医 い 原 ばら 病 びょう (いげんびょう、英 えい : iatrogenesis, iatrogenic disease )という言葉 ことば は以下 いか のような意味 いみ で用 もち いられる。
医療 いりょう 行為 こうい が原因 げんいん で生 しょう ずる疾患 しっかん のこと。「医 い 源 げん 病 びょう 」「医 い 原 ばら 性 せい 疾患 しっかん 」も同義 どうぎ 。[ * 1] また「治 ち 原 ばら 性 せい 疾患 しっかん 」「治 ち 原 ばら 性 せい 障害 しょうがい 」なども同義 どうぎ 。(医学 いがく 事典 じてん などに掲載 けいさい されている定義 ていぎ 。狭義 きょうぎ の医 い 原 ばら 病 びょう )
1.臨床 りんしょう 的 てき 医 い 原 ばら 病 びょう 、2.社会 しゃかい 的 てき 医 い 原 ばら 病 びょう 、3.文化 ぶんか 的 てき 医 い 原 ばら 病 びょう の三 みっ つの段階 だんかい を経 へ て、現代 げんだい 社会 しゃかい に生 い きる我々 われわれ を侵食 しんしょく する病 やまい のこと(社会 しゃかい 学者 がくしゃ イリッチ の提唱 ていしょう した概念 がいねん 。広義 こうぎ の医 い 原 ばら 病 びょう )[ 1]
古代 こだい ギリシャの時代 じだい より、医者 いしゃ が患者 かんじゃ を害 がい する可能 かのう 性 せい は知 し られていた。19世紀 せいき の西洋 せいよう では医師 いし が、細菌 さいきん のことや消毒 しょうどく のことも知 し らず、細菌 さいきん に汚染 おせん された手 て で患者 かんじゃ や妊 にん 婦 ふ に触 ふ れたので、患者 かんじゃ や妊 にん 婦 ふ への細菌 さいきん の伝播 でんぱ が起 お こり、患者 かんじゃ や妊 にん 婦 ふ は高 たか い確 かく 率 りつ で死亡 しぼう していた。現代 げんだい の日本 にっぽん でも様々 さまざま な医 い 原 ばら 病 びょう が起 お きている。(→#歴史 れきし )
医療 いりょう は他 た の様々 さまざま な技術 ぎじゅつ 同様 どうよう に、常 つね に発展 はってん 途上 とじょう で不完全 ふかんぜん であり、医療 いりょう 関係 かんけい 者 しゃ の意図 いと にかかわらず、医療 いりょう 行為 こうい によっては患者 かんじゃ を害 がい する可能 かのう 性 せい がある。
医 い 原 ばら 病 びょう の中 なか には発生 はっせい とほぼ同時 どうじ にそれと判明 はんめい するものもあるが、発生 はっせい から長 なが い年月 としつき を経 へ て医療 いりょう 技術 ぎじゅつ が進歩 しんぽ し新 あたら しい見地 けんち が発見 はっけん された後 のち にようやく、従来 じゅうらい の医療 いりょう 行為 こうい がなんらかの医 い 原 ばら 病 びょう の原因 げんいん を作 つく っていたと判明 はんめい することもある。
原因 げんいん としては、医療 いりょう 器具 きぐ 、医薬品 いやくひん 、医療 いりょう 材料 ざいりょう の他 ほか にも、医師 いし による誤診 ごしん 、医療 いりょう 過誤 かご (不適切 ふてきせつ な薬物 やくぶつ 選択 せんたく 、不適切 ふてきせつ ・未熟 みじゅく な手術 しゅじゅつ 、検査 けんさ など)、院内 いんない 感染 かんせん 等々 とうとう が挙 あ げられる。(→#原因 げんいん 別 べつ )
また、社会 しゃかい 学者 がくしゃ イリッチによって、医 い 原 ばら 病 びょう とは臨床 りんしょう 的 てき 医 い 原 ばら 病 びょう 、社会 しゃかい 的 てき 医 い 原 ばら 病 びょう 、文化 ぶんか 的 てき 医 い 原 ばら 病 びょう の三 みっ つの段階 だんかい を経 へ て、現代 げんだい 社会 しゃかい に生 い きる我々 われわれ を侵食 しんしょく する病 やまい のこと、ともされている。(→#広義 こうぎ の医 い 原 ばら 病 びょう )
医者 いしゃ が患者 かんじゃ を害 がい する可能 かのう 性 せい は古代 こだい ギリシャの時代 じだい より知 し られ、医療 いりょう 技術 ぎじゅつ や医療 いりょう 哲学 てつがく の確立 かくりつ の中 なか で重要 じゅうよう な概念 がいねん とされてきた。(「ヒポクラテスの誓 ちか い 」にも「自身 じしん の能力 のうりょく と判断 はんだん 力 りょく に従 したが って、患者 かんじゃ に利 り する治療 ちりょう 法 ほう を選 えら び、害 がい となる治療 ちりょう 法 ほう を決 けっ して選 えら ばない」と明記 めいき してあることからも窺 うかが える。)
パストゥール が細菌 さいきん を発見 はっけん する以前 いぜん 、19世紀 せいき 中 ちゅう ごろまでの西洋 せいよう の医学 いがく 会 かい では、清潔 せいけつ や不潔 ふけつ という概念 がいねん も浸透 しんとう しておらず、消毒 しょうどく 法 ほう も確立 かくりつ していなかった。手術 しゅじゅつ に医師 いし は血 ち に汚 よご れたフロックコート を着 き て臨 のぞ むなどし、患者 かんじゃ らの傷口 きずぐち は細菌 さいきん に汚染 おせん された共用 きょうよう の「たらい」の中 なか の水 みず で洗 あら われ、患者 かんじゃ 間 あいだ での細菌 さいきん の伝播 でんぱ が起 お こった。医師 いし のなかには「傷 きず が治 なお るためには膿 うみ がでることが必要 ひつよう だ」などと思 おも っていた者 もの も多 おお かった。1867年 ねん の統計 とうけい では、手足 てあし 切断 せつだん 手術 しゅじゅつ 後 ご の死亡 しぼう 率 りつ はチューリヒ で46%、パリ では60%に及 およ んだという。
お産 さん についても当時 とうじ は医師 いし が、「死亡 しぼう した産婦 さんぷ の解剖 かいぼう をして産婦 さんぷ の子宮 しきゅう からでる膿 うみ にまみれた手 て で次 つぎ のお産 さん に立会 たちあ った」ので、産道 さんどう から細菌 さいきん が入 はい って子宮 しきゅう 内 ない 感染 かんせん 症 しょう 、敗血症 はいけつしょう になって(産褥 さんじょく 熱 ねつ )死亡 しぼう する産婦 さんぷ が多数 たすう いた。その死亡 しぼう 率 りつ は10%以上 いじょう にもなった。イグナーツ・ゼンメルワイス (1818年 ねん -1865年 ねん )は、まだ病原菌 びょうげんきん などの概念 がいねん が無 な い時代 じだい であったにもかかわらず、今日 きょう で言 い う接触 せっしょく 感染 かんせん の可能 かのう 性 せい 、医師 いし 自身 じしん が感染 かんせん 源 げん になっている可能 かのう 性 せい に気 き づき、産褥 さんじょく 熱 ねつ の予防 よぼう 法 ほう として医師 いし がカルキを使用 しよう して手洗 てあら いを行 おこな うことを提唱 ていしょう した。だが、医学 いがく 会 かい はそういった彼 かれ の善意 ぜんい からの指摘 してき を認 みと めず、逆 ぎゃく に当時 とうじ の医師 いし らは彼 かれ を迫害 はくがい するような行動 こうどう をとった。
1977年 ねん 9月 がつ 、ソークワクチンの開発 かいはつ 者 しゃ のジョナス・ソーク 博士 はかせ は、議会 ぎかい で次 つぎ のように指摘 してき した。
1970
年代 ねんだい 初 はじ めにアメリカで
発生 はっせい した
ポリオ のほとんどは、アメリカで
使用 しよう されているポリオ
生 せい ワクチン の
副作用 ふくさよう である
可能 かのう 性 せい が
高 たか い。
つまりポリオ撲滅 ぼくめつ の功労 こうろう 者 しゃ とも言 い われるソーク自身 じしん が、犠牲 ぎせい 者 しゃ を出 だ し続 つづ けたポリオの原因 げんいん が、そのワクチンにあると認 みと めたのである。実際 じっさい 、アメリカ合衆国 あめりかがっしゅうこく では生 なま ワクチンが使 つか われたためポリオが発生 はっせい したが、フィンランドとスウェーデンのように死 し 菌 きん ワクチンを接種 せっしゅ していた国 くに ではポリオの発症 はっしょう はまったく報告 ほうこく されなかったという。
1976年 ねん にブタインフルエンザ が大 だい 流行 りゅうこう した時 とき に行 おこな われた予防 よぼう 接種 せっしゅ について、政府 せいふ とマスコミが徹底的 てっていてき に追跡 ついせき 調査 ちょうさ してみたところ、ワクチン が原因 げんいん でギラン・バレー症候群 しょうこうぐん (両足 りょうあし の麻痺 まひ や、知覚 ちかく 異常 いじょう 、呼吸 こきゅう 困難 こんなん などを引 ひ き起 お こす急性 きゅうせい 多発 たはつ 性 せい 神経 しんけい 炎 えん )が565件 けん も発生 はっせい し、予防 よぼう 接種 せっしゅ を受 う けてから数時間 すうじかん 以内 いない に30人 にん の高齢 こうれい 者 しゃ が"説明 せつめい 不可能 ふかのう な死 し "を遂 と げていたことが判明 はんめい した。
太平洋戦争 たいへいようせんそう 中 なか 、日本 にっぽん では腸 ちょう チフス ・パラチフス のワクチン は軍隊 ぐんたい などでも接種 せっしゅ され死亡 しぼう などの事故 じこ が起 お きていたが、そのような事故 じこ は軍隊 ぐんたい の不名誉 ふめいよ として隠蔽 いんぺい された。
1940年代 ねんだい 後半 こうはん には、種痘 しゅとう は実施 じっし 後 ご に脳炎 のうえん を起 お こす事例 じれい が頻発 ひんぱつ することが医師 いし の間 あいだ では広 ひろ く知 し られるようになり、「種痘 しゅとう 後 ご 脳炎 のうえん 」と呼 よ ばれた。その被害 ひがい 規模 きぼ は無視 むし できない数 かず にのぼり、1947年 ねん と1948年 ねん の強力 きょうりょく 痘苗 とうびょう だけに限定 げんてい しても、犠牲 ぎせい 者 しゃ はおよそ600人 にん と推計 すいけい されており、天然痘 てんねんとう のこの2年間 ねんかん の患者 かんじゃ 数 すう 405人 にん を超 こ えてしまっていた。
日本 にっぽん においては、種痘 しゅとう 事故 じこ や腸 ちょう チフス の事故 じこ が多数 たすう 発生 はっせい していたころ、その事故 じこ 数 すう についての集計 しゅうけい 表 ひょう は厚生省 こうせいしょう の机 つくえ の引 ひ き出 だ しの奥 おく にしまわれ「絶対 ぜったい に公表 こうひょう しない、一番 いちばん 関係 かんけい の深 ふか い人 ひと たちだけが見 み る」ことになっていたと厚生省 こうせいしょう 防疫 ぼうえき 課 か にいた職員 しょくいん が後 のち に語 かた った[ 10] 。
1948年 ねん 、京都 きょうと でのジフテリア 予防 よぼう 接種 せっしゅ の時 とき にジフテリア毒素 どくそ により大 だい 規模 きぼ な医療 いりょう 事故 じこ が起 お き、横隔膜 おうかくまく 麻痺 まひ 、咽頭 いんとう 麻痺 まひ 、心不全 しんふぜん 等 ひとし の中毒 ちゅうどく 症状 しょうじょう が現 あらわ れ、死亡 しぼう 者 しゃ 68名 めい という結果 けっか になった。同年 どうねん 、島根 しまね 県 けん でも類似 るいじ のジフテリア予防 よぼう 接種 せっしゅ 医療 いりょう 事故 じこ が起 お き15名 めい が死亡 しぼう した。
1949年 ねん から1950年 ねん ごろ、日本 にっぽん では結核 けっかく の治療 ちりょう 法 ほう として肋膜 ろくまく 外 がい 剥離 はくり 合成 ごうせい 樹脂 じゅし 球 だま 充填 じゅうてん 術 じゅつ がさかんに用 もち いられたが化膿 かのう を引 ひ き起 お こし摘出 てきしゅつ されることが多 おお く、後年 こうねん 高齢 こうれい 期 き を迎 むか えるころには低 てい 肺 はい 機能 きのう となった人 ひと が多 おお い[ 12] 。
1956年 ねん 、東京大学 とうきょうだいがく 法学部 ほうがくぶ 長 ちょう の尾高 おだか 朝雄 あさお が「ペニシリン ショック」で死亡 しぼう するという事故 じこ が起 お き、報道 ほうどう 機関 きかん で大 おお きく取 と り上 あ げられた。この事故 じこ をきっかけとしてペニシリン によるショック死 し は実 じつ はすでに100名 めい に及 およ んでいたことが明 あき らかになり社会 しゃかい 問題 もんだい としても扱 あつか われることになった[ 13] 。
日本 にっぽん では1948年 ねん の「予防 よぼう 接種 せっしゅ 法 ほう 」以降 いこう 、強制 きょうせい 接種 せっしゅ や集団 しゅうだん 接種 せっしゅ が拡大 かくだい していったが、その強制 きょうせい 接種 せっしゅ や集団 しゅうだん 接種 せっしゅ が安全 あんぜん な方法 ほうほう で行 おこな われていなかった。一 いち 例 れい を挙 あ げれば1964年 ねん に茨城 いばらき 県 けん で行 おこな われた集団 しゅうだん 接種 せっしゅ では、不十分 ふじゅうぶん な問診 もんしん 、複数 ふくすう の人 ひと に対 たい して針 はり を変 か えずに接種 せっしゅ 、マスクをせずに接種 せっしゅ 、不正確 ふせいかく な量 りょう の注入 ちゅうにゅう 、などのやり方 かた が行 おこな われていたらしい。複数 ふくすう の人 ひと に対 たい して針 はり を替 か えずに接種 せっしゅ をする行為 こうい が蔓延 まんえん していたことが日本 にっぽん でC型 がた 肝炎 かんえん が多発 たはつ した原因 げんいん である[ 15] 、と考 かんが えられている。
こうした医 い 原 ばら 病 びょう の概念 がいねん や知識 ちしき は、医学 いがく 教育 きょういく では断片 だんぺん 的 てき には教 おし えられるものの、あまりまとまった形 かたち で積極 せっきょく 的 てき ・集中 しゅうちゅう 的 てき には教育 きょういく されていない[ * 2] 。
そういった状況 じょうきょう の中 なか 、良心 りょうしん 的 てき な医師 いし は模索 もさく するような形 かたち で医 い 原 ばら 病 びょう 防止 ぼうし の努力 どりょく をしている現状 げんじょう がある。
現在 げんざい の日本 にっぽん の医学 いがく 界 かい では、ある症状 しょうじょう や疾患 しっかん が医療 いりょう 行為 こうい が原因 げんいん で生 しょう じたことを明示 めいじ しつつそれを呼 よ ぶ場合 ばあい は、「医 い 原 ばら 性 せい ○○○○」のように、症状 しょうじょう ・疾患 しっかん 名 めい の前 まえ に「医 い 原 ばら 性 せい 」という言葉 ことば を配置 はいち していることも多 おお い。
医薬品 いやくひん の使用 しよう は副作用 ふくさよう をもたらす可能 かのう 性 せい がある。また薬害 やくがい が発生 はっせい することもある。
異常 いじょう プリオン に汚染 おせん されたヒト乾燥 かんそう 硬 かた 膜 まく (ライオデュラ )が多数 たすう の患者 かんじゃ に移植 いしょく されクロイツフェルト・ヤコブ病 びょう の感染 かんせん を引 ひ き起 お こしたことは世界 せかい 的 てき に問題 もんだい となった。
X線 せん 検査 けんさ によるもの
ジョンズ・ホプキンス大学 だいがく 医学部 いがくぶ の研究 けんきゅう によって、レントゲン 検査 けんさ で医療 いりょう 被曝 ひばく を経験 けいけん した女性 じょせい は、レントゲン未 み 経験 けいけん 者 しゃ の同 どう 年齢 ねんれい の女性 じょせい に比 くら べると、ダウン症 だうんしょう 児 こ が生 う まれる確 かく 率 りつ が7倍 ばい も高 たか いことが明 あき らかになった。この報告 ほうこく の正確 せいかく さは、他 た の研究 けんきゅう によっても裏付 うらづ けられているという。
腹部 ふくぶ 手術 しゅじゅつ の後 のち に発生 はっせい する腹膜 ふくまく 癒着 ゆちゃく ・腸閉塞 ちょうへいそく
胃 い 摘除 てきじょ 手術 しゅじゅつ の後 のち に発生 はっせい するダンピング症候群 しょうこうぐん
採血 さいけつ ・手術 しゅじゅつ 時 じ における神経 しんけい 損傷 そんしょう
生 なま 検 けん 時 どき の組織 そしき 損傷 そんしょう を原因 げんいん とする障害 しょうがい 。
経 けい 皮 がわ 肺 はい 生 せい 検 けん 、経 けい 気管支 きかんし 肺 はい 生 せい 検 けん などで、後 のち に気胸 ききょう が起 お きる「医 い 原 ばら 性 せい 気胸 ききょう 」。
造影 ぞうえい 剤 ざい によるもの
社会 しゃかい 学者 がくしゃ のイヴァン・イリイチ は、医 い 原 ばら 病 びょう を、段階 だんかい 論 ろん 的 てき に臨床 りんしょう 的 てき 医 い 原 ばら 病 びょう 、社会 しゃかい 的 てき 医 い 原 ばら 病 びょう 、文化 ぶんか 的 てき 医 い 原 ばら 病 びょう に分 わ けて考察 こうさつ しており[ 17] 、医療 いりょう 社会 しゃかい 学 がく などの展開 てんかい に少 すく なからぬ影響 えいきょう を与 あた えている。
まず、一般 いっぱん に「医 い 原 ばら 病 びょう 」と呼 よ ばれる、医療 いりょう 行為 こうい が原因 げんいん で生 しょう じる疾患 しっかん のことをイリイチは「臨床 りんしょう 的 てき 医 い 原 ばら 病 びょう 」と呼 よ ぶ。これには、医療 いりょう 過誤 かご など、医薬品 いやくひん の副作用 ふくさよう や手術 しゅじゅつ ミスや検査 けんさ にともなう過誤 かご 等 とう や、社会 しゃかい 的 てき 集団 しゅうだん 的 てき に発生 はっせい する不 ふ 可逆 かぎゃく な健康 けんこう 被害 ひがい である薬害 やくがい 、治療 ちりょう を受 う けたが故 ゆえ に生 しょう じた患者 かんじゃ 側 がわ のデメリット全 すべ てが含 ふく まれる。
しかし、これは狭義 きょうぎ の医 い 原 ばら 病 びょう に過 す ぎないという。つまり、医 い 原 ばら 病 びょう はこうした狭義 きょうぎ のもの(臨床 りんしょう 的 てき 医 い 原 ばら 病 びょう )だけではなく、さらに社会 しゃかい 的 てき 医 い 原 ばら 病 びょう 、文化 ぶんか 的 てき 医 い 原 ばら 病 びょう と呼 よ ばれるものも観察 かんさつ されるというのである。
ここで、「社会 しゃかい 的 てき 医 い 原 ばら 病 びょう 」とは、今日 きょう の医療 いりょう 社会 しゃかい 学 がく や医療 いりょう 人類 じんるい 学 がく の用語 ようご でいう「医療 いりょう 化 か 」(Medicalization)を指 さ し、医療 いりょう の対象 たいしょう が拡大 かくだい していくことを指 さ す。かつては自宅 じたく で身近 みぢか に触 ふ れ得 え た死 し や出産 しゅっさん が病院 びょういん に囲 かこ いこまれていき、自然 しぜん な過程 かてい であるはずの老化 ろうか も医療 いりょう の対象 たいしょう とされていき、老人 ろうじん にまで降圧 こうあつ 剤 ざい 治療 ちりょう が行 おこな われるようになるなど、現代 げんだい 社会 しゃかい においては、資本 しほん 主義 しゅぎ 下 か の医療 いりょう のキャラナライゼーション、過剰 かじょう 医療 いりょう をも意味 いみ することになる。
さらに、「文化 ぶんか 的 てき 医 い 原 ばら 病 びょう 」は、医療 いりょう の対象 たいしょう 拡大 かくだい が人々 ひとびと の思考 しこう を無意識 むいしき に支配 しはい するようになった結果 けっか 、自分 じぶん の身体 しんたい 、自分 じぶん の健康 けんこう にもかかわらず主体性 しゅたいせい を失 うしな い、人々 ひとびと がその管理 かんり に関 かん して無 む 関心 かんしん ・無責任 むせきにん となり、医師 いし に全面 ぜんめん 的 てき に任 まか せて平気 へいき となる=思考 しこう 停止 ていし し怪 あや しまなくなってしまっている状態 じょうたい を指 さ す。医師 いし による「専門 せんもん 家 か 支配 しはい 」(Professional Dominance)・パターナリズム 医療 いりょう の所産 しょさん でもあり、端 はし 的 てき に言 い えば、日本 にっぽん で見 み られる、いわゆる「お任 まか せ医療 いりょう 」状態 じょうたい のことである。
近年 きんねん [いつ? ] 、電子 でんし カルテの普及 ふきゅう と伴 ともな い、コンピューターをハッキングすることにより、医療 いりょう 検査 けんさ データなどが匠 たくみ な方法 ほうほう で改 かい ざんされ、患者 かんじゃ の個人 こじん データおよび生命 せいめい に重大 じゅうだい な影響 えいきょう をきたすことが懸念 けねん されている。
^ 治療 ちりょう の結果 けっか 、原 はら 疾患 しっかん による後遺症 こういしょう が生 しょう じた例 れい はこれに当 あ てはまらない。
^ 例 たと えば日本 にっぽん の医学部 いがくぶ で、まとまったコマ数 すう を医 い 原 ばら 病 びょう の教育 きょういく に集中 しゅうちゅう 的 てき にあてているところなどない。また、日本 にっぽん では、医 い 原 ばら 病 びょう を題名 だいめい に掲 かか げてそれを主 しゅ たるテーマとした医学 いがく 生 せい 向 む けの教科書 きょうかしょ はここ10~20年 ねん 以上 いじょう 、出版 しゅっぱん されたこともない。医学 いがく 事典 じてん でも医 い 原 ばら 病 びょう に関 かん する情報 じょうほう をまとめてはほとんど掲載 けいさい しない。
^ イヴァン・イリッチ『脱 だつ 病院 びょういん 化 か 社会 しゃかい ―医療 いりょう の限界 げんかい 』晶文社 しょうぶんしゃ , 1998年 ねん 。
^ 川上 かわかみ 武 たけし 『戦後 せんご 日本 にっぽん 病人 びょうにん 史 し 』農文協 のうぶんきょう 2002年 ねん , ISBN 4540001698 , 第 だい 8章 しょう 「薬害 やくがい ・医 い 原 ばら 病 びょう の多発 たはつ とその背景 はいけい 」
^ 川上 かわかみ 武 たけし 『戦後 せんご 日本 にっぽん 病人 びょうにん 史 し 』p.323
^ 川上 かわかみ 武 たけし 『戦後 せんご 日本 にっぽん 病人 びょうにん 史 し 』p.324
^ 読売新聞 よみうりしんぶん 2000年 ねん 2月 がつ 9日 にち 記事 きじ 「広 ひろ がるC型 がた 肝炎 かんえん 、3割 わり が「陽性 ようせい 」の地域 ちいき も」
^ イリッチ、前掲 ぜんけい 書 しょ 。
イヴァン・イリッチ『脱 だつ 病院 びょういん 化 か 社会 しゃかい ―医療 いりょう の限界 げんかい 』晶文社 しょうぶんしゃ , 1998年 ねん , ISBN 4794912625 (Ivan Illich, Limits to Medicine: Medical Nemesis, the Expropriation of Health ,1979, ISBN 0714529931 )
川上 かわかみ 武 たけ 『戦後 せんご 日本 にっぽん 病人 びょうにん 史 し 』農文協 のうぶんきょう , 2002年 ねん , ISBN 4540001698
近藤 こんどう 誠 まこと 『医 い 原 ばら 病 びょう -「医療 いりょう 信仰 しんこう 」が病気 びょうき をつくりだしている』講談社 こうだんしゃ 、2000年 ねん 。ISBN 4062720507 。
地域 ちいき 医療 いりょう 評議 ひょうぎ 会 かい 『医 い 原 ばら 病 びょう ―医者 いしゃ があなたを病気 びょうき にする!?』大和 やまと 出版 しゅっぱん , 1998年 ねん , ISBN 4804760547
森 もり 昌夫 まさお 『医 い 食 しょく 同 どう 源 みなもと のペプチド―やさしい病態 びょうたい 栄養 えいよう の知識 ちしき 』TEN BOOKS,1989年 ねん ,ISBN 4876660123
安保 あんぽ 徹 てっ 『医療 いりょう が病 やめ いをつくる―免疫 めんえき からの警鐘 けいしょう 』岩波書店 いわなみしょてん , 2001年 ねん , ISBN 4000221132
岡田 おかだ 正彦 まさひこ 『治療 ちりょう は大 だい 成功 せいこう 、でも患者 かんじゃ さんは早死 はやじに にした』講談社 こうだんしゃ , 2001年 ねん , ISBN 4062720671
ロバート・メンデルソン『医者 いしゃ が患者 かんじゃ をだますとき』草 くさ 思 おもえ 社 しゃ 、1999年 ねん 。ISBN 4794208545 。
ロバート・メンデルソン『医者 いしゃ が患者 かんじゃ をだますとき 女性 じょせい 篇 へん 』草 くさ 思 おもえ 社 しゃ , 2001年 ねん , ISBN 4794210485
吉原 よしはら 賢二 けんじ 『私憤 しふん から公憤 こうふん へ- 社会 しゃかい 問題 もんだい としてのワクチン禍 か 』岩波 いわなみ 新書 しんしょ 、1975年 ねん 。ISBN 4004111196 。