたり摂食せっしょくりょうは500g以上いじょう[14]とナマケモノよりおおい。

人間にんげんとの関係かんけい

非常ひじょうにストレスによわうえ変温動物へんおんどうぶつである性質せいしつじょう温度おんど変化へんか非常ひじょう敏感びんかんで、飼育しいく環境かんきょう高温こうおん多湿たしつたも必要ひつようがあるため、一般いっぱん家庭かてい飼育しいくすることは困難こんなん[15]
絶滅ぜつめつしたきんえんしゅ 地上ちじょうせいナマケモノ
やく200まんねんまえから1まんねんまえにかけての更新こうしんみなみアメリカにはエレモテリウムグロッソテリウムといった地上ちじょうせい巨大きょだいナマケモノが生息せいそくしており、とくメガテリウム体長たいちょう6-8メートル、体重たいじゅうやく3トンにもおよぶ。パタゴニア生息せいそくしていたミロドンはおよそいちまんねんまえまで生息せいそくしていた。

分類ぶんるい[編集へんしゅう]

うえいているナマケモノ

以前いぜん分類ぶんるいめいしょくPhyllophagaなどとすることもあったが[3][16]、「Phyllophaga」や「Tardigrada」は前口まえぐち動物どうぶつ使用しようされていたため、2001ねん置換ちかんめいとしてFolivora(「しょく」ので、Phyllophagaと同義どうぎ)が提唱ていしょうされた[1]

現生げんなまナマケモノはミユビナマケモノとフタユビナマケモノの2分類ぶんるいされ、以下いかの6しゅがいる[2]和名わみょう川田かわたら (2018) に[4]英名えいめいはGardner (2005) にしたが[2]双方そうほう生息せいそくいきかさなっていることがおおいが、同属どうぞくたねあいだでは同所どうしょてき分布ぶんぷしない[17]

形態けいたいもとづく分類ぶんるい体系たいけいでは、ナマケモノるいはミロドン下目しためMylodontaとメガテリウム下目しためMegatheriaに大別たいべつされ、現生げんなまはメガテリウム下目しためふくまれるとされていた[3][16]上述じょうじゅつするようにフタユビナマケモノぞく絶滅ぜつめつしたメガロニクスをしきぞくとするMegalonychidae分類ぶんるいされていた[2]以下いか分類ぶんるいは、McKenna & Bell (1997) にしたが[3]

一方いっぽうで、2019ねんにはミトコンドリアDNAとコラーゲン配列はいれつ利用りようした系統けいとう解析かいせきからフタユビナマケモノぞくをメガロニクスぞくではなくミロドン姉妹しまいぐんとするせつ提唱ていしょうされている[18][19]以下いか分類ぶんるいは、Presslee et al. (2019) にしたが[19]うえ和名わみょう定義ていぎ変更へんこうされたMegalonychidaeのぞいて遠藤えんどう佐々木ささき (2001) にしたがった[5]

脚注きゃくちゅう[編集へんしゅう]

出典しゅってん[編集へんしゅう]

  1. ^ a b Frédéric Delsuc, François M. Catzeflis, Michael J. Stanhope and Emmanuel J. P. Douzery, “The Evolution of Armadillos, Anteaters and Sloths Depicted by Nuclear and Mitochondrial Phylogenies: Implications for the Status of the Enigmatic Fossil Eurotamandua,” Proceedings: Biological Sciences, Volume 268, No. 1476, Royal Society, 2001, Pages 1605-1615.
  2. ^ a b c d e Alfred L. Gardner, “Order Pilosa,” In: Don E. Wilson & DeeAnn M. Reeder (eds.), Mammal Species of the World (3rd ed.), Volume 1, Johns Hopkins University Press, 2005, Pages 100-103.
  3. ^ a b c d Malcolm C. McKenna & Susan K. Bell, “Suborder Phyllophaga,” Classification of Mammals: Above the Species Level, Columbia University Press, 1997, Pages 93-102.
  4. ^ a b 川田かわたしん一郎いちろう岩佐いわさ真宏まさひろ福井大ふくいだい新宅しんたくいさむふとし天野あまの雅男まさおした稲葉いなばさやか・たるはじめ姉崎あねざき智子さとこよこはた泰志やすし世界せかい哺乳類ほにゅうるい標準ひょうじゅん和名わみょう目録もくろく」『哺乳類ほにゅうるい科学かがくだい58かん 別冊べっさつ日本にっぽん哺乳類ほにゅうるい学会がっかい、2018ねん、1-53ぺーじ
  5. ^ a b 遠藤えんどう秀紀ひでき佐々木ささき基樹もとき哺乳類ほにゅうるい分類ぶんるいにおける高次こうじぐん和名わみょうについて」『日本にっぽん野生やせい動物どうぶつ学会がっかいだい6かん 2ごう日本にっぽん野生やせい動物どうぶつ学会がっかい、2001ねん、45-53ぺーじ
  6. ^ 新版しんぱん 絶滅ぜつめつ哺乳類ほにゅうるい図鑑ずかん丸善まるぜん [ようページ番号ばんごう]
  7. ^ ナマケモノ、危険きけんなトイレたび見返みかえりは”. natgeo.nikkeibp.co.jp. 2021ねん3がつ31にち閲覧えつらん
  8. ^ Pauli, Jonathan N.; Mendoza, Jorge E.; Steffan, Shawn A.; Carey, Cayelan C.; Weimer, Paul J.; Peery, M. Zachariah (2014-03-07). “A syndrome of mutualism reinforces the lifestyle of a sloth”. Proceedings of the Royal Society B: Biological Sciences 281 (1778): 20133006. doi:10.1098/rspb.2013.3006. PMC 3906947. PMID 24452028. https://royalsocietypublishing.org/doi/10.1098/rspb.2013.3006. 
  9. ^ Janeene M. Touchton, Yu-Cheng Hsu, & Alberto Palleroni (2002). “Foraging ecology of reintroduced captive-bred subadult harpy eagles (Harpia harpyja) on Barro Colorado Island, Panama”. ORNITOLOGIA NEOTROPICAL 13: 365–379. 
  10. ^ 川崎かわさきさとる、「絶滅ぜつめつしたふしぎなきょだい生物せいぶつ」、株式会社かぶしきがいしゃPHP研究所けんきゅうじょ、2011ねん、p199より。
  11. ^ “「さむさ」と「あつさ」 人間にんげんよわいのはどっち”. 日本経済新聞にほんけいざいしんぶん. (2016ねん6がつ20日はつか). https://www.nikkei.com/article/DGXMZO02367740W6A510C1000000/ 2020ねん12月3にち閲覧えつらん 
  12. ^ S. W. Britton, W. E. Atkinson. 1938. Poikilothermism in the Sloth.Journal of Mammalogy 19:94-99.
  13. ^ P. F. SCHOLANDER, RAYMOND HOCK, VLADIMIR WALTERS, and LAURENCE IRVING. 1950. ADAPTATION TO COLD IN ARCTIC AND TROPICAL MAMMALS AND BIRDS IN RELATION TO BODY TEMPERATURE, INSULATION, AND BASAL METABOLIC RATE. The Biolgical Bulletin 99:259-271.
  14. ^ Burnie David, Animal, 2001, DK, ISBN 978-1-7403-3578-2[ようページ番号ばんごう]
  15. ^ SNSにまどわされるな、うとヤバい動物どうぶつ10しゅ(1/4ページ) ナショナルジオグラフィック日本にっぽんばん 2019.02.03 (2020ねん8がつ8にち閲覧えつらん)
  16. ^ a b 日本にっぽん哺乳類ほにゅうるい学会がっかい しゅめい標本ひょうほん検討けんとう委員いいんかい 目名めな問題もんだい検討けんとう作業さぎょう部会ぶかい哺乳類ほにゅうるい高次こうじ分類ぶんるいぐんおよび分類ぶんるい階級かいきゅう日本語にほんご名称めいしょう提案ていあんについて」『哺乳類ほにゅうるい科学かがくだい43かん 2ごう日本にっぽん哺乳類ほにゅうるい学会がっかい、2003ねん、127-134ぺーじ
  17. ^ Christopher R. Dickman「ひん総論そうろん」「ナマケモノ」繹紘せいわけ、D.W.マクドナルドへん今泉いまいずみよしのり監修かんしゅう動物どうぶつだい百科ひゃっか 6 ゆうぶくろるいほか』平凡社へいぼんしゃ、1986ねん、42-43, 48-81ぺーじ
  18. ^ Frédéric Delsuc, Melanie Kuch, Gillian C. Gibb, Emil Karpinski, Dirk Hackenberger, Paul Szpak, Jorge G. Martínez, Jim I. Mead, H. Gregory McDonald, Ross D.E. MacPhee, Guillaume Billet, Lionel Hautier & Hendrik N. Poinar, “Ancient Mitogenomes Reveal the Evolutionary History and Biogeography of Sloths,” Current Biology, Volume 29, Issue 12, Elsevier, 2019, Pages 2031–2042.
  19. ^ a b Samantha Presslee, Graham J. Slater, François Pujos, Analía M. Forasiepi, Roman Fischer, Kelly Molloy, Meaghan Mackie, Jesper V. Olsen, Alejandro Kramarz, Matías Taglioretti, Fernando Scaglia, Maximiliano Lezcano, José Luis Lanata, John Southon, Robert Feranec, Jonathan Bloch, Adam Hajduk, Fabiana M. Martin, Rodolfo Salas Gismondi, Marcelo Reguero, Christian de Muizon, Alex Greenwood, Brian T. Chait, Kirsty Penkman, Matthew Collins & Ross D. E. MacPhee, “Palaeoproteomics resolves sloth relationships,” Nature Ecology & Evolution, Volumr 3, Issue 7, Springer Nature, 2019, Pages 1121–1130.

関連かんれん項目こうもく[編集へんしゅう]

  • コアラ - 生態せいたいがよくている。
  • ナマケグマ - 湾曲わんきょくしたつめ使つかにぶらがる姿すがたがナマケモノを連想れんそうさせる。