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脂肪酸しぼうさん

出典しゅってん: フリー百科ひゃっか事典じてん『ウィキペディア(Wikipedia)』
脂肪酸しぼうさんれい

脂肪酸しぼうさん(しぼうさん、Fatty acid、FA)とは、炭化たんか水素すいそくさりにカルボキシもとゆうした1カルボンさんである[1]飽和ほうわ結合けつごう有無うむにより、飽和ほうわ脂肪酸しぼうさんおよび飽和ほうわ脂肪酸しぼうさんけられる場合ばあいおおい。天然てんねん存在そんざいする脂肪酸しぼうさんだい部分ぶぶん分岐ぶんきのない炭化たんか水素すいそくさりをもつが、ぶんえだくさり環状かんじょう構造こうぞう脂肪酸しぼうさん存在そんざいする。生体せいたいないにおいて、細胞さいぼうまく構成こうせいするおおくの脂質ししつ分子ぶんし主要しゅよう成分せいぶんとして重要じゅうようである(リン脂質ししつスフィンゴ脂質ししつコレステロールエステルなど)。脂肪酸しぼうさんグリセリンエステル結合けつごうしたアシルグリセロール油脂ゆし構成こうせいする。

分類ぶんるい

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脂肪酸しぼうさんおも炭素たんそすうおよび飽和ほうわ結合けつごう有無うむ幾何きか異性いせいたい種類しゅるいによって分類ぶんるいされる。

炭素たんそすうによる分類ぶんるい

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炭素たんそすうおうじてたんくさりちゅうくさりちょうくさり脂肪酸しぼうさん区別くべつする。

なお炭素たんそすう10以上いじょうのものを高級こうきゅう脂肪酸しぼうさん(higher fatty acid)ともぶ。

飽和ほうわによる分類ぶんるい

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飽和ほうわによる分類ぶんるいはさまざまであるが、基本きほんてきには以下いか分類ぶんるいしたがう。

また飽和ほうわ脂肪酸しぼうさんじゅう結合けつごうかずが1つであるか、複数ふくすうであるかによって以下いか分類ぶんるいがなされる。

  • モノエン脂肪酸しぼうさん一価いっか飽和ほうわ脂肪酸しぼうさん、monounsaturated fatty acid, MUFA) — じゅう結合けつごうかずが1つである
  • ポリエン脂肪酸しぼうさんあたい飽和ほうわ脂肪酸しぼうさん、polyunsaturated fatty acid, PUFA)— じゅう結合けつごうかずが2つ以上いじょうである。じゅう結合けつごうかずが4つ以上いじょうのものを高度こうど飽和ほうわ脂肪酸しぼうさん場合ばあいもある。

また、じゅう結合けつごう有無うむおよび炭素たんそすう差異さいによって名称めいしょうことなる。脂肪酸しぼうさん#命名めいめいほうにてべる。

幾何きか異性いせいたいによる分類ぶんるい

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飽和ほうわ脂肪酸しぼうさんは、幾何きか異性いせいたいにcisがたとtransがたがある。天然てんねん存在そんざいするのはほとんどがcisがたである。transがたのものをとくトランス脂肪酸しぼうさんんで区別くべつすることがある。

その分類ぶんるい

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その分類ぶんるいには以下いかのようなものがある。

  • ぶんえだ脂肪酸しぼうさんぶんえだくさりゆうする脂肪酸しぼうさん
  • 環状かんじょう脂肪酸しぼうさん環状かんじょう構造こうぞうゆうする
  • ヒドロキシ脂肪酸しぼうさんヒドロキシもとふく
  • 奇数きすう炭素たんそ脂肪酸しぼうさん偶数ぐうすう炭素たんそ脂肪酸しぼうさん比較ひかくして酸化さんか効率こうりつひくい(βべーた酸化さんか
  • 偶数ぐうすう炭素たんそ脂肪酸しぼうさん奇数きすう炭素たんそ脂肪酸しぼうさん比較ひかくして酸化さんか効率こうりつたか

化学かがくてき性質せいしつ

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炭素たんそすう10以上いじょう飽和ほうわ脂肪酸しぼうさん融点ゆうてんくさりちょうじゅんたかくなり炭素たんそすう30のトリアコンタンさん融点ゆうてんは 93.6 ℃だが、炭素たんそすう9以下いか飽和ほうわ脂肪酸しぼうさんでは解離かいり水素すいそ結合けつごうによるクラスター形成けいせいとう様々さまざま原因げんいんで、炭素たんそくさりながさのじゅんになるわけではない。炭素たんそすう2の酢酸さくさんでは融点ゆうてんが16.7 ℃なのにたいして、炭素たんそすう5のペンタンさん融点ゆうてんもっとひくく−34.5 ℃である。

飽和ほうわ脂肪酸しぼうさんおな炭素たんそすう飽和ほうわ脂肪酸しぼうさんくらべてたか融点ゆうてんしめす。

代謝たいしゃ

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ヒトふくおおくの生体せいたいないではエネルギーげんとしてこうてき代謝たいしゃされる(βべーた酸化さんか)。脂肪酸しぼうさん体内たいないにおいてはほとんどが筋肉きんにく細胞さいぼう存在そんざいしている。筋肉きんにく細胞さいぼうないにおいて、脂肪酸しぼうさんカルニチンによってミトコンドリア内部ないぶ輸送ゆそうされる。ミトコンドリアないまくはアシルCoAを直接ちょくせつ透過とうかしないため、カルニチンが脂肪酸しぼうさんアシル運搬うんぱんたい役割やくわりたす(動植物どうしょくぶつ共通きょうつう)。脂肪酸しぼうさんアシルCoAはカルニチンと一時いちじてき結合けつごうし、脂肪酸しぼうさんアシルカルニチンを生成せいせいする。この反応はんのうミトコンドリアがいまくまれたカルニチンアシルトランスフェラーゼIにより触媒しょくばいされる。その脂肪酸しぼうさんはミトコンドリアないβべーた酸化さんか酢酸さくさんにまで分解ぶんかいされ、生成せいせいしたアセチルCoAクエン酸くえんさん回路かいろつうじてエネルギーに転換てんかんされる。

マウス対象たいしょうとした動物どうぶつ実験じっけんにおいて、あるしゅ脂肪酸しぼうさんには腫瘍しゅよう細胞さいぼう脂肪しぼう代謝たいしゃ阻害そがいすることによりこうがん効果こうかがある事例じれい複数ふくすう報告ほうこくされている[2][3][4][5]奇数きすう炭素たんそ脂肪酸しぼうさんは、偶数ぐうすう炭素たんそ脂肪酸しぼうさん比較ひかくして酸化さんか効率こうりつひくいため、白血病はっけつびょう患者かんじゃ骨髄こつづいふくまれるがん細胞さいぼうのエネルギーげんである脂肪酸しぼうさん代謝たいしゃ阻害そがいする効果こうかがあること判明はんめいしており、がん阻害そがいざいとしての効果こうか期待きたいされる[6][7]

脂肪酸しぼうさんグリセリンとのエステルからだトリグリセリド)のかたち摂取せっしゅされることがおおい。たとえば医学いがく用語ようごで「脂肪しぼう」や「中性ちゅうせい脂肪しぼう」とえば、通常つうじょう脂肪酸しぼうさんトリグリセリド」のことをす。ちょうくさり脂肪酸しぼうさんグリセリド(LCT)とちゅうくさり脂肪酸しぼうさんトリグリセリド(MCT)とでは、摂取せっしゅまったことなる吸収きゅうしゅう形態けいたい[8]。LCTおよびMCTも小腸しょうちょうにおいて、エステラーゼ加水かすい分解ぶんかいされ、脂肪酸しぼうさんグリセリンになるまでは共通きょうつうである。しかしLCTは小腸しょうちょう上皮じょうひから摂取せっしゅリンパ管りんぱかんはいって全身ぜんしん循環じゅんかんし、むねかんつうじて徐々じょじょ血液けつえきはい[9]。これにたいしてMCTは直接ちょくせつ血液けつえき循環じゅんかんはいる。したがってMCTはすみやかに代謝たいしゃされるのにたいして、LCTの代謝たいしゃはMCTよりおそい(すくなくとも数時間すうじかん[10]俗説ぞくせつではMCTはすみやかにケトンたいわりケトンたい濃度のうど増加ぞうか生理せいりてきケトーシス)を誘導ゆうどうするが、LCTは中性ちゅうせい脂肪しぼうになり体内たいない蓄積ちくせきするという。MCTはケトンたいわりやすいのはたしかだが、インスリンがMCTがケトンたいわることを阻害そがいしているため、とうしつ摂取せっしゅする通常つうじょう食事しょくじではMCTはケトンたい増加ぞうかさせることはない[11]。すなわちMCTはとうしつ制限せいげんしょくまたはケトンしょくとともにべないと、MCTはケトンたい増加ぞうかさせることはない。最近さいきんではケトンしょくにMCTがれられている。

飽和ほうわ脂肪酸しぼうさんぎると、カロリー不足ふそくでないかぎ血清けっせいそうコレステロール濃度のうど上昇じょうしょうさせ、きょせいこころ疾患しっかんこしやすくするとわれている。飽和ほうわ脂肪酸しぼうさんは、WHO/FAOが肥満ひまん問題もんだいたいする戦略せんりゃくのひとつとして摂取せっしゅ制限せいげんげている[12]

飽和ほうわ脂肪酸しぼうさん

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なま合成ごうせい

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ふく脂肪酸しぼうさんせい合成ごうせいけいクリックで拡大かくだい解説かいせつ

脂肪酸しぼうさん合成ごうせいという場合ばあい通常つうじょう炭素たんそすう16のパルミチンさん合成ごうせい、さらにパルミチンさん起点きてんとした各種かくしゅ合成ごうせい経路けいろす(飽和ほうわ脂肪しぼうさの合成ごうせいなど)。炭素たんそすう15以下いか脂肪酸しぼうさんについては統一とういつてきなま合成ごうせい回路かいろ存在そんざいしない。おおくは細菌さいきんによる発酵はっこう作用さようや、よりなが炭素たんそくさりをもつ脂肪酸しぼうさんβべーた酸化さんかにより生成せいせいする[13][14]

パルミチンさんは、脂肪酸しぼうさん合成ごうせい酵素こうそ(fatty acid synthase; FAS)によりアセチルCoAおよびマロニルCoAから合成ごうせいされる。IがたおよびIIがたの2種類しゅるい(FAS IおよびFAS II)がられており、動物どうぶつ一部いちぶ菌類きんるい細菌さいきんはFAS Iを、その生物せいぶつはFAS IIをつ。反応はんのう過程かていはどちらもおなじである。まず、アセチルCoAおよびマロニルCoAはそれぞれアシルキャリアータンパクしつ (acyl career protein; ACP) に結合けつごうして活性かっせいされる(アセチルACPおよびマロニルACP)。つづいてアセチルACP(炭素たんそすう2)を出発しゅっぱつ物質ぶっしつ(プライマー)として、ここにマロニルACP(炭素たんそすう3)がだつ炭酸たんさんてきかえちぢみあわしていく(クライゼンちぢみあい)。反応はんのうサイクルごとに炭素たんそすうは2ずつ増加ぞうかし、最終さいしゅう生成せいせいぶつはパルミトイルACPである。生成せいせいしたパルミトイルACPはチオエステラーゼによってパルミチンさん(C16)とACPに加水かすい分解ぶんかいされる。生成せいせいした脂肪酸しぼうさんは、グリセロールに結合けつごうしてトリグリセリドとなって蓄積ちくせきされるほか、グリセロリン脂質ししつ生産せいさん使用しようされ、これは細胞さいぼうまく主要しゅよう構成こうせい物質ぶっしつとなる。細菌さいきん場合ばあい、すみやかに細胞さいぼうまく脂質ししつ分子ぶんしまれるため蓄積ちくせききない。炭素たんそすう16以上いじょうについても、同様どうよう炭素たんそくさりが2ずつ伸長しんちょうされる(たとえばC18ステアリンさん)。

飽和ほうわ脂肪酸しぼうさん

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飽和ほうわ脂肪酸しぼうさんがエネルギー代謝たいしゃ関与かんよする一方いっぽう飽和ほうわ脂肪酸しぼうさん栄養素えいようそとして重要じゅうようである。たとえば、動物どうぶつ場合ばあいリノールさんαあるふぁ-リノレンさんなどは自身じしんつくすことができないため、外部がいぶから摂取せっしゅすることが必要ひつようとなる必須ひっす脂肪酸しぼうさん(ビタミンF)である。同様どうよう高度こうど飽和ほうわ脂肪酸しぼうさんプロスタグランジンるい原料げんりょうとして、新生児しんせいじ乳児にゅうじ中枢ちゅうすう神経しんけいけい発育はついくため必須ひっすである[15][16]

なま合成ごうせい

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飽和ほうわ脂肪酸しぼうさん飽和ほうわ脂肪酸しぼうさん飽和ほうわ結合けつごう導入どうにゅうすることで合成ごうせいされ、嫌気いやけせいおよびこう気性きしょうの2つのなま合成ごうせい経路けいろられている。シアノバクテリアおよびかく生物せいぶつではこう気性きしょう経路けいろ利用りようされるのにたいして、細菌さいきん嫌気いやけせい経路けいろゆうする。天然てんねんつかっている飽和ほうわ脂肪酸しぼうさんはほとんどが偶数ぐうすう炭素たんそすうちょくくさりのcisがたである。飽和ほうわ結合けつごう位置いちは、脂肪酸しぼうさんのカルボニルもとからかぞえた炭素たんそ個数こすうΔでるた)、もしくはメチルもとまつはしからかぞえた個数こすうωおめが)であらわす。また、飽和ほうわ結合けつごう個数こすうそう炭素たんそすううしろにつけてあらわす。たとえば炭素たんそすう18の脂肪酸しぼうさんちょくくさりちゅうに2じゅう結合けつごうを1つもつ場合ばあい、18:1とあらわす(オレインさん)。

こう気性きしょう飽和ほうわ脂肪酸しぼうさん合成ごうせいデサチュレーゼばれる酵素こうそにより触媒しょくばいされる。飽和ほうわ結合けつごう導入どうにゅうされる脂肪酸しぼうさん炭素たんそくさりじょう位置いちたいして、それぞれことなるデサチュレーゼが存在そんざいする。ステアリンさん(18:0)のΔでるた9ωおめが9でもある)にじゅう結合けつごう付加ふかされると18:1のオレインさんとなる。オレインさんωおめが9飽和ほうわ結合けつごうをもつため、ωおめが-9脂肪酸しぼうさん分類ぶんるいされる。リノールさんリノレンさんなど、2つ以上いじょう飽和ほうわ結合けつごうをもつ脂肪酸しぼうさんあたい飽和ほうわ脂肪酸しぼうさんばれ、ヒトにとって重要じゅうよう生理せいり機能きのうをもつ。しかし自身じしんでは合成ごうせいできないため、外部がいぶから摂取せっしゅする必要ひつようのある必須ひっす脂肪酸しぼうさんである。あたい飽和ほうわ脂肪酸しぼうさん天然てんねんでは植物しょくぶつ微生物びせいぶつにより合成ごうせいされる。リノールおよびリノレンさんはそれぞれωおめが-6脂肪酸しぼうさんおよびωおめが-3脂肪酸しぼうさんである。

ωおめが-6脂肪酸しぼうさん

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ヒトをふくめた動物どうぶつ体内たいないでは、リノールさんはさらにアラキドンさん変換へんかんされる。さらに、このアラキドンさん(20:4(n-6))から変換へんかんされて生成せいせいされる炎症えんしょう・アレルギー反応はんのう関連かんれんしたつよ生理せいり活性かっせい物質ぶっしつであるωおめが-6プロスタグランジン、n-6ロイコトリエンひとしオータコイドるいは、アテロームせい動脈どうみゃく硬化こうかしょう喘息ぜんそく関節かんせつえん血管けっかん病気びょうき血栓けっせんしょう免疫めんえき炎症えんしょう過程かてい腫瘍しゅよう増殖ぞうしょくにおける過度かどωおめが-6作用さよう抑制よくせいする調合ちょうごうやく開発かいはつ標的ひょうてきとなっている[17]。n-3とn-6エイコサノイド前駆ぜんくたい生成せいせいについて代謝たいしゃ酵素こうそ共通きょうつうしているため、n-6脂肪酸しぼうさんとn-3脂肪酸しぼうさんとが競争きょうそうてき相互そうご作用さようをする。

ωおめが-3脂肪酸しぼうさん

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ヒトをふくめた動物どうぶつ体内たいないでは、αあるふぁ-リノレンさんエイコサペンタエンさん(EPA)を経由けいゆしてドコサヘキサエンさん(DHA)が生成せいせいされる[17]。DHAは飽和ほうわきわめてたか細胞さいぼうまく流動りゅうどうせい保持ほじ寄与きよしている。神経しんけい細胞さいぼうは、じくさくじょう突起とっきなどの凹凸おうとつおおんだ構造こうぞうゆうしているため、まく成分せいぶん極端きょくたんおおくなっている[18]。DHAは精液せいえきのう網膜もうまくリン脂質ししつふくまれる脂肪酸しぼうさん主要しゅよう成分せいぶんである。

トランス脂肪酸しぼうさん

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トランス脂肪酸しぼうさんうえ)とシス脂肪酸しぼうさんした

トランス脂肪酸しぼうさんは、構造こうぞうちゅうトランスがたじゅう結合けつごう飽和ほうわ脂肪酸しぼうさんである。トランス脂肪酸しぼうさん天然てんねんにはほとんど存在そんざいしない。植物しょくぶつ魚油ぎょゆなどからられる天然てんねんの(シスがた飽和ほうわ脂肪酸しぼうさん融点ゆうてんひくく、常温じょうおん液体えきたいである。また、酸化さんかによる劣化れっかこりやすいという側面そくめんがある。そのため水素すいそ付加ふかおこなって、融点ゆうてんたか常温じょうおん固体こたいの、かつ酸化さんかによる劣化れっかこりにくい飽和ほうわ脂肪酸しぼうさん変換へんかんする(硬化こうかばれる)。このさい飽和ほうわ脂肪酸しぼうさんにならなかった一部いちぶ飽和ほうわ脂肪酸しぼうさんのシスがた結合けつごうがトランスがた変化へんかエライジン)して、トランス脂肪酸しぼうさんとなる。部分ぶぶん硬化こうか原料げんりょうふくマーガリンファットスプレッドショートニングなどにトランス脂肪酸しぼうさんふくまれる。多量たりょう摂取せっしゅするとLDLコレステロール悪玉あくだまコレステロール)を増加ぞうかさせ心臓しんぞう疾患しっかんリスクたかめるといわれ、2003ねん以降いこう、トランス脂肪酸しぼうさんふく製品せいひん使用しよう規制きせいするくにえている[よう出典しゅってん]

トランス脂肪酸しぼうさん天然てんねんにもわずかながら存在そんざいする。うしひつじなどの反芻はんすう動物どうぶつつくるミルクやにくには少量しょうりょうのトランス脂肪酸しぼうさんふくまれている[19]。これは反芻はんすう動物どうぶつ体内たいないにいる細菌さいきん発酵はっこうによって生成せいせいする。工業こうぎょうてき生産せいさんされたトランス脂肪酸しぼうさん健康けんこうへの影響えいきょうたいして、天然てんねん由来ゆらいのトランス脂肪酸しぼうさんについては、いまのところ健康けんこうへの影響えいきょう確認かくにんされていない[19]。これは同時どうじ摂取せっしゅすることになる飽和ほうわ脂肪酸しぼうさんほうがはるかにりょうおおいので、トランス脂肪酸しぼうさん量的りょうてき問題もんだいとなるレベルになっていないためである。

遊離ゆうり脂肪酸しぼうさん

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遊離ゆうり脂肪酸しぼうさん化合かごうぶつ結合けつごうしていない脂肪酸しぼうさんし、中性ちゅうせい脂肪しぼう分解ぶんかい由来ゆらいする。遊離ゆうり脂肪酸しぼうさんみず不溶ふようであるため、これらの脂肪酸しぼうさん血漿けっしょう蛋白たんぱくアルブミン結合けつごうして、溶化、循環じゅんかん輸送ゆそうされている。ちゅう遊離ゆうり脂肪酸しぼうさん濃度のうどは、アルブミン結合けつごう部位ぶい有無うむ状況じょうきょうによって制限せいげんされる。

遊離ゆうり脂肪酸しぼうさんは、リポ蛋白質たんぱくしつリパーゼ(LPL)によってリポ蛋白質たんぱくしつから「放出ほうしゅつされ」て、脂肪しぼう細胞さいぼうはいる。そこで、それは、グリセロールとともにエステルされることによって、トリグリセリドへとさい構成こうせいされる。脂肪しぼう細胞さいぼうには、トリグリセリド維持いじにおける重要じゅうよう生理せいりてき役割やくわりインスリンたいせい遊離ゆうり脂肪酸しぼうさん水準すいじゅん決定けっていする役割やくわりがある。

命名めいめいほう

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脂肪酸しぼうさん命名めいめいほうはIUPAC生化学せいかがく命名めいめいほう[20]定義ていぎされている。(なお、このこう符号ふごうRule Lip-…はどう命名めいめいほうふし番号ばんごうしめす)

脂肪酸しぼうさん天然てんねん脂肪しぼう加水かすい分解ぶんかいしてられる脂肪しぼうぞくモノカルボンさんである。ひろ使用しようされている遊離ゆうり脂肪酸しぼうさん(free fatty acids)やエステル脂肪酸しぼうさん(nonesterified fatty acids)というかたり使用しようされているが、遊離ゆうりエステルという修飾しゅうしょく徐々じょじょ廃止はいしすべきである(Rule[20] Lip-1.1)。また、これらのアクロニムであるFFANEFAなどは使用しようすべきではない(Rule[20] Lip-1.14)。いいかえると、厳密げんみつには炭素たんそすうが3以下いかなど天然てんねん脂肪しぼうふくまれないものは脂肪しぼうぞくモノカルボンさんぶべきであるが総称そうしょうとして脂肪酸しぼうさんばれる。

なお脂肪酸しぼうさんもとアシル(もと)というかたりしめ場合ばあいがあるが、アシル(acyl)はIUPAC有機ゆうき化合かごうぶつ命名めいめいほうによるものである。アシルは任意にんいながさのちょくくさり構造こうぞうつがIUPAC生化学せいかがく命名めいめいほう脂肪酸しぼうさん炭素たんそすうが4以上いじょうのものをす。そして、炭素たんそすうが10をえる(>C10)脂肪酸しぼうさん高級こうきゅう脂肪酸しぼうさん(higher fatty acids)とばれている。(Rule[20] Lip-1.2)

脂肪酸しぼうさんとそのアシルもと命名めいめいはIUPAC有機ゆうき化合かごうぶつ命名めいめいほう(Rule C-4)にしたがうまた許容きょよう慣用かんようめい略号りゃくごうについてはしたひょうしめす。いままでは2つ以上いじょうじゅう結合けつごうゆうする飽和ほうわ脂肪酸しぼうさんでギリシャ文字もじ使用しようして異性いせいたいしめしていた(れいαあるふぁ-ないしはγがんま-リノレンさん)、これはじゅう結合けつごう位置いち番号ばんごう列挙れっきょする方法ほうほうれい (9,12,15)-リノレンないしは(6,9,12)-リノレンさん)にえるべきである。しかし、じゅう結合けつごう位置いちしめすさいに接頭せっとうとしてギリシャ文字もじ使つか方法ほうほう位置いち列挙れっきょする方法ほうほう省略形しょうりゃくけいとして使用しようしてもい(Rule[20] Lip-1.6)。あるいはじゅう結合けつごう位置いちはIUPAC有機ゆうき化合かごうぶつ命名めいめいほう省略形しょうりゃくけいであるΔでるた使用しようしてもよい(れい Δでるた9,Δでるた12,Δでるた15-リノレンさん)。

また脂肪酸しぼうさん炭素たんそすうじゅう結合けつごうかずわせ(れい 16:0 = パルミチンさん, 18:1 = オレインさん )でしめしてもい。アシルもと場合ばあいは(stearyl-のわりに)(18:0)acyl-あらわしてもい (Rule[20] Lip-1.15)。

脂肪酸しぼうさんまつはしカルボキシもとからもっとはなれた位置いち)からおな位置いちじゅう結合けつごうつことをしめ場合ばあいは(れい末端まったんから9番目ばんめじゅう結合けつごう脂肪酸しぼうさんグループの場合ばあい)はn-9(nは具体ぐたいてきには当該とうがい脂肪酸しぼうさん炭素たんそすう意味いみする)、あるいはωおめが9しめす(ωおめがじゅう結合けつごう位置いちしめすギリシャ文字もじ省略形しょうりゃくけい)。すなわちオレインさんじゅう結合けつごう18-9とネルボンさん24-9とはωおめが9[21]総称そうしょうする (Rule[20] Lip-1.16)。飽和ほうわ脂肪酸しぼうさんは、ωおめが3 系列けいれつか、ωおめが6 系列けいれつかをはっきりさせるため、20:5 ω3あるいは20:5(n-3)と表記ひょうきすることもある。

脂肪酸しぼうさん命名めいめいれい (Rule[20] Lip. Appendix A, Appendix B)
数値すうち表現ひょうげん
(Numerical symbol)
しめせせいしき
CH3-(R)-CO2H
組織そしきめい 慣用かんようめい 略号りゃくごう 融点ゆうてん(℃)[22]
4:0 -(CH2)2- ブタンさん 酪酸(ブチルさん Bu  
5:0 -(CH2)3- ペンタンさん よしくささん(バレリアンさん Pe  
6:0 -(CH2)4- ヘキサンさん カプロンさん Hx  
7:0 -(CH2)5- ヘプタンさん エナントさん(ヘプチルさん Hp  
8:0 -(CH2)6- オクタンさん カプリルさん Oc  
9:0 -(CH2)7- ノナンさん ペラルゴンさん Nn  
10:0 -(CH2)8- デカンさん カプリンさん Dec  
12:0 -(CH2)10- ドデカンさん ラウリンさん Lau 44.2
14:0 -(CH2)12- テトラデカンさん ミリスチンさん Myr 53.9
15:0 -(CH2)13- ペンタデカンさん ペンタデシルさん    
16:0 -(CH2)14- ヘキサデカンさん パルミチンさん Pam 63.1
16:1(n-7) 16:1(Δでるた9) -(CH2)5CH=CH(CH2)7- 9-ヘキサデセンさん パルミトレインさん ΔでるたPam 0.5
17:0 -(CH2)15- ヘプタデカンさん マルガリンさん    
18:0 -(CH2)16- オクタデカンさん ステアリンさん Ste 69.6
18:1(n-9) 18:1(Δでるた9) -(CH2)7CH=CH(CH2)7- cis-9-オクタデセンさん オレインさん Ole 14.0
18:1(n-7) 18:1(Δでるた11) -(CH2)5CH=CH(CH2)9- 11-オクタデセンさん バクセンさん Vac  
18:2(n-6) 18:2(Δでるた9,12) -(CH2)3(CH2CH=CH)2(CH2)7- cis,cis-9,12-オクタデカジエンさん リノールさん Lin -5.0
18:3(n-3) 18:3(Δでるた9,12,15) -(CH2CH=CH)3(CH2)7- 9,12,15-オクタデカントリエンさん (9,12,15)-リノレンさん αあるふぁLnn -11.3
18:3(n-6) 18:3(Δでるた6,9,12) -(CH2)3(CH2CH=CH)3(CH2)4- 6,9,12-オクタデカトリエンさん (6,9,12)-リノレンさん γがんまLnn  
18:3(n-5) 18:3(Δでるた9,11,13) -(CH2)3(CH=CH)3(CH2)7- 9,11,13-オクタデカトリエンさん エレオステアリンさん eSte  
20:0 -(CH2)18- エイコサンさん アラキジンさん Ach 75.6
20:2(n-9) 20:2(Δでるた8,11) -(CH2)6(CH2CH=CH)2(CH2)6- 8,11-エイコサジエンさん   Δでるた2Arc  
20:3(n-9) 20:3(Δでるた5,8,11) -(CH2)6(CH2CH=CH)3(CH2)3- 5,8,11-エイコサトリエンさん ミードさん Δでるた3Arc  
20:4(n-6) 20:4(Δでるた5,8,11,14) -(CH2)3(CH2CH=CH)4(CH2)3- 5,8,11,14-エイコサテトラエンさん アラキドンさん Δでるた4Arc -49.5
22:0 -(CH2)20- ドコサンさん ベヘンさん Beh 81.5
24:0 -(CH2)22- テトラコサンさん リグノセリンさん Lig 86.0
24:1 -(CH2)7CH2CH=CH(CH2)13- cis-15-テトラコサンさん ネルボンさん Ner  
26:0 -(CH2)24- ヘキサコサンさん セロチンさん Crt  
28:0 -(CH2)26- オクタコサンさん モンタンさん Mon  
30:0 -(CH2)28- トリアコンタンさん メリシンさん    

脚注きゃくちゅう

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  1. ^ IUPAC Gold Book - fatty acids
  2. ^ 磯田いそだ好弘よしひろ, 西沢にしざわ幸雄ゆきお, 山口やまぐち茂彦しげひこ, 平野ひらの二郎じろう, 山本やまもと明彦あきひこ, 沼田ぬまた光弘みつひろ脂質ししつこうがん効果こうか : マウスの移植いしょくがんにかんする局所きょくしょ投与とうよ遊離ゆうり脂肪酸しぼうさんこうがん活性かっせい」『あぶら化学かがくだい42かんだい11ごう日本にっぽん学会がっかい、1993ねん、923-928ぺーじdoi:10.5650/jos1956.42.923 
  3. ^ 五十嵐いがらし美樹みき, 宮澤みやざわようおっと脂質ししつがガンをおさえる 共役きょうやく脂肪酸しぼうさん有効ゆうこうせい」『化学かがく生物せいぶつ』 2000ねん 38かん 8ごう p.529-531, doi:10.1271/kagakutoseibutsu1962.38.529, 日本にっぽん農芸のうげい学会がっかい
  4. ^ 北浦きたうら靖之やすゆき、「ことなる脂肪酸しぼうさんわせることで強力きょうりょくにがん細胞さいぼう死滅しめつさせる
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  6. ^ <ページがつかりません>アボカド由来ゆらい成分せいぶんこうがんざい効果こうかたかめることを発見はっけん 順天堂大学じゅんてんどうだいがく [リンク]
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関連かんれん項目こうもく

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外部がいぶリンク

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