フクロモモンガ

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フクロモモンガ
フクロモモンガ Petaurus breviceps
保全ほぜんじょうきょう評価ひょうか[1]
LEAST CONCERN
(IUCN Red List Ver.3.1 (2001))
分類ぶんるい
ドメイン : かく生物せいぶつ Eukaryota
さかい : 動物界どうぶつかい Animalia
もん : 脊索せきさく動物どうぶつもん Chordata
もん : 脊椎動物せきついどうぶつもん Vertebrata
つな : 哺乳ほにゅうつな Mammalia
: そう前歯まえば Diprotodontia
: フクロモモンガ Petauridae
ぞく : フクロモモンガぞく Petaurus
たね : フクロモモンガ P. breviceps
学名がくめい
Petaurus breviceps
Waterhouse, 1839[2]
和名わみょう
フクロモモンガ[3]
英名えいめい
Sugar glider[1][2]

フクロモモンガ(Petaurus breviceps)は、哺乳ほにゅうつな門歯もんしフクロモモンガフクロモモンガぞく分類ぶんるいされる哺乳類ほにゅうるいほんしゅゆうぶくろるいであり、かじるいモモンガ(ネズミリスリスモモンガぞく)とは別種べっしゅ生物せいぶつである。「フクロモモンガ」という命名めいめいは、ほんしゅがモモンガぞく類似るいじした形態けいたいへと収斂しゅうれん進化しんかしたことによるものである。

分布ぶんぷ[編集へんしゅう]

インドネシアニューギニアとうモルッカ諸島しょとうなど)、オーストラリア北部ほくぶおよび南部なんぶタスマニアとうふくむ)および東部とうぶパプアニューギニア(ニューギニアとうビスマルク諸島しょとう[1]

しき標本ひょうほん産地さんち基準きじゅん産地さんち・タイプ産地さんちしき産地さんち)は、ニュー・サウス・ウェールズしゅう[2]日本にっぽん国内こくないでは生息せいそくしていないとされている。

特徴とくちょう[編集へんしゅう]

体長たいちょう16cm-21cm。胴体どうたいよりもながく、ひと親指おやゆびほどのあつさのどうつ。体重たいじゅう90g-150g。毛色けいろ背面はいめんがパールグレイで、一部いちぶくろとクリームしょくである(鼻筋はなすじから頭頂とうちょう背中せなかにかけてくろのラインがはしる)。はらめんあご先端せんたんから尻尾しっぽのつけまでクリームしょく一般いっぱんてきである。黒色こくしょくふちどられたおおきなひとみはなピンク色ぴんくいろほおはクリームしょくみみなな前方ぜんぽうし、褐色かっしょくである。先端せんたんがややほそくなり、末端まったんよんぶんいちくろくなっている。

したした

フクロモモンガは全部ぜんぶで28ほんち、した2ほんせつとしておおきくまえしている。したほそい。 ハムスターとはちが頬袋ほおぶくろのようなものはないので口腔こうくうないおさめられるりょうすくない。ゆうぶくろであり、メスは腹部ふくぶ育児いくじつ。

解剖かいぼうがくうえもっと顕著けんちょ特徴とくちょうまく (patagium) とばれる前肢ぜんしだい5ゆびから後肢あとあし最初さいしょのつまさきまでびる左右さゆう対称たいしょう器官きかんである。樹木じゅもくあいだ滑空かっくうするのにこのまく使用しようされ、展開てんかいされた場合ばあい、ハンカチだいになる。 まくおも食糧しょくりょう資源しげん効率こうりつてき方法ほうほうとして使用しようされ、また天敵てんてきからげるためにも活用かつようされる。しかしからへと滑空かっくうする能力のうりょく鳥類ちょうるい捕食ほしょく動物どうぶつたいしてはあまり効果こうかがない。空中くうちゅうでの適応てきおう鳥類ちょうるいコウモリるいなどの非常ひじょう専門せんもんされたつばさまく比較ひかくし、幾分いくぶん不器用ぶきようそうにえるが、まくあやつりながらやく50mほどの長距離ちょうきょり滑空かっくうができる。滑空かっくうするさいは、から後肢あとあし使つかってジャンプし、行先ゆくさきみき到着とうちゃくするやく3m手前てまえで、後肢あとあし胴体どうたいちかづけ、四肢ししすべてが一緒いっしょ接触せっしょくするように上向うわむきにりる。

分類ぶんるい[編集へんしゅう]

以下いか分類ぶんるいは、Groves(2005)にしたが[2]

  • Petaurus breviceps breviceps Waterhouse, 1839
  • Petaurus breviceps ariel (Gould, 1842)
  • Petaurus breviceps longicaudatus Longman, 1924
  • Petaurus breviceps papuanus Thomas, 1888

生態せいたい[編集へんしゅう]

フクロモモンガはあなてきしたほらのある樹木じゅもくがあり、また十分じゅうぶん食料しょくりょうのある地域ちいき生息せいそくする。小型こがた警戒けいかいしんつよく、また夜行やこうせいであるため野生やせいつけることは困難こんなんであるが、アカシアユーカリへの樹皮じゅひがしなどのしょくこんから、フクロモモンガが生息せいそくしていることがかる。

通常つうじょう明確めいかく縄張なわばたず、個体こたい共有きょうゆうし、シェルターとして利用りよう可能かのうほらがあれば、1km2あたり1とう割合わりあい生息せいそくする。7とう以下いか(1ひきのオスのリーダーに、5とうがメスやようじゅう構成こうせい)のれで共有きょうゆうし、縄張なわばまもるその時期じきでのようじゅうすごす。オスの成獣せいじゅう唾液だえきにおいせんでマーキングし、がくやまたがくおよびむねつくされるにおいをつグループのメンバーにしるしける。マーキングのない来訪らいほうしゃはげしく排除はいじょされる。オスのリーダーはグループのメスやようじゅうにマーキングをする。成獣せいじゅうのメンバーがんだとき、オスは外部がいぶかられる。気候きこうのよい南側みなみがわでは、真冬まふゆ(6-7がつ)に繁殖はんしょくはじまる。オーストラリア北部ほくぶでは特定とくてい繁殖はんしょくはない。

おも天敵てんてきオオトカゲゆうぶくろ肉食にくしょくじゅうフクロネコKowariMulgaraAntechinusesひとし)、フクロウワライカワセミるい外来がいらいしゅではキツネネコディンゴなどがある。(日本にっぽんでは、カラス[4]など)

雑食ざっしょくせいでアカシアやすうしゅのユーカリの樹液じゅえき果汁かじゅう花粉かふんおよび昆虫こんちゅうるいひとしべる。

メスは通常つうじょう、1に1~2とうむ。ようじゅうやく70にち育児いくじ嚢でそだち、のちなかで40-50にちごす。その外側そとがわ食料しょくりょう確保かくほし、普段ふだん母親ははおやから世話せわける。わか個体こたい通常つうじょう7-10ヶ月かげつでグループのなわばりをける。いているエリアがあればあたらしいグループを形成けいせいするが、なわばりあらそいははげしく、独立どくりついちヶ月かげつのこ個体こたいすくない。飼育しいくでの寿命じゅみょうやく15ねんである。

人間にんげんとの関係かんけい[編集へんしゅう]

広域こういき分布ぶんぷ生息せいそくすうおおいとかんがえられていることから、絶滅ぜつめつのおそれはひくいとかんがえられている[1]

保護ほご[編集へんしゅう]

おおくのオーストラリア固有こゆうしゅとく小型こがたしゅちがい、フクロモモンガは絶滅ぜつめつ危機ききにはさらされていない[5]。フクロモモンガは、ここ200ねんにわたる自然しぜん環境かんきょうだい規模きぼ開発かいはつにもかかわらず、残存ざんそんしたせま地域ちいき適応てきおうし、また伐採ばっさいされた地域ちいき交差こうさする必要ひつようがないために、生息せいそくすることができている。フクロモモンガはオーストラリアではほう保護ほごされており、通常つうじょう調査ちょうさのためにのみに発行はっこうされる許可きょかしょうなしには、捕獲ほかく販売はんばい飼育しいくすることは違法いほうである[6]

ペット[編集へんしゅう]

離乳りにゅう前後ぜんこうからそだてたフクロモモンガはぬしにたいへんよくなつくため、近年きんねんではペットとしての人気にんきあつめている。

しかし、本来ほんらいフクロモモンガは警戒けいかいしん縄張なわば意識いしきつよ動物どうぶつであり、見知みしらぬ人間にんげん接近せっきんたいしては苛烈かれつ威嚇いかくをすることがある。 そうした人馴ひとなれしていないフクロモモンガであっても、忍耐にんたいつよ世話せわをすれば一定いってい信頼しんらいあづけるようにはなる場合ばあいもあるが、個体こたいおおきい。

活発かっぱつ動物どうぶつであるため、ほんしゅ活動かつどうする空間くうかんとしては最低さいてい76cm×76cm×76cmのケージがすすめられる。 オスメスのつがいで飼育しいくした場合ばあい最短さいたんさんヶ月かげつ周期しゅうきで1~2とうむので、出産しゅっさんのコントロールのための複数ふくすうのケージが必要ひつようとなる。 健康けんこう状態じょうたいのよいまま保護ほごされたほんたね繁殖はんしょくさせることはむずかしくはない。 ケージにはえだつたれることで、フクロモモンガの本来ほんらい生育せいいく環境かんきょうちかづけることができる。

えさ人工じんこう飼料しりょう果物くだものるい中心ちゅうしんに、新鮮しんせん野菜やさい少量しょうりょう動物どうぶつせいタンパクを日替ひがわりであたえる。

フクロモモンガのしょくせい雑食ざっしょくであるが、栄養えいようのバランスをたもつことがむずかしい。 たとえばフクロモモンガがこのんでべる昆虫こんちゅうるいそうじてリンぶんおおすぎる傾向けいこうにあり、あたえすぎるとカルシウム欠乏けつぼうおちいり、骨粗鬆症こつそしょうしょうなどを発症はっしょうする場合ばあいがある。また、ビタミン不足ふそくからくる脚気かっけなどもわずらいやすい。

海外かいがいではメジャーな飼育しいく動物どうぶつであり、必要ひつよう栄養えいよう十分じゅうぶん研究けんきゅうして配合はいごうされたペレットが存在そんざいし、給餌きゅうじ中心ちゅうしんえることで栄養えいようかたよりをおぎなうことができるが、非常ひじょう偏食へんしょくしやすい動物どうぶつでもあるためペレットるい興味きょうみしめさない場合ばあいおおく、そうしたさいには栄養えいようバランスをたもつために欠乏けつぼうしがちなビタミンやカルシウムとう栄養素えいようそえさ添加てんかする必要ひつようもでてくる。

特定とくてい植物しょくぶつはフクロモモンガにとって有害ゆうがいであるので、あたえないよう注意ちゅういする。

参考さんこう文献ぶんけん[編集へんしゅう]

  1. ^ a b c d Salas, L., Dickman, C., Helgen, K., Winter, J., Ellis, M., Denny, M., Woinarski, J., Lunney, D., Oakwood, M., Menkhorst, P. & Strahan, R. 2016. Petaurus breviceps. The IUCN Red List of Threatened Species 2016: e.T16731A21959798. https://doi.org/10.2305/IUCN.UK.2016-2.RLTS.T16731A21959798.en. Downloaded on 17 April 2020.
  2. ^ a b c d Colin P. Groves, "Order Diprotodontia," Mammal Species of the World, (3rd ed.), Volume 1, Don E. Wilson & DeeAnn M. Reeder (ed.), Johns Hopkins University Press, 2005, Pages 43-70.
  3. ^ 川田かわたしん一郎いちろう岩佐いわさ真宏まさひろ福井大ふくいだい新宅しんたくいさむふとし天野あまの雅男まさおした稲葉いなばさやか・たるはじめ姉崎あねざき智子さとこよこはた泰志やすし世界せかい哺乳類ほにゅうるい標準ひょうじゅん和名わみょう目録もくろく」『哺乳類ほにゅうるい科学かがくだい58かん 別冊べっさつ日本にっぽん哺乳類ほにゅうるい学会がっかい、2018ねん、1-53ぺーじ
  4. ^ 4がつにカラスにいじめられ衰弱すいじゃくしているところを保護ほごされ警察けいさつ遺失いしつぶつがかり経由けいゆへいいんにやってきたフクロモモンガのオトメちゃん(仮名かめい)。看護かんご自作じさくのポシェットにじんこえにおいにらせる仲良なかよ作戦さくせんこうそう元気げんき回復かいふく、だいぶれてきました。診察しんさつちゅう交代こうたいんながポシェットにげています。壊死えししていた手足てあしれてしまいま... | By まるやま動物どうぶつ病院びょういん | Facebook”. ms-my.facebook.com. 2023ねん3がつ14にち閲覧えつらん
  5. ^ Gliders - Monash University [リンク]
  6. ^ Fauna Permits — Government of South Australia[リンク]
  • Jones, C. and Parish, S. (2006). Field Guide to Australian Mammals. Steve Parish Publishing Pty. Ltd (pp. 86, 89). ISBN 1-74021-743-8
  • Barbara Triggs, Tracks, Scats and Other Traces - A Field Guide to Australian Mammals, Qxford,

関連かんれん項目こうもく[編集へんしゅう]

外部がいぶリンク[編集へんしゅう]