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メラニン

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メラニン
識別しきべつ情報じょうほう
KEGG C05606
C17937 (Eumelanin)
C17936 (Pheomelanin)
特記とっきなき場合ばあい、データは常温じょうおん (25 °C)・つねあつ (100 kPa) におけるものである。
メラニン色素しきそひとつユーメラニンの構造こうぞうしき一部いちぶ。(COOH)は-COOHまた-H、まれ置換ちかんもと矢印やじるしさきにはポリマー構造こうぞうつづいている。
メラニン色素しきそひとつフェオメラニンの構造こうぞうしき一部いちぶ

メラニン (melanin) は、ヒトふく動物どうぶつ植物しょくぶつ原生動物げんせいどうぶつ、また一部いちぶ菌類きんるい真正しんしょう細菌さいきんにおいて形成けいせいされる色素しきそである。メラニン色素しきそともいう。

概要がいよう[編集へんしゅう]

メラニンは、黒褐色こっかっしょく真性しんせいメラニン(eumelanin、ユーメラニン)と、だいだい赤色あかいろメラニンドイツばん(Pheomelanin、フェオメラニン)の2種類しゅるいけられる[1][2]脊椎動物せきついどうぶつでは、大半たいはん皮膚ひふ表皮ひょうひ最下さいかそう基底きていそう毛髪もうはつははなどにあるメラノサイト色素しきそ細胞さいぼう)で生成せいせいされ、一部いちぶ網膜もうまく色素しきそ上皮じょうひ英語えいごばん細胞さいぼう生成せいせいされる。

メラノサイトが増殖ぞうしょくしておおあつまっている部分ぶぶんほくろで、ほくろにはメラニンがおおいためくろくなる。

メラノサイトはメラニンを生成せいせいする機能きのうがあるのみで、メラニンを貯蔵ちょぞうする細胞さいぼうではない。メラニンは蛋白質たんぱくしつかた結合けつごうしており、微細びさい顆粒かりゅうじょうをしているが、その生成せいせい過程かてい複雑ふくざつである。名前なまえから、メイラード反応はんのうによるものと間違まちがえられやすいが、メラニンの生成せいせいはメイラード反応はんのうによるものではない。

メラニンのルーツは、アミノ酸あみのさんひとつであるチロシンである。このチロシンにチロシナーゼという酸化さんか酵素こうそはたらき、ドーパという化合かごうぶつわる。さらにチロシナーゼはドーパにもはたらきかけ、ドーパキノンという化合かごうぶつ変化へんかさせる。ドーパキノンは化学かがくてき反応はんのうせいたかいので、酵素こうそちからりることなく次々つぎつぎ反応はんのうしていく。ドーパクロムインドールキノンへと変化へんかし、最終さいしゅうてきには酸化さんか重合じゅうごうし、黒褐色こっかっしょく真性しんせいメラニンとなるが、構造こうぞう大変たいへん複雑ふくざつであり、表記ひょうきむずかしい。一方いっぽう、ドーパキノンとシステインが反応はんのうすることで、システィニルドーパをメラニンが合成ごうせいされる。メラニンはみずすべての有機ゆうき溶媒ようばい不溶ふようで、とくメラニンはきわめて安定あんていである。

ガン[編集へんしゅう]

皮膚ひふがんでメラノサイトのがんは、悪性あくせい黒色こくしょくしゅ(メラノーマ)とぶ。

人間にんげんなどの動物どうぶつは、細胞さいぼうかくDNA損壊そんかいする太陽たいようからの紫外線しがいせん皮膚ひふのメラニン色素しきそ吸収きゅうしゅうする。遺伝いでんてきにメラニンがまった合成ごうせいされない個体こたいアルビノといい、こうした個体こたい紫外線しがいせんによって皮膚ひふがんになりやすい。ぎゃくに、はだいろひとは、皮膚ひふがんになりにくい[3]

動物どうぶつにおけるメラニン[編集へんしゅう]

イカすみなどのあたまあしるいすみふくまれる[4]

細菌さいきんきんなどの微生物びせいぶつが、紫外線しがいせん活性かっせい酸素さんそなどからまもるのにもちいる[5]。そのほかにも、高温こうおん重金属じゅうきんぞく酸化さんかざいなどの化学かがくストレス、微生物びせいぶつ侵入しんにゅうふせぐための宿主しゅくしゅ防衛ぼうえい機能きのうからふせ役割やくわりにな[6]

放射線ほうしゃせんをエネルギーげんとする菌類きんるいであるRadiotrophic fungus英語えいごばんは、光合成こうごうせい色素しきそ英語えいごばんとしてメラニンを使用しようする[7]

節足動物せっそくどうぶつでは、からにメラニンのそう層状そうじょう形成けいせいすることで構造こうぞうしょく形成けいせいする[8]。また、節足動物せっそくどうぶつにおいてメラニンはそと骨格こっかくきずがついた場所ばしょからカビやバクテリアが侵入しんにゅうしないようする役割やくわりにな[9]

人類じんるいはだ[編集へんしゅう]

初期しょき人類じんるいは、はだいろあかるいいろであった[10][11][12]

脚注きゃくちゅう[編集へんしゅう]

  1. ^ Matsuki, Mitsuo; Watanabe, Toshihiko; Ogasawara, Ayako; Mikami, Takeshi; Matsumoto, Tatsuji (2008). “グルタチオンのメラニン合成ごうせい阻害そがい機構きこう (英語えいご). 日本にっぽんやく学会がっかい 128 (8): 1203–1207. doi:10.1248/yakushi.128.1203. ISSN 0031-6903. http://www.jstage.jst.go.jp/article/yakushi/128/8/128_8_1203/_article/-char/ja/. 
  2. ^ 6.毛髪もうはついろ(メラニン)”. www.yamano.ac.jp. 2023ねん7がつ26にち閲覧えつらん
  3. ^ Brenner, Michaela; Hearing, Vincent J. (2008-05). “The Protective Role of Melanin Against UV Damage in Human Skin†” (英語えいご). Photochemistry and Photobiology 84 (3): 539–549. doi:10.1111/j.1751-1097.2007.00226.x. PMC PMC2671032. PMID 18435612. https://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1111/j.1751-1097.2007.00226.x. 
  4. ^ asahi.com: タコやイカのすみってなに? - ののちゃんのDO科学かがく”. www.asahi.com. 2023ねん7がつ26にち閲覧えつらん
  5. ^ 植物しょくぶつ防疫ぼうえき講座こうざ.細胞さいぼうかべのメラニン合成ごうせい阻害そがいする殺菌さっきんざい ちょ:萩原はぎはら寛之ひろゆき
  6. ^ The Editors (2002-03-01). “Melanins in fungal pathogens” (英語えいご). Journal of Medical Microbiology 51 (3): 189–191. doi:10.1099/0022-1317-51-3-189. ISSN 0022-2615. https://www.microbiologyresearch.org/content/journal/jmm/10.1099/0022-1317-51-3-189. 
  7. ^ Dadachova, Ekaterina; Bryan, Ruth A.; Huang, Xianchun; Moadel, Tiffany; Schweitzer, Andrew D.; Aisen, Philip; Nosanchuk, Joshua D.; Casadevall, Arturo (2007-05-23). “Ionizing Radiation Changes the Electronic Properties of Melanin and Enhances the Growth of Melanized Fungi”. PLoS ONE 2 (5): e457. doi:10.1371/journal.pone.0000457. ISSN 1932-6203. PMC 1866175. PMID 17520016. https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC1866175/. 
  8. ^ Neville, A. C. (2012). Biology of the Arthropod Cuticle. Springer Science & Business Media. ISBN 9783642809101. https://books.google.com/books?id=VQHtCAAAQBAJ&pg=PA121 
  9. ^ 朝野あさの, 維起「昆虫こんちゅうがい骨格こっかくによる生体せいたい防御ぼうぎょ」2015ねんdoi:10.11416/konchubiotec.84.3_181 
  10. ^ Wade, Nicholas (2003ねん8がつ19にち). “Why Humans and Their Fur Parted Ways” (英語えいご). The New York Times. 2023ねん7がつ26にち閲覧えつらん
  11. ^ かつて人類じんるいはだしろく、そのくろくなり、さらにその一部いちぶしろもどった可能かのうせいえい研究けんきゅう”. カラパイア. 2023ねん7がつ26にち閲覧えつらん
  12. ^ くろはだ皮膚ひふがんふせぐために進化しんか”. natgeo.nikkeibp.co.jp. 2023ねん7がつ26にち閲覧えつらん

参考さんこう文献ぶんけん[編集へんしゅう]

  • 日本にっぽん化粧けしょうひん技術ぎじゅつしゃかい へん化粧けしょうひん事典じてん丸善まるぜん、2003ねん、793-795ぺーじISBN 978-4621073421 

関連かんれん項目こうもく[編集へんしゅう]