院内いんない感染かんせん

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院内いんない感染かんせん(いんないかんせん、hospital-acquired infection, nosocomial infection)とは、病院びょういん医療いりょう機関きかんないで、あらたに細菌さいきんウイルスなどの病原びょうげんたい感染かんせんすること。病院びょういんがいでの感染かんせんあらわす「市中しちゅう感染かんせん」と、たい用語ようごである。とく薬剤やくざいたいせい病原びょうげんからだ日和見ひよりみ感染かんせん (opportunistic infection) によるものをす。

概要がいよう[編集へんしゅう]

病気びょうき治療ちりょうである病院びょういんは、その一方いっぽうでは、多様たよう病原びょうげんたい(に感染かんせんした患者かんじゃ)があつまり、また薬剤やくざいたいせいきんおお生息せいそくしているというてんで、感染かんせんしょう発生はっせいしやすい危険きけん場所ばしょであるともえる。また疾患しっかん免疫めんえき抑制よくせいざい投与とうよにより、感染かんせんへの抵抗ていこうりょく免疫めんえき)や体力たいりょく低下ていかしたひとおお存在そんざいし、なおかつ注射ちゅうしゃ手術しゅじゅつ医療いりょう行為こういには、体内たいない病原びょうげんたい侵入しんにゅうする危険きけんともなう。

これらのことから、一般いっぱんてき市中しちゅう環境かんきょうくらべて、病院びょういんない感染かんせんしょう集団しゅうだん発生はっせい危険きけんたかい。院内いんないにおける感染かんせんは、病院びょういんがいでおこる感染かんせんしょうとは、病原びょうげんたい対策たいさくことなるてんおおいため、病院びょういんない発生はっせいするこれらの感染かんせんを、とくに院内いんない感染かんせんび、医学いがく分野ぶんやでも市中しちゅう感染かんせん区別くべつしてあつかう。

院内いんない感染かんせんは、えき感染かんせん宿主しゅくしゅ発病はつびょうした場合ばあい高度こうど薬剤やくざいたいせいきんによる場合ばあいには、治療ちりょうむずかしく、患者かんじゃ生命せいめい健康けんこう重大じゅうだい被害ひがいあたえる。このため、発生はっせい未然みぜんふせぐ(予防よぼうする)ことが重要じゅうようである。

医療いりょう機関きかんにおいて環境かんきょう衛生えいせい徹底てっていし、手洗てあら消毒しょうどく基本きほんてき感染かんせん予防よぼう対策たいさく徹底てっていすることが発生はっせい予防よぼう効果こうかてきである。医療いりょう機関きかんおおくはせんもん部門ぶもん医療いりょうチーム(感染かんせん制御せいぎょチームなど)をもうけて院内いんない感染かんせん発生はっせい防止ぼうしつとめているが、院内いんない感染かんせん発生はっせいしたとき、これらの対策たいさく不備ふびみとめられた場合ばあいなどには、医療いりょう訴訟そしょうこって社会しゃかい問題もんだいとなるケースもある。

状況じょうきょう原因げんいん[編集へんしゅう]

病院びょういん医療いりょう機関きかん病気びょうき治療ちりょうするであるが、その反面はんめん、さまざまな病原びょうげんたい感染かんせんした患者かんじゃあつまってくる場所ばしょであり、また抗菌こうきんやく消毒しょうどくやく多用たようから、薬剤やくざいたいせい病原びょうげんたいおお環境かんきょうである。

院内いんないには、重症じゅうしょう消耗しょうもうせい疾患しっかん患者かんじゃ外科げか手術しゅじゅつとう感染かんせん危険きけんせいたか処置しょちけた患者かんじゃ、あるいは臓器ぞうき移植いしょく手術しゅじゅつ拒絶きょぜつ反応はんのうよわめるために、免疫めんえき抑制よくせいざい投与とうよけて人為じんいてき感染かんせん防御ぼうぎょのう(いわゆる免疫めんえきりょく)を低下ていかさせられている患者かんじゃこうがんざい投与とうよにより骨髄こつづい機能きのう免疫めんえきのう低下ていかしている患者かんじゃなど、微生物びせいぶつ感染かんせんたいする抵抗ていこうりょくいちじるしくひくい、えき感染かんせん宿主しゅくしゅ健康けんこうひとにはがいおよぼさない弱毒じゃくどくきんによっても感染かんせんしょうをおこす、compromised host)がおおい。そのため、平素へいそ無害むがいきんによる日和見ひよりみ感染かんせん危険きけんせいたかいことになる。

感染かんせんげんである患者かんじゃ免疫めんえきりょく抵抗ていこうりょく体力たいりょくおとろえた患者かんじゃが、どういち施設しせつないにいるため、感染かんせんしやすい状況じょうきょうである。また患者かんじゃから患者かんじゃへと感染かんせんする以外いがいにも、医師いし看護かんご、あるいは調理ちょうりいんなどの医療いりょう従事じゅうじしゃ病原びょうげんたいはこやくになっている場合ばあいや、院外いんがいから免疫めんえきりょくたか保菌ほきんしゃ来院らいいんによって感染かんせんこされる場合ばあいがある。

おも院内いんない経路けいろ病原びょうげんたい[編集へんしゅう]

院内いんない感染かんせん対策たいさく実態じったい[編集へんしゅう]

日本にっぽん環境かんきょう感染かんせん学会がっかい実態じったい把握はあくしたのは1999ねんからである。アメリカ合衆国あめりかがっしゅうこく欧米おうべいでは、やく20ねんまえ[いつ?]から院内いんない感染かんせん対策たいさく研究けんきゅう機関きかん組織そしきして、調査ちょうさ研究けんきゅうすすんでいる。

たとえばStudy for the Efficacy of Nasocomial Infection Control (SENIC、院内いんない感染かんせん対策たいさくかんする研究けんきゅう) という機関きかんがあり、調査ちょうさ毎年まいとし継続けいぞくされ、予防よぼう対策たいさくについてもつね最新さいしん方法ほうほう技術ぎじゅつ導入どうにゅうされ、研究けんきゅう改良かいりょうされている。日本にっぽんでは、急速きゅうそく研究けんきゅうすすんでいるが、対策たいさくについてはまだ十分じゅうぶんであるとはえない。

2006ねん6がつ公表こうひょうされた埼玉さいたま医科いか大学だいがく病院びょういんにおけるざいたいせいみどりうみきん (MDRP) による院内いんない感染かんせん事例じれいでは、

  1. はじめにICU感染かんせんひろがり、その患者かんじゃがICUから一般いっぱん病棟びょうとうにMDRPをかえった結果けっか感染かんせん拡大かくだいしたこと
  2. 感染かんせん経路けいろについては、たいせいきんことなり、固形こけい石鹸せっけん手洗てあらじょう・シャワーとう湿度しつどたか場所ばしょ尿にょうかいしての繁殖はんしょく伝染でんせんであること
  3. 抗生こうせい物質ぶっしつ(カルバペネムとう)の使つかぎによりみどりうみきん薬物やくぶつたいしてたいせい獲得かくとくしたこと

などがあきらかにされている。

病院びょういん建築けんちく設計せっけいでは、院内いんない感染かんせん防止ぼうしのため、どうせん交差こうさける配慮はいりょ推奨すいしょうされている。感染かんせん事故じこにつながる廃棄はいきぶつとう運搬うんぱん経路けいろは、患者かんじゃどうせん完全かんぜん分離ぶんりすることがのぞましいとされる。すなわち、患者かんじゃ行動こうどう領域りょういきがバックヤードとはなされるように設計せっけいされる。

新型しんがたコロナウイルスの院内いんない感染かんせん (2020ねん)[編集へんしゅう]

2019新型しんがたコロナウイルス世界せかいてき感染かんせん拡大かくだい局面きょくめんでは、中華人民共和国ちゅうかじんみんきょうわこく[1]イタリア[2]で1000にんえるだい規模きぼ院内いんない感染かんせん発生はっせいした。

類語るいご[編集へんしゅう]

病院びょういん診療しんりょうしょ以外いがいにも、老人ろうじん保健ほけん施設しせつ在宅ざいたくケアなどをかいした感染かんせん拡大かくだいふくめて「医療いりょう関連かんれん感染かんせん」(英語えいご: healthcare-associated infection, 略称りゃくしょう: HAI)と用語ようご提案ていあんされている。

脚注きゃくちゅう[編集へんしゅう]

  1. ^ 中国ちゅうごく医療いりょう関係かんけいしゃ1716にん感染かんせん 深刻しんこく院内いんない感染かんせん発生はっせい”. 朝日新聞あさひしんぶん (2020ねん2がつ18にち). 2020ねん4がつ13にち閲覧えつらん
  2. ^ 99%は以前いぜんから疾患しっかん老人ろうじんおお院内いんない感染かんせんも イタリア、コロナ死者ししゃ最多さいたのなぜ”. 2020-03-24SANKEI Biz (2020ねん3がつ24にち). 2020ねん4がつ13にち閲覧えつらん

関連かんれん項目こうもく[編集へんしゅう]

外部がいぶリンク[編集へんしゅう]