膠にかわ原ばら病びょう

膠にかわ原ばら病びょう
概要がいよう
診療しんりょう科か	リウマチ学がく
分類ぶんるいおよび外部がいぶ参照さんしょう情報じょうほう
MeSH	D003095

膠にかわ原ばら病びょう（こうげんびょう、英えい: connective tissue disease [disorder]）とは、全身ぜんしんの複数ふくすうの臓器ぞうきに炎症えんしょうが起おこり、臓器ぞうきの機能きのう障害しょうがいをもたらす一連いちれんの疾患しっかん群ぐんの総称そうしょう。この名称めいしょうは1942年ねんにアメリカの病理びょうり学者がくしゃポール・クレンペラーが提唱ていしょうした名称めいしょうである。クレンペラーは全身ぜんしん性せいエリテマトーデス、全身ぜんしん性せい硬化こうか症しょうの研究けんきゅうから、病態びょうたいの主しゅ座ざは結合けつごう組織そしきと血管けっかんにあると考かんがえ、collagen-vascular disease と命名めいめいした。これが膠にかわ原ばら病びょうと翻訳ほんやくされた。類似るいじ疾患しっかん概念がいねんに、自己じこ免疫めんえき疾患しっかん、リウマチ性せい疾患しっかん、結合けつごう組織そしき疾患しっかんがあるが、膠にかわ原ばら病びょうはこの3つが重かさなった位置いちにあるとされる。

原因げんいんとしては、血液けつえき中ちゅうにある抗体こうたいが細胞さいぼう核かくなどと反応はんのうをして免疫めんえき複ふく合体がったいを形成けいせいしつつ、『（A）組織そしきに沈着ちんちゃくしたり、（B）組織そしきを攻撃こうげきする』ことで発病はつびょうすると考かんがえられ、死亡しぼうに至いたる場合ばあいもある。

典型てんけい的てきな症状しょうじょうとして発熱はつねつ・皮かわ疹・倦怠けんたい感かん・関節かんせつ痛つう・関節かんせつ炎えん・筋肉きんにく痛つう・内臓ないぞう病変びょうへん・レイノー現象げんしょうなどがあげられ、女性じょせいに多おおいのも特徴とくちょうである。遺伝いでん的てき要因よういんと環境かんきょう要因よういんが発症はっしょうに関与かんよするとされる。慢性まんせいに経過けいかし、寛解かんかいと再燃さいねんを繰くり返かえしながら進行しんこうすることがある。多おおくの場合ばあいに自己じこ免疫めんえき疾患しっかんとしての機き序じょが関与かんよしていると考かんがえられており、完全かんぜんな病態びょうたいの解明かいめいは、未いまだ成なされていない。

現代げんだいでの治療ちりょうの主体しゅたいは副腎ふくじん皮質ひしつステロイドを中心ちゅうしんとする免疫めんえき抑制よくせい剤ざいである。近年きんねんではTNFαあるふぁ阻害そがい薬やくを中心ちゅうしんとする生物せいぶつ学がく的てき製剤せいざいの導入どうにゅうによって治療ちりょう概念がいねんが大おおきく変化へんかし、寛解かんかい導入どうにゅう率りつが飛躍ひやく的てきに向上こうじょうしている。

主おもな膠にかわ原ばら病びょう

• 古典こてん的てき膠にかわ原ばら病びょう
  • 関節かんせつリウマチ (rheumatoid arthritis; RA)
  • 全身ぜんしん性せいエリテマトーデス (systemic lupus erythematosus; SLE)
  • 強つよ皮かわ症しょう (Scleroderma)
  • 皮膚ひふ筋炎きんえん (dermatomyositis complex; DM) / 多発たはつ性せい筋炎きんえん (polymyositis; PM)
  • 結節けっせつ性せい多発たはつ動脈どうみゃく炎えん (polyarteritis nodosa; PN)
  • 混合こんごう性せい結合けつごう組織そしき病びょう (mixed connective tissue disease; MCTD)
• その他たの膠にかわ原ばら病びょう・膠にかわ原ばら病びょう類縁るいえん疾患しっかん
  • シェーグレン症候群しょうこうぐん (Sjögren syndrome; SjS)
  • 顕微鏡けんびきょう的てき多発たはつ血管けっかん炎えん (microscopic polyangitis; MPA)
  • 多発たはつ血管けっかん炎えん性せい肉芽にくが腫しゅ症しょう (Granulomatosis with polyangiits; GPA)（旧名きゅうめい:ウェゲナー肉芽にくが腫しゅ症しょう）
  • 好こう酸さん球だま性せい多発たはつ血管けっかん炎えん性せい肉芽にくが腫しゅ症しょう (Eosinophilic granulomatosis with polyangitis; EGPA) (旧名きゅうめい:チャーグ・ストラウス症候群しょうこうぐん (Churg-Strauss syndrome; CSS) ・アレルギあれるぎー性せい肉芽にくが腫しゅ性せい血管けっかん炎えん（Allergic granulomatosis-Angitis; AGA）)
  • 過敏かびん性せい血管けっかん炎えん (hypersensitivity angiitis)
  • ベーチェット病びょう (Behcet's syndrome[disease])
  • コーガン症候群しょうこうぐん (Cogan's syndrome)
  • RS3PE (remitting seronegative symmetrical synovitis with pitting edema)
  • 巨きょ細胞さいぼう性せい動脈どうみゃく炎えん (Giant-cell arteritis; GCA)
  • 成人せいじんスティル病びょう (adult-onset Still's disease; AOSD)
  • リウマチ性せい多発たはつ筋すじ痛つう症しょう (polymyalgia rheumatica; PMR)
  • 線維せんい筋すじ痛つう症しょう (fibromyalgia syndrome; FMS)
  • SAPHO症候群しょうこうぐん

なお、リウマチ熱ねつ (RF) については古典こてん的てき膠にかわ原ばら病びょうに分類ぶんるいされていたが、原因げんいんが判明はんめいしたため、現在げんざいは膠にかわ原ばら病びょうから外はずされている。

特異とくい的てき抗体こうたい

膠にかわ原ばら病びょうでは抗こう核かく抗体こうたい (ANA) が有名ゆうめいである。しかし抗こう核かく抗体こうたいが軽度けいど陽性ようせいであったとしても臨床りんしょう的てき意義いぎがない（膠にかわ原ばら病びょうの診断しんだん基準きじゅんを満みたさない）ものが殆ほとんどであり、抗体こうたい陽性ようせいで、即そく、膠にかわ原ばら病びょう、甲状腺こうじょうせん疾患しっかん、慢性まんせい肝炎かんえんである場合ばあいはごく僅わずかである。また膠にかわ原ばら病びょうの中なかにも抗こう核かく抗体こうたいが診断しんだんに影響えいきょうしないものがある。

ANA関連かんれん膠にかわ原ばら病びょう

全身ぜんしん性せいエリテマトーデス (SLE)、全身ぜんしん性せい硬化こうか症しょう (SSc)、シェーグレン症候群しょうこうぐん (SjS)、皮膚ひふ筋炎きんえん (DM)、多発たはつ性せい筋炎きんえん (PMS)、混合こんごう性せい結合けつごう組織そしき疾患しっかん (MCTD) があげられる。これらの疾患しっかんはSLE以外いがいは特異とくい的てきな症状しょうじょうがあり、抗こう核かく抗体こうたいを測はかる前まえにそれらの症状しょうじょうの有無うむを確認かくにんしなければ、検査けんさ結果けっかの判断はんだんは難むずかしくなる。例たとえば、SScならば皮膚ひふ硬化こうか、SjSならば乾燥かんそう症状しょうじょう、皮膚ひふ筋炎きんえん、PMSならばゴットロン徴候ちょうこう、ヘリオトロープ疹、筋力きんりょく低下ていか、MCTDならば、ソーセージ指ゆびやレイノー症状しょうじょうがあげられる。抗こう核かく抗体こうたいの特異とくい性せいが高たかいとされているのはSLE、SSc、MCTDである。特異とくい的てき抗体こうたいとしてはSLEにおける抗こうdsDNA抗体こうたい、抗こうSm抗体こうたい、SScにおける抗こうScl抗体こうたい、抗こうセントロメア抗体こうたい、MTCDにおける抗こうU1RNP抗体こうたい、SjSにおける抗こうSS-A抗体こうたい、抗こうSS-B抗体こうたい、DM、PMSにおける抗こうJo-1抗体こうたいなどがあげられる。上記じょうき特異とくい的てきな症状しょうじょうがなく、抗こう核かく抗体こうたいを測はかるような場合ばあいとは、特異とくい的てきな症状しょうじょうを示しめさない膠にかわ原ばら病びょうを疑うたがう時ときであり、それは通常つうじょうはSLEのことになる。SLEは発症はっしょう時じには特異とくい的てき症状しょうじょうに欠かけるのが特徴とくちょうである。SLEの診断しんだんにはSLEの分類ぶんるい基準きじゅん (感度かんど96%、特異とくい度ど96%) を用もちいるのが一般いっぱん的てきである。SLEの分類ぶんるい基準きじゅんは11の項目こうもくからなり4つ以上いじょうを満みたすとSLEとなる。抗体こうたい以外いがいの項目こうもくで9つの項目こうもくがあるため、そのなかで最低さいてい2つの項目こうもくに合致がっちしなければ抗こう核かく抗体こうたいを測定そくていしても診断しんだん的てきな意義いぎはない。すなわち、関節かんせつ炎えん、漿膜炎えん、痙攣けいれん、精神病せいしんびょう、血球けっきゅう減少げんしょう、持続じぞく性せい蛋白たんぱく尿にょう、円柱えんちゅう、皮かわ疹 (蝶ちょう形がた紅べに斑むら、ディスコイド疹)、無痛むつう性せい口腔こうくう内ない潰瘍かいよう (口腔こうくう上部じょうぶに多おおい) のうち2つ以上いじょう認みとめられるとき、抗こう核かく抗体こうたい、抗こうdsDNA抗体こうたい、抗こうSm抗体こうたい、抗こうリン脂質ししつ抗体こうたいを特定とくていする意義いぎが生うまれる。このような使つかい方かたをしていればSLEを強つよく疑うたがう時とき、あるいはSLEを否定ひていしたいときに抗こう核かく抗体こうたいは強つよい武器ぶきとなる。

ANA陰性いんせいの膠にかわ原ばら病びょう

抗こう核かく抗体こうたいが診断しんだんに影響えいきょうしない膠にかわ原ばら病びょうとしては血管けっかん炎えん、血清けっせい反応はんのう陰性いんせい脊椎せきつい炎えん、関節かんせつリウマチ、リウマチ性せい多発たはつ筋すじ痛つう症しょう、ベーチェット病びょう、成人せいじんスティル病びょうなどがあげられる。これらの疾患しっかんでは抗こう核かく抗体こうたいが診断しんだんに影響えいきょうしないだけであって、抗こう核かく抗体こうたいが陰性いんせいでなければならないわけではない。健常けんじょう者しゃでも抗こう核かく抗体こうたいが陽性ようせいとなるように、これらの疾患しっかんの患者かんじゃでも抗こう核かく抗体こうたいが陽性ようせいとなる場合ばあいは多々たたある。

ANCA関連かんれん血管けっかん炎えん

顕微鏡けんびきょう的てき多発たはつ血管けっかん炎えん (MPA)、アレルギあれるぎー性せい肉芽にくが腫しゅ性せい血管けっかん炎えん (AGA)、多発たはつ血管けっかん炎えん性せい肉芽にくが腫しゅ症しょう (GPA) があげられる。抗こう好こう中ちゅう球だま細胞さいぼう質しつ抗体こうたい (ANCA) を測はかるのはMPA、WG、AGAを疑うたがったときであるため、急性きゅうせいないし慢性まんせいの腎じん障害しょうがい、持続じぞく性せい蛋白たんぱく尿にょう、原因げんいんのはっきりしない肺はい陰影いんえい、喀血かっけつ、紫斑しはん、多発たはつ性せい単たん神経しんけい炎えん、鼻はな中ちゅう隔へだた穿孔せんこうを認みとめたら測定そくていする。血清けっせいにおける陽性ようせい率りつはAGAで50%、WGの活動かつどう期きで90%、MPAで70%であるためANCA陰性いんせいであってもANCA関連かんれん血管けっかん炎えんの可能かのう性せいを否定ひていはできない。腎じん生せい検けんなどによる免疫めんえき染色せんしょくは若干じゃっかん陽性ようせい率りつが上あがる傾向けいこうがある。

皮膚ひふ症状しょうじょう

膠にかわ原ばら病びょうの診断しんだん的てき価値かちの高たかい皮膚ひふや爪つめの所見しょけんとしては爪つま囲かこえ紅べに斑まだらや爪つま郭かく毛細血管もうさいけっかん拡張かくちょう、爪つま上皮じょうひ出血しゅっけつ点てん、関節かんせつ伸しん側がわ・屈こごめ側がわの丘おか疹や紅べに斑むら、むち打うち様よう紅べに斑むら、皮膚ひふ硬化こうかなどが知しられている。膠にかわ原ばら病びょうに特異とくい的てきではないが、膠にかわ原ばら病びょうが疑うたがわれる皮膚ひふや爪つめの所見しょけんとしては、レイノー現象げんしょう、光線こうせん過敏かびん症しょう、顔面がんめん紅べに斑むら、環状かんじょう紅べに斑むら、円えん板いた状じょう紅べに斑むら、眼瞼がんけんの浮腫ふしゅ性せい紅べに斑むら、凍瘡とうそう様さま皮がわ疹、爪つま床ゆか出血しゅっけつ、結節けっせつ性せい紅べに斑まだら、網状もうじょう皮がわ疹、触さわ知性ちせい紫斑しはんなどがあげられる。

爪つま囲かこえ紅べに斑まだら

爪つま囲かこえ紅べに斑まだらは爪つま甲かぶと周囲しゅういの紅べに斑むらで、ささむけ様さまになることもある。皮膚ひふ筋炎きんえんでよくみられる所見しょけんである。

爪つま郭かく毛細血管もうさいけっかん拡張かくちょう

爪つま囲かこえ紅べに斑むらと爪つま郭かく毛細血管もうさいけっかん拡張かくちょうの両方りょうほうが認みとめられた場合ばあいは皮膚ひふ筋炎きんえんが疑うたがわれる。爪つま囲かこえ紅べに斑まだらを伴ともなわない爪つま郭かく毛細血管もうさいけっかん拡張かくちょうを認みとめた場合ばあいは全ぜん身性みじょう強きょう皮かわ症しょうが疑うたがわれる。

爪つま上皮じょうひ出血しゅっけつ

爪つま上皮じょうひ（甘皮あまかわ）に認みとめられる黒色こくしょくの点てん状じょう出血しゅっけつを爪つま上皮じょうひ出血しゅっけつという。皮膚ひふ筋炎きんえん、全ぜん身性みじょう強きょう皮かわ症しょう、混合こんごう性せい結合けつごう組織そしき病びょうで認みとめられる。外傷がいしょうでも認みとめられることが多おおいが、複数ふくすうの手指しゅしに爪つま上皮じょうひ出血しゅっけつがあれば膠にかわ原ばら病びょうの可能かのう性せいが高たかくなる。

関節かんせつ伸しん側がわ・屈こごめ側がわの丘おか疹や紅べに斑まだら

関節かんせつ伸しん側がわに丘おか疹を認みとめたらゴットロン丘おか疹、角かく化か性せい紅べに斑まだらを認みとめたらゴットロン徴候ちょうこうという手て関節かんせつの屈こごめ側がわにも同様どうようの所見しょけんが認みとめられることがあり逆ぎゃくゴットロン徴候ちょうこうという。逆ぎゃくゴットロン徴候ちょうこうは間あいだ質しつ性せい肺炎はいえんの合併がっぺいを疑うたがう徴候ちょうこうである。刺激しげきを受うける部位ぶいに好こう発はっし、PIP、MCP、肘ひじ関節かんせつ、膝ひざ関節かんせつに認みとめられることが多おおい。悪化あっかすると痂かさぶた皮がわ、皮膚ひふ潰瘍かいようを認みとめる。痂かさぶた皮がわや皮膚ひふ潰瘍かいようを認みとめたら皮膚ひふ筋炎きんえんを疑うたがう。鑑別かんべつは乾癬かんせんや接触せっしょく性せい皮膚ひふ炎えんである。

むち打うち様よう紅べに斑まだら

背部はいぶの掻爬痕こんに沿そった紅べに斑まだらをむち打うち様よう紅べに斑むらといい、ケブネル現象げんしょうのひとつと考かんがえられている。皮膚ひふ筋炎きんえんと成人せいじんスチル病びょうを疑うたがう所見しょけんである。膠にかわ原ばら病びょう以外いがいではしいたけ皮膚ひふ炎えん、ブレオマイシン皮膚ひふ炎えん、薬くすり疹で認みとめられることがある。

皮膚ひふ硬化こうか

手指しゅしからMCPを超こえる皮膚ひふ硬化こうかは全ぜん身性みじょう強きょう皮かわ症しょう、混合こんごう性せい結合けつごう組織そしき病びょうを疑うたがう所見しょけんである。早期そうきには皮膚ひふ硬化こうかとしてではなく浮腫ふしゅとして認みとめられる。手指しゅしの循環じゅんかん不全ふぜんにより指ゆび尖とんが部ぶ潰瘍かいようや陥おちい凹性瘢痕はんこんを伴ともなうことがある。

レイノー現象げんしょう

レイノー現象げんしょうは寒冷かんれい刺激しげきによって手指しゅしや足あし趾の皮膚ひふが蒼白そうはく、紫むらさきになる現象げんしょうである。膠にかわ原ばら病びょうでは混合こんごう性せい結合けつごう組織そしき病びょう、全ぜん身性みじょう強きょう皮かわ症しょうでは高率こうりつに認みとめられる。また全ぜん身性みじょうエリテマトーデスやシェーグレン症候群しょうこうぐん、皮膚ひふ筋炎きんえん、免疫めんえき介在かいざい性せい壊死えし性せい筋すじ症しょうでも認みとめることがある。基礎きそ疾患しっかんを認みとめない原発げんぱつ性せいレイノー病びょうとの鑑別かんべつを要ようする。左右さゆう非対称ひたいしょう性せいに出現しゅつげんし、爪つま郭かく毛細血管もうさいけっかん拡張かくちょう、壊死えしがみられ、抗こう核かく抗体こうたい陽性ようせいの場合ばあいは膠にかわ原ばら病びょうによるレイノー現象げんしょうを示唆しさする。膠にかわ原ばら病びょう以外いがいでは内分泌ないぶんぴつ疾患しっかん、血液けつえき疾患しっかん、動脈どうみゃく硬化こうか、胸郭きょうかく出口でぐち症候群しょうこうぐん、薬剤やくざいにより出現しゅつげんすることがある。

光線こうせん過敏かびん症しょう

強つよい光ひかりや紫外線しがいせんを浴あびた後のちに出現しゅつげんまたは悪化あっかする皮膚ひふ病変びょうへんの総称そうしょうを光線こうせん過敏かびん症しょうという。膠にかわ原ばら病びょうでは全身ぜんしん性せいエリテマトーデスや皮膚ひふ筋炎きんえん、シェーグレン症候群しょうこうぐんで出現しゅつげんする。鑑別かんべつとしては日光にっこう皮膚ひふ炎えん（日焼ひやけ）、多た形かたち日光にっこう疹、光線こうせん過敏かびん型がた薬やく疹、日光にっこう蕁麻疹じんましん、慢性まんせい光線こうせん性せい皮膚ひふ炎えん、晩ばん発はつ性せい皮膚ひふポルフィリン症しょうがあげられる。

顔面がんめん紅べに斑まだら

鼻はな根ね部ぶをまたぐ頬ほお部ぶ紅べに斑まだら（蝶ちょう形がた紅べに斑まだら）は全身ぜんしん性せいエリテマトーデスにおいて診断しんだん価値かちの高たかい所見しょけんである。全身ぜんしん性せいエリテマトーデスでも典型てんけい的てきな蝶ちょう形がた紅べに斑まだらを示しめさないことがある。また皮膚ひふ筋炎きんえんでも顔面がんめん紅べに斑まだらを示しめすことが多おおく、両者りょうしゃの鑑別かんべつが重要じゅうようである。皮膚ひふ筋炎きんえんと顔面がんめん紅べに斑まだらは鼻はな唇くちびる溝みぞを含ふくむ紅べに斑むらであることが多おおく、全身ぜんしん性せいエリテマトーデスでは鼻はな唇くちびる溝みぞを含ふくまない紅べに斑むらであることが多おおい。その他たの鑑別かんべつで重要じゅうようなのが酒さけ皶、脂あぶら漏も性せい皮膚ひふ炎えん、光線こうせん過敏かびん型がた薬やく疹、接触せっしょく性せい皮膚ひふ炎えん、アトピー性せい皮膚ひふ炎えん、伝染でんせん性せい紅べに斑まだら、丹毒たんどくがあげられる。

環状かんじょう紅べに斑まだら

辺あたり縁えんが隆起りゅうきした環状かんじょうの浸潤しんじゅん性せい紅べに斑まだらで全身ぜんしん性せいエリテマトーデス、シェーグレン症候群しょうこうぐんでは露光ろこう部ぶに好こう発はっする。抗こうSS-A抗体こうたいとの関連かんれん性せいが示唆しさされている。多た形かたち滲出しんしゅつ性せい紅べに斑むらや内臓ないぞう悪性あくせい腫瘍しゅよう、ライム病びょう、乾癬かんせんが鑑別かんべつとなる。

円えん板いた状じょう紅べに斑まだら

頭部とうぶ、顔面がんめん、耳みみ、全ぜん胸部きょうぶなど露光ろこう部ぶに好こう発はっする表皮ひょうひ変化へんか（鱗屑りんせつ、びらん）を伴ともなう病変びょうへんで円えん板いた状じょうエリテマトーデスとも称しょうされる。全身ぜんしん性せいエリテマトーデスでも認みとめるが皮膚ひふエリテマトーデスに多おおく認みとめられる。

眼瞼がんけんの浮腫ふしゅ性せい紅べに斑まだら

眼瞼がんけんに出現しゅつげんする浮腫ふしゅ性せい紅べに斑むらで、皮膚ひふ筋炎きんえんではヘリオトロープ疹という。白色はくしょく人種じんしゅでは紫むらさき紅色こうしょくを呈ていし、ヘリオトロープの花弁はなびらの色いろに類似るいじするが黄色おうしょく人種じんしゅでは赤褐色せきかっしょくを呈ていすることが多おおい。鑑別かんべつ診断しんだんとしてはアトピー性せい皮膚ひふ炎えん、多た形かたち日光にっこう疹、接触せっしょく性せい皮膚ひふ炎えん、薬剤やくざいアレルギー（点眼てんがん薬やくを含ふくむ）、脂あぶら漏も性せい皮膚ひふ炎えん、眼瞼がんけん炎えんなどがあげられる。

凍瘡とうそう様さま皮がわ疹

手指しゅし、足あし趾、鼻はな、耳みみに求もとめる凍瘡とうそう様さまの皮かわ疹である。冬季とうきに増悪ぞうあくするが春季しゅんきにも残存ざんそんするため凍瘡とうそうと区別くべつする。膠にかわ原ばら病びょうでは全身ぜんしん性せいエリテマトーデス、シェーグレン症候群しょうこうぐんで認みとめる。鑑別かんべつは凍瘡とうそうである。

爪つま床ゆか出血しゅっけつ

爪つま床ゆかに認みとめる黒色こくしょくの出血しゅっけつである。出血しゅっけつの多おおくは黒色こくしょく線条せんじょうを呈ていする。膠にかわ原ばら病びょうでは全ぜん身性みじょう強きょう皮かわ症しょう、全身ぜんしん性せいエリテマトーデス、抗こうリン脂質ししつ抗体こうたい症候群しょうこうぐん、皮膚ひふ筋炎きんえん、関節かんせつリウマチで認みとめることがある。レイノー現象げんしょうや肢し端はしチアノーゼを合併がっぺいする場合ばあいは膠にかわ原ばら病びょうの可能かのう性せいが高たかくなる。その他たの原因げんいんとしては外傷がいしょう、感染かんせん性せい心しん内ない膜まく炎えん、血液けつえき系けい悪性あくせい腫瘍しゅよう、ビタミンC欠乏症けつぼうしょう、経口けいこう避妊ひにん薬やくの内服ないふくによるものがある。

結節けっせつ性せい紅べに斑まだら

結節けっせつ性せい紅べに斑まだらは下腿かたい伸しん側がわに好こう発はっする有ゆう痛つう性せいの脂あぶら肪織炎えんである。膠にかわ原ばら病びょうおよび類縁るいえん疾患しっかんではベーチェット病びょう、サルコイドーシス、反応はんのう性せい関節かんせつ炎えん、全身ぜんしん性せいエリテマトーデス、炎症えんしょう性せい腸ちょう疾患しっかん、血管けっかん炎えんに認みとめることがある。その他たの原因げんいんとしては溶連菌ようれんきん感染かんせん症しょう、特発とくはつ性せい、結核けっかく、マイコプラズマ、膵炎などがある。

網状もうじょう皮がわ疹

酸素さんそ飽和ほうわ度どの低ひくい血液けつえきにより静脈じょうみゃくが拡張かくちょうすることによって生しょうじる。病態びょうたいとして低てい酸素さんそ血ち症しょう、動脈どうみゃく流入りゅうにゅうの低下ていか、静脈じょうみゃく流出りゅうしゅつの低下ていかが考かんがえられる。膠にかわ原ばら病びょうおよび類縁るいえん疾患しっかんでは抗こうリン脂質ししつ抗体こうたい症候群しょうこうぐん、クリオグロブリン血ち症しょう、全身ぜんしん性せい血管けっかん炎えん、全身ぜんしん性せいエリテマトーデス、皮膚ひふ筋炎きんえん、シェーグレン症候群しょうこうぐんなどで認みとめられる。その他たの原因げんいん疾患しっかんとしては真性しんせい多血たけつ症しょう、パルボウイルスB19感染かんせん症しょう、コレステロール塞ふさが栓せん、敗血症はいけつしょう性せい塞ふさが栓せん、カルシフィラキシスなどがある。

触さわ知性ちせい紫斑しはん

浸潤しんじゅんを触ふれる紫斑しはんで下腿かたいに好こう発はっする。小しょう血管けっかん炎えんであることが多おおく、膠にかわ原ばら病びょうおよび類縁るいえん疾患しっかんではIgA血管けっかん炎えん、蕁麻疹じんましん様さま血管けっかん炎えん、ANCA関連かんれん血管けっかん炎えん、膠にかわ原ばら病びょうによる二に次じ性せい血管けっかん炎えん（全身ぜんしん性せいエリテマトーデス、シェーグレン症候群しょうこうぐん、関節かんせつリウマチ）、ベーチェット病びょうで認みとめられる。その他たの原因げんいん疾患しっかんとしては感染かんせん性せい血管けっかん炎えん（感染かんせん性せい心しん内ない膜まく炎えん）、薬剤やくざい性せい血管けっかん炎えん、腫瘍しゅよう随伴ずいはん性せい血管けっかん炎えんで認みとめられる。

責任せきにん細胞さいぼうと治療ちりょう方針ほうしん

2012年ねん現在げんざいまでに有効ゆうこうな治療ちりょう法ほうは見みつかっておらず、現在げんざいの日本にっぽんの最新さいしん医療いりょう技術ぎじゅつをもってしても、完全かんぜんに治なおすことは不可能ふかのうだと言いわれている。ただ、ステロイドや免疫めんえき抑制よくせい剤ざい、消炎しょうえん鎮痛ちんつう剤ざいなどを使用しようすることにより炎症えんしょうがある程度ていど抑制よくせいされ、日常にちじょう生活せいかつに支障ししょうのない程度ていどにコントロールすることは可能かのうとなりつつある。最近さいきんでは漢方薬かんぽうやくなどを用もちいた治療ちりょう法ほうもあり、ステロイドだけでは制御せいぎょできない症状しょうじょうに対たいする追加ついか療法りょうほう、および別べつの手段しゅだんとして取とられる。 関節かんせつ症状しょうじょう、変形へんけいなどに対たいして整形せいけい外科げか的てき手術しゅじゅつが行おこなわれることがある。

いくつかの膠にかわ原ばら病びょうはどの免疫めんえき細胞さいぼうの異常いじょうが病態びょうたいの本質ほんしつか検討けんとうされており、特異とくい的てきな治療ちりょうによって大幅おおはばにマネジメントが変かわりつつある。例たとえば、SLEやシェーグレン症候群しょうこうぐんはB細胞さいぼうの異常いじょうと認識にんしきされており、B細胞さいぼうを特異とくい的てきに傷害しょうがいするリツキシマブによって治療ちりょうが可能かのうになりつつある。また一部いちぶの疾患しっかんでは免疫めんえきグロブリン静脈じょうみゃく注射ちゅうしゃ療法りょうほう (IVIg) 療法りょうほうが取とり入いれられている。欧米おうべいではすでに認みとめられていた、多発たはつ血管けっかん炎えん性せい肉芽にくが腫しゅ症しょうやSLEに対たいするシクロフォスファミド投与とうよも、公知こうち申請しんせいにより日本にっぽんでも認みとめられた。

責任せきにん細胞さいぼう	疾患しっかん
好こう酸さん球だま	好こう酸さん球だま性せい多発たはつ血管けっかん炎えん性せい肉芽にくが腫しゅ症しょう
CD8陽性ようせいT細胞さいぼう	多発たはつ性せい筋炎きんえん
CD4陽性ようせいT細胞さいぼう	皮膚ひふ筋炎きんえん
B細胞さいぼう	SLE、シェーグレン症候群しょうこうぐん
マクロファージ	多発たはつ血管けっかん炎えん性せい肉芽にくが腫しゅ症しょう
好こう中ちゅう球だま	MPA、ベーチェット病びょう
筋すじ線維せんい芽め細胞さいぼう	全身ぜんしん性せい硬化こうか症しょう

これはステロイドへの反応はんのう性せいにも関係かんけいしており、マクロファージ、好こう中ちゅう球だま、筋すじ線維せんい芽め細胞さいぼうを責任せきにん細胞さいぼうとする疾患しっかんはステロイドへの反応はんのう性せいも悪わるい。

参考さんこう文献ぶんけん

• 膠にかわ原ばら病びょう診療しんりょうノート ISBN 9784784953431
• Dr.岡田おかだの膠にかわ原ばら病びょう大だい原則げんそく (第だい1巻かん) ISBN 9784904357057
• 外来がいらいで診みるリウマチ・膠にかわ原ばら病びょうQ＆A ISBN 9784784964444

関連かんれん項目こうもく

• リウマチ学がく
• 自己じこ免疫めんえき疾患しっかん
• 膠にかわ原げん線維せんい
• セリアック病びょう

外部がいぶリンク

• 膠にかわ原ばら病びょうとは - 全国ぜんこく膠にかわ原ばら病びょう友ともの会かい
• 強つよ皮かわ症しょうをよりよく知しるために - ウェイバックマシン（2016年ねん4月がつ5日にちアーカイブ分ぶん） - 強つよし皮かわ症しょう研究けんきゅう会議かいぎ -SSc-
• 膠にかわ原ばら病びょうの基本きほん的てきな情報じょうほうや専門医せんもんいについて知しりたい。 - レファレンス協同きょうどうデータベース
• 膠にかわ原ばら病びょうやリューマチの本ほんはあるか？ - レファレンス協同きょうどうデータベース