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皮膚ひふ

出典しゅってん: フリー百科ひゃっか事典じてん『ウィキペディア(Wikipedia)』
ヒトの皮膚ひふ表面ひょうめんからたところ
サイ皮膚ひふ

皮膚ひふ(ひふ)は、動物どうぶつ器官きかんのひとつで、からだ表面ひょうめんをおおっているそうのこと[1]からだ内外ないがい区切くぎり、そのさかいをなす構造こうぞうである。皮膚ひふもうつめ羽毛うもううろこなど、それに付随ふずいする構造こうぞう器官きかん[1]とをあわせて、外皮がいひけいという器官きかんけいとしてまとめてあつか場合ばあいがある。また、動物どうぶつしゅによっては、皮膚ひふ感覚かんかくつたえる感覚かんかくはたらきもっている場合ばあいがある。ヒト皮膚ひふはだ(はだ)ともばれる。

高等こうとう脊椎動物せきついどうぶつでは上皮じょうひせい表皮ひょうひ、そのしたにある結合けつごう組織そしきけい真皮しんぴから構成こうせいされ、さらに皮下ひか組織そしきそしておおくの場合ばあいには脂肪しぼう組織そしきへとつながってゆく[1]

ヒトの皮膚ひふは、上皮じょうひ部分ぶぶんでは細胞さいぼう分裂ぶんれつからかくし、あかとなってがれちるまでやく4週間しゅうかんかかる[2]

ヒトの皮膚ひふ

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構造こうぞう

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ヒトの皮膚ひふ構造こうぞう

ヒト皮膚ひふ体重たいじゅうの6.3〜6.9%を[1]やく9kg、面積めんせきやく1.6m2であり、身体しんたいなかもっとおおきい器官きかんである[2]表皮ひょうひは0.06-0.2mm[3]真皮しんぴは2.0〜2.2mmだが、てのひらあしうらなど場所ばしょによってことなる[4]重量じゅうりょうやく3kg[4]。9kg?3kg?

組成そせい水分すいぶんやく57.7%、タンパク質たんぱくしつやく27.3%、脂質ししつやく14.2%、灰分かいぶんやく0.6%である[1]口唇こうしん鼻孔びこうまぶたそと陰部いんぶ肛門こうもんでは表皮ひょうひ粘膜ねんまくへと移行いこうする[1]皮膚ひふにはさまざまな付属ふぞくがあり、もうつめ皮膚ひふせん汗腺かんせん皮脂ひしせんなど)がある[1]

表皮ひょうひ

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そと胚葉はいよう由来ゆらい胎生たいせい2〜3週間しゅうかん基本きほんてき構造こうぞう形成けいせいされる[5]表皮ひょうひおもケラチノサイトという細胞さいぼう形成けいせいされている[3]もっと上側うわがわにある表皮ひょうひには、真皮しんぴ接触せっしょく細胞さいぼう分裂ぶんれつさかんにこす[6]1そう基底きてい細胞さいぼうがあり、そこからしょうじる表皮ひょうひ細胞さいぼう基底きていがわからゆうとげ細胞さいぼうゆうとげそう)・顆粒かりゅう細胞さいぼう顆粒かりゅうそう)・あわあきらそう角質かくしつ細胞さいぼう角質かくしつそう)へと変化へんかしながら外側そとがわうご[7][6]上皮じょうひでは不溶性ふようせい[6]繊維せんいじょうタンパク質たんぱくしつ一種いっしゅケラチン生成せいせいして保護ほご機能きのうたせ、また同様どうよう生成せいせいされたメラニン紫外線しがいせんから皮膚ひふ防御ぼうぎょし、エルゴステロール紫外線しがいせんによってビタミンD変化へんかする[1]。そしてやく4週間しゅうかん程度ていど[6]表皮ひょうひ細胞さいぼう表面ひょうめんあつさ10〜20 μみゅーm、あしうらなどではmm単位たんい角質かくしつかくそう)となり、プログラムされた細胞さいぼうむかえて生命せいめい反応はんのう[8]、やがて剥離はくりする[3]。これらの細胞さいぼうはいずれも扁平へんぺい形状けいじょうをしている[7]

角質かくしつ部分ぶぶんは、活動かつどうめた細胞さいぼう脂質ししつかこんでおり、モルタルをはさんでレンガがまれたような構造こうぞうっている。この脂質ししつセラミドコレステロール遊離ゆうり脂肪酸しぼうさん特定とくてい比率ひりつ層状そうじょうかさなっている[8]。これらの脂質ししつはケラチノサイト細胞さいぼう角膜かくまく下部かぶ到達とうたつするとその内部ないぶでラメラ顆粒かりゅうそうばん顆粒かりゅうばれるふくろをつくり、そのなかまれる。細胞さいぼう角質かくしつとなってぬと、ふくろから脂質ししつされて細胞さいぼうあいだひろがってそうをつくる[8]。このそうはいんだじょう細胞さいぼうにはメラノサイトがあり、胎生たいせい3〜6かげつころ神経しんけいつつみからしょうじて進入しんにゅうし、色素しきそけい形成けいせいする。そのじょう細胞さいぼうにはランゲルハンス細胞さいぼうメルケル細胞さいぼうひとしがある[7]

皮膚ひふ表面ひょうめんにはかわみぞ (sulcus cutis) とばれるみぞがあり、あさかわみぞかこまれるこまかな隆起りゅうきかわおか (crista cutis)、ふとかわみぞかこまれる複数ふくすうかわおかふく領域りょういきかわ (area cutanea) とぶ。ふとかわみぞ交点こうてんえ、汗腺かんせんかわ開口かいこうする。ゆびはらてのひらあしそこなどではかわみぞ平行へいこうして走行そうこうしており、かわみぞあいだ形成けいせいされる稜線りょうせん指紋しもん掌紋しょうもんあしもんである[9]

真皮しんぴ

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表皮ひょうひ下層かそうにある真皮しんぴちゅう胚葉はいよう由来ゆらいであり[5]表皮ひょうひとの接触せっしょくめんである凸凹でこぼこした乳頭にゅうとうそう真皮しんぴ乳頭にゅうとう[10])と、そのした網状もうじょうそうけられる。網状もうじょうそう皮下ひか組織そしき明瞭めいりょう境界きょうかいたず、みつコラーゲン繊維せんい結合けつごうたいなか弾性だんせい繊維せんい網状もうじょう分布ぶんぷ[11]皮膚ひふ本体ほんたい強靭きょうじんさをあたえる[2]動物どうぶつ皮革ひかく繊維せんいはこのコラーゲン繊維せんい部分ぶぶん防腐ぼうふ処理しょり柔軟じゅうなんほどこしたものである[3]。コラーゲンの種類しゅるいは、成人せいじん場合ばあいIがたがIIIがたの3ばい程度ていどあるが、15しゅう前後ぜんこう新生児しんせいじでは、IIIがたほうおお[1]。また、水分すいぶん維持いじする糖類とうるい一種いっしゅヒアルロンさんふくまれる[12]

真皮しんぴ部分ぶぶんには、にコラーゲン繊維せんいをつくる繊維せんい細胞さいぼうや、免疫めんえき機能きのう炎症えんしょうなどに関係かんけいする肥満ひまん細胞さいぼう(マスト細胞さいぼう)がある[3]。また、神経しんけい表皮ひょうひまで到達とうたつするが毛細血管もうさいけっかんびは真皮しんぴないまでにまる[3]真皮しんぴにはあせ分泌ぶんぴつするエクリンせんアポクリンせんがある。どちらも球状きゅうじょうからまった管状かんじょう構造こうぞうがありいちはし表皮ひょうひばすが、前者ぜんしゃ直接ちょくせつ表皮ひょうひに、後者こうしゃ毛穴けあな側面そくめんつながる[13]。ヒトの場合ばあいエクリンせん全身ぜんしんに200〜500まんほどあり、1cm2換算かんさんすると300以上いじょうがあり、とくがくてのひらおよびあしうらおお[13]。ただしおおくの動物どうぶつはアポクリンせんかずほうおおく、またヒトのように汗腺かんせん全身ぜんしんにあるのは霊長れいちょうるい以外いがいにはられない[13]

皮下ひか組織そしき

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皮膚ひふすじまくなど下部かぶ組織そしきつな部分ぶぶん皮下ひか組織そしきばれ、真皮しんぴ比較ひかくすると繊維せんい密度みつどひく結合けつごう組織そしきでつくられている。このそうには皮下脂肪ひかしぼうばれる脂肪しぼう組織そしきおおふくまれており、栄養えいよう貯蔵ちょぞうからだ保温ほおんをする機能きのう[14]

特徴とくちょうてき部分ぶぶん

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指紋しもん

指紋しもん皮膚ひふもんという表皮ひょうひあらわれるせんじょう凹凸おうとつがつくる模様もよう一種いっしゅであり、すべめの機能きのうつ。この模様もよう真皮しんぴ由来ゆらいし、表皮ひょうひとの境界きょうかいにある真皮しんぴ乳頭にゅうとうという2れつ突起とっきならびがとつ部分ぶぶんになる。そのため、指紋しもん成長せいちょうとともにおおきくなったり、よわいとともにパターンの明瞭めいりょうさがうしなわれたりするが、模様もようそのものは変化へんかしない[10]

皮膚ひふもん霊長れいちょうるい手足てあしにあり、クモザルオマキザルのように器用きよう使つかたねでは内側うちがわ場合ばあいもある[10]。またコアラのような樹木じゅもくのぼ動物どうぶつゆびにも指紋しもんがある[10]ウシはなにも皮膚ひふもんはなもん)があり、ヒトの個人こじん識別しきべつ同様どうよう個体こたい管理かんりもちいられる[10]

しわ

皮膚ひふ老化ろうかしょうじるしわ(しわ)は、真皮しんぴ弾力だんりょくせいうしなわれてしょうじる。具体ぐたいてきには弾性だんせいもとになる真皮しんぴのコラーゲンや弾力だんりょく繊維せんいまたはヒアルロンさん減少げんしょうすることが原因げんいんである。要因よういんおもよわい紫外線しがいせんがあり、前者ぜんしゃとしとともに弾性だんせいもとになる物質ぶっしつ酵素こうそはたらきが低下ていかすることが影響えいきょうし、後者こうしゃひかり老化ろうかばれとく長波ちょうはちょう紫外線しがいせん活性かっせい酸素さんそ発生はっせいさせ「マトリックス・メタロ・プロテアーゼ (MMPs)」というコラーゲンや弾性だんせい繊維せんい切断せつだんする酵素こうそしょうじさせる影響えいきょうがある[12]紫外線しがいせん表皮ひょうひにも作用さようし、短波たんぱちょうサイトカインという物質ぶっしつしょうじさせ、これが真皮しんぴでMMPs生成せいせいうながことしわ発生はっせいかかわる[12]赤外線せきがいせん長波ちょうはちょうのIR-Aは活性かっせい酸素さんそ発生はっせいつうじてMMPs生成せいせいうながし、しわ要因よういんになる[12]

機能きのう

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動物どうぶつ種類しゅるいによって、皮膚ひふ構造こうぞう役割やくわり非常ひじょう多様たようせいんでいる。様々さまざま動物どうぶつっている皮膚ひふおも機能きのう以下いかげる。

感知かんち

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皮膚ひふ触覚しょっかく感覚かんかくであり、外部がいぶからの刺激しげきつたえる役割やくわり[1]感覚かんかく器官きかんとしては、表皮ひょうひもと底部ていぶにあり部分ぶぶんてき圧力あつりょく検知けんちするメルケルばん英語えいごばん真皮しんぴ上方かみがたにあり正保しょうほうつつ神経しんけい終末しゅうまつ触覚しょっかく刺激しげきマルスネス小体こてい真皮しんぴ下層かそうしょう胞内にある神経しんけいまつはしりなど皮膚ひふ変形へんけい感知かんちするルフィニ終末しゅうまつ真皮しんぴ下層かそう皮下ひか組織そしきにありたか感度かんど最初さいしょ接触せっしょくかんじるパチニ小体こていがある[15]

また、ケラチノサイト細胞さいぼうまくには刺激しげきけるとATPむすびついてイオンチャネルをはたらかせて内部ないぶにカルシウムやナトリウムイオンを透過とうかさせ、電気でんき信号しんごう発生はっせいさせる物質ぶっしつがある。内臓ないぞう上皮じょうひ細胞さいぼうられるこれら物質ぶっしつのうち、P2X3という受容じゅようたい表皮ひょうひ細胞さいぼうでもつくられ、接触せっしょく感知かんち関与かんよする。 [16]

高等こうとう動物どうぶつ皮膚ひふには、感覚かんかくせい神経しんけい終末しゅうまつたっしており、皮膚ひふ感覚かんかくばれる感覚かんかく感覚かんかくとしてもはたらいている。真皮しんぴ神経しんけい線維せんいのうちゆうずい繊維せんいのAδでるた繊維せんいが、刃物はものられたさいなどの痛覚つうかくかんり、侵害しんがい受容じゅようばれる。絶縁ぜつえんたいさや構造こうぞうつAδでるた繊維せんいきずつくと電気でんき信号しんごうはっし、神経しんけい非常ひじょうはや速度そくどつたわり痛覚つうかく認識にんしきされる[15]動物どうぶつ種類しゅるい部位ぶいによってこれらの感覚かんかく発達はったつ程度ていどことなる。

また皮膚ひふ免疫めんえき機能きのうへも関与かんよする。たとえば白血球はっけっきゅうなどで合成ごうせいされる免疫めんえき機能きのう情報じょうほう伝達でんたつつかさどタンパク質たんぱくしつサイトカインは、紫外線しがいせん照射しょうしゃ角膜かくまく剥離はくりによってケラチノサイトでも合成ごうせい分泌ぶんぴつされる[17]。また表皮ひょうひちゅうにはランゲルハンス細胞さいぼうというじょう細胞さいぼう散在さんざいし、細菌さいきんなど異物いぶつ皮膚ひふない侵入しんにゅうすると感知かんちし、免疫めんえきけい情報じょうほう伝達でんたつする[18]。そのほか、ケラチノサイトは神経しんけい伝達でんたつ物質ぶっしつカテコールアミンるいβべーた-エンドルフィンなども合成ごうせい分解ぶんかいする。これらが役割やくわりははっきりしないが、皮膚ひふないでの情報じょうほう伝達でんたつになうというかんがえもある[19]

境界きょうかい形成けいせい保護ほご

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ほぼすべての動物どうぶつ皮膚ひふ共通きょうつうなのは、からだつつみ、からだかたち維持いじしていることである。細胞さいぼう敷石しきいしじょうならんでおたがいがしっかりとつながりあったり、細胞さいぼうがいマトリックスやからだひょうへの分泌ぶんぴつぶつなどのはたらきで、からだ内側うちがわ構造こうぞうそとさないような境界きょうかいをつくっている。さらに、よりあつ発達はったつした皮膚ひふ動物どうぶつでは、皮膚ひふからだ保護ほごし、陸上りくじょう生物せいぶつでは乾燥かんそうからまもるという役割やくわりたす[1]からだ外側そとがわから皮膚ひふちからくわわっても皮膚ひふでそれをがえしたりできる。また、皮膚ひふだけでなく、それに付随ふずいする構造こうぞうがこの機能きのうおおきく役立やくだっている場合ばあいもある。頭髪とうはつ体毛たいもうなどのもう鳥類ちょうるい羽毛うもう爬虫類はちゅうるい魚類ぎょるいうろこ節足動物せっそくどうぶつそと骨格こっかくなどは皮膚ひふ一部いちぶ変化へんかしてできたものであり、さらに皮膚ひふ強度きょうどくわえている。

境界きょうかい形成けいせい保護ほごおもにな部分ぶぶん表皮ひょうひ角質かくしつである[8]。しかしこの角質かくしつセロテープ皮膚ひふってがせば簡単かんたん剥離はくりするが、すぐしたのケラチノサイトが脂質ししつ放出ほうしゅつして再生さいせい加速かそくされ、1にちで80%程度ていど回復かいふくする[20]。また、かえ圧迫あっぱくされるとたこのように局所きょくしょてきあつくなることがられる[20]空気くうき乾燥かんそうした状態じょうたいに1週間しゅうかん程度ていどかれると、表皮ひょうひ角質かくしつあつみをこと実験じっけんたしかめられている[20]。その一方いっぽうで、角質かくしつ剥離はくりさせた箇所かしょプラスチックフィルムなどみずとおさない障害しょうがいぶつると修復しゅうふくおこなわれないが、ゴアテックスではっても角質かくしつ修復しゅうふくされる[20]。このように皮膚ひふ環境かんきょう対応たいおうするが、これは神経しんけいけい循環じゅんかんけいから独立どくりつした自己じこ適応てきおう能力のうりょくと、保護ほご機能きのうはたら状態じょうたいをモニターする能力のうりょくを、どちらも自立じりつてきそなえていることをしめ[20]

これらの自己じこ修復しゅうふく能力のうりょくは、皮膚ひふ表面ひょうめん電荷でんか影響えいきょうするというせつがある。あせによって電気でんき抵抗ていこう変化へんかすることはふるくからられ、その原理げんりうそ発見はっけん応用おうようされた。しかし近年きんねんくちびるなど汗腺かんせんがない箇所かしょマウスでもマイナスの電位差でんいさがあることがあきらかになった[21]。この電荷でんかは、アジナトリウムでケラチノサイトの呼吸こきゅうめたり、イオンチャネルめる薬剤やくざい浸漬しんせきすると即座そくざになくなる[21]皮膚ひふ電荷でんかは、角質かくしつのすぐカリウムカルシウムイオン偏在へんざいすることがしょうじ、この電荷でんか変動へんどうをケラチノサイトが感知かんちすることによって修復しゅうふくはたらくとかんがえられる[22]ぎゃくそとから電荷でんか皮膚ひふにかけると、マイナスの電荷でんかでは再生さいせいはやまり、プラスだとおくれることが実験じっけん確認かくにんされた[22]

物質ぶっしつ透過とうか

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皮膚ひふ物質ぶっしつ排泄はいせつする役割やくわり[1]動物どうぶつによってとくおおきくことなっている機能きのうは、皮膚ひふ物質ぶっしつ透過とうかせいである。ほとんどの陸上りくじょう動物どうぶつは、体内たいない水分すいぶん体外たいがいうばわれないよう、皮膚ひふ水分すいぶんとおさないようになっている。これはその動物どうぶつがどのぐらい乾燥かんそうした環境かんきょう適応てきおうできるか、ということと密接みっせつ関連かんれんしている。それにたいし、水中すいちゅう生活せいかつする動物どうぶつ場合ばあいはもうすこ複雑ふくざつである。海中かいちゅう生活せいかつする動物どうぶつ場合ばあい海綿かいめんクラゲなどの比較的ひかくてき単純たんじゅん動物どうぶつであれば、体内たいない細胞さいぼうがいにある液体えきたい体液たいえき)は海水かいすいとその成分せいぶんおなじであるため、皮膚ひふ海水かいすい体内たいないはいるのを遮断しゃだんする必要ひつようがない。こういう動物どうぶつは、ぎゃくに、皮膚ひふとおして酸素さんそふくんだあたらしい海水かいすいれたり、老廃ろうはいぶつふくんだ体液たいえき排出はいしゅつすることも可能かのうである。しかし、海産かいさんぎょなど、より複雑ふくざつ構造こうぞう動物どうぶつになると、体液たいえき濃度のうど海水かいすいそのものよりもうすいため、この場合ばあいには皮膚ひふとおして海水かいすい浸入しんにゅうしないように、同時どうじに、浸透しんとうあつ関係かんけいで、体内たいない水分すいぶんがよりたかしお濃度のうど海水かいすいうばわれないように、水分すいぶんをできるだけとおさない構造こうぞうになっている。ぎゃくに、淡水たんすい生活せいかつする動物どうぶつでは、体内たいない塩分えんぶん重要じゅうようであり、これが体外たいがいうばわれないようになっている。淡水魚たんすいぎょ両生類りょうせいるいもこれにぞくする。
また、水分すいぶん透過とうかせいのある皮膚ひふではそれにんだ空気くうき一緒いっしょ透過とうかさせることも可能かのうである。海中かいちゅう脊椎動物せきついどうぶつなどのほか、一部いちぶ両生類りょうせいるいなどでも発達はったつしており、皮膚ひふ呼吸こきゅうばれる。

ねつ交換こうかん

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皮膚ひふ外界がいかい体内たいないとのねつエネルギーのやりりをする場所ばしょでもある[1]とくに、恒温動物こうおんどうぶつ皮膚ひふでは、一定いってい体温たいおん維持いじするために重要じゅうよう役割やくわりになっている。たとえば、体温たいおん上昇じょうしょうしかけると、皮膚ひふはし血管けっかん血液けつえきがよりおおはこばれるように調節ちょうせつし、体外たいがいへよりおおくのねつ排出はいしゅつするようにし、ぎゃく体温たいおんがりかけると、血管けっかんちぢみ、体外たいがい血液けつえきねつうばわれるのをおさえる。また、汗腺かんせんからあせ分泌ぶんぴつし、あせ蒸発じょうはつ気化きかねつ利用りようして体温たいおんげるはたらきもある[13]。ヒトの場合ばあい全身ぜんしんにあるエクリンせんから分泌ぶんぴつされるあせがそのやくたすが、ウマなどはアポクリンせんからのあせ体温たいおん調整ちょうせいおこな[13]イヌあせをあまりかかず体温たいおん調整ちょうせいパンティング英語えいごばんあさそく呼吸こきゅう)をおも使つかい、ゾウはそのおおきなみみからの放射ほうしゃねつ利用りようする[13]

刺激しげき受容じゅよう

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おも刺激しげき感覚かんかくには、温度おんど変化へんか化学かがく物質ぶっしつとの接触せっしょくなどがある。ねつさんなどの刺激しげきせい化学かがく物質ぶっしつとの接触せっしょくなどは、真皮しんぴ神経しんけい線維せんいのうちずい繊維せんい(C繊維せんい)に因子いんし接触せっしょくすること感知かんちされる。この部分ぶぶん温度おんど化学かがく刺激しげき以外いがいにも接触せっしょく感知かんちする多能たのうせいつため、ポリモーダル侵害しんがい受容じゅよう繊維せんいばれる[15]

表皮ひょうひにもねつ化学かがく刺激しげき感知かんちする能力のうりょくがある。ケラチノサイト細胞さいぼうのイオンチャネルをはたらかせる受容じゅようたいいちしゅTRPVIは、実験じっけんから43℃以上いじょう温度おんどpH6.6以下いか酸性さんせいトウガラシふくまれる辛味からみ成分せいぶんカプサイシンへの反応はんのう確認かくにんされ、ぎゃく遺伝子いでんし操作そうさでTRPVI受容じゅようたいたないマウスにこれら因子いんしへの反応はんのうられないことが確認かくにんされた[23]。このほかにも、温度おんど52℃以上いじょうはたらくTRPV2受容じゅようたい、32〜39℃ではたらくTRPV3受容じゅようたい、27〜35℃ではたらくほかにも浸透しんとうあつ機械きかい刺激しげきにも反応はんのうするTRPV4受容じゅようたい、25〜28℃ではたらメントールなどの爽快そうかいさをかんるTRPV8受容じゅようたい、17℃未満みまんはたらくTRPA1受容じゅようたいがケラチノサイトでそれぞれつかっている[23]

このほか、皮膚ひふひかり感知かんちすることは視覚しかく障害しょうがいしゃ生理せいり変化へんか実験じっけんからたしかめられ、がいリズム調整ちょうせいひざうらひかりてる治療ちりょう効果こうか報告ほうこくされている。ただし、このメカニズムははっきりかっていない[24]

ビタミンDのなま合成ごうせい

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皮膚ひふ紫外線しがいせんけてビタミンDなま合成ごうせいする。ほね形成けいせい不可欠ふかけつなビタミンDをるため、かつて乳児にゅうじには日光浴にっこうよくをさせるべきと母子ぼし手帳てちょうなどにもかれていたが、現在げんざい削除さくじょされている[19]。これは、通常つうじょう生活せいかつなま合成ごうせい充分じゅうぶんひかりけられることや、かえって紫外線しがいせんあたえる悪影響あくえいきょう問題もんだいになるためである[19]。しかし、日本にっぽんにおいてはビタミンD不足ふそくによるくるびょう増加ぞうか指摘してきされている[25]

皮膚ひふ器官きかん

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皮膚ひふ移植いしょく人工じんこう皮膚ひふ

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上述じょうじゅつのように、皮膚ひふ非常ひじょう繊細せんさいかつ複雑ふくざつ組織そしきで、かつ自己じこ以外いがい異物いぶつ排除はいじょする免疫めんえきはたらきによって、基本きほんてき自己じこ自身じしん由来ゆらい皮膚ひふしかなまちゃくしない。熱傷ねっしょう放射線ほうしゃせん被曝ひばく皮膚ひふさんせい機能きのううしなわれるといのちとすこともある[注釈ちゅうしゃく 1]

だい規模きぼ皮膚ひふ移植いしょくは、移植いしょくようにヒトの皮膚ひふ大量たいりょう確保かくほしなければならないという難題なんだいともなう。ヒトにちか機能きのうった動物どうぶつ皮膚ひふ植皮しょくひ研究けんきゅうされているが、まだ本格ほんかくてき実用じつよういたっていない。

人工じんこう皮膚ひふ」も研究けんきゅう製造せいぞうされている。移植いしょく医療いりょうようとしては、患部かんぶから一時いちじてきからだひょうおお代替だいたいとして使用しようし、うしなわれた皮下ひか組織そしき皮膚ひふ再建さいけんたなければならない。このほか、真皮しんぴまでふくめたヒトの皮膚ひふちか構造こうぞうち、医薬品いやくひん化粧けしょうひんなどによるヒトの皮膚ひふたいする作用さよう調しらべるための人工じんこう皮膚ひふ開発かいはつされている[27]

動物どうぶつ皮膚ひふ

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魚類ぎょるい両生類りょうせいるい

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汗腺かんせん皮脂ひしせん哺乳類ほにゅうるい特有とくゆうのものだが、脊椎動物せきついどうぶつからも皮膚ひふせんつかっている。魚類ぎょるいおおくは皮膚ひふ粘液ねんえき分泌ぶんぴつする細胞さいぼうがあり、保温ほおん保護ほご役目やくめたしている。なかにはどく分泌ぶんぴつするせん発光はっこうや、よりみずっぽい漿液しょうえき分泌ぶんぴつする細胞さいぼう種類しゅるいもいる。両生類りょうせいるいには粘液ねんえき分泌ぶんぴつする細胞さいぼうあつまって嚢のようなせん形成けいせいしている。また、ほとんどの両生類りょうせいるいには皮膚ひふ粒状りゅうじょうせんち、刺激しげきせいまたは毒性どくせい化合かごうぶつ分泌ぶんぴつする[28]

魚類ぎょるい両生類りょうせいるい爬虫類はちゅうるい皮膚ひふからもメラニンは発見はっけんされているが、表皮ひょうひ比較的ひかくてき無色むしょくのものがおおい。実際じっさいえているからだいろ真皮しんぴ色素しきそのものである場合ばあいおおく、メラニン以外いがいにもグアニンカロテノイド色素しきそふくまれていることもある。カメレオンヒラメなどおおくのたねが、この色素しきそ胞のおおきさをえてカモフラージュをする[28]

鳥類ちょうるい爬虫類はちゅうるい

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鳥類ちょうるい爬虫類はちゅうるい表皮ひょうひ哺乳類ほにゅうるいちかく、角質かくしつしケラチンでたされた細胞さいぼう水分すいぶん蒸散じょうさんふせいでいる。これはヒキガエルのような両生類りょうせいるい一部いちぶにもられる。しかし、これらの動物どうぶつ表皮ひょうひから真皮しんぴいた細胞さいぼう分化ぶんかがヒトのような明瞭めいりょうさがなく、あいまいである。哺乳類ほにゅうるい表皮ひょうひにはすくなくとも一層いっそう基底きていそう角質かくしつそうがあるが、ヒトがつようななかあいだそうあきらかな区別くべつはつけられない。かみ哺乳類ほにゅうるい表皮ひょうひ特有とくゆうのものであり、羽毛うもうすくなくとも現在げんざいまで絶滅ぜつめつしていないたねかぎれば鳥類ちょうるい特有とくゆうのものである[28]

鳥類ちょうるい爬虫類はちゅうるい比較的ひかくてきわずかな皮膚ひふせんしかたず、爬虫類はちゅうるいフェロモン分泌ぶんぴつ細胞さいぼうやほとんどの鳥類ちょうるいあぶらせんのように、まった機能きのうとくしているとかんがえられる[28]

脚注きゃくちゅう

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注釈ちゅうしゃく

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  1. ^ 東海とうかいむらでの放射線ほうしゃせん被曝ひばく事故じこでは被害ひがいしゃ即死そくしにはいたらなかったが、臓器ぞうき不全ふぜんくわえほぼ全身ぜんしん皮膚ひふさんせい機能きのう喪失そうしつ長期ちょうきにわたり患者かんじゃくるしめた[26]

出典しゅってん

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  1. ^ a b c d e f g h i j k l m 生化学せいかがく辞典じてんだい2はん、p.1068 【皮膚ひふ
  2. ^ a b c 解剖かいぼうがくだい2はん、p.26-31、外皮がいひ構造こうぞう皮膚ひふ
  3. ^ a b c d e f 傳田でんだ(2005)、p.6-8、にれ1.皮膚ひふもっとおおきな臓器ぞうきそと臓」である 皮膚ひふ階層かいそう構造こうぞう
  4. ^ a b 傳田でんだ(2005)、p.5-6、1.皮膚ひふもっとおおきな臓器ぞうきそと臓」である
  5. ^ a b 傳田でんだ(2005)、p.41-42、4.皮膚ひふはセンサーである
  6. ^ a b c d 佐藤さとう佐伯さえき(2009)、p172-173、だい9しょう 皮膚ひふまく 1.皮膚ひふ構造こうぞう (1)表皮ひょうひ
  7. ^ a b c 生化学せいかがく辞典じてんだい2はん、p.1075 【上皮じょうひ
  8. ^ a b c d 傳田でんだ(2005)、p.8-11、1.皮膚ひふもっとおおきな臓器ぞうきそと臓」である 皮膚ひふのバリアはプラスチック
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  11. ^ 生化学せいかがく辞典じてんだい2はん、p.677 【真皮しんぴ
  12. ^ a b c d 編集へんしゅうちょう 水谷みずたにひとし「【しわ】なぜできる?予防よぼうほう改善かいぜんほうは?」『ニュートン2013ねん2がつごう雑誌ざっし07047-02』、ニュートンプレス、2013ねん、112-113ぺーじ 
  13. ^ a b c d e f 編集へんしゅうちょう 水谷みずたにひとし意外いがいらない「あせ」のこと」『ニュートン2012ねん8がつごう雑誌ざっし07047-08』、ニュートンプレス、2012ねん、102-107ぺーじ 
  14. ^ 佐藤さとう佐伯さえき(2009)、p173、だい9しょう 皮膚ひふまく 1.皮膚ひふ構造こうぞう (3)皮下ひか組織そしき
  15. ^ a b c 傳田でんだ(2005)、p.42-44、4.皮膚ひふはセンサーである 外部がいぶ刺激しげきのセンサーとしての皮膚ひふ
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  17. ^ 傳田でんだ(2005)、p.33-34、3.情報じょうほう伝達でんたつ物質ぶっしつ皮膚ひふ
  18. ^ 傳田でんだ(2005)、p.34-37、3.情報じょうほう伝達でんたつ物質ぶっしつ皮膚ひふ 皮膚ひふ免疫めんえきをつかさどる臓器ぞうきである
  19. ^ a b c 傳田でんだ(2005)、p.38-40、3.情報じょうほう伝達でんたつ物質ぶっしつ皮膚ひふ 皮膚ひふ内分泌ないぶんぴつけいおよぼす影響えいきょう
  20. ^ a b c d e 傳田でんだ(2005)、p.11-14、1.皮膚ひふもっとおおきな臓器ぞうきそと臓」である つねにおのれをっている皮膚ひふ
  21. ^ a b 傳田でんだ(2005)、p.15-19、2.電気でんき仕掛しかけの皮膚ひふ機能きのう 皮膚ひふ電池でんちになっている
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  23. ^ a b 傳田でんだ(2005)、p.45-48、4.皮膚ひふはセンサーである 神経しんけいよりさき表皮ひょうひかんじる
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参考さんこう文献ぶんけん

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  • 生化学せいかがく辞典じてんだい2はん』(だい2はんだい6さつ東京とうきょう化学かがく同人どうじん、1995ねんISBN 4-8079-0340-3 
  • 河野こうの邦雄くにお伊藤いとう隆造りゅうぞう坂本さかもと裕和ひろかず前島まえじまとおる樋口ひぐちかつら ちょ財団ざいだん法人ほうじん 東洋とうよう療法りょうほう学校がっこう協会きょうかい へん解剖かいぼうがくだい2はん』(だい2はんだい1さつ医歯薬出版いしやくしゅっぱん、2006ねんISBN 4-263-24207-6 
  • 監修かんしゅう佐藤さとう昭夫あきお佐伯さえき由香ゆか人体じんたい構造こうぞう機能きのう だい2はん』(だい2はんだい6さつ医歯薬出版いしやくしゅっぱん、2009ねんISBN 978-4-263-23434-1 
  • 傳田でんだ光洋みつひろ皮膚ひふかんがえる』(だい1はんだい2さつ岩波書店いわなみしょてん岩波いわなみ 科学かがくライブラリー112〉、2006ねんISBN 4-00-007452-0 
  • 標準ひょうじゅん皮膚ひふ科学かがく』(8はん医学書院いがくしょいん、2007ねんISBN 978-4-260-00311-7 

関連かんれん項目こうもく

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外部がいぶリンク

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