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脚気かっけ

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脚気かっけ
脚気かっけ患者かんじゃ
概要がいよう
診療しんりょう 内分泌ないぶんぴつがく
分類ぶんるいおよび外部がいぶ参照さんしょう情報じょうほう
ICD-10 E51.1
ICD-9-CM 265.0
DiseasesDB 14107
MedlinePlus 000339
eMedicine ped/229 med/221
Patient UK 脚気かっけ
MeSH D001602

脚気かっけ(かっけ、英語えいご: beriberi)とは、ビタミン欠乏症けつぼうしょうの1つであり、重度じゅうど慢性まんせいてきビタミンB1(チアミン)欠乏けつぼうにより、心不全しんふぜん末梢まっしょう神経しんけい障害しょうがいをきたす疾患しっかんである[1]軽度けいど場合ばあいは、チアミン欠乏症けつぼうしょうばれる[1]

概要がいよう

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心不全しんふぜんによってあし浮腫ふしゅき、神経しんけい障害しょうがいによってあししびれきるため、脚気かっけばれる。心臓しんぞう機能きのう低下ていか不全ふぜん衝心しょうしん、しょうしん[2])を併発へいはつした場合ばあいは、脚気衝心かっけしょうしんばれる。最悪さいあく場合ばあいには死亡しぼういたる。

診断しんだんは、症状しょうじょう尿にょうちゅうのチアミンの排泄はいせつりょう低下ていかこうちゅう乳酸にゅうさん、および指導しどう治療ちりょうによる改善かいぜんもとづく[3]

脚気かっけのリスク因子いんしには、白米はくまい中心ちゅうしん食生活しょくせいかつアルコール依存いぞんしょう人工じんこう透析とうせき慢性まんせいてき下痢げり利尿りにょうざい多量たりょう投与とうよなどがげられる[1][4]。ただし、まれ遺伝いでんてき要因よういんとして、食物しょくもつちゅうチアミンの吸収きゅうしゅう困難こんなん問題もんだいになり[1]

なお、乾性かんせい脚気かっけにより、ウェルニッケ脳症のうしょうコルサコフ症候群しょうこうぐんこされ[4]

症状しょうじょう

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ほんしょう多発たはつ神経しんけいえん浮腫ふしゅ(むくみ)、心不全しんふぜん脚気かっけこころ脚気衝心かっけしょうしん)の3つを典型てんけいてき特徴とくちょうとする[5]

乾性かんせい脚気かっけ

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多発たはつ神経しんけいえん主体しゅたいとし、おもてざい知覚ちかく神経しんけい障害しょうがいからしびれ、けん反射はんしゃ低下ていかなどをたす。またウェルニッケ脳症のうしょう、コルサコフ症候群しょうこうぐんも、乾性かんせい脚気かっけ分類ぶんるいされる[6]

湿性しっせい脚気かっけ

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末梢まっしょう動脈どうみゃく拡張かくちょうし、血管けっかん抵抗ていこう低下ていかからこうはくせい心不全しんふぜんていして浮腫ふしゅこる[7][信頼しんらいせいよう検証けんしょう][5]

検査けんさ

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ひざぶたけん弛緩しかんさせた状態じょうたいたたくと、大腿だいたいよんとうすじ収縮しゅうしゅくひざ関節かんせつ伸展しんてんするひざぶたけん反射はんしゃは、末梢まっしょう神経しんけい障害しょうがい有無うむる。

なお、ひざぶたけん反射はんしゃ確認かくにんする検査けんさは、日本にっぽん脚気かっけ多発たはつしていた1960年代ねんだいごろまでは、日本にっぽんにおける健康けんこう診断しんだん必須ひっす項目こうもくであった。

疫学えきがく

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世界せかいてき視野しやるならば、脚気かっけは21世紀せいきにおいても、監獄かんごくにおいて頻発ひんぱつする疾患しっかんである。

たとえば、1999ねんには、中華民国ちゅうかみんこく拘置こうちしょにおいて脚気かっけ流行りゅうこうした[8]。2007ねんには、過密かみつ収容しゅうようであったハイチ刑務所けいむしょ脚気かっけ患者かんじゃ多数たすう発生はっせいした。要因よういんは、調理ちょうりまえこめぐという伝統でんとうてき慣習かんしゅうであった。精米せいまいうしなわれるビタミンB1を強化きょうかした白米はくまい使用しようしていたが、ぐことによりビタミンB1がうしなわれていた[9]。2011ねん報告ほうこくによれば、コートジボワールにおいては、重度じゅうどきゅう囚人しゅうじんたちは、その64%が脚気かっけだった[10]

日本にっぽんにおける歴史れきし

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日本にっぽんでいつから脚気かっけこるようになったかさだかではないが、すでに『日本書紀にほんしょき』に脚気かっけ症状しょうじょう記述きじゅつられる。平安へいあん時代じだいには、天皇てんのう公卿くぎょう中心ちゅうしん白米はくまいしょくひろがり、脚気かっけ発生はっせいした。江戸えど時代じだい元禄げんろく年間ねんかんには、江戸えどにおいて一般いっぱん武士ぶし町人ちょうにんにも白米はくまいしょく普及ふきゅうして脚気かっけ流行りゅうこうし、とおる年間ねんかんには大阪おおさか京都きょうとにもひろがり、天保てんぽう以後いご地方ちほう都市としでも流行りゅうこうした。

明治めいじはいってからも、脚気かっけ流行りゅうこうつづいた。たとえば、1870ねんから翌年よくねんにかけて脚気かっけ多発たはつしだした。陸海りくかいぐんでの脚気かっけ発症はっしょうりつとくたかかった。海軍かいぐんへいしょく改革かいかく実施じっしして脚気かっけ撲滅ぼくめつした。陸軍りくぐんでも白米はくまいしょくわりに麦飯むぎめしとすることで脚気かっけ対策たいさくをしたが、戦時せんじへいしょく白米はくまいしょくにしたため、戦時せんじには脚気かっけ惨害さんがいまねいた。

1923ねんには脚気かっけ死亡しぼうしゃすうのピークにたっやく2まん7せんにんとなった。1925ねん脚気かっけ原因げんいんがビタミンB不足ふそく確定かくていしたものの、脚気かっけくならなかった。1937ねん勃発ぼっぱつしたにちちゅう戦争せんそうまえまで、脚気かっけ死亡しぼうしゃすう年間ねんかん1まんにんから2まんにん推移すいいした。しかし、にちちゅう戦争せんそうはじまると食糧しょくりょうようべい不足ふそくしたために、脚気かっけ死亡しぼうしゃすうは6せんにんだいまでった。

だい世界せかい大戦たいせんこうは、栄養えいよう改善かいぜん政策せいさくによる栄養えいよう状態じょうたい改善かいぜん保健ほけんやくとしてのビタミンざい普及ふきゅうなどにより、脚気かっけ死亡しぼうしゃすう減少げんしょうしていった。1956ねんには1000にん下回したまわり957にん1965ねんに100にん下回したまわり92にん1970ねんには20にん特殊とくしゅ希少きしょう疾患しっかん以下いかとなり、脚気かっけ消滅しょうめつ状態じょうたいとなった。

脚注きゃくちゅう

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注釈ちゅうしゃく

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出典しゅってん

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  1. ^ a b c d Beriberi” (英語えいご). Genetic and Rare Diseases Information Center (GARD) - an NCATS Program (2015ねん). 11 November 2017てんのオリジナルよりアーカイブ11 November 2017閲覧えつらん
  2. ^ 衝心しょうしん精選せいせんばん 日本にっぽん国語こくごだい辞典じてんデジタル大辞泉だいじせん)”. コトバンク. 2021ねん9がつ8にち閲覧えつらん
  3. ^ Swaiman, Kenneth F.; Ashwal, Stephen; Ferriero, Donna M.; Schor, Nina F.; Finkel, Richard S.; Gropman, Andrea L.; Pearl, Phillip L.; Shevell, Michael (2017) (英語えいご). Swaiman's Pediatric Neurology E-Book: Principles and Practice. Elsevier Health Sciences. p. e929. ISBN 9780323374811. オリジナルの2017-11-11時点じてんにおけるアーカイブ。. https://web.archive.org/web/20171111204954/https://books.google.ca/books?id=PJ9tDgAAQBAJ&pg=SL5-PA929 
  4. ^ a b Nutrition and Growth Guidelines | Domestic Guidelines - Immigrant and Refugee Health” (英語えいご). CDC (March 2012). 11 November 2017てんのオリジナルよりアーカイブ11 November 2017閲覧えつらん
  5. ^ a b Johnson 2014.
  6. ^ Johnson, Larry E. (2014ねん). “チアミン(ビタミンB1、サイアミン)〈09-栄養えいよう障害しょうがい/ビタミン欠乏症けつぼうしょう依存いぞんしょう,および中毒ちゅうどく”. MSDマニュアルプロフェッショナルばん. 2019ねん4がつ28にち閲覧えつらん
  7. ^ その(Miscellaneous)シリーズ3 【症例しょうれい ME 15】 とくしゅうかいグループ
  8. ^ “Outbreak of beriberi among illegal mainland Chinese immigrants at a detention center in Taiwan”. Public Health Rep 118 (1): 59-64. (2003). doi:10.1093/phr/118.1.59. PMC 1497506. PMID 12604765. https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC1497506/. 
  9. ^ Sprague, Jeb; Alexandra, Eunida (17 January 2007). “Haiti: Mysterious Prison Ailment Traced to U.S. Rice”. Inter Press Service. オリジナルの30 May 2013時点じてんにおけるアーカイブ。. https://web.archive.org/web/20130530034501/http://www.ipsnews.net/2007/01/haiti-mysterious-prison-ailment-traced-to-us-rice/ 
  10. ^ Aké-Tano, O.; Konan, E. Y.; Tetchi, E. O.; Ekou, F. K.; Ekra, D.; Coulibaly, A.; Dagnan, N. S. (2011). “Le béribéri, maladie nutritionnelle récurrente en milieu carcéral en Côte-d'Ivoire”. Bulletin de la Société de Pathologie Exotique 104 (5): 347-351. doi:10.1007/s13149-011-0136-6. PMID 21336653. 

関連かんれん項目こうもく

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外部がいぶリンク

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