利尿りにょう薬やく

利尿りにょう薬やく（りにょうやく、英えい: diuretic）とは、尿にょう量りょうを増加ぞうかさせる作用さようを持もつ薬物やくぶつの総称そうしょうである。

尿にょうは、水分すいぶんや電解でんかい質しつを体外たいがいへ排出はいしゅつする最もっとも効果こうか的てきな手段しゅだんである。尿にょうは腎臓じんぞうでつくられるが、腎臓じんぞうは体内たいないの状況じょうきょうに応おうじて尿にょうの量りょうや濃度のうどを調節ちょうせつし、全身ぜんしんの体液たいえきを一定いっていに保たもつよう制御せいぎょしている。利尿りにょう薬やくは、この調節ちょうせつ機構きこうが適切てきせつにはたらかない病態びょうたいなどにおいて、水分すいぶんを体外たいがいに排出はいしゅつするために用もちいられる。

「腎臓じんぞう」も参照さんしょう

浸透しんとう圧あつ利尿りにょう薬やく

浸透しんとう圧あつ利尿りにょう薬やくは糸いと球体きゅうたいで濾過ろかされると再さい吸収きゅうしゅうされないため、尿にょう細管さいかん内ないの浸透しんとう圧あつが上昇じょうしょうし、水みずの再さい吸収きゅうしゅうが抑制よくせいされる。脳のう圧あつ亢進こうしん時じなどに用もちいられる。

• D-マンニトール
• イソソルビド
• 濃こグリセリン（グリセオール）

ループ利尿りにょう薬やく

ヘンレのループにおいてNa⁺とCl⁻の再さい吸収きゅうしゅうを阻害そがいする。腎じん機能きのうに悪影響あくえいきょうを与あたえないため、利尿りにょう薬やくの第だい一いち選択せんたくとして使用しようされる。また、心不全しんふぜんや高血圧こうけつあつの治療ちりょう薬やくとしても使用しようされる。ヘンレの係かかり蹄上行脚あんぎゃ太ふとい脚あしでのNa⁺の再さい吸収きゅうしゅう率りつは30%であるが、ループ利尿りにょう薬やくはその25%を抑制よくせいする。

• フロセミド（ラシックス、オイテンシン、後発こうはつ品ひんあり）
• トラセミド (ルプラック)
• アゾセミド（ダイアート、長時間ちょうじかん作用さよう型がた）
• ピレタニド（アレリックス、作用さよう時間じかんはフロセミドに近ちかい）

チアジド系けい利尿りにょう薬やく

遠とお位くらい尿にょう細管さいかんにおいてNa⁺とCl⁻の再さい吸収きゅうしゅうを阻害そがいする。降圧こうあつ剤ざいとしても使用しようされる。大だい規模きぼ臨床りんしょう試験しけんでは他た剤ざいと遜色そんしょくない結果けっかを得えており、現在げんざいも高血圧こうけつあつ治療ちりょう薬やくの代表だいひょう的てきなものである。

ただし、チアジド系けい利尿りにょう薬やくを服用ふくようすると、しばしば重おも篤あつな低ていナトリウム血ち症しょうに陥おちいる。チアジド系けい利尿りにょう薬やくは腎じん髄質ずいしつの濃度のうど勾配こうばいには影響えいきょうを与あたえないため、髄質ずいしつ集合しゅうごう管かんで働はたらくバゾプレッシン(ADH)の反応はんのうが起おこりにくく、その結果けっか、自由じゆう水すいの再さい吸収きゅうしゅうが生しょうじてナトリウムが希釈きしゃくされやすい。これによって重度じゅうどの低ていナトリウム血ち症しょうをきたしやすいものと考かんがえられている。この系統けいとうの薬くすりの機き序じょとしては「ナトリウム排泄はいせつ薬やく」の側面そくめんを持もち、食塩しょくえん感受性かんじゅせい高だか血圧けつあつの治療ちりょうに則そくしている。

• ヒドロクロロチアジド（HCTZ、ダイクロトライドは販売はんばい中止ちゅうしとなり、2023年ねん現在げんざいでは東和薬品とうわやくひんのジェネリックのみ日本にっぽんでは流通りゅうつう）
• トリクロルメチアジド（フルイトラン）
• インダパミド（ナトリックス）
• トリパミド（ノルモナール, 2023年ねんに日本にっぽん国内こくないでは販売はんばい中止ちゅうし）
• クロルタリドン（ハイグロトン, 2008年ねんに日本にっぽん国内こくないでは販売はんばい中止ちゅうし）

カリウム保持ほじ性せい利尿りにょう薬やく

抗こうアルドステロン薬やくともいう。遠とお位くらい尿にょう細管さいかんにおいてアルドステロン（抗こう利尿りにょうホルモン）に拮抗きっこうし、Na⁺の再さい吸収きゅうしゅうを阻害そがいする一方いっぽう、K⁺の尿にょう中ちゅう排泄はいせつを抑制よくせいする。ループ利尿りにょう薬やくなどと合あわせて、肝硬変かんこうへん、鬱血うっけつ性せい心不全しんふぜんなどに対たいして使用しようされる。

• トリアムテレン（トリテレン^®）
• スピロノラクトン（アルダクトンA^®）
• カンレノ酸さん（ソルダクトン^®注ちゅう）
• エプレレノン（セララ^®錠じょう) - 高血圧こうけつあつ症しょう・心不全しんふぜん治療ちりょう薬やく
• エサキセレノン(ミネブロ錠じょう) - 高血圧こうけつあつ症しょう治療ちりょう薬やく
• フィネレノン(ケレンディア錠じょう) - 2型がた糖尿とうにょう病びょうを合併がっぺいする慢性まんせい腎臓じんぞう病びょう治療ちりょう薬やく

その他たの利尿りにょう薬やく

• アセタゾラミド（ダイアモックス）は、緑内障りょくないしょうやメニエール病びょうに対たいして使用しようされる。
• 塩酸えんさんドーパミン（イノバン）は、腎じん血ち流量りゅうりょうを増ふやして間接かんせつ的てきに利尿りにょう作用さようを示しめす。
• アミノフィリン（ネオフィリン）や強心剤きょうしんざいも利尿りにょう作用さようを示しめす。
• カルペリチド（ハンプ）は心房しんぼう性せいNa⁺利尿りにょうペプチド(ANP)と呼よばれ、重症じゅうしょう心不全しんふぜん時じの利尿りにょう薬やくとして使用しようされる。
• トルバプタンは、世界せかい初はつのバソプレッシンV2-受容じゅよう体たい拮抗きっこう剤ざいである。大塚製薬おおつかせいやくより「サムスカ錠じょう 15mg」として2010年ねん12月14日にちに上市かみいちされた。

副作用ふくさよう

• 低ていカリウム血ち症しょう・低ていナトリウム血ち症しょう
• 高こう尿にょう酸さん血ち症しょう

この場合ばあい、血圧けつあつへの影響えいきょうを顧慮こりょし、高こう尿にょう酸さん血ち症しょう治療ちりょう薬やくであるアロプリノール(ザイロリック)・フェブキソスタット(フェブリク)・トピロキソスタット(トピロリック・ウリアデック)等とうを追加ついかするのではなく、利尿りにょう薬やくを減量げんりょうした上うえで、ロサルタンやシルニジピンを併用へいようするとよい。

• ボクシング等ひとしの階級かいきゅう制せいの競技きょうぎにおいて、体重たいじゅう調整ちょうせいの最後さいごの手段しゅだんとして利尿りにょう剤ざいが使用しようされることがあるが、ドーピング検査けんさにおいても利尿りにょう剤ざいは禁止きんし薬物やくぶつに指定していされていることが多おおい。副作用ふくさようも大おおきく、治療ちりょう以外いがいの目的もくてきで利尿りにょう剤ざいを使用しようすることは危険きけんも伴ともなうため、絶対ぜったいに避さけるべきである。

関連かんれん項目こうもく

• 腎臓じんぞう
• 医薬品いやくひん
• 頻しき尿にょう
• 抗こう利尿りにょう作用さよう

外部がいぶリンク

• 『利尿りにょう薬やく』 - コトバンク