熱傷ねっしょう

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熱傷ねっしょう
出来できた、てんぷらによる熱傷ねっしょう
概要がいよう
診療しんりょう 救急きゅうきゅう医学いがく
分類ぶんるいおよび外部がいぶ参照さんしょう情報じょうほう
ICD-10 T20-T31
ICD-9-CM 940-949
MeSH D002056
熱傷ねっしょう学会がっかい
日本にっぽん 日本にっぽん熱傷ねっしょう学会がっかい
世界せかい International Society for Burn Injuries

熱傷ねっしょう(ねっしょう)とは、高温こうおん液体えきたいなどのねつ放射線ほうしゃせん化学かがく物質ぶっしつ、または電気でんき接触せっしょくによってしょうじる損傷そんしょうう。通称つうしょう火傷かしょうやけど)である。よりひく温度おんど長時間ちょうじかんさらされることによる低温ていおんやけどもある。化学かがく物質ぶっしつ放射線ほうしゃせんなどが原因げんいんしょうじる組織そしき損傷そんしょう化学かがく損傷そんしょうという。

概要がいよう

症状しょうじょうはその重症じゅうしょう診断しんだんされ、つよ日焼ひやなどは一般いっぱんにI、それ以上いじょうではあさたちせいIIふかたちせいII、IIIまでの診断しんだん基準きじゅん一般いっぱんてきである。あさたちせいIIでは、発赤はっせきくわ水疱すいほうれをしょう傷跡きずあとのこらず、ふかたちせいIIからややしろくなり痛覚つうかく損傷そんしょうし、IIIではしろ茶色ちゃいろなどに変色へんしょく痛覚つうかくもやられているためぎゃく無痛むつうとなる。

のひらが全身ぜんしんの1%とされる。IIで15%、IIIで2%以上いじょう入院にゅういん考慮こうりょされる[1]応急おうきゅう処置しょちは、ただちに水道すいどうすいなどで20ふんほどやすことであり、れタオルなどもだい選択肢せんたくしとなる。やしたのちのラップは応急おうきゅうドレッシングざいとしてすぐれている[2]一般いっぱんに1cm以上いじょう水疱すいほう除去じょきょし、予防よぼう目的もくてきとして抗生こうせい物質ぶっしつ投与とうよ所定しょていとするのは推奨すいしょうされていない[2]火傷かしょうおおうドレッシングざいは、理想りそうてきには、湿潤しつじゅん環境かんきょう維持いじし、かたちわせやすく、粘着ねんちゃくせいであり、つけはずししやすく、それはいたみなくおこなえ、感染かんせんから保護ほごされ、費用ひようたい効果こうかがいいドレッシングざいてきする[2]

治療ちりょうは、あさたちせいIIでは湿潤しつじゅん環境かんきょう保護ほご、より深度しんどふか場合ばあいには植皮しょくひなどほかの治療ちりょう考慮こうりょされる。

予防よぼう

熱傷ねっしょう(やけど)の8わりは、家庭かていでの生活せいかつ部屋へや台所だいどころ)でこる。原因げんいんべつには、食品しょくひんるい熱湯ねっとうあぶらふくむ)、ストーブ、電気でんきポット、花火はなび電気でんきアイロンが上位じょうい5める(国民こくみん生活せいかつセンター)[3]。このほかにも、浴室よくしつでの高温こうおんによる火傷かしょう事故じこ高齢こうれいしゃ幼児ようじこりやすい[4]

乳幼児にゅうようじ(3さい以下いか)の家庭かていない事故じこでは、熱傷ねっしょうもっとおおい。そのため、テーブルクロスや、あつ食品しょくひんるい熱湯ねっとうあぶらふくむ)、加湿かしつ温水おんすいそのちかづけないことである[3]

安全あんぜん対策たいさく重要じゅうようである。可燃かねんぶつ灯油とうゆ、ガソリンなど)の安全あんぜん管理かんり徹底てってい花火はなびさい安全あんぜんかんがえバケツにみず用意ようい子供こどもだけで火気かき(ライターをふくむ)をあつかわせない、高齢こうれいしゃがゆるい服装ふくそう調理ちょうりをしない(づかず着火ちゃっかするので)、など。

ガソリンきわめて容易たやすかつ激烈げきれつ発火はっかするため、ガソリンスタンドでは厳格げんかく取扱とりあつかい徹底てっていする。ストーブ、ガス器具きぐ同様どうようである。オートバイや自動車じどうしゃのマフラーにも注意ちゅういする。

ガス器具きぐ爆発ばくはつ、ガソリンによる着火ちゃっか建物たてもの火災かさいまれたり、なんらかによりかみ衣服いふくうつった場合ばあいなどにおいては、熱傷ねっしょう重度じゅうど広範囲こうはんいわた場合ばあいおおいため、じゅうあつし症状しょうじょうあるいは死亡しぼうつながりやすい。ただちに応急おうきゅう処置しょち救急きゅうきゅう要請ようせいもとめられる。

ストップ、ドロップ&ロール英語えいごばん
衣服いふく着火ちゃっかした場合ばあいしき姿勢しせいよこになり、えている部分ぶぶん地面じめん接触せっしょくするように地面じめんころがることで消火しょうかできる[5]

低温ていおん熱傷ねっしょう

温熱おんねつ熱傷ねっしょうの1つ。皮膚ひふ表面ひょうめんあか紫色むらさきいろ網目あみめじょう模様もようていすることから大理石だいりせきさまがわむらともばれる[6][注釈ちゅうしゃく 1]低温ていおんやけどひだこナモミ[注釈ちゅうしゃく 2]などの別称べっしょうがある。低温ていおん熱源ねつげん長時間ちょうじかん直接ちょくせつ接触せっしょく、あるいは輻射ふくしゃねつにより皮膚ひふ表面ひょうめんちかおもてざいせい血管けっかん持続じぞくてき拡張かくちょうによって発症はっしょうし、発症はっしょうまでの時間じかん接触せっしょく温度おんどが44℃だとやく6 - 10あいだ受傷じゅしょうするが、熱源ねつげんがより高温こうおんになるにしたが短時間たんじかんでも受傷じゅしょうする。

溶鉱炉ようこうろ精錬せいれんところとう職業しょくぎょう従事じゅうじ起因きいんすることもあるが、一般人いっぱんじん日常にちじょう生活せいかつ使用しようする冬季とうき暖房だんぼう器具きぐ炬燵こたつたんぽ懐炉かいろストーブ)などで長時間ちょうじかん曝露ばくろされることでも発症はっしょうられる。温度おんど調整ちょうせい可能かのう電気でんきコタツ電気でんき毛布もうふホットカーペットなどで比較的ひかくてき低温ていおん設定せっていしている場合ばあいでも、熟睡じゅくすい運動うんどう不随ふずい高齢こうれいによる知覚ちかく緩慢かんまん泥酔でいすい一酸化いっさんか炭素たんそ中毒ちゅうどく糖尿とうにょうびょうによる循環じゅんかん不良ふりょうなどで知覚ちかくなまま受傷じゅしょうしてしまうケースもおおい。体温たいおん調節ちょうせつ発達はったつ乳幼児にゅうようじではあわせて熱中ねっちゅうしょう危険きけんともなう。近年きんねんでは、ノートパソコンをひざじょうせて長時間ちょうじかん使つかうことで下面かめんからの放熱ほうねつ受傷じゅしょうしたり、キーボードやパームレストからの放熱ほうねつのひらを受傷じゅしょうしてしまったとの報告ほうこくがある。

重症じゅうしょうになりやすい低温ていおん熱傷ねっしょう

低温ていおん熱傷ねっしょう極端きょくたん熱源ねつげん接触せっしょく時間じかんながいため、発赤はっせき水疱すいほう形成けいせいだけにえても深部しんぶふか損傷そんしょうっていることがおおい。睡眠すいみんいたみにづかないためふかたちせいII(DDB)まできずい、さらに進行しんこうせいふかくなりIII(DB)までたっすることもまれにはある。ふかくなる理由りゆうとしては、皮膚ひふ流量りゅうりょうより脂肪しぼうそう流量りゅうりょうすくなく、皮膚ひふりゅう受傷じゅしょうしたそうやされて軽症けいしょうえても脂肪しぼうそうではりゅうにより冷却れいきゃくされないことがげられる。

低温ていおん熱傷ねっしょう予防よぼう

  • 就寝しゅうしん低温ていおん熱傷ねっしょうではたんぽによるものが圧倒的あっとうてきおおい。電子でんしサーモスタットをゆうしない構造こうぞう要因よういんの1つにある。近年きんねんたんぽブームにより、使用しようちゅう発症はっしょう増加ぞうかする傾向けいこうにある。
  • からだどういち箇所かしょ暖房だんぼう器具きぐ長時間ちょうじかんれさせないようにする。
  • 暖房だんぼう器具きぐ使用しようするひと状態じょうたいによっては周囲しゅういひと配慮はいりょする。

温熱おんねつ以外いがいしょうじるおも皮膚ひふ軟部組織そしき損傷そんしょう

化学かがく熱傷ねっしょう化学かがく損傷そんしょう

化学かがく熱傷ねっしょう(chemical burn)・化学かがく損傷そんしょう(chemical injury)は、くすりきずともしょうされ、さんアルカリなどの化学かがく薬品やくひん腐食ふしょくせい芳香ほうこうぞく化合かごうぶつ脂肪しぼうぞく化合かごうぶつ芳香ほうこうぞく炭化たんか水素すいそ石油せきゆ関連かんれん製品せいひんによるねつ作用さようともなわない損傷そんしょう[7]数時間すうじかんにわたって徐々じょじょ組織そしき壊疽えそ(gangrene)するのが特徴とくちょう

人体じんたいふく細胞さいぼう生物せいぶつ細胞さいぼうはごくかぎられた環境かんきょうでしか生存せいぞんできないので、化学かがく物質ぶっしつさらされてからだひょう細胞さいぼう機能きのうそこなわれると結果けっかとして熱傷ねっしょうおな状況じょうきょうになる。粘膜ねんまく以外いがい皮膚ひふ表面ひょうめんでは角質かくしつそうおおわれているため付着ふちゃくしたりょう角質かくしつそうたいする透過とうかせい化学かがくてき腐食ふしょく強度きょうどとしてあらわれる。

電撃でんげききず

電撃でんげききず(electrical injury)は、電流でんりゅうによる損傷そんしょう電流でんりゅうへの抵抗ていこうによってしょうじる5000℃ほどのねつ組織そしき破壊はかいされる。また、組織そしき水蒸気すいじょうきにより、内部ないぶからの水蒸気すいじょうき爆発ばくはつにより損傷そんしょうする。体内たいない電流でんりゅうながれることにより火傷かしょう非常ひじょう深部しんぶまでおよぶことがおおい。

重症じゅうしょう電圧でんあつ電流でんりゅう伝導でんどうたいへの接触せっしょく時間じかん左右さゆうされる。交流こうりゅう電源でんげん直流ちょくりゅう電源でんげんより危険きけんたかい。送配そうはい電線でんせんなど6600V以上いじょう感電かんでんした場合ばあい高熱こうねつにより瞬時しゅんじ炭化たんかまた原形げんけいをとどめず破壊はかいされる場合ばあいおおい。すじ損傷そんしょう血管けっかん損傷そんしょうしん停止ていし心室しんしつほそどう)のおそれがあり、また絶縁ぜつえん進行しんこうせい壊死えしられる。おも深部しんぶ組織そしき損傷そんしょうするため、からだひょうからの観察かんさつ重症じゅうしょう判定はんていするのは困難こんなんである。 かみなりによってこる事例じれい雷撃らいげききずともばれる。

放射線ほうしゃせん熱傷ねっしょう

放射線ほうしゃせん熱傷ねっしょう(radiation burn)は、放射線ほうしゃせん被曝ひばくXせん過剰かじょう照射しょうしゃ[8]による損傷そんしょうで、おおくは放射線ほうしゃせん治療ちりょうおこな医療いりょう現場げんば発生はっせいする[9]こう線量せんりょう放射線ほうしゃせんにより皮膚ひふ構成こうせいする細胞さいぼう血管けっかん傷害しょうがいされ、熱傷ねっしょう類似るいじした症状しょうじょうていする。「かくけ」ともわれ、チェルノブイリ原子力げんしりょく発電はつでんしょ事故じこ消火しょうか活動かつどうたった消防しょうぼうられた。また原爆げんばく被爆ひばくではおもにこのタイプである。

日焼ひや厳密げんみつえば熱傷ねっしょうである。太陽光たいようこうせんふくまれる紫外線しがいせん(UVA, UVB)に曝露ばくろすると、皮膚ひふ組織そしき破壊はかいこる。日焼ひやけといえども、照射しょうしゃ時間じかん範囲はんいのいかんによっては重態じゅうたいになる可能かのうせいがある。

ベータ熱傷ねっしょう
放射ほうしゃせい核種かくしゅ露出ろしゅつした皮膚ひふ眼球がんきゅう付着ふちゃくすると、たか運動うんどうエネルギー電子でんしであるタ線たせんがその表面ひょうめんにエネルギーをあたえ、熱傷ねっしょうさせる。このことをベータ熱傷ねっしょう[10]

また放射線ほうしゃせん熱傷ねっしょう染色せんしょくたい破壊はかいなど遺伝子いでんしレベルで損傷そんしょうけていることがしばしばられる。

症状しょうじょう診断しんだん

熱傷ねっしょう重症じゅうしょうは、そのふかさと面積めんせき決定けっていされる。

熱傷ねっしょう深度しんど

皮膚ひふ表皮ひょうひ真皮しんぴからなる。熱傷ねっしょうふかさは皮膚ひふのどのそうまで損傷そんしょうおよんでいるかであらわされる。

Iは、農作業のうさぎょう日光浴にっこうよくなど、太陽たいようへの暴露ばくろによってこり、もっと外側そとがわ皮膚ひふ表皮ひょうひ)が火傷かしょうした場合ばあいである。はだは、そのままであり、あかく、あたたかく、さわるといたかんじ、水疱すいほうはないかちいさい。[11]

IIでは、皮膚ひふだい2そうである真皮しんぴまでたっしており、非常ひじょうあかく、水疱すいほうがあり、非常ひじょういたく、れもある。一般いっぱんに7cmよりちいさい場合ばあい軽症けいしょうとする。これよりおおきいか、かお関節かんせつなど身体しんたい機能きのうかんする部分ぶぶんふくんでいる場合ばあい外観がいかん機能きのう喪失そうしつ懸念けねんのため医学いがくてき注意ちゅうい必要ひつようとなるため、救急きゅうきゅうく。[11]

IIIでは、皮膚ひふのすべてのそうたっしており、皮膚ひふは、くろしろくなり乾燥かんそうし、永久えいきゅうてき損傷そんしょうこす可能かのうせいがある。おおきさにかかわらず、ただちに医師いしによって評価ひょうかされる。[11]

深度しんど 傷害しょうがい組織そしき 外見がいけん 症状しょうじょう 治癒ちゆ期間きかん 瘢痕はんこん
I
(EB:epidermal burn)
表皮ひょうひ角質かくしつそうまで 発赤はっせき充血じゅうけつ いたみ、ねつかん 数日すうじつ のこらない
あさたちせいII
(SDB:superficial dermal burn)
表皮ひょうひゆうとげそう基底きていそうまで 水疱すいほう発赤はっせきれ、湿潤しつじゅん つよいたみ、灼熱しゃくねつかん知覚ちかく鈍麻どんま やく10日間にちかん ほぼのこらない
ふかたちせいII
(DDB:deep dermal burn)
真皮しんぴ乳頭にゅうとうそう乳頭にゅうとう下層かそうまで あさたちせいIIとほぼおなじだが、ややしろくなる。 あさたちせいIIとほぼおなじだが、知覚ちかく鈍麻どんまいちじるしい 2しゅう以上いじょう のこ可能かのうせいゆう
III
(DB:deep burn)
真皮しんぴぜんそう皮下ひか組織そしき極度きょくど場合ばあいほねまで しろ茶色ちゃいろなどに変色へんしょく、ひどくけただれる、乾燥かんそう壊死えし場合ばあいにより炭化たんか 無痛むつう知覚ちかくなし 1ヵ月かげつ以上いじょう ケロイドなどになりのこ
あしのII熱傷ねっしょう。緊満せい水疱すいほうがみられる。
III熱傷ねっしょうくろ部分ぶぶん壊死えしした皮膚ひふである。

あさたちせいII熱傷ねっしょう(SDB)とふかたちせいII熱傷ねっしょう(DDB)について

SDB、DDBは水疱すいほうつくてん共通きょうつうであるが瘢痕はんこんのこすかのこさないかのてんことなる。皮膚ひふうす場合ばあい初期しょき判定はんてい困難こんなんで、受傷じゅしょう数日すうじつから2しゅう判別はんべつするケースもある。通常つうじょう、ピンセットなどで患部かんぶ圧迫あっぱくし、ピンセットをはなしたときしろくなった部位ぶいもともどったらSDB、そのままりゅうとどこおしろかったらDDBである。また一般いっぱんろんとしてDDBから植皮しょくひ治療ちりょうほうとして検討けんとうするが、救命きゅうめい感染かんせん対策たいさく以外いがい目的もくてき手術しゅじゅつをおこなう場合ばあいは、年齢ねんれい部位ぶい面積めんせき社会しゃかいてき背景はいけいなどを考慮こうりょする。

ふかたちせいII熱傷ねっしょう(DDB)とIII熱傷ねっしょう(DB)について

DDBとの見極みきわめは受傷じゅしょう数日すうじつあるいは手術しゅじゅつ判明はんめいするケースもある。 日本にっぽん熱傷ねっしょう学会がっかいでは熱傷ねっしょう深度しんどをI・II・III分類ぶんるいする。日本にっぽん熱傷ねっしょう学会がっかいでいうIII熱傷ねっしょうをIII・IV・V細分さいぶんして表記ひょうきする場合ばあいもみられる。

熱傷ねっしょう面積めんせき

熱傷ねっしょう面積めんせきにI熱傷ねっしょうふくめない。熱傷ねっしょう面積めんせきはII・III熱傷ねっしょう計測けいそくする。単位たんいは%BSA。(BSA:body surface area)[注釈ちゅうしゃく 3]

熱傷ねっしょう面積めんせきおおまかに計測けいそくする方法ほうほうとして以下いか法則ほうそくがよくられている。

てのひらほう
成人せいじん適用てきよう
てのひら面積めんせき[注釈ちゅうしゃく 4]全身ぜんしん1%として計算けいさんする
9の法則ほうそく
成人せいじん適用てきよう
頭部とうぶ左上ひだりうえみぎ上肢じょうしをそれぞれ9%、からだみき前面ぜんめんこうめん左下ひだりしたみぎ下肢かしをそれぞれ18%、陰部いんぶを1%で計算けいさんする。
5の法則ほうそく
乳幼児にゅうようじ適用てきよう
乳児にゅうじ場合ばあい頭部とうぶからだみき前面ぜんめんこうめんをそれぞれ20%、四肢ししをそれぞれ10%で計算けいさんする。
幼児ようじ場合ばあい頭部とうぶを15%、左上ひだりうえみぎ上肢じょうしをそれぞれ10%、からだみき前面ぜんめんを20%、からだみきめん左下ひだりしたみぎ下肢かしをそれぞれ15%で計算けいさんする。

II以上いじょう熱傷ねっしょう面積めんせき成人せいじん場合ばあい20%、小児しょうに場合ばあい10%をえると重症じゅうしょうするため、すみやかに医師いし処置しょちけねばならない。

精密せいみつ熱傷ねっしょう面積めんせき計測けいそくにはランド・ブロウダー図表ずひょう使用しようされる。

気道きどう熱傷ねっしょう気道きどう損傷そんしょう

火災かさいなどで高温こうおん気体きたいやススをんだ場合ばあい上気じょうきどう気管きかん熱傷ねっしょううことがあり、これを気道きどう熱傷ねっしょう気道きどう損傷そんしょう (Inhalation Injury) としょうする。熱傷ねっしょうった気道きどう徐々じょじょ浮腫ふしゅこして狭窄きょうさくし、窒息ちっそくまねくため非常ひじょう危険きけんである。気道きどう熱傷ねっしょう外見がいけんからはわかりにくいのでとく注意ちゅうい必要ひつようである。気道きどう熱傷ねっしょうのおそれがある場合ばあい一見いっけん全身ぜんしん状態じょうたいくてもあとから気道きどう狭窄きょうさくこす場合ばあいがあるため挿管の必要ひつようがある。狭窄きょうさくこした状態じょうたいでの挿管は困難こんなんもしくは不可能ふかのうである。

気道きどう熱傷ねっしょう可能かのうせいしめ徴候ちょうこうとして、口腔こうくう鼻腔びこうのススの付着ふちゃくげられる。

熱傷ねっしょう重症じゅうしょう基準きじゅん

いずれも治療ちりょうじょう目安めやすであり現実げんじつ判断はんだん医療いりょう機関きかんによりことなる。基礎きそ疾患しっかんぐん循環じゅんかんけい糖尿とうにょうびょう慢性まんせいじんほか)はより重症じゅうしょうとらえるべきである。

BSA、BI、PBIの正確せいかく算出さんしゅつには形成けいせい外科げかにより、期間きかんようすることもあるが、重症じゅうしょう熱傷ねっしょうにつき受診じゅしん白血球はっけっきゅうすう入院にゅういん死亡しぼうりつ相関そうかんせいがあるとする報告ほうこくがある。日本にっぽん国外こくがいでSCORTENを採用さいようするところもある[12]。Arzの基準きじゅん、BSA、BI、PBIともトリアージへの使用しよう意図いとしていない。

Arzの基準きじゅん

Artz CP, Moncrief JA : The Treatment of Burns. W. B. Saunders, Philadelphia, 1969. 94―98.[13]

基準きじゅん 備考びこう
重症じゅうしょう熱傷ねっしょう
  • II 30%BSA以上いじょう
  • III 10%BSA以上いじょう
  • 顔面がんめんあしのIII
  • 気道きどう熱傷ねっしょう合併がっぺい
  • 軟部組織そしき損傷そんしょう骨折こっせつ合併がっぺい
  • 電撃でんげき熱傷ねっしょう
派生はせい[14]
  • 小児しょうに高齢こうれいしゃにつき
    • II 20%BSA以上いじょう
    • III 5%BSA以上いじょう
  • 陰部いんぶ肛門こうもん主要しゅよう関節かんせつ周囲しゅういのIIIくわえる
  • 化学かがく熱傷ねっしょうほか特種とくしゅ熱傷ねっしょうくわえる
ちゅう程度ていど熱傷ねっしょう
  • II 15 - 30%BSA
  • III 2 - 10%BSA(顔面がんめんあしのぞく)
派生はせい[14]
  • 小児しょうに高齢こうれいしゃにつき
    • II 10 - 20%BSA
    • III 2 - 5%BSA
  • 陰部いんぶ肛門こうもん主要しゅよう関節かんせつ周囲しゅういのIII除外じょがい
軽度けいど熱傷ねっしょう
  • II 15%BSA以下いか
  • III 2%BSA以下いか
派生はせい[14]
  • 小児しょうに高齢こうれいしゃにつき
    • II 10%BSA以下いか

熱傷ねっしょう指数しすう (BI)

Burn Index (BI)。下記かきたす場合ばあい重症じゅうしょう熱傷ねっしょうとする。[15]

  • Burn Index (BI) = 12 II熱傷ねっしょう面積めんせき + III熱傷ねっしょう面積めんせき ≧ 10 から 15
    単位たんい:%BSA)

熱傷ねっしょう後指うしろゆびすう (PBI)

Prognostic Burn Index (PBI)。[15][16]

  • Prognostic Burn Index (PBI) = 年齢ねんれい + Burn Index (BI)
PBI 評価ひょうか
120以上いじょう 致命ちめいてき
100 - 120 救命きゅうめいりつひく
80 - 100 死亡しぼうれいあり
80以下いか 生存せいぞん可能かのう

熱傷ねっしょう治療ちりょう

応急おうきゅう処置しょち

ただちにぬるまや、水道すいどうすい(12-18)で冷却れいきゃくし、ねつ除去じょきょすることが、火傷かしょう進行しんこう防止ぼうしし、いたみを緩和かんわし、清潔せいけつにすることにもなる。れタオルなどはだい選択肢せんたくしとなる。こおり非常ひじょうつめたいみずは、血管けっかん収縮しゅうしゅくこしぎゃくきずふかくする可能かのうせいがありけられる。化学かがく熱傷ねっしょうでは、pHが正常せいじょうとなるまでよりなが流水りゅうすい必要ひつようとする。げんきんされた生理せいりしょく塩水えんすい十分じゅうぶんあら[2] 。または水道すいどうすいでもよい。広範囲こうはんい(あるいはうちももなどからだみき)を長時間ちょうじかんやしすぎは不整脈ふせいみゃく意識いしき障害しょうがいこす場合ばあいもある[1]さむくてふるえはじめたらやめる[11]。イギリスの熱傷ねっしょう学会がっかいの2015ねん声明せいめいでは、流水りゅうすい時間じかんは5ふんでも30ふんでもなく、20ふん最適さいてきとし、また子供こどもてい体温たいおん注意ちゅういうながしている[17]流水りゅうすいはやいほどよいが、3時間じかん以内いないまで有益ゆうえきである[17]衣服いふく装飾そうしょくひんはず[11][17]

日本にっぽん皮膚ひふ学会がっかいの2017ねんのガイドラインは、しょう範囲はんいではみず治療ちりょう推奨すいしょうするが、広範囲こうはんい重症じゅうしょうでは、公共こうきょう施設しせつなどでは感染かんせん原因げんいんともなるため、感染かんせん対策たいさくほどこしたうえで推奨すいしょうしている[18]

国際こくさいてきなガイドラインでは、やしたのち、ラップなどのドレッシングざいもちい、乾燥かんそう細菌さいきんコロニーの形成けいせい防止ぼうしし、曝露ばくろした末端まったん神経しんけいいたみを緩和かんわする。ポリ塩化えんかビニールのフィルム(ラップ・サランラップ)は応急おうきゅうのドレッシングざいとしてすぐれており、けず火傷かしょうかぶせるようにおおう。つぎ選択肢せんたくしは、清潔せいけつなコットンせいシーツやこれにたものである。セロファンせいフィルムは化学かがく熱傷ねっしょう場合ばあい悪化あっかさせる可能かのうせいがある。みず生理せいりしょく塩水えんすいひたした包帯ほうたいでもよい。亜熱帯あねったいあつ湿気しっけおお気候きこうでは、細菌さいきん感染かんせんしやすいため、火傷かしょう露出ろしゅつしたままか、清潔せいけつなタオルでゆるおおうか、保湿ほしつせい軟膏なんこうもちいる[2]

イギリスの声明せいめいでは、ラップをもちい、なければ代替だいたいとして清潔せいけつぬの、あるいは粘着ねんちゃくせい被覆ひふくざいもちいる[17]。ラップはかおもちいない[17]

手近てぢかにあるコップのみずでもおちゃでもまずかけること。15ふんほどやしたらすみやかに医師いし診察しんさつけること。

  • ふくがせず、そのままみずをかけること。無理むりがそうとすると皮膚ひふがれ、損傷そんしょうひどくなる。
  • 水疱すいほうみずぶくれ)はやぶらないこと。やぶると感染かんせんこしやすくなる。
  • 乳幼児にゅうようじ老人ろうじんてい体温たいおんこしやすい。ひととおりやしたらすぐに病院びょういん搬送はんそうする。
  • 気道きどう熱傷ねっしょうのおそれがある場合ばあいは、いきができなくなってからでは手遅ておくれになってしまうので、ただちに救急きゅうきゅう搬送はんそう依頼いらいする。
  • 電撃でんげききずなどで心肺しんぱい停止ていし状態じょうたいにある場合ばあい心肺しんぱい蘇生そせい優先ゆうせんされる。

オーストラリアの研究けんきゅうしゃは、応急おうきゅう処置しょちに、唾液だえきアロエベラティーツリー含有がんゆうジェル Burnaid、の使用しよう推奨すいしょうしていない[19]。これらは以前いぜんぶた使つかった真皮しんぴまでのふか熱傷ねっしょう治癒ちゆ研究けんきゅう[20]により、治癒ちゆ期間きかん短縮たんしゅくや、外観がいかんしょうじなかった[19]。アロエベラは、ジェルじょうとなり鎮痛ちんつう作用さようはあるようだが、もっと治癒ちゆ効果こうかとしてはあさ火傷かしょうにおいて有益ゆうえきだとかんがえられる[19]。ティーツリー含有がんゆう冷却れいきゃくざいのBurnaid ジェルも、期待きたいできるのはおも鎮痛ちんつう作用さようだが、広範囲こうはんい熱傷ねっしょうではてい体温たいおんのリスクがある[19]

I熱傷ねっしょう(EB)

げんきんされた包帯ほうたいや、清潔せいけつぬのおおう。皮膚ひふにアロエベラ成分せいぶんふくむローションをる。脱水だっすいしているようであれば、電解でんかいしつふくみずむ。通常つうじょうさらなる治療ちりょう必要ひつようとしない[11]いたみがあり、知覚ちかく鋭敏えいびんである[21]

湿潤しつじゅん療法りょうほう普及ふきゅうさせてきた夏井なついあつしによれば、ラップでおおえばいたみはおさまる[22]

局所きょくしょ治療ちりょう

  • 火傷かしょうから6あいだまでの病院びょういんへの到着とうちゃくでは、火傷かしょう綺麗きれいであれば、あらい、プラスチックせい粘着ねんちゃくラップでおおう。火傷かしょう評価ひょうか容易よういにし、はずさい不快ふかいかんあたえないためである。それ以上いじょうかかり綺麗きれい場合ばあいは、てい粘着ねんちゃくせいのシリコンせいのドレッシングざい使つか[2] (つまり時間じかんとも滲出しんしゅつえきによって全体ぜんたいてき水疱すいほうとしてふくれてきたりする)。
  • よごれているかえていた場合ばあいには、水道すいどうすいげんきんすいあらい、ぎん含有がんゆうドレッシングざいや、スルファジアジンぎんクリームを使つか[2]

Wounds Internationalの2014ねんのガイドラインでは、抗菌こうきんざいとしてスルファジアジンぎんのクリームは、一般いっぱんてき使用しようされるが、治癒ちゆ自体じたいおくらせる可能かのうせいがあるとする[2]日本にっぽん皮膚ひふ学会がっかいの2017ねんのガイドラインは、選択肢せんたくしのひとつとしており、をよくするか不明ふめいであり、すべきとする意見いけん、すべきでないという意見いけん両方りょうほうがあるとし、III熱傷ねっしょうでは使用しよう推奨すいしょうしている[18]。(また日本にっぽんでは、医薬品いやくひん添付てんぷ文書ぶんしょで、軽症けいしょう火傷かしょうには疼痛とうつうこすため禁忌きんきとされている)

また、2017ねんのシステマティック・レビューは9つのランダム比較ひかく試験しけん (RCT) を発見はっけんし、ハチミツ・ドレッシングはスルファジアジンぎんドレッシングより良好りょうこうとした(ぎんクリーム6、ぎん含浸がんしんガーゼ3)[23]同様どうように2015ねんのシステマティック・レビューは、6つのRCTを見出みいだおな結論けつろんくだした[24]。ハチミツ・ドレッシングはスルファジアジンぎんドレッシングと比較ひかくして、IとII熱傷ねっしょう良好りょうこうであり、短期間たんきかんげんきん治癒ちゆ期間きかん短縮たんしゅくし、肥厚ひこうせい瘢痕はんこんおよびかかわちぢみのない完全かんぜん回復かいふくはハチミツで81%、ぎんで37%であった[25]

ケアは通常つうじょう看護かんごおこない、以下いか目的もくてきもとづく[2]

  • 感染かんせんリスクの予防よぼう軽減けいげん
  • 湿潤しつじゅん療法りょうほう
  • 最適さいてきいた緩和かんわ
  • 患者かんじゃ教育きょういく

一般いっぱんに1cm以上いじょう水疱すいほう除去じょきょし、ちいさいものはのこす。水疱すいほううごきに支障ししょうがなければのこす。壊死えしした皮膚ひふのぞく。Wounds Internationalの2014ねんのガイドラインでは感染かんせんうたがわれる場合ばあい検査けんさのために採取さいしゅするが、予防よぼう目的もくてきとして抗生こうせい物質ぶっしつ投与とうよ所定しょていとするのは推奨すいしょうされていない[2]日本にっぽん皮膚ひふ学会がっかいの2017ねんのガイドラインは、所定しょてい抗菌こうきんやく投与とうよ否定ひていてき結果けっかおお有効ゆうこうせいしめ十分じゅうぶん根拠こんきょがないため明確めいかく推奨すいしょうができないとするが、選択肢せんたくしのひとつとして提案ていあんするとし、リスクのたかれいげている[18]

ドレッシングざいには以下いかのように幅広はばひろ種類しゅるいがあるが、どれがいいか結論けつろんするまでのつよ証拠しょうこはない。理想りそうてきには、湿潤しつじゅん環境かんきょう維持いじし、かたちわせやすく、粘着ねんちゃくせいであり、つけはずししやすく、それはいたみなくおこなえ、感染かんせんから保護ほごされ、費用ひようたい効果こうかがいいということである。いたみは重要じゅうよう考慮こうりょ事項じこうである[2]

  • 伝統でんとうてきなドレッシングざいには、パラフィン含浸がんしんガーゼや吸収きゅうしゅうよう脱脂綿だっしめんがあるが、これらはきずにくっつく。
  • アルギン酸あるぎんさんしおは、カルボキシメチルセルロースとわせたものがある。滲出しんしゅつえきおお場合ばあい使つかえ、乾燥かんそうした傷口きずぐちには、皮膚ひふ付着ふちゃくするためもちいない。
  • 発泡はっぽうたい親水しんすいせいポリウレタン発泡はっぽうたいなど。中等ちゅうとうからおお滲出しんしゅつえき使つかえ、すくない場合ばあいには使つかわない。
  • 医療いりょうグレードのハチミツ含有がんゆうドレッシングざい浸透しんとうあつによりいたみをこすことがある。
  • ハイドロコロイドは、感染かんせんうたがわれたり滲出しんしゅつえきおお場合ばあいには使つかえない。
  • シリコンやリポコロイドの接触せっしょくそうをもつものは、滲出しんしゅつえきすくないものに。
  • ポリウレタン・フィルム
  • ぎんのクリームや含浸がんしんドレッシングざいは、感染かんせん兆候ちょうこうがある場合ばあいに。
代替だいたい医療いりょう

また発展はってん途上とじょうこくでは、ひつじまく、バナナの、パパイヤペースト、ジャガイモなど、高価こうかなドレッシングざい代替だいたいてきもちいられているものが効果こうかてきであるとしめされている[26]

蜂蜜はちみつかんしてさらにえば、イランで伝統でんとうてき使つかわれる蜂蜜はちみつ・ごまあぶら・オリーブオイルをぜた軟膏なんこうがII熱傷ねっしょう有効ゆうこうであったというRCTがある[27]

あさたちせいII熱傷ねっしょう(SDB)

患部かんぶ湿潤しつじゅん環境かんきょう保護ほごし、上皮じょうひ皮膚ひふ再生さいせい)をつ。具体ぐたいてきにはハイドロコロイドなどの被覆ひふくざいる。幼児ようじでは熱傷ねっしょうそう状態じょうたい関係かんけいなく被覆ひふくざい熱傷ねっしょうそう密封みっぷうした場合ばあい発熱はつねつをみる頻度ひんどたかい。つよいたみがあり、知覚ちかく維持いじされる[21]

浸潤しんじゅん環境かんきょう維持いじのためワセリン軟膏なんこうもとざい基本きほんとする[28]

ふかたちせいII熱傷ねっしょう(DDB)

基本きほんてきにSDBとおなじであるが、広範囲こうはんいにわたる場合ばあい植皮しょくひ考慮こうりょする。ぜんしゅうせいのDDBにはげんちょう切開せっかいをおこなう。

いたみはかえってにぶくなり、知覚ちかく鈍麻どんまがある[21]

III熱傷ねっしょう(DB)

デブリードマン壊死えし組織そしき除去じょきょする)がだいいち選択せんたくである。広範囲こうはんいであれば植皮しょくひ適応てきおうとなるが、しょう範囲はんいであれば湿潤しつじゅん環境かんきょう保護ほご周囲しゅういからの上皮じょうひってもよい。ぜんしゅうせいのIII熱傷ねっしょうにはげんちょう切開せっかいをおこなう。
また、III以上いじょうくろ炭化たんかした熱傷ねっしょうをIV、V医師いしもいる。広範囲こうはんい重症じゅうしょう熱傷ねっしょうにおける植皮しょくひについては、自分じぶんべつ部位ぶい皮膚ひふ使つか自家じか皮膚ひふ移植いしょくもっとすすめられるが、それでも熱傷ねっしょう部分ぶぶんをカバーしきれない部分ぶぶんはスキンバンクからせた凍結とうけつ同種どうしゅ皮膚ひふ移植いしょくにより創部そうぶ保護ほご感染かんせん予防よぼうおこなうこともある。

夏井なついあつしによれば、医師いしによっては2週間しゅうかんをめどに上皮じょうひしない場合ばあい皮膚ひふ移植いしょく必要ひつようわれることがあるが、III診断しんだんされても1-2かげつかけて上皮じょうひする場合ばあいもある[29]

神経しんけい破壊はかいされるため、無痛むつうである。感覚かんかく消失しょうしつする[21]

全身ぜんしん管理かんり

II以上いじょう熱傷ねっしょう面積めんせき成人せいじん場合ばあい20%、小児しょうに場合ばあい10%をえると全身ぜんしん状態じょうたい悪化あっかするため、入院にゅういん治療ちりょう必要ひつようである。

広範囲こうはんい熱傷ねっしょうでは細胞さいぼうがいえき急速きゅうそく喪失そうしつし、脱水だっすいによるてい容量ようりょうせいショックこる。これにたい乳酸にゅうさんリンゲル液りんげるえき大量たいりょう輸液がおこなわれる。 必要ひつよう輸液りょう患者かんじゃ体重たいじゅうもと計算けいさんする公式こうしきもちいられ、 代表だいひょうてきなものにはパークランドほうなどがある。急速きゅうそくなサイトカインの流出りゅうしゅつによる浸透しんとうあつ変化へんか対応たいおうするべく コロイド溶液ようえき、アルブミン製剤せいざいもちいる輸液ほうもある。

  • パークランドほう(日本にっぽんではバクスターほうともよばれる)
    輸液りょう(ml/day)= 熱傷ねっしょう面積めんせき(%) × 体重たいじゅう(kg) × 4

また、広範囲こうはんい熱傷ねっしょうでは全身ぜんしんせい炎症えんしょう反応はんのう症候群しょうこうぐん(SIRS)やはじめ感染かんせんきやすく、遷延せんえんすると臓器ぞうき不全ふぜんこすため、これらの制御せいぎょ目標もくひょうとした集中しゅうちゅう治療ちりょうおこなわれる。

重度じゅうど熱傷ねっしょう生理せいりてき反応はんのうおよ変化へんか

II熱傷ねっしょう面積めんせき小児しょうにで15%以上いじょう成人せいじんで30%以上いじょうのことをう。一般いっぱんに輸液療法りょうほう絶対ぜったいてき適応てきおうである。

  • 急性きゅうせい(acute stage)もしくはショック受傷じゅしょうより48時間じかん以内いない(72時間じかん以内いないとする場合ばあいもある)。
    • 血管けっかん透過とうかせい亢進こうしんにより血漿けっしょう血管けっかんがい大量たいりょう漏出ろうしゅつし、循環じゅんかん血漿けっしょうりょう減少げんしょうしょうじる。
    • 大量たいりょう細胞さいぼうがいえき喪失そうしつ
    • ショック受傷じゅしょう48あいだはショックとされている)。
    • 汗腺かんせん皮膚ひふせん破壊はかい
    • 疼痛とうつう(pain) とう
  • 急性きゅうせい(sudacute stage):受傷じゅしょうより48あいだ以降いこう、2週間しゅうかん以内いない
    • 臓器ぞうき不全ふぜん(MOF)。
    • 皮膚ひふ表面ひょうめん細菌さいきん感染かんせん(infection)防御ぼうぎょりょく喪失そうしつ受傷じゅしょう72あいだ以降いこう)。
    • 進行しんこうせい壊死えし
    • 合併症がっぺいしょう(conpication) とう
    • 血液けつえき障害しょうがい
  • 慢性まんせい(chronic stage):受傷じゅしょうより2週間しゅうかん以降いこう症状しょうじょうおおむね固定こてい生命せいめいへの懸念けねん軽減けいげん
    • 疼痛とうつう
    • 精神せいしんてき苦痛くつう
    • 瘢痕はんこんかかわちぢみ
    • 栄養えいよう障害しょうがい(malnutrition) とう
  • 回復かいふくリハビリ(rehabilitation)とも。
    • 疼痛とうつう
    • 精神せいしんてき苦痛くつう(リハビリがつらい、またはリハビリがはかどらないもどかしさ)など。

化学かがく熱傷ねっしょう治療ちりょう

からだひょう化学かがくてき腐食ふしょくけた場合ばあいはじめになすことはみずで15ふん以上いじょうあらながすことである[注釈ちゅうしゃく 5][30]水溶すいようせいひくくても連続れんぞくてきあらながされることによって、付着ふちゃくぶつ濃度のうどがり熱傷ねっしょう拡大かくだいをふせぐことができる。中和ちゅうわなどのこころみは、まず効果こうかげることはなく、かえって熱傷ねっしょう拡大かくだいさせる。

呼吸こきゅうおかされた場合ばあいは、直後ちょくごには症状しょうじょうあらわれなくとも、数時間すうじかんはい水腫すいしゅとなり致命ちめいてきになる場合ばあいがあるので、軽症けいしょうでも医療いりょう機関きかん治療ちりょうけるべきである。

合併症がっぺいしょう

管理かんり

治癒ちゆしたら、色素しきそ沈着ちんちゃくしないよう直射ちょくしゃ日光にっこうけ、日焼ひやめをもちいる。ベビーオイルなど乾燥かんそう減少げんしょうさせうるおいをたもつ。このさい成分せいぶん香料こうりょう皮膚ひふ刺激しげきこすこともある。治癒ちゆ半年はんとしまでかゆみがしょうじるかもしれず、かゆければこうヒスタミンやくもちいたり、夜間やかんかないようゆびつめる。[2]

えんえがくようにするマッサージ。衛生えいせいてきにし、適切てきせつ栄養えいよう摂取せっしゅする。[2]

診療しんりょう

脚注きゃくちゅう

注釈ちゅうしゃく

  1. ^ ただし皮膚ひふ疾患しっかん先天的せんてんてき要因よういんあらわれていることもある。
  2. ^ ナモミはなまはげ由来ゆらいによる。
  3. ^ Burn Surface Areaではない。TBSA(Total Body Surface Area)が直感ちょっかんてきであろう。
  4. ^ おおまかに手首てくびからうえ手指しゅしまでの全体ぜんたいふくめた面積めんせき
  5. ^ 30ふん〜2あいだ場合ばあいによっては12あいだ水洗すいせん必要ひつよう

出典しゅってん

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参考さんこう文献ぶんけん

ガイドライン
ほか
  • しょ昭夫あきお熱傷ねっしょう治療ちりょうマニュアル』中外ちゅうがい医学いがくしゃ、2007ねんISBN 978-4-498-06658-8

関連かんれん項目こうもく

外部がいぶリンク