外傷がいしょう性せい大動脈だいどうみゃく破裂はれつ

外傷がいしょう性せい大動脈だいどうみゃく破裂はれつ
	大動脈だいどうみゃく（赤色あかいろ部分ぶぶん）
概要がいよう
診療しんりょう科か	救急きゅうきゅう医学いがく
分類ぶんるいおよび外部がいぶ参照さんしょう情報じょうほう
ICD-10	S25.0, S35.0
ICD-9-CM	901.0, 902.0
MeSH	D001019
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外傷がいしょう性せい大動脈だいどうみゃく破裂はれつ（英語えいご: Traumatic aortic rupture）は、外傷がいしょうによって大動脈だいどうみゃくが破裂はれつを来きたした病態びょうたいである。大だい血管けっかん損傷そんしょう（英えい: Great vessel injury）とも称しょうされる。

疫学えきがく

原因げんいんとなる外傷がいしょうとしては、刺とげ創そう（英語えいご版ばん）や銃創じゅうそう、爆傷ばくしょうなどの創傷そうしょう、また交通こうつう事故じこや高所こうしょ転落てんらくといった高こうエネルギー外傷がいしょうが多おおい。胸部きょうぶよりも腹部ふくぶに受傷じゅしょうすることが多おおく、約やく2倍ばいの頻度ひんどとされている。好こう発はつ部位ぶいとしては、胸部きょうぶにおいては左ひだり鎖骨さこつ下か動脈どうみゃく分岐ぶんき部ぶ、上うえ行こう大動脈だいどうみゃく、大動脈だいどうみゃく峡部きべ、腹部ふくぶにおいては腹部ふくぶ大動脈だいどうみゃく、腸ちょう骨こつ動脈どうみゃく、腹腔ふくこう動脈どうみゃく、肝かん動脈どうみゃくなどがある。

胸部きょうぶに受傷じゅしょうした場合ばあいは縦たて隔へだた血腫けっしゅや血ち胸むね、腹部ふくぶの場合ばあいは後腹あとばら膜まく血腫けっしゅ、腹腔ふくこう内ない出血しゅっけつとなる。急死きゅうしとなる例れいも多おおく、特とくに下した行ぎょう大動脈だいどうみゃく損傷そんしょうの場合ばあいは85％が現場げんば死亡しぼうとなり、生存せいぞんして病院びょういんに到着とうちゃくした場合ばあいも、極きわめて短時間たんじかんで状態じょうたいが悪化あっかすることから、緊急きんきゅうに対処たいしょが必要ひつようとなる。一方いっぽうで、大動脈だいどうみゃく周囲しゅういの密みつな組織そしきによって封印ふういんされてsealed ruptureとなる場合ばあいもある。またこの場合ばあい、仮性かせい動脈どうみゃく瘤こぶを形成けいせいすることがあり、後日ごじつ再さい破裂はれつする危険きけんもある。

症状しょうじょうと診断しんだん

上記じょうきのとおり、来院らいいん時じ死亡しぼう（DOA）ないし心肺しんぱい停止ていし（CPAOA）であることが多おおい。生存せいぞん状態じょうたいで来院らいいんする場合ばあいも、多おおくは顔面がんめん蒼白そうはく、頻しき脈みゃく、血圧けつあつ低下ていかなどの出血しゅっけつ性せいショックを呈ていしている。

上うえ行こう大動脈だいどうみゃくに破裂はれつを来きたした場合ばあいには心こころタンポナーデに至いたる事ことがあり、このときにはBeckの三さん徴ちょうおよび心電図しんでんず上じょうのlow voltageが見みられる。腹部ふくぶ大動脈だいどうみゃくや腸ちょう骨こつ動脈どうみゃくに破裂はれつを来きたした場合ばあい、下肢かしの脈拍みゃくはく欠損けっそんや冷ひや感かん、麻痺まひが見みられることがある。

また上うえ腸ちょう間あいだ膜まく血管けっかんの損傷そんしょうでは、出血しゅっけつによる症状しょうじょうよりは、血行けっこう障害しょうがいによる腹痛はらいた・イレウス症状しょうじょうが表面ひょうめんに現あらわれることもある｡

検査けんさ

超ちょう音波おんぱ検査けんさ

通常つうじょう、まず迅速じんそく外傷がいしょう超ちょう音波おんぱ検査けんさ（FAST）法ほうが行おこなわれる。

血管けっかん造影ぞうえい

確定かくてい診断しんだんのgold standardとされており、造影ぞうえい剤ざいの漏出ろうしゅつ像ぞう、血管けっかん壁かべの断だん裂きれ像ぞう、血栓けっせん閉塞へいそく像ぞうなどが特徴とくちょう的てきな所見しょけんである。

X線せん撮影さつえい

胸部きょうぶ（CXR）: 上うえ縦たて隔へだた拡大かくだい、Apical Cap、左ひだり主ぬし気管支きかんし角かくの開ひらき大だい、下した行ぎょう大動脈だいどうみゃく辺べ縁えんの消失しょうしつなどが特徴とくちょう的てきな所見しょけんである。
腹部ふくぶ（AXR）: 腹腔ふくこう内ないに液体えきたいが貯留ちょりゅうすることによるびまん性せい陰影いんえい（homogeneous sign）、腸ちょう腰こし筋すじ陰影いんえいの消失しょうしつ、腸管ちょうかんの異常いじょう圧あつ排はい像ぞうなどが特徴とくちょう的てきな所見しょけんである。

コンピュータ断層だんそう撮影さつえい（CT）: とくにヘリカルCT、造影ぞうえいCTにおいては、血管けっかん造影ぞうえいに匹敵ひってきする診断しんだん精度せいどが得えられるとされている。

治療ちりょう

まず出血しゅっけつ性せいショックに対たいする治療ちりょうが最さい優先ゆうせんとされ、気道きどう確保かくほ（重じゅう篤あつしであれば気管きかん挿管）に続つづいて直ただちに静脈じょうみゃく路ろ確保かくほを行おこない、輸液・輸血ゆけつを開始かいしする。腹部ふくぶ大動脈だいどうみゃく破裂はれつにおいて、これらの治療ちりょうを行おこなってもバイタルサインが不安定ふあんていであったり、一般いっぱん状態じょうたいの悪化あっかが認みとめられる場合ばあい、開腹かいふく術じゅつによって損傷そんしょう血管けっかんの再建さいけん、血腫けっしゅ除去じょきょおよび合併がっぺい損傷そんしょうの修復しゅうふくを行おこなう。特とくに上うえ腸ちょう間あいだ膜まく動脈どうみゃくの損傷そんしょうにおいては、腸管ちょうかん虚きょ血ちに注意ちゅういが必要ひつようである。

また、上うえ行こう大動脈だいどうみゃく破裂はれつから心しんタンポナーデに至いたった場合ばあいは、心こころ嚢穿刺せんしに続つづいて開ひらき胸むね手術しゅじゅつを行おこなう。

参考さんこう文献ぶんけん

小濱おばま啓けい次じ『救急きゅうきゅうマニュアル第だい3版はん』医学書院いがくしょいん、2005年ねん。ISBN 978-4-260-00040-6。
中川なかがわ儀ただし英えい「胸部きょうぶ外傷がいしょうに対たいする開ひらく胸むね術じゅつの適応てきおう」『今日きょうの治療ちりょう指針ししん』医学書院いがくしょいん、2006年ねん。ISBN 978-4260001014。