つよ心配しんぱいとうからだ

出典しゅってん: フリー百科ひゃっか事典じてん『ウィキペディア(Wikipedia)』
つよ心配しんぱいとうたい一般いっぱん構造こうぞうしき

つよ心配しんぱいとうからだ(きょうしんはいとうたい、英語えいご: cardiac glycoside)は、心房しんぼうほそどう心房しんぼうどうひとしうえしつせいしきみゃく浮腫ふしゅともな鬱血うっけつせい心不全しんふぜんあるいは不整脈ふせいみゃくもちいられるステロイドはいとうからだ総称そうしょうである。強心きょうしんはいとうたいはあるしゅ植物しょくぶつ動物どうぶつなかつかる。ジギタリスイギリス民間みんかん療法りょうほうやくとしてもちいられる作用さよう非常ひじょうはげしい薬用やくよう植物しょくぶつであり、1785ねんスコットランドのウィザーリング医師いし心筋しんきん機能きのう低下ていかともな水腫すいしゅ浮腫ふしゅ治療ちりょうやくとして導入どうにゅう成功せいこうした。アフリカではウアバインカエルからられる毒素どくそどくとしてもちいられる。

構造こうぞう[編集へんしゅう]

つよ心配しんぱいとうたいとうステロイドラクトンみっつから構成こうせいされる。とうくさりにはグルコースラムノースひとしほかに、ジギタリスつよ心配しんぱいとうたい特有とくゆうの2と6ヒドロキシもとをもたないジギトキソースがある。とうとしてジギトキソースをもつジギトキシン、ラナトシドCデスラノシドジゴキシンメチルジゴキシン特別とくべつにジギタリスはいとうたいとしてほかつよ心配しんぱいとうたい区別くべつされる。

ステロイドはB/Cたまきトランス、C/Dたまきβべーた-シス立体りったい配置はいちをもち、通常つうじょうのステロイドとはことなる。また、3とうくさりが、17でラクトンがそれぞれβべーた配向はいこう結合けつごうし、14にはヒドロキシもとβべーた配向はいこう結合けつごうしている。この特徴とくちょうてき構造こうぞう強心きょうしん作用さよう発現はつげん必須ひっすとされる。

ラクトンはカルデノライド(5いんたまき)あるいはブファジエノライド(6いんたまき)の2種類しゅるいがある。ブファジエノライドがたヒキガエル(Bufoぞく)の毒腺どくせんからたんはなされた毒素どくそられ、ブフォトキシンと総称そうしょうされる。

薬理やくり[編集へんしゅう]

適応てきおう[編集へんしゅう]

鬱血うっけつせい心不全しんふぜんうえしつせいしきはく 心臓しんぞう以外いがい原因げんいんがあり、心筋しんきん予備よび能力のうりょく保存ほぞんされている場合ばあい奏効そうこうする。ただし、心筋しんきんしょうなどで、心筋しんきん能力のうりょく低下ていかしている場合ばあいには奏効そうこうしない。また、ジギタリスは心筋しんきん酸素さんそ需要じゅようたかめるため、急性きゅうせい心筋梗塞しんきんこうそくたいして禁忌きんきである。

禁忌きんき[編集へんしゅう]

心室しんしつせい特発とくはつせいしきみゃく心室しんしつせいがい収縮しゅうしゅくていカリウムしょう(ジギタリスの効果こうか増強ぞうきょう)、ぼうしつブロックじん疾患しっかんWPW症候群しょうこうぐん肥大ひだいがた閉塞へいそくせい心筋しんきんしょうひだりしつ流出りゅうしゅつ狭窄きょうさく

作用さよう[編集へんしゅう]

  • 陽性ようせいへん力作りきさくよう - 心筋しんきん収縮しゅうしゅくりょく増大ぞうだいし、心拍しんぱくりょう増大ぞうだいさせる。それとともにじん流量りゅうりょう増加ぞうかする結果けっか利尿りにょう作用さようをもたらす。この作用さよう浮腫ふしゅ軽減けいげんさせる効果こうかがある。
  • 陰性いんせいへん作用さよう - 迷走めいそう神経しんけい興奮こうふんほらぼう結節けっせつアセチルコリン感受性かんじゅせい増大ぞうだいし、心拍しんぱくすう低下ていかする。心不全しんふぜんしきみゃくおさえる効果こうかがある。
  • へん伝導でんどう作用さよう - ぼうしつ結節けっせつでの伝導でんどう抑制よくせいする。

作用さようじょ[編集へんしゅう]

  • 心拍しんぱくすう -中枢ちゅうすう神経しんけいけい作用さようし、迷走めいそう神経しんけい興奮こうふんさせる。この作用さよう迷走めいそう神経しんけいかいした間接かんせつ作用さようで、ほらぼう結節けっせつ拡張かくちょうだつ分極ぶんきょく勾配こうばい減少げんしょうする。
  • 強心きょうしん作用さよう - 強心きょうしんはいとうたいNa/Kポンプのαあるふぁ-サブユニット結合けつごうし、機能きのう阻害そがいする。細胞さいぼうないナトリウム濃度のうど上昇じょうしょうし、ナトリウム濃度のうど勾配こうばいにより駆動くどうするNa/Ca交換こうかんトランスポーターによるカルシウム排出はいしゅつ減少げんしょうする。心筋しんきん活動かつどう電位でんいだつ分極ぶんきょくしょうでは、カルシウム排出はいしゅつのための駆動くどうりょく逆転ぎゃくてんし、Na/Ca交換こうかんぎゃくきにこる結果けっか細胞さいぼうないのカルシウム濃度のうど上昇じょうしょうする。細胞さいぼうないカルシウム濃度のうど上昇じょうしょうすじしょう胞体のカルシウム含量が増加ぞうかし、心筋しんきん収縮しゅうしゅくりょく増大ぞうだいする。

適応てきおう疾患しっかん[編集へんしゅう]

副作用ふくさよう[編集へんしゅう]

つよ心配しんぱいとうたいやす全域ぜんいき非常ひじょうせまく、治療ちりょういきえるとおもあつ副作用ふくさようられる。

  1. ことしょせい自動じどうのう(ジギタリスの致死ちし要因よういん
  2. ほらぼう結節けっせつブロックによるがい興奮こうふん

に、食欲しょくよく不振ふしん悪心あくしん嘔吐おうと下痢げり腹痛はらいた頭痛ずつう疲労ひろうかんひとしられる。

1 の作用さようは、プルキンエ繊維せんいたいして直接ちょくせつ作用さようすることによりこる。また、血液けつえきちゅうカリウム濃度のうど減少げんしょうすると、心室しんしつせい不整脈ふせいみゃくとなり危険きけんである。これは、カリウムがつよ心配しんぱいとうたい競合きょうごうするためであり、ていカリウム強心きょうしんはいとうたい作用さよう増強ぞうきょうさせる。とくに、フロセミドひとし利尿りにょうざいおおくは血液けつえきちゅうカリウム濃度のうど低下ていかさせるため、注意ちゅうい必要ひつようである。

禁忌きんき[編集へんしゅう]

  • 肥大ひだいがた閉塞へいそくせい心筋しんきんしょう - こころ収縮しゅうしゅくりょく増強ぞうきょうのため閉塞へいそくつよくなるため。
  • ファローよんちょうしょう - こころ収縮しゅうしゅくりょく増強ぞうきょうのため閉塞へいそくつよくなるため。
  • II以上いじょうぼうしつブロック - ぼうしつ伝導でんどう抑制よくせいするため。
  • 心房しんぼうほそどう発作ほっさWPW症候群しょうこうぐん - ぼうしつ伝導でんどう抑制よくせいでますますケントたば伝導でんどう心室しんしつつたわりやすくなるため。

ジギタリス中毒ちゅうどく[編集へんしゅう]

ジギタリス中毒ちゅうどくいき治療ちりょういきちかいため、心室しんしつせいがい収縮しゅうしゅくぼうしつ接合せつごうせいしきはくぼうしつブロックをともなった発作ほっさせいじょうしつせいしきはくしょうなどの不整脈ふせいみゃくしょうじる。アダムス・ストークス発作ほっさこすこともある。ていカリウムしょう誘引ゆういんになることがおおいので治療ちりょう以下いかのようにおこなう。

  • ジギタリスを中止ちゅうしする。
  • カリウム補充ほじゅうおこなう。
  • 心室しんしつせい不整脈ふせいみゃくにはリドカインもちいる。
  • ぼうしつブロックには一時いちじてきペースメーカーをもちいる。

とくに、心不全しんふぜんはジギタリスとフロセミド併用へいようしている場合ばあいおおいので注意ちゅうい必要ひつようである。

薬物やくぶつ動態どうたい[編集へんしゅう]

ジギタリスはいとうたいは、ジギタリス固有こゆうとうであるジギトキソースをもちいているため、通常つうじょうとうふくほかつよ心配しんぱいとうからだくらべて、極性きょくせいいちじるしくひくくなっている。そのため、ジギトキシンの経口けいこう投与とうよ吸収きゅうしゅうりつはほぼ100%とはいとうたいとしては非常ひじょうたかい。また、アグリコンうえのヒドロキシもとひとおおいジゴキシンの吸収きゅうしゅうりつやく75%である。ジギトキシンはやく95%が血液けつえきちゅうアルブミン結合けつごうしているため、消失しょうしつ半減はんげんやく7にちながい。そのため、持続じぞくせいゆうするが、効果こうか発現はつげんおそい(やく3~6あいだ)。一方いっぽう、ジゴキシンのアルブミンへの結合けつごうりつやく25%とひくく、即効そっこうせいやく1.5あいだ)であるが、消失しょうしつ半減はんげんやく36あいだみじかい。メチルジゴキシンは両者りょうしゃ中間ちゅうかん動態どうたいしめす。

まわりのつよ心配しんぱいとうからだ[編集へんしゅう]

オレアンドリンはキョウチクトウにふくまれる強心きょうしんはいとうたいである

つよ心配しんぱいとうたいは、これまでに100種類しゅるい以上いじょうられている。自然しぜんでは、ユリゴマノハグサキョウチクトウキンポウゲおお存在そんざいする。一般いっぱんに、つよ心配しんぱいとうたいどくもちいられるほど作用さようはげしいため、薬用やくようとしてもちいられるのはジギタリス(ゴマノハグサ)とストロファンツス(キョウチクトウ)にかぎられ、大半たいはん致死ちしせい有毒ゆうどく成分せいぶんとされる。身近みぢか植物しょくぶつとしては、スズランがあり、スズランをけた花瓶かびんみずんだ幼児ようじが、した強心きょうしんはいとうからだによる中毒ちゅうどくこしたれいられる。モロヘイヤも、しょく部分ぶぶん部分ぶぶんにはふくまれないものの、種子しゅし強心きょうしんはいとうからだふくみ、中毒ちゅうどくこす可能かのうせいがある。キョウチクトウ大気たいき汚染おせんつよいためうえ栽されるが、このには強心きょうしんはいとうたいふくまれ、ひとうし中毒ちゅうどくれいがある。

関連かんれん項目こうもく[編集へんしゅう]