(Translated by https://www.hiragana.jp/)
冠動脈大動脈バイパス移植術 - Wikipedia コンテンツにスキップ

冠動脈かんどうみゃく大動脈だいどうみゃくバイパス移植いしょくじゅつ

出典しゅってん: フリー百科ひゃっか事典じてん『ウィキペディア(Wikipedia)』

冠動脈かんどうみゃくバイパス移植いしょくじゅつ(かんどうみゃくバイパスいしょくじゅつ、えい: coronary artery bypass graftingCABG)とは、きょせいこころ疾患しっかんたいおこなわれる手術しゅじゅつである。冠動脈かんどうみゃくバイパスじゅつ冠動脈かんどうみゃくバイパス手術しゅじゅつともばれる。最初さいしょおこなわれたCABGは大動脈だいどうみゃく冠動脈かんどうみゃくつな冠動脈かんどうみゃく大動脈だいどうみゃくバイパス移植いしょくじゅつ(かんどうみゃくだいどうみゃくバイパスいしょくじゅつ, えい: aortocoronary bypass、A-Cバイパス)[1]であり現代げんだいでもひろおこなわれているが、後述こうじゅつするようにそのにも様々さまざま方法ほうほうによるバイパスじゅつおこなわれている。

概要がいよう[編集へんしゅう]

きょせいこころ疾患しっかんは、心臓しんぞう筋肉きんにく心筋しんきん)への酸素さんそ供給きょうきゅうりょう低下ていかし、需要じゅようりょう下回したまわることによってこる。心筋しんきんへの酸素さんそ供給きょうきゅうりょう低下ていかする原因げんいんひとつに冠動脈かんどうみゃく狭窄きょうさく閉塞へいそくによる流量りゅうりょう低下ていかげられる。冠動脈かんどうみゃくバイパスじゅつ狭窄きょうさくした冠動脈かんどうみゃくとおくらいがわ大動脈だいどうみゃく(またはうちむね動脈どうみゃく)から血管けっかんをつなぎ、狭窄きょうさくをバイパスすることで流量りゅうりょう回復かいふくをはかる手術しゅじゅつである。

歴史れきし[編集へんしゅう]

1967ねんアメリカクリーブランドのクリーブランドクリニックで、アルゼンチンじんルネ・ファバローロ世界せかいはじめて成功せいこうした。

じゅつしき[編集へんしゅう]

きょせいこころ疾患しっかん治療ちりょう方法ほうほうとしてはカテーテルもちいたけいがわてき冠動脈かんどうみゃく形成けいせいじゅつ(PCI)もあり、こちらは血管けっかんない治療ちりょうばれ、いわゆる一般いっぱんかんがえられるような「皮膚ひふ切開せっかいする手術しゅじゅつ」の必要ひつようがなくおかせかさねひくい(患者かんじゃ体力たいりょくてき負担ふたんかるい)。しかし、PCIが不可能ふかのうな(もしくは危険きけん出来できない)病変びょうへんがあり治療ちりょう限界げんかいがある。 治療ちりょうながれとしてはまず血管けっかん造影ぞうえいおこない、PCIが可能かのう病変びょうへんであればPCIをおこない、不可能ふかのうなものはCABGへと移行いこうしていくことになる。 手術しゅじゅつ日本にっぽんにおいては基本きほんてき全身ぜんしん麻酔ますいしたおこなわれる。施設しせつによってはかたまくがい麻酔ますいおこなうところもあるが日本にっぽんでは一般いっぱんてきではない(国情こくじょうによってことなる)。手術しゅじゅつ手順てじゅんとしては以下いかとおり。

  • ひらきむね胸骨きょうこつ正中せいちゅう切開せっかい
  • こころまく切開せっかい心臓しんぞう露出ろしゅつ、(オンポンプの場合ばあいは)カニュレーションの準備じゅんび
  • 上記じょうき並行へいこうしてバイパスに使つか血管けっかん(グラフトとぶ)の採取さいしゅ
  • グラフトの末梢まっしょうがわ冠動脈かんどうみゃく)への吻合ふんごう
  • グラフトの中枢ちゅうすうがわ大動脈だいどうみゃく)への吻合ふんごう(トップエンドが大動脈だいどうみゃく場合ばあいのみ)
  • グラフトのりゅうをダイレクトエコーで確認かくにん
  • 止血しけつ、ドレーン挿入そうにゅう、ペースメーカーリード装着そうちゃく、閉胸、閉創

このうちグラフトにもちいられる血管けっかんと、グラフトの冠動脈かんどうみゃくへの縫合ほうごうかんしてはなんとおりかの方法ほうほうがあるため後述こうじゅつする。

人工じんこう心肺しんぱい装置そうち使用しようする方法ほうほう[編集へんしゅう]

人工じんこう心肺しんぱいによる体外たいがい循環じゅんかん使用しよう心臓しんぞう停止ていしさせて縫合ほうごうおこな黎明れいめいからほどこされているじゅつしき

人工じんこう心肺しんぱい装置そうち使用しようしない方法ほうほう[編集へんしゅう]

従来じゅうらいつねうごいている心臓しんぞうふとすうミリメートルの血管けっかんいつけるのは非常ひじょう困難こんなんであった。しかし、近年きんねんスタビライザーという器具きぐ開発かいはつされ、縫合ほうごうする部位ぶいのみうごきをめることで心臓しんぞううごいている状態じょうたいのまま手術しゅじゅつすることが可能かのうとなった。このじゅつしき選択せんたくする医師いしえてきている。なおこの方法ほうほうオフポンプCABG(OPCAB=オプキャブ)ばれている。

OPCABの利点りてん欠点けってん

人工じんこう心肺しんぱい使用しようしないことで人工じんこう心肺しんぱい使用しようのリスクを回避かいひできることである。また、動脈どうみゃく硬化こうかがひどく人工じんこう心肺しんぱい使用しようできないような場合ばあいでも手術しゅじゅつおこなえる。欠点けってんとしては心臓しんぞううごきをおさえることで心臓しんぞうはたらきが低下ていかしてしまうため、心臓しんぞう機能きのう余裕よゆうがない場合ばあい手術しゅじゅつおこなえないことや手術しゅじゅつ操作そうさちゅう一時いちじてき冠動脈かんどうみゃくりゅう減少げんしょう不整脈ふせいみゃくしょうじる可能かのうせいがあること、じゅつしゃ技量ぎりょう要求ようきゅうされることなどである。

意見いけんかれる項目こうもく[編集へんしゅう]

CABGにかんして、現時点げんじてん明確めいかくさだまっていない事柄ことがらかんして解説かいせつする。現在げんざい根拠こんきょとなるデータをあつめるべく各国かっこく研究けんきゅう調査ちょうさおこなわれており、標準ひょうじゅんてき治療ちりょう方法ほうほう確立かくりつするまでは時間じかんようする。

  • 人工じんこう心肺しんぱい必要ひつよういことから悪影響あくえいきょうすくない(ていおかせかさね手術しゅじゅつ方法ほうほうとして期待きたいされたOPCABであったが、確実かくじつせい疑問ぎもんたれていることも事実じじつである。人工じんこう心肺しんぱい使用しようしたほう手術しゅじゅつ合併症がっぺいしょうすくない、グラフトのひらきそんせいっているなど、すぐれた結果けっかているという報告ほうこくもある。

グラフトにもちいられる血管けっかん[編集へんしゅう]

静脈じょうみゃく使つか場合ばあい静脈じょうみゃくグラフト)と動脈どうみゃく使つか場合ばあい動脈どうみゃくグラフト)に大別たいべつされる。静脈じょうみゃくグラフトはふるくからもちいられていたが、長期間ちょうきかん追跡ついせき調査ちょうさによれば静脈じょうみゃくグラフトは動脈どうみゃくグラフトよりもひらけそんりつひくい。動脈どうみゃくグラフトは、橈骨動脈どうみゃくなど使用しよう部位ぶいによりグラフトの攣縮(れんしゅく)によるりゅう低下ていか問題もんだいとされてきたが、塩酸えんさんジルチアゼム製剤せいざいなど血管けっかん拡張かくちょうやく進歩しんぽにより治療ちりょう成績せいせき改善かいぜんしてきている。

静脈じょうみゃくグラフト
だい伏在ふくざい静脈じょうみゃく
動脈どうみゃくグラフト
うちむね動脈どうみゃく橈骨動脈どうみゃく大網おおあみ動脈どうみゃく
うちむね動脈どうみゃくにグラフトをつなぐ(延長えんちょうする)場合ばあいもある。

脚注きゃくちゅう[編集へんしゅう]

  1. ^ Garrett HE, et al., Aortocoronary bypass with saphenous vein graft. Seven-year follow-up., JAMA. 1973 Feb 12;223(7):792-4.

関連かんれん項目こうもく[編集へんしゅう]