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病気びょうき

出典しゅってん: フリー百科ひゃっか事典じてん『ウィキペディア(Wikipedia)』
疾患しっかんから転送てんそう
健康けんこうとは、身体しんたいてき精神せいしんてき社会しゃかいてき完全かんぜん良好りょうこう状態じょうたいであり、たんに病気びょうきあるいは虚弱きょじゃくでないことではない。

世界せかい保健ほけん機関きかん憲章けんしょう

頭痛ずつう」(1819ねん

病気びょうき(びょうき, 英語えいご: disease)、やまい(やまい)は、ひと動物どうぶつしんからだ不調ふちょうまたは不都合ふつごうしょうじた状態じょうたいのこと、もしくは、植物しょくぶつ細菌さいきんウイルス寄生きせいし、腐敗ふはい枝葉えだは状態じょうたい普通ふつう状態じょうたいではなくなっている状態じょうたい植物しょくぶつ病気びょうき詳細しょうさいは、植物しょくぶつ病理びょうりがく参照さんしょう一般いっぱんてき外傷がいしょうなどはふくまれない。病気びょうき類似るいじ概念がいねんとしての、症候群しょうこうぐん(しょうこうぐん)、疾病しっぺい(しっぺい)、疾患しっかん(しっかん)は、ほん記事きじでまとめて解説かいせつする。べつみである、病気びょうき(やまいけ)は、病気びょうきこるような気配けはいをいう。

むということは、身体しんたいてき精神せいしんてき社会しゃかいてき生活せいかつのどこかが不健康ふけんこうであるというサインである[1]

定義ていぎ

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病気びょうき少女しょうじょ1660ねん)。ハブリエル・メツー作品さくひん

分布ぶんぷかず判断はんだんしようとするこころ

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ひとつには、自然しぜん科学かがくてき習慣しゅうかんをそのままんで、「定量ていりょうてき分析ぶんせき」を志向しこうし、すうてき側面そくめん着目ちゃくもくするかんがかたべつのいいかたをすると「正常せいじょう / 異常いじょう」という概念がいねんけようとする見解けんかいがある。

ある性質せいしつ集団しゅうだんなかでのすうてき分布ぶんぷ線引せんひきしてしまおうとするかんがかたであり、統計とうけい分析ぶんせき正規せいき分布ぶんぷ母集団ぼしゅうだん分析ぶんせきにおける習慣しゅうかんむものである。本当ほんとうはどこまでが「正常せいじょう」どこまでを「異常いじょう」とするかは統計とうけいがくでも定義ていぎく、正式せいしき統計とうけいがくでは、線引せんひきの任意にんいであり様々さまざま設定せってい可能かのう、とされている。だが、そうした任意にんいなかから便宜べんぎてき習慣しゅうかんてきにしばしばもちいられている設定せってい「2×D」を(あまりたしかな理由りゆうもなく、なか強引ごういんに)採用さいようしておいて、「標準ひょうじゅんからプラスマイナス2×SDまでの正常せいじょう、それ以上いじょうのずれは異常いじょう(なので疾患しっかん)」として、「疾患しっかんとは全体ぜんたいの5%未満みまんられる形質けいしつ状態じょうたいで、正常せいじょうとはのこりのやく95%こと」と一律いちりつ定義ていぎしてしまおうとするれいがある。 しかしこのように「集団しゅうだんないでのすうてき分布ぶんぷ」を「病気びょうき」の定義ていぎとして流用りゅうようしてしまうと、日本にっぽんやく1000まんにん難儀なんぎしている糖尿とうにょうびょうや、すうおおくの合併症がっぺいしょうをもたらす肥満ひまんまでも「正常せいじょう」とすることになってしまい、また一方いっぽうで、とく基礎きそ疾患しっかんがなく偶然ぐうぜんてきこう身長しんちょうとなったひと元気げんき生活せいかつしているひとまでが 「病気びょうき」に分類ぶんるいされてしまうという問題もんだいしょうじる。すなわち、異常いじょう統計とうけいてきかずすくない状態じょうたい)であれば病気びょうきであるともえないし、病気びょうきであれば異常いじょうである、などともれず、統計とうけいてき手法しゅほうによって病気びょうき定義ていぎしようとするこころみには無理むりがあるのである[よう出典しゅってん]

定性的ていせいてき定義ていぎしようとする立場たちば

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ぎゃくに、質的しつてき記述きじゅつあるいは定性的ていせいてき記述きじゅつ病気びょうき一般いっぱんして定義ていぎしようとするこころみ・立場たちばがある。

ひとつには本人ほんにん認識にんしきしている状態じょうたい(あるいは本人ほんにん主観しゅかんてき経験けいけん内容ないよう)を重視じゅうしし、病気びょうき定義ていぎを「本人ほんにん心身しんしん不都合ふつごうかんじ、改善かいぜんのぞむような状態じょうたい」、あるいは「本人ほんにんあるいは周囲しゅうい[注釈ちゅうしゃく 1]心身しんしん不都合ふつごうかんじ、改善かいぜんのぞむような状態じょうたい」とすることがある。

医師いし疾患しっかんだと診断しんだんしたひとであっても、本人ほんにん生活せいかつうえ問題もんだいかんじないことなどを理由りゆうに「自分じぶん病気びょうきではない。健康けんこうである」とべていることがあり、あるいは「身体しんたい障害しょうがい障害しょうがいひろ意味いみ疾病しっぺい一種いっしゅ)ではなく個性こせいである」とわれることがあり、これらはその意味いみでも一理いちりあることともいえる。また、医療いりょう従事じゅうじしゃ立場たちばでも、本人ほんにんまたは周囲しゅうい治療ちりょう必要ひつようせいかんじなければ病院びょういん受診じゅしんることもいので、このような定義ていぎでも実際じっさいじょう問題もんだいしょうじにくい。

ただし、これもめてかんがえてみると、医師いし依存いぞんしょう嗜癖骨粗鬆症こつそしょうしょうなどと診断しんだんするようなケースでも上記じょうきのような認識にんしきのズレがしょうじていることがあり、医学いがく研究けんきゅう立場たちばでは本人ほんにん周囲しゅうい判断はんだん価値かちかんかかわらずに病気びょうき定義ていぎ診断しんだんできるようにすることへの要求ようきゅう存在そんざいする。

医療いりょう関係かんけいしゃ主観しゅかんもうとするこころ

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医師いしなど医療いりょう産業さんぎょう従事じゅうじしそれで収入しゅうにゅうているものなかには「病気びょうきとは心身しんしん不調ふちょうあるいは不都合ふつごうがある状態じょうたいのことであって、いわゆる医療いりょうによる改善かいぜんのぞまれるもの」などと、“医療いりょう”という言葉ことば手前味噌てまえみそてきに、なか強引ごういん定義ていぎんでしまうれいいわけではない。(だが、医療いりょうとは病気びょうきなおすものであるから、病気びょうき定義ていぎに「医療いりょう」をもちいるのは一種いっしゅ循環じゅんかん論法ろんぽうとなりうる。また、病気びょうきには医療いりょう必要ひつようとせず治癒ちゆするものもおおいので、その意味いみでもかなり問題もんだいのある定義ていぎである(後述こうじゅつ))

医療いりょう人類じんるいがくでの見解けんかい

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医療いりょう領域りょういききていることを、医療いりょう関係かんけいしゃ立場たちばからも患者かんじゃ立場たちばからもはなれて、客観きゃっかんてきそして学問がくもんてき研究けんきゅうする医療いりょう人類じんるいがくでは、「病気びょうき(sickness)とは疾患しっかん(disease)とやめい(illness)をあわせたもの」とする定義ていぎ提出ていしゅつされている[2]疾患しっかん(disease)を"生物せいぶつがくてきなもの"とし、やめい(illness)は"主観しゅかんてき経験けいけんのこと"、とする説明せつめいである。この説明せつめい方法ほうほう採用さいようした場合ばあいたとえば、上記じょうき糖尿とうにょうびょうれいでは、疾患しっかん定義ていぎてはまるものは1000まんにんいるかもしれないが、慢性まんせい疾患しっかん自覚じかく症状しょうじょうすくない初期しょきでは本人ほんにんが「やめい」ととらえるひとはごくすくない、という理屈りくつになる。

社会しゃかいてき状況じょうきょう

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冒頭ぼうとう説明せつめいしたように、なに病気びょうきであるかそうでないかをめるのは容易よういではない。かく立場たちばなりの見解けんかいがあり、一般いっぱん人々ひとびとおおくは自身じしん感覚かんかく病気びょうきかを判断はんだんしており、ちょうど「本人ほんにん心身しんしん不都合ふつごうかんじ、改善かいぜんのぞむような状態じょうたい」といった定義ていぎをそのままてはめるようなケースが一般いっぱんてきられる。医師いし集団しゅうだん医師いしなりの立場たちばで、生物せいぶつがくもとづく見解けんかいしめしたり統計とうけい駆使くしするなどし、臨床りんしょう医師いしでは、目前もくぜんあらわれた患者かんじゃ個別こべつてき症状しょうじょうと、医学いがくしょかれている慣習かんしゅうてき判断はんだん基準きじゅんとを見比みくらべて便宜べんぎてき判断はんだんする等々とうとう、さまざまな運用うんようおこなわれている。それらの見解けんかい複雑ふくざつ相互そうご影響えいきょうしあう[注釈ちゅうしゃく 2]

実際じっさい臨床りんしょう現場げんばでは医師いし患者かんじゃ見解けんかいがしばしばずれたり対立たいりつすることがある。上記じょうきでは周囲しゅうい病気びょうき判定はんていしているが本人ほんにん病気びょうきとはおもっていないれいをいくつかげたが、ぎゃく本人ほんにん病気びょうきだとかんじているのに医師いしがわがそう認識にんしきしない、しようとしない、というケースもある。たとえば本人ほんにん身体しんたい激痛げきつう異常いじょう感覚かんかくなどをかんあきらかになんらかの病気びょうきだと直感ちょっかんしそれをうったえているにもかかわらず、医師いしがわではCTやMRIなどの画像がぞうて、そのその検査けんさとその医師いし技量ぎりょうとのわせではたまたまなにつけられなかったことを根拠こんきょに、「("客観きゃっかんてきて" あるいは"生物せいぶつがくてきて")疾患しっかんではないでしょう。のせいでしょう」などとげて放置ほうちし、すっかり悪化あっかしたり死亡しぼうしてから、事後じごてき医師いしによって誤診ごしんだったと判定はんていされるようなケースもある。またステロイド皮膚ひふしょう各種かくしゅ公害こうがいびょう乳幼児にゅうようじ突然とつぜん症候群しょうこうぐんれいられるように、その病気びょうき存在そんざいするかどうか自体じたい学問がくもんてきのみならず政治せいじてきにも問題もんだいとなることもある。

分類ぶんるい

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病気びょうき分類ぶんるいすることは容易よういではなく、またその分類ぶんるい医学いがく変化へんかともな頻繁ひんぱん変更へんこうされる。医学いがくにおいては、一般いっぱん以下いかのような観点かんてんによって病気びょうき分類ぶんるいされる。

医療いりょうよう不要ふようによる分類ぶんるい

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また、つぎのような分類ぶんるい提唱ていしょうされることもある[3]

  • カテゴリー1 : 医者いしゃがかかわってもかかわらなくても治癒ちゆする病気びょうき (自然しぜん治癒ちゆりょく本人ほんにん努力どりょく治癒ちゆするもの)[3]
  • カテゴリー2 : 医者いしゃがかかわることによってはじめて治癒ちゆする病気びょうき[3]
  • カテゴリー3 : 医者いしゃがかかわってもかかわらなくても治癒ちゆしない病気びょうき[3]

開業医かいぎょうい市中しちゅう病院びょういん医師いし日常にちじょう診療しんりょう遭遇そうぐうする「疾病しっぺい」のほとんどは、上記じょうきえばカテゴリー1にぞくする[3](すなわち、医者いしゃ医療いりょうしゃがかかわらなくても治癒ちゆする病気びょうきである)。その比率ひりつは70〜90%ほどであるという。岡本おかもとひろし医師いしによれば、実際じっさい計数けいすう結果けっかは95%がカテゴリー1だったという[3]

カテゴリー3に分類ぶんるいされる病気びょうき、つまり「不治ふじやまい」もまだまだおお[3]。(たとえば神経しんけい変性へんせい疾患しっかん神経しんけい機能きのう障害しょうがいなどはそれに分類ぶんるいされる)

(カテゴリー1と2の病気びょうきについては)病気びょうきにも ①当人とうにん自分じぶんちからなおすことができるもの、と ②自然しぜん治癒ちゆりょくおよばず、医療いりょう従事じゅうじしゃ連携れんけいをとり治癒ちゆをはかるとよいもの、の2種類しゅるいがあるということである[3]。①の当人とうにん自分じぶんちからなおすことができる病気びょうきには、 高血圧こうけつあつ[注釈ちゅうしゃく 3]糖尿とうにょうびょうこうあぶらしょう肥満ひまんやめ痛風つうふう便秘べんぴしょう不眠症ふみんしょう[注釈ちゅうしゃく 4]自律じりつ神経しんけい失調しっちょうしょうなどがげられる。

病気びょうき健康けんこう

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病気びょうき対義語たいぎごは、一般いっぱん健康けんこうであるとかんがえられている。

WHO(世界せかい保健ほけん機関きかん)は健康けんこうつぎのように定義ていぎしている。

身体しんたいてき精神せいしんてき社会しゃかいてき完全かんぜん良好りょうこう状態じょうたいであり、たんに病気びょうきあるいは虚弱きょじゃくでないことではない

西洋せいよう医学いがくふう用語ようごえば、健康けんこうというのは恒常こうじょうせい健全けんぜんたもたれている状態じょうたい、といいかえることも可能かのうであろう[6]。そういう観点かんてんからは、病気びょうき疾病しっぺい)というのは、恒常こうじょうせいくずれてしまってもともどらなくなっているかもどりづらくなっている状態じょうたいだとかんがえると理解りかいしやすい[6]

さらに恒常こうじょうせいという概念がいねん中国ちゅうごく伝統でんとう医学いがくの「やまい」という用語ようご把握はあくしなおしてみると、病気びょうき健康けんこうという概念がいねんがよりかりやすくなる[6]

やまい

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伝統でんとう中国ちゅうごく医学いがくちゅう)で「やまい」と診断しんだんされるのは、検査けんさあきらかな異常いじょうがなく、あきらかな症状しょうじょういが、すこ調子ちょうしわる状態じょうたいで、病気びょうきになるぜん段階だんかいの、心身しんしん微妙びみょう変化へんかしている[6]漢文かんぶん訓読くんどく調ちょうでいえば「いまだやまいにあらざる」となる。「病気びょうき」をキーワードにして、からだ状態じょうたい分類ぶんるいしてみるとつぎのようになる。

  • 状態じょうたい 1 :恒常こうじょうせい健全けんぜんたもたれている状態じょうたい・・・健康けんこう[6]
  • 状態じょうたい 2 :恒常こうじょうせいくずれかけている状態じょうたい・・・やまい[6]
  • 状態じょうたい 3 :恒常こうじょうせいくずれ、そのままではもともどらなくなっている状態じょうたい・・・病気びょうき[6]

これらのあいだにははっきりした境界きょうかいはなく、連続れんぞくてき移行いこうしている[6]中国ちゅうごくにはむかしから「うえこうやまい」(うえこうやまいなおす)という言葉ことばがある。つまり医者いしゃというのは、発病はつびょうしてからではなく、やまい段階だんかい異常いじょう察知さっち対処たいしょするものだ、ということである[6]一方いっぽう西洋せいよう医学いがくでは、やまい見過みすごしてしまい、発病はつびょうしてからはじめて治療ちりょうかる[6]病気びょうき火事かじたとえてえば、中国ちゅうごく医学いがく火事かじになりそうな危険きけん場所ばしょをあらかじめ点検てんけんしたり、えそうな建材けんざいをあらかじめ不燃材ふねんざいにして無事ぶじふせぐのにたいし、西洋せいよう医学いがくでは火事かじきてしまってから対処たいしょしよう、というかんがかたである。たしかに一旦いったん発火はっかしてしまえば、とりあえずさかいきおいをおさえなければならないのではあるが、それよりも火事かじ防止ぼうし再発さいはつふせぐことも非常ひじょう大切たいせつであるように、西洋せいよう医学いがくのように発病はつびょうするまで放置ほうちしておいて発病はつびょうしてから対処たいしょするというかんがかた得策とくさくとはえず、中国ちゅうごく伝統でんとう医学いがくのように、病気びょうき段階だんかいでそれを的確てきかく察知さっちし、自己じこ治癒ちゆりょくたかめることではやめに対処たいしょしておこうとするかんがかたのほうが適切てきせつであり重要じゅうようである[6]

戦争せんそうによる負傷ふしょう大量たいりょう死者ししゃることがつづいた20世紀せいき前半ぜんはんには西洋せいよう医学いがく目覚めざましい進展しんてんせ、抗生こうせい物質ぶっしつワクチン開発かいはつされ生命せいめいおびやかす感染かんせんしょうなどを激減げきげんさせることに成功せいこうはした。だがその疾患しっかん状況じょうきょうはすっかり様変さまがわりし、生活せいかつ習慣しゅうかん生活せいかつ環境かんきょう起因きいんしたこころ疾患しっかんのう血管けっかん疾患しっかんアレルギー疾患しっかんメタボリックシンドロームにかわばらびょうなどの慢性まんせい疾患しっかん急増きゅうぞう重大じゅうだい課題かだいとなっている[6]。これらの慢性まんせい疾患しっかん西洋せいよう医学いがくてき治療ちりょうほう(そのおおくが対症療法たいしょうりょうほう)だけでは限界げんかいがあり、根本こんぽん治癒ちゆにはどうしても、生活せいかつ習慣しゅうかん是正ぜせいしつつ自己じこ治癒ちゆりょくたかめることが不可欠ふかけつとなるので、しんからだ一体いったいとしてとらえ全体ぜんたいのバランスとリズムをとりもどしびょういやす、とかんがえ、心身しんしん一如いちにょ思想しそう東洋とうよう医学いがくかんがかた必須ひっすとなる[6]

周辺しゅうへんかたり概念がいねん

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しばしば病気びょうきは、「症候群しょうこうぐん」「疾患しっかん」「疾病しっぺい(しっぺい)」「障害しょうがい」「怪我けが(けが)」「変異へんいとうかたりとの概念がいねんじょう重複じゅうふくがある。

病気びょうき存在そんざい前提ぜんていとして、その患者かんじゃ共通きょうつうする特徴とくちょうのことを病態びょうたいあるいはやまいぞうという。病状びょうじょうは、ある特定とくてい患者かんじゃについてその臨床りんしょう経過けいかすことがおおい。これらの単語たんごはしばしば混合こんごうされて使つかわれる。

病気びょうきと「疾患しっかん」・「疾病しっぺい

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医学いがくでは、「病気びょうき」という単語たんごはあまり使用しようされず、わりにより厳密げんみつ疾患しっかん(しっかん)、疾病しっぺい(しっぺい)を使つかうことがおおい。病気びょうきというかたりでは内因ないいんせい疾患しっかんしかふくまないような印象いんしょうけることがあるためである(事故じこによる骨折こっせつは、一般いっぱんてきには病気びょうきとはわないことがおおい)。なお、精神せいしん医学いがく用語ようご精神せいしん疾患しっかんは「障害しょうがい(disorder)という概念がいねんであり、医学いがく用語ようごの「疾患しっかん」(disease)とはことなる概念がいねんである。

英語えいごの disease(疾患しっかん疾病しっぺい)は sickness(かる病気びょうき)、illness(病気びょうき)の原因げんいんしめかたりで、病名びょうめい症状しょうじょうあきらかな具体ぐたいてき病気びょうきもちいられる。sickness、illness は"病気びょうきになっている状態じょうたい"をし、disease は感染かんせんなどによる体内たいない機能きのう異常いじょう意味いみする。一般いっぱんには、ねつ風邪かぜなど生活せいかつじょう病気びょうきにはもちいられず、伝染でんせんびょうがんなど深刻しんこく病気びょうきもちいられ、いのちかかわるようなニュアンスがある。

疾患しっかん疾病しっぺい病気びょうきと「症候群しょうこうぐん

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症候群しょうこうぐんとは、原因げんいん不明ふめいながら共通きょうつう病態びょうたい自他じたさとし症状しょうじょう検査けんさ所見しょけん画像がぞう所見しょけんなど)をしめ患者かんじゃおお場合ばあいに、そのような症状しょうじょうあつまりにとりあえずをつけ、あつかいやすくしたものである。

人名じんめいかんした症候群しょうこうぐん名前なまえ数多かずおおく、原因げんいん判明はんめいした場合ばあいにはその名前なまえ変更へんこうされたり、ときには病名びょうめい統合とうごうされたりすることがある。一方いっぽう原因げんいん判明はんめいながあいだそのまま慣用かんようてき使つかわれている「症候群しょうこうぐん」はおおく、ぎゃくに「〜やまい」のかんする原因げんいん不明ふめい疾患しっかんおおくあり、実際じっさいには明確めいかく区別くべつがなされていないことがおおい。

精神せいしん領域りょういきにおいては、あつか疾患しっかんのほぼすべてが症候群しょうこうぐんぶべき疾患しっかんであるため、利便りべんせい問題もんだいから症候群しょうこうぐんとはばず○◯びょう・○○しょうったかたりもちいる。

疾患しっかん疾病しっぺい病気びょうきと「症状しょうじょう

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症状しょうじょう(symptom)は、病気びょうきによって患者かんじゃ心身しんしんあらわれる様々さまざま個別こべつ状態じょうたい変化へんか、あるいは正常せいじょうからの変異へんいのことである。病気びょうきにかかることを罹患りかん(りかん)、症状しょうじょうあらわれることを発症はっしょう、または発病はつびょうという。患者かんじゃ本人ほんにんによって主観しゅかんてきかんじられるものを自覚じかく症状しょうじょう周囲しゅういによって客観きゃっかんてきかんられるものをさとし症状しょうじょうんで区別くべつする。たんに「症状しょうじょう」といった場合ばあい自覚じかく症状しょうじょうのことのみを場合ばあいがあり、このさいさとし症状しょうじょうのことを所見しょけん徴候ちょうこうんで区別くべつする。

通常つうじょう、「疾患しっかん」と「症状しょうじょう」は本来ほんらいおおきくちが概念がいねんだとかんがえられている。つまり、疾患しっかんさきにあって、それをけて「症状しょうじょう」がしょうじる、というものである。しかし日常にちじょう診療しんりょうでは、症状しょうじょう確認かくにんされても、その症状しょうじょうたす原因げんいんがよくからない場合ばあいおおく、この場合ばあい症候群しょうこうぐん」でのれい同様どうように、症状しょうじょうめい病名びょうめいとの境目さかいめ曖昧あいまいになることがある。

たとえば、脱水だっすいという病名びょうめいはないが、脱水だっすいられたらげん疾患しっかんはさておき脱水だっすい診断しんだんもと治療ちりょうおこなうことがある。近視きんし症状しょうじょう名前なまえとしても病名びょうめいとしても使つかわれる。本態ほんたいせいだか血圧けつあつという病名びょうめいは、べつ基礎きそ疾患しっかんがあっててき高血圧こうけつあつとなっているものをのぞいて、原因げんいん不明ふめい高血圧こうけつあつという「症状しょうじょう」をこしているものをまとめてふくめるための「病名びょうめい」である。

ある臨床りんしょうぞうが、はら疾患しっかんられる症状しょうじょうのひとつであるのか、あるいは合併症がっぺいしょうとして出現しゅつげんしたべつ独立どくりつした疾患しっかんなのかについては、医学いがく教科書きょうかしょ執筆しっぴつするさい問題もんだいとなるだけではなく、保険ほけん診療しんりょう報酬ほうしゅう統計とうけいにもかかわるため、軽視けいしできない問題もんだいとなる。

症状しょうじょう研究けんきゅうする医学いがくいち分野ぶんやに、症候しょうこうがくがある。

病気びょうき年中ねんじゅう行事ぎょうじ

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日本にっぽんでは、ふるくは病気びょうきおにのせい、キツネたましい人間にんげん宿やどるため、など所謂いわゆる民話みんわ民間みんかん信仰しんこうともかんがえられていた。そのため病人びょうにんると、病気びょうき治癒ちゆさせるために祈祷きとうんではらをしてもらうということがあった。

現代げんだい日本にっぽんでも年中ねんじゅう行事ぎょうじとして、病気びょうきをしないように(おにないように)節分せつぶんまめまきをする、端午たんご節句せっく菖蒲湯しょうぶゆはいるなどといった習慣しゅうかんのこっている。

脚注きゃくちゅう

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注釈ちゅうしゃく

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  1. ^ 本人ほんにんあるいは周囲しゅういが」としたのは、精神せいしん疾患しっかん軽症けいしょう疾患しっかんなかには、本人ほんにん生活せいかつじょう不都合ふつごうかんじないが、周囲しゅういひと生活せいかつじょう支障ししょうをきたすために治療ちりょう必要ひつようせいかんじる場合ばあいがあるからである。これは病気びょうき類似るいじ概念がいねん混同こんどうである。 精神せいしん疾患しっかん病気びょうき#病気びょうきと「疾患しっかん」・「疾病しっぺい参照さんしょうのこと。
  2. ^ 一般いっぱん人々ひとびとは、医師いしからの説明せつめいいて、それを自分じぶんかんがえとして採用さいようすることもある。またぎゃく医師いしがわも、患者かんじゃから報告ほうこくいて、はじめてなにかを「疾患しっかん」と認識にんしきし、そうした断片だんぺんてき情報じょうほう学会がっかいなどで徐々じょじょ集約しゅうやくされて、あらためてだい規模きぼ統計とうけいがとられる場合ばあいもある。マスコミで医師いしかた内容ないよう人々ひとびと病気びょうきかん影響えいきょうあたえる。
  3. ^ 遺伝いでんてき背景はいけい生活せいかつ習慣しゅうかん原因げんいんとなる本態ほんたいせいだか血圧けつあつしょう高血圧こうけつあつの80 〜 90%であって、のこりの10 〜 20%は高血圧こうけつあつ基礎きそ疾患しっかんあきらかなせいだか血圧けつあつしょうである。せいだか血圧けつあつしょうでは基礎きそ疾患しっかん早期そうき発見はっけん早期そうき治療ちりょう重要じゅうようである[4]
  4. ^ 不眠ふみんのなかには、じつ本当ほんとう原因げんいんとして、周期しゅうきせい四肢しし運動うんどう障害しょうがい、むずむずあし症候群しょうこうぐんがいリズム睡眠すいみん障害しょうがい、うつびょうなどがかくれている場合ばあいがあるから、鑑別かんべつ診断しんだん重要じゅうようである[5]

出典しゅってん

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  1. ^ よしまつ和哉かずや; 小泉こいずみ典章てんしょう; 川野かわのみやび精神せいしん看護かんごがくI』(6はん)ヌーヴェルヒロカワ、2010ねん、71ぺーじISBN 978-4-86174-064-0 
  2. ^ The Anthropologies of Illness and Sickness”. Annual Review of Anthropology (1982ねん10がつ). doi:10.1146/annurev.an.11.100182.001353. 2009ねん12月25にち閲覧えつらん
  3. ^ a b c d e f g h 岡本おかもとひろし「はじめに~だい1しょう」『9わり病気びょうき自分じぶんなおせる』ちゅうけい出版しゅっぱん、2009ねん、1-46ぺーじ 
  4. ^ 今日きょう治療ちりょう指針ししん2011年版ねんばん医学書院いがくしょいん、2011ねん、339ぺーじ 
  5. ^ 今日きょう診断しんだん指針ししんだい6はん医学書院いがくしょいん、2010ねん、339ぺーじ 
  6. ^ a b c d e f g h i j k l m 岡本おかもとひろしだい3しょう」『9わり病気びょうき自分じぶんなおせる』ちゅうけい出版しゅっぱん、2009ねん、121-138ぺーじ 

参考さんこう文献ぶんけん

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関連かんれん項目こうもく

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外部がいぶリンク

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