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人工じんこう心肺しんぱい装置そうち

出典しゅってん: フリー百科ひゃっか事典じてん『ウィキペディア(Wikipedia)』

人工じんこう心肺しんぱい装置そうち(じんこうしんぱいそうち)とは、心臓しんぞう外科げかにおける手術しゅじゅつなどのさい一時いちじてき心臓しんぞうはい機能きのう代行だいこうする医療いりょう機器ききである。人工じんこう心肺しんぱいもちいた最初さいしょ成功せいこうれいは、1953ねんアメリカ合衆国あめりかがっしゅうこく外科医げかいジョン・ヘイシャム・ギボンによってジェファーソン大学だいがく病院びょういんにて執刀しっとうされたものである。ギボンはIBMの協力きょうりょく人工じんこう心肺しんぱい装置そうち開発かいはつおこなった。ギボンの成功せいこう、Mayo-Clinicの医師いしたちがギボンの装置そうち改良かいりょうし、Mayo-Gibbonがたばれた。日本にっぽんにおける最初さいしょ成功せいこうれい(1956ねん)は大阪大学おおさかだいがく医学部いがくぶ助手じょしゅ曲直きょくちょく寿夫としおによる。

人工じんこう心肺しんぱい装置そうち外観がいかん

適用てきよう

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人工じんこう心肺しんぱい装置そうちきょせいこころ疾患しっかん弁膜べんまくしょうだい血管けっかん疾患しっかん先天せんてんせいこころ疾患しっかんなどのしん疾患しっかん手術しゅじゅつさい短時間たんじかんだけ使用しようされるものである。ようするに、一般いっぱんてきには手術しゅじゅつさいに、心臓しんぞうをとめる必要ひつようがある場合ばあいや、はいへの循環じゅんかんたもてない場合ばあいなどに、一時いちじてきもちいる装置そうちである。後述こうじゅつのように血栓けっせんができやすいなどリスクもともなう。

構造こうぞう

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おもな機能きのうとして、血液けつえき循環じゅんかん血液けつえきガス交換こうかん二酸化炭素にさんかたんそ除去じょきょ酸素さんそ添加てんか)、体温たいおん調節ちょうせつがある。心臓しんぞう手術しゅじゅつでは心臓しんぞう停止ていしさせ、心臓しんぞうへのりゅう遮断しゃだんしておこなうため、血液けつえきポンプ(人工じんこうしん)により全身ぜんしんへの血液けつえき循環じゅんかん代行だいこうする。また、人工じんこうはいにより、りゅうのなくなるはいのガス交換こうかん機能きのう代行だいこうする。さらに、体温たいおん調節ちょうせつのためのねつ交換こうかんがある。血液けつえきみぎ心房しんぼうからだつされ、人工じんこう心肺しんぱい装置そうち経由けいゆしてうえこう大動脈だいどうみゃく大腿だいたい動脈どうみゃくおくされる。

生体せいたい人工じんこう心肺しんぱい装置そうち使用しようてい体温たいおんはくどうりゅうこう凝固ぎょうこざい大量たいりょう使用しよう[注釈ちゅうしゃく 1]循環じゅんかん血液けつえき流量りゅうりょうつね一定いっていであるなど生理せいりてき状態じょうたいにおかれるためダメージをける。それは短時間たんじかんであれば問題もんだいはないが、長時間ちょうじかんとなるとその影響えいきょうきわめておおきい。また、こう凝固ぎょうこざい使用しようしていてもなお血栓けっせんができやすく、こころはらせいのう梗塞こうそくなどの危険きけんせいたかまる[1]人工じんこう心肺しんぱい装置そうちによって生命せいめい長期間ちょうきかん維持いじすることができないことをかんがえれば、それはあきらかである。

人工じんこう心肺しんぱい体外たいがい循環じゅんかん)の歴史れきしはこうした生理学せいりがくてき環境かんきょうによってしょうじる生体せいたいたいするダメージを如何いか克服こくふくするかといった研究けんきゅうである。体外たいがい循環じゅんかん条件じょうけん出来できかぎ生体せいたい循環じゅんかん条件じょうけんちかづけるためにはくどうりゅう体外たいがい循環じゅんかんおこなったり、あるいは常温じょうおん体外たいがい循環じゅんかんこころみられているのもその1つの努力どりょくである。一方いっぽう輸血ゆけつ手術しゅじゅつ獲得かくとくするために最近さいきんではヘマトクリット15%程度ていどまで同種どうしゅ輸血ゆけつおこなわない高度こうど希釈きしゃくともな体外たいがい循環じゅんかん手術しゅじゅつ手技しゅぎじょう容易たやすさを獲得かくとくする目的もくてきおこなわれる心臓しんぞうのうたいする逆行ぎゃっこう灌流などあたらしい生理学せいりがくてき環境かんきょう導入どうにゅうされてきている。いずれにしても体外たいがい循環じゅんかん短時間たんじかんであれば生体せいたいはかなりの生理学せいりがくてき環境かんきょうれることが可能かのうであるが、長時間ちょうじかんおよんだりあるいはじゅう症例しょうれいなど生体せいたいがわ条件じょうけんわる場合ばあい生理学せいりがくてき環境かんきょうそのものが術後じゅつご合併症がっぺいしょう直結ちょっけつする。体外たいがい循環じゅんかんのもたらす生理学せいりがくてき環境かんきょうひらき心術しんじゅつともなったサイトカイン増加ぞうか密接みっせつ関連かんれんしているとかんがえられているが、そのじょ解明かいめい今日きょうてき研究けんきゅう課題かだいである。より安全あんぜんかつ有効ゆうこう体外たいがい循環じゅんかんおこなうために体外たいがい循環じゅんかん病態びょうたい生理せいりさら研究けんきゅうし、解明かいめいしてゆく必要ひつようがある。

けいがわてき心肺しんぱい補助ほじょ装置そうち(PCPS)

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けいがわてき心肺しんぱい補助ほじょ装置そうち(けいひてきしんぱいほじょそうち、えい: Percutaneous CardioPulmonary System, Percutaneous cardio pulmonary support; PCPS)は、おも急性きゅうせい心肺しんぱい補助ほじょ使用しようされる人工じんこう心肺しんぱい装置そうちである。そののとおり注射ちゅうしゃはりのように皮膚ひふつらぬいて血管けっかんカニューレ Cannulaおく血管けっかんだつ血管けっかん)を挿入そうにゅうするのが特徴とくちょうである。また、血液けつえき回路かいろ非常ひじょう単純たんじゅんであるためすう分間ふんかん準備じゅんび装着そうちゃくすることができ、こころはらせいショックの蘇生そせい手段しゅだんとしてもちいる場合ばあいもある。PCPSでは、大腿だいたい動静どうせいみゃくからおくだつおこない、血液けつえき遠心えんしんポンプから人工じんこうはいでO2ガスがくわえられ、大腿だいたい動脈どうみゃく腹部ふくぶ大動脈だいどうみゃく胸部きょうぶ大動脈だいどうみゃくへと逆流ぎゃくりゅうする。そのため、PCPSが使用しようされるおおくの患者かんじゃ多少たしょうでも自己じこしんうごいている場合ばあいは、順行じゅんこうせいうえぎょう大動脈だいどうみゃく全身ぜんしんへと血液けつえきおくられており、自己じこしん由来ゆらい血液けつえきとPCPSの血液けつえきじん動脈どうみゃく分岐ぶんき付近ふきんで2つの灌流がぶつかることとなる、非常ひじょう生理せいりてき血行けっこう動態どうたいとなる[2]。PCPSは、重症じゅうしょう冠動脈かんどうみゃく疾患しっかん症例しょうれいけいがわてき冠動脈かんどうみゃく形成けいせいじゅつ (PTCA) 施行しこう循環じゅんかん補助ほじょや、呼吸こきゅう不全ふぜんにおける呼吸こきゅう補助ほじょ重症じゅうしょう心不全しんふぜん症例しょうれいたいして適用てきようされるが、ひだりしつ負荷ふか軽減けいげんできないことが決定的けっていてき弱点じゃくてんとなる。また、PCPS装着そうちゃく遅延ちえんにより心肺しんぱい機能きのう回復かいふくしても臓器ぞうき影響えいきょうのこすこととなるため、適用てきよう基準きじゅんもうけている。

海外かいがいではPCPSではなくECMO(エクモ、えい: extracorporeal membrane oxygenation体外たいがいしきまくがた人工じんこうはい)とばれている[3]

日本にっぽんではPCPSとV-A ECMOがほぼ同義どうぎで、日本にっぽんでECMOというときはV-V ECMOをすことがほとんど[3]

適用てきよう病態びょうたい
  • 体外たいがい循環じゅんかん離脱りだつ困難こんなんしょう
  • 術後じゅつごてい心拍しんぱくりょう症候群しょうこうぐん(LOS)難治なんじせい不整脈ふせいみゃくふく
  • 急性きゅうせい心筋梗塞しんきんこうそくしんげんせいショック
  • 心筋しんきんえんによるてい心拍しんぱくりょう症候群しょうこうぐん
  • 重症じゅうしょう冠動脈かんどうみゃく疾患しっかん症例しょうれいのPTCAの施行しこう
  • 呼吸こきゅう不全ふぜんたいするECMO
判断はんだん基準きじゅん
  • しゅちょうひだり心不全しんふぜん こころ係数けいすう成人せいじん)<2.0ℓ/min/m2(小児しょうに)<2.3ℓ/min/m2、収縮しゅうしゅく動脈どうみゃくあつ<80 - 90mmHg、ひだり心房しんぼうあつ>18mmHg、

みぎ心不全しんふぜん こころ係数けいすう成人せいじん)<2.0ℓ/min/m2(小児しょうに)<2.3ℓ/min/m2、収縮しゅうしゅく動脈どうみゃくあつ<80 - 90mmHg、中心ちゅうしん静脈じょうみゃくあつ>18mmHg、ひだり心房しんぼうあつ>5mmHg

  • ふくちょう尿にょうりょう<0.5mℓ/kg/h、混合こんごう静脈じょうみゃく酸素さんそ飽和ほうわ<65%、動脈血どうみゃくけつ酸素さんそ含量較差かくさ>7.0Vol%

注釈ちゅうしゃく

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  1. ^ 人工じんこう心肺しんぱい装置そうち当然とうぜんながら人工じんこうぶつであって生体せいたい組織そしきではない。したがって装置そうちないでは異物いぶつ血液けつえきせっする。ヒトなどの血液けつえきには異物いぶつせっしたときにも凝固ぎょうこけい活性かっせいされるという性質せいしつがある。このため装置そうちないでは血液けつえき凝固ぎょうここりやすい。よってこう凝固ぎょうこざい使用しようして血栓けっせんができるのをふせ必要ひつようがある。

出典しゅってん

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  1. ^ 脳死のうし女児じょじ 緊急きんきゅう人工じんこう心臓しんぞうやむなく長期ちょうき使用しよう 1がつ14にち 1853ふん - 日本にっぽん放送ほうそう協会きょうかい(ウェブ魚拓ぎょたくによる保存ほぞん
  2. ^ JSEPTIC CE教材きょうざいシリーズ 対象たいしょう:レベル1”. 2019ねん10がつ29にち閲覧えつらん
  3. ^ a b ECMO 藤田ふじた医科いか大学だいがく 麻酔ますいおかせかさね制御せいぎょ医学いがく講座こうざ

関連かんれん項目こうもく

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外部がいぶリンク

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