のう

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チンパンジーのう

のう(のう、えい: brainどく: Gehirn: cerebrumまれ: εγκέφαλος, enkephalos)は、動物どうぶつ頭部とうぶにある、神経しんけいけい中枢ちゅうすう[1]狭義きょうぎには脊椎動物せきついどうぶつのものをすが、より広義こうぎには脊椎動物せきついどうぶつ頭部とうぶ神経しんけいぶしをもふくむ。脊髄せきずいとともに中枢ちゅうすう神経しんけいけいをなし、感情かんじょう思考しこう生命せいめい維持いじその神経しんけい活動かつどう中心ちゅうしんてき指導しどうてき役割やくわりになう。

おもグリア細胞さいぼう神経しんけい細胞さいぼうからなる器官きかんだが、そのどちらでもない構造こうぞう内在ないざいする。のう脊髄せきずいえきとおみちとなる空隙くうげきのうしつ)や、ホルモン物質ぶっしつ分泌ぶんぴつする内分泌ないぶんぴつけいである。

発生はっせいがくにおいては、誕生たんじょうまえはい段階だんかいから、おおきくぜんのうちゅうのうのう(=ひしのう)の3つにけられる。ここからさら分化ぶんかすすみ、人間にんげん場合ばあいぜんのうおわりのうあいだのうこうのう延髄えんずいはし小脳しょうのうへとかれる。

ぞく大脳だいのうばれるのはおわりのうだが、解剖かいぼうがくにおいてはあいだのうふくめた(ぜんのうから発達はったつした部位ぶいすべてを)大脳だいのうぶ。

自律じりつ神経しんけいなど、無意識むいしきおこなわれる生命せいめい維持いじにおいて重要じゅうよう部位ぶい脳幹のうかんくくることもある。これは機能きのうもとづく分類ぶんるいであり、前述ぜんじゅつ発生はっせい過程かていもとづく分類ぶんるいでいうとまえのうちゅうのうこうのうのすべてにまたががっている。

脊椎動物せきついどうぶつのう[編集へんしゅう]

脊椎動物せきついどうぶつのうちひらたがた動物どうぶつもん以降いこう世代せだい生物せいぶつは、きゅうくち動物どうぶつ新口にのくち動物どうぶつともに集中しゅうちゅう神経しんけいけいをもつ、すなわち神経しんけいぶし(=神経しんけいあつまった部分ぶぶん)を(しばしば頭部とうぶに)もつ。頭部とうぶ神経しんけいぶし神経しんけいぶしくらべて顕著けんちょ発達はったつしている場合ばあい、これらはしばしばのう脳神経のうしんけいぶし)とばれる(ただしこの呼称こしょう医学いがく分野ぶんやなどからの視点してんでは一般いっぱんてきでない)。とく節足動物せっそくどうぶつろくきゃくもん甲殻こうかくもんやっとこかくもんなど)、軟体動物なんたいどうぶつもんあたまあしつななどにおいては顕著けんちょ発達はったつし、機能きのうてきにも脊椎動物せきついどうぶつのう遜色そんしょくない程度ていど分化ぶんかしている。その一方いっぽう、これら脊椎動物せきついどうぶつ神経しんけいぶしはもともと脊椎動物せきついどうぶつのうとの機能きのうてき形態けいたいてき類似るいじから「のう」とばれてはいるものの、系統けいとう発生はっせいてきには脊椎動物せきついどうぶつのう直接ちょくせつ関連かんれんはないことに注意ちゅうい必要ひつようである。ただしはらさく動物どうぶつのぞく。

ひらたがた動物どうぶつ[編集へんしゅう]

プラナリア典型てんけいれいとするひらたがた動物どうぶつかごじょう神経しんけいけいをもち、最前さいぜん卓越たくえつした神経しんけいぶしとしてののうゆうする。プラナリアのう研究けんきゅうにより発見はっけんされたFGF受容じゅようたいよう蛋白質たんぱくしつであるnou-darakeは、頭部とうぶ以外いがいでののう分化ぶんか抑制よくせいする機能きのうをもつ。

昆虫こんちゅう[編集へんしゅう]

昆虫こんちゅうのうは、おおきく (optic lobe) と中央ちゅうおうのう (central brain) の2つにかれる。複眼ふくがん直下ちょっかにある構造こうぞうであり、もっぱ視覚しかく情報じょうほう処理しょりする。中央ちゅうおうのうはさらにぜん大脳だいのう (protocerebrum)、ちゅう大脳だいのう (deutocerebrum)、こう大脳だいのう (tritocerebrum) の3つの部分ぶぶんかれる。これらはそれぞれはしごじょう神経しんけいけい単独たんどく神経しんけいぶし由来ゆらいする領域りょういきである。ぜん大脳だいのうキノコたい中心ちゅうしんふく合体がったい (central complex) など、感覚かんかく情報じょうほう高次こうじ処理しょりたずさわるとかんがえられている領域りょういきニューロパイル)もふくむ。キノコたいおおくの昆虫こんちゅう嗅覚きゅうかく情報処理じょうほうしょりになっているが、ミツバチなどでは視覚しかくけい神経しんけい経路けいろ入射にゅうしゃすることがられている。ちゅう大脳だいのう触角しょっかく嗅覚きゅうかく受容じゅよう細胞さいぼう受容じゅようした嗅覚きゅうかく情報じょうほういちてき処理しょりする触角しょっかくと、触角しょっかくからの機械きかい感覚かんかく処理しょりする領域りょういきふくむ。こう大脳だいのう食道しょくどう神経しんけいぶしふく領域りょういきであり、一部いちぶ昆虫こんちゅうでは味覚みかく情報じょうほう入射にゅうしゃすることなどがられている。ちゅう大脳だいのうこう大脳だいのうあいだには食道しょくどうあな存在そんざいし、食道しょくどう両者りょうしゃあいだつらぬいている。昆虫こんちゅう中枢ちゅうすう神経しんけいけいには、のうのほかむね腹部ふくぶ神経しんけいぶし両者りょうしゃつな神経しんけいたばふくまれる。


あたまあしるい[編集へんしゅう]

あたまあしるいのう食道しょくどうじょうかたまり (supraesophageal mass) と食道しょくどうかたまり (subesophageal mass) の2つにけられ、両者りょうしゃあいだには食道しょくどう存在そんざいする。巨大きょだいはoptic stalkとばれるほそ神経しんけいたばでのみのう本体ほんたい接続せつぞくしており、のう一部いちぶとみなされないこともあるが、視覚しかく情報処理じょうほうしょりおおくがでなされているので機能きのうてきにはのう一部いちぶといえる。

はらさく動物どうぶつ[編集へんしゅう]

脊索せきさく動物どうぶつのうち、脊椎動物せきついどうぶつ同様どうよう管状かんじょう神経しんけいけいをもつはらさく動物どうぶつあたまさく動物どうぶつさく動物どうぶつ総称そうしょう)では、神経しんけいかんから分化ぶんかする神経しんけいさく存在そんざいする。神経しんけいさく中枢ちゅうすう神経しんけいけいふくまれ、感覚かんかく細胞さいぼう最前さいぜん集中しゅうちゅうし、のうしつばれるものが存在そんざいナメクジウオなど)するが、明確めいかくな「のう構造こうぞうげんさく動物どうぶつではあまりみられない(ホヤ幼生ようせい遊泳ゆうえいせい)の場合ばあいなど、場合ばあいによってのうばれることもある)。

脊椎動物せきついどうぶつのう[編集へんしゅう]

ヒト動物どうぶつしゅ絶滅ぜつめつしゅふくむ)ののう容積ようせき
種類しゅるい 分類ぶんるい のう容積ようせき(ml)
オランウータン ヒト 411[2]
ゴリラ ヒト やく500[3]
チンパンジー ヒトぞく 394[2]
アウストラロピテクス・アフリカヌス ヒトぞく 441[2]
ホモ・ハビリス ヒトぞく 640[2]
ホモ・エルガスター ヒトぞく 700-1100[3]
ホモ・エレクトス ヒトぞく 1040[2]
ホモ・ハイデルベルゲンシス ヒトぞく 1100-1400[3]
ホモ・ネアンデルターレンシス ヒトぞく 1450[2]
ホモ・サピエンス・サピエンス ヒトぞく 1350[2]

脊椎動物せきついどうぶつ系統けいとうじゅじょう比較ひかくでは、のう全体ぜんたいにおいて大脳だいのうめる割合わりあいあたらしい世代せだい生物せいぶつほどおおきいというおおまかな傾向けいこうがある。とくヒトのう大脳だいのうおおきく、しかも大脳皮質だいのうひしつ大小だいしょうみぞのうみぞ)によって非常ひじょうひろ面積めんせきをもっている。のうみぞと、それにはさまれたのうかい区別くべつがある大脳だいのうゆうかいのう)は、哺乳類ほにゅうるいなかでも霊長れいちょうなどのごく一部いちぶしかもっていない。このことは、きわめてしばしばあたらしい世代せだい生物せいぶつほど複雑ふくざつ活動かつどうせることとむすびつけて、大脳皮質だいのうひしつ思考しこう中枢ちゅうすうだからと説明せつめいされる。

哺乳類ほにゅうるいのうち、霊長れいちょう進化しんか過程かていのう容積ようせき拡大かくだいしてきた[4]

ヒトののうについて[編集へんしゅう]

発生はっせい[編集へんしゅう]

のうのニューロン細胞さいぼう

複雑ふくざつ姿すがたをしているヒトののうも、脊椎動物せきついどうぶつ進化しんか初期しょき段階だんかいでは、のうたん神経しんけい細胞さいぼうあつまったこぶのようなものにぎなかった。進化しんか過程かていでこのこぶが大脳だいのうあいだのうちゅうのう小脳しょうのう延髄えんずい脊髄せきずいから構成こうせいされる複雑ふくざつ構造こうぞうしていき、個体こたい維持いじにとどまらず高度こうど精神せいしん活動かつどうをつかさどるにいたった[5]脊髄せきずい延髄えんずいちゅうのうはしでは中心ちゅうしんかん神経しんけい管内かんないあま発達はったつせずに原型げんけいをとどめたままであるが、先端せんたんおわりのうでは、発生はっせいあいだ中心ちゅうしんかん複雑ふくざつ拡大かくだいしてひろのうしつ形作かたちづくり、また皮質ひしつ複雑ふくざつ隆起りゅうき回転かいてん運動うんどうこしながら変形へんけいして、かくのう形成けいせいされる。

初期しょきのう形成けいせいは、中心ちゅうしんかん前方ぜんぽうふくらんで形成けいせいされる、まえなかこうのう胞の3のう胞から出発しゅっぱつする。このうち先端せんたんぜんのう胞はさら前方ぜんぽうから「おわりのう胞」と「あいだのう胞」とにかれ、このうちおわりのう胞が以下いかのような、顕著けんちょ変化へんかげる。

1.上方かみがたへの隆起りゅうき
中心ちゅうしんのぞ神経しんけいかん左右さゆう天井てんじょう上方かみがた隆起りゅうきすることにより、左右さゆう頭頂とうちょうつくられる。
この隆起りゅうき運動うんどう結果けっか本来ほんらい中心ちゅうしんかん天井てんじょうは、左右さゆう半球はんきゅう奥深おくふかくにかくれてしまう(のちのうはり左右さゆう走行そうこう)。
神経しんけい管内かんないそらしょ先端せんたんからりょうわきがり、左右さゆうがわのうしつ」(だいいちだいのうしつ)ができる。
こうしてつくられたがわのうしつつうずるきゅう中心ちゅうしんかんからの通路つうろが「しつあいだあな」となる。
2.前方ぜんぽうへのまわ
上方かみがた隆起りゅうきしたおわりのう胞の左右さゆうかべ前方ぜんぽうへもし、「前頭葉ぜんとうよう」と「がわのうしつぜんかく」がつくられる。
せい中部ちゅうぶがそのままのこることは同様どうようなので、神経しんけいかん最前さいぜんはしは、突出とっしゅつした前頭葉ぜんとうようあいだに「おわりばん」としてのこる。
3.後方こうほうへのびと、がわかたへの回転かいてん運動うんどう
頭頂とうちょう方向ほうこう隆起りゅうきした神経しんけい組織そしきさら後方こうほうびながら、もと神経しんけいかん側壁そくへきえてしたがわまわむ。
このようにして、「こうあたま」と「がわあたま」がつくられるとともに、「がわのうしつかく」と「下角したすみ」がつくられる。
めざましいおわりのううごきにたいして、あいだのう胞はあま変化へんかせず、神経しんけいかん原型げんけい維持いじしつつ、左右さゆう大脳だいのう半球はんきゅう基部きぶ位置いちして、視床ししょう視床ししょう下部かぶつくり、中心ちゅうしんかん正中せいちゅうめんうす上下じょうげにのみびてだいさんのうしつとなる。

解剖かいぼう[編集へんしゅう]

ヒトののう構造こうぞう: 前頭葉ぜんとうよう水色みずいろ)、頭頂とうちょう黄色おうしょく)、がわあたま緑色みどりいろ)、こうあたま赤色あかいろ)、小脳しょうのう紫色むらさきいろ)、脳幹のうかん灰色はいいろ

ヒトののう頭蓋とうがいうち腔のだい部分ぶぶんめている。成人せいじん体重たいじゅうの2%ほどにあたる1.2〜1.6キログラム質量しつりょうがある。のう質量しつりょうは、男性だんせいのう女性じょせいのうよりもややおおきく(後述こうじゅつ)、体重たいじゅうとの相関そうかんはない。やく300おく神経しんけい細胞さいぼうふくむがそれはのうをなす細胞さいぼうの1わり程度ていどであり、のこりの9わりグリア細胞さいぼうばれるものである。グリア細胞さいぼう神経しんけい細胞さいぼう栄養えいよう供給きょうきゅうしたり、ずいさやつくって伝導でんどう速度そくどげたりと、さまざまなはたらきをする。「人間にんげんのうの1わりほどしか有効ゆうこう使つかっていない」という俗説ぞくせつのうの10パーセント神話しんわ)があるが、これはグリア細胞さいぼう機能きのうがよくわかっていなかった時代じだいに、はたらいている細胞さいぼう神経しんけい細胞さいぼうだけというおもみからひろまったものとわれる。つまり、ヒトは大脳だいのうの10%しか使用しようしないという都市とし伝説でんせつをよくみみにするが、もちろんこれはうそである。ヒトはつねに100%のう細胞さいぼう使用しようする[6][7][8][9]最近さいきんではのうだい部分ぶぶん有効ゆうこうてき活用かつようされており、のう一部分いちぶぶん破損はそんなどなんらかの機能きのうてき障害しょうがいとなる要因よういん発生はっせいした場合ばあいにあまり使つかわれていない部分ぶぶん代替だいたいてきまたは補助ほじょてき活用かつようされている可能かのうせいがあるとかんがえられている。

のうは、大脳だいのう小脳しょうのう脳幹のうかんおおきくけることができる。大脳だいのうはさらにおわりのう(Telencephalon)とあいだのう(Diencephalon)に、脳幹のうかんはさらにちゅうのうはし延髄えんずいけられる。この区別くべつ肉眼にくがん様子ようすもとづいたものであって、はい発生はっせいうえでは小脳しょうのう脳幹のうかんからかれるものであり、また生命せいめい維持いじ機能きのうつよかかわるあいだのう脳幹のうかんふくめる意見いけんもある。

のうは、ずいまくばれる3そうまく、すなわち軟膜クモまくかたまくおおわれている。軟膜はのう実質じっしつ密着みっちゃくしているがクモまくすこはなれており、軟膜とのあいだクモまくという空間くうかんのこしている。クモまく腔はのう脊髄せきずいえきたされている。かたまく大脳だいのうがま小脳しょうのうテントなどの突出とっしゅつと、かたまく静脈じょうみゃくほらつく部分ぶぶんのほかは頭蓋とうがい内面ないめん密着みっちゃくして内張うちばりとなっている。かたまくとクモまくはほぼ密着みっちゃくしている。

大脳だいのう[編集へんしゅう]

ヒトの大脳だいのう前頭葉ぜんとうよう一部いちぶ切除せつじょされた状態じょうたい
大脳だいのうしん皮質ひしつきりたい細胞さいぼう

大脳だいのう(Cerebrum)とは、厳密げんみつにはおわりのうあいだのうわせた呼称こしょうだが、神経しんけい解剖かいぼうがく以外いがい分野ぶんやではほぼ例外れいがいなく、おわりのうのみを言葉ことばとして使つかわれている。このこうでもとくことわらないかぎり、大脳だいのうえばおわりのうす。

おわりのう左右さゆう大脳だいのう半球はんきゅうおわりのう半球はんきゅう)からなる。それらをへだてるのは大脳だいのうたてへだたばれるふかみぞであり、のうはり透明とうめいちゅうへだたでつながるほかは完全かんぜん左右さゆうかれている。大脳だいのう半球はんきゅう表面ひょうめんには、大脳だいのうみぞ(だいのうこう、Cerebral sulci)とばれるみぞはしり、そのあいだ細長ほそなが大脳だいのうかい(だいのうかい、Cerebral gyrus)をつくっている。のうみぞぞくに「のうのしわ」とわれるが、のう成長せいちょうにしたがって無造作むぞうさにしわがるのではなく、どこにどのようなのうみぞができるかは、ふかさ、がりかた多少たしょう個人こじんがあるものの完全かんぜんまっており、すべてののうみぞ解剖かいぼうがくじょう名前なまえ(Nomina anatomica)があたえられている。のうみぞのうかいかたち左右さゆう半球はんきゅうでほぼ対称たいしょうであり、とく目立めだのうみぞおわりのう外側そとがわで吻側はしからがわのあたりまではしシルビウスきれと、頭頂とうちょうの(吻側りでもがわりでもなく)ちゅうほどでがわはしからシルビウスきれまではし中心ちゅうしんみぞである。シルビウスきれよりもはらがわ、したがってのう全体ぜんたいからればもっとも外側そとがわ部分ぶぶんがわあたま中心ちゅうしんみぞよりも吻側を前頭葉ぜんとうよう中心ちゅうしんみぞよりもがわでシルビウスきれわるあたりまでを頭頂とうちょう、そのがわこうあたまぶ。こうあたまおわりのうのもっともがわにあり、頭頂とうちょうとの境界きょうかい明瞭めいりょうでない。シルビウスきれをこじけると、がわあたまかげかくれていた、しまばれる部分ぶぶんえる。しま表面ひょうめんはほかの部分ぶぶんちがってのうみぞではなくこまかいしわがたくさんはいっている。

左右さゆう大脳だいのう半球はんきゅうはそれぞれがわのうしつばれる腔をふくんでいる。がわのうしつモンローあなだいさんのうしつ連絡れんらくしてのうしつけいをなす。のうしつけいのう廃液はいえきであるのう脊髄せきずいえきでみたされ、のう脊髄せきずいえき排出はいしゅつされる経路けいろとなっている。

広義こうぎ大脳だいのうから脳神経のうしんけいは、おわりのうから神経しんけいと、あいだのうから視神経ししんけいである。

大脳だいのう断面だんめんでははくただしはいしろしつ明瞭めいりょう区別くべつされる。おわりのうはいしろしつ表面ひょうめんちかくに面積めんせきで2,000cm2〜2,500cm2あつさ2〜3mm[10]そうをなしており、大脳皮質だいのうひしつ(だいのうひしつ、Cerebral cortex)とばれる。大脳皮質だいのうひしつはいしろしつれいれず神経しんけい細胞さいぼう細胞さいぼうたいあつまった部分ぶぶんであり、そのだい部分ぶぶんは6そう構造こうぞうをなし、複雑ふくざつ回路かいろふくんで思考しこうなどの中枢ちゅうすうとされる。のうがしわを形成けいせいすることにより大脳皮質だいのうひしつ表面積ひょうめんせき増大ぞうだいさせている[11]大脳皮質だいのうひしつたいしてしろしつ大脳だいのう髄質ずいしつぶこともあるが、はくただしばれることのほうがはるかにおおい。その理由りゆう一端いったんをなすのが大脳だいのう基底きていかくである。大脳だいのう基底きていかくたん大脳だいのうかくともばれ、がわのうしつはらがわあたりで髄質ずいしつなかにある神経しんけい細胞さいぼうあつまりである。2つわせて線条せんじょうたいばれる、じょうかくからなどをふくむが、あいまいな概念がいねんであって、あいだのう一部いちぶである視床ししょうあわあおだまふくむかふくまないかは意見いけん一致いっちしない。がわあたま深部しんぶにはひらたももたいがある。ひらたももたい恐怖きょうふしん構成こうせいしていることがられているらしい。

あいだのう視床ししょう視床ししょう下部かぶからなる。視床ししょうは、大脳皮質だいのうひしつ下位かいのう脊髄せきずいとの連絡れんらくおおく、感覚かんかく中継ちゅうけい運動うんどう制御せいぎょなど多彩たさい機能きのうかかわる。視床ししょう下部かぶは、身体しんたい恒常こうじょうせいホメオスタシス)をたもはたらき、自律じりつ神経しんけいけい制御せいぎょ感情かんじょうなどに関与かんよしている。

下垂かすいたいは、大脳だいのう底部ていぶ、ほぼ正中せいちゅうにある器官きかんであり、下垂かすいたいといわれる細長ほそなが部分ぶぶん大脳だいのう中心ちゅうしん視床ししょう下部かぶとつながっている。下垂かすいたいぜんからは、副腎ふくじん皮質ひしつ刺激しげきホルモン(コルチコトロピンACTH)、甲状腺こうじょうせん刺激しげきホルモン(サイロトロピンTSH)、性腺せいせん刺激しげきホルモン(ゴナドトロピン)、成長せいちょうホルモン(GH)、プロラクチンなど、内分泌ないぶんぴつ器官きかん機能きのう左右さゆうし、そこからのホルモンの分泌ぶんぴつ調節ちょうせつする多種たしゅのホルモンが分泌ぶんぴつされる。中葉ちゅうようからは、メラニン細胞さいぼう刺激しげきホルモン(メラノトロピンMSH)、神経しんけいからは、こう利尿りにょうホルモン(バソプレシン)や、オキシトシン分泌ぶんぴつされる。コレステロール体内たいない肝臓かんぞうおよび皮膚ひふ合成ごうせいされ、全身ぜんしん輸送ゆそうされる。視床ししょう下部かぶから指令しれいけ、下垂かすいたいからも指令しれいけることで、副腎ふくじんは、コレステロール原料げんりょうに、副腎ふくじん皮質ひしつホルモンせいホルモン合成ごうせいする。

小脳しょうのう[編集へんしゅう]

小脳しょうのう脳幹のうかんがわにある。うえ小脳しょうのうあし中小ちゅうしょうのうあししも小脳しょうのうあしという線維せんいふとたば脳幹のうかんにつながっている。これら3つは肉眼にくがんレベルでからっており、それぞれにふくまれる線維せんいをきれいにけることは非常ひじょうむずかしい。小脳しょうのう正中せいちゅう小脳しょうのうむし(しょうのうちゅうぶ、Vermis)、左右さゆう小脳しょうのう半球はんきゅう(Cerebellar hemispheres)、がわ小脳しょうのうひらたももけられる。小脳しょうのう半球はんきゅう表面ひょうめんは、大脳だいのう半球はんきゅうのうみぞのうかいがあるように、小脳しょうのうみぞ小脳しょうのうかいをもつが、これらはのうみぞのうかいよりもかなりこまかく、変異へんいおおい。小脳しょうのう半球はんきゅう断面だんめん大脳だいのう半球はんきゅう同様どうよう小脳しょうのう皮質ひしつ(Cerebellar cortex)がはいしろしつ小脳しょうのう髄質ずいしつしろしつである。小脳しょうのう皮質ひしつ表面ひょうめんがわから分子ぶんしそうプルキンエ細胞さいぼうそう顆粒かりゅうそうの3そう構造こうぞうち、やく1mmぐらいのあつさである[10]皮質ひしつあつく、髄質ずいしつえだのようにえることから、小脳しょうのう半球はんきゅう断面だんめん様子ようすをArbor vitae(生命せいめい小脳しょうのうかつじゅ)とぶ。

脳幹のうかん[編集へんしゅう]

脳幹のうかん (=brain stem) はうえ大脳だいのうと、がわ小脳しょうのうと、がわ脊髄せきずいとつながっている。吻側からじゅんちゅうのう (Midbrain)、はし延髄えんずいけられる。小脳しょうのう脳幹のうかんはさまれた空間くうかんだいよんのうしつとなっている。

循環じゅんかん代謝たいしゃ[編集へんしゅう]

のう質量しつりょう体重たいじゅうの2%程度ていどだが、血液けつえき循環じゅんかんりょう心拍しんぱくりょうの15%、酸素さんそ消費しょうひりょう全身ぜんしんの20%、グルコースブドウ糖ぶどうとう)の消費しょうひりょう全身ぜんしんの25%と、いずれも質量しつりょうたいして非常ひじょうおおい。成人せいじん男子だんしではのうのグルコース必要ひつようりょうは120-150g/である[12]。グルコースはのう関門かんもん通過つうかでき、グルコーストランスポーターであるインスリン依存いぞんせいのGLUT1をかいして細胞さいぼうまく通過つうかして神経しんけい細胞さいぼうにグルコースをむ(「グルコーストランスポーター」を参照さんしょうのこと)。このことはのうこる複雑ふくざつかつ活発かっぱつ電気でんき信号しんごう由来ゆらいする。神経しんけい細胞さいぼうでは、静止せいしまく電位でんい維持いじ活動かつどう電位でんいからの回復かいふくのためにグルコースからさんされた莫大ばくだいATP消費しょうひしている[13][14][信頼しんらいせいよう検証けんしょう]。なお、成熟せいじゅく動物どうぶつのう脂肪酸しぼうさん代謝たいしゃ活性かっせい非常ひじょうひくく、長期間ちょうきかん絶食ぜっしょくによってものうにおける脂肪酸しぼうさんひく代謝たいしゃ活性かっせいのため脂肪酸しぼうさん組成そせい変化へんかしない[15]のう通常つうじょうのう関門かんもん通過つうかできる(のう細胞さいぼうない能動のうどう輸送ゆそうされるのであって自由じゆう通過つうかできるわけではない)グルコースをエネルギーげんとしている[16]。また、飢餓きがなどの場合ばあいによりグルコースが枯渇こかつてい血糖けっとうとなった場合ばあい脂肪酸しぼうさんβべーた酸化さんかによるアセチルCoAから生成せいせいされたケトンたいのう関門かんもん通過つうかでき[16]のう関門かんもん通過つうかにケトンたいから再度さいどアセチルCoAにもどされてのう細胞さいぼうミトコンドリアTCAサイクルでエネルギーとして利用りようされる[17]のうはグルコースを優先ゆうせんてきにエネルギーげんとして利用りようするが、グルコースがすくないときにはケトンたいしゅたるエネルギーげんとなる[18][19]飢餓きがときにはのう必要ひつようとするグルコースのやく半分はんぶんをケトンたい代用だいようすることができる[16]

このような栄養素えいようそなどの需要じゅよううち頸動みゃく椎骨ついこつ動脈どうみゃくからのりゅうでまかなわれる。うち頸動みゃく椎骨ついこつ動脈どうみゃくはそれぞれ大小だいしょうえだしてのう各所かくしょ栄養えいようし、ウィリスの動脈どうみゃくばれる環状かんじょう吻合ふんごうつくってたがいに連絡れんらくしている。このためない頸動みゃくりゅう障害しょうがいこっても椎骨ついこつ動脈どうみゃくからのりゅうのう全体ぜんたいわたるが、ウィリスの動脈どうみゃくほそひとではその代償だいしょうがあまり期待きたいできない。

のう分布ぶんぷする静脈じょうみゃくは、とくふと部分ぶぶんでは動脈どうみゃく伴走ばんそうしておらず、かたまく静脈じょうみゃくほらあつまる。かたまく静脈じょうみゃくほら静脈じょうみゃくうち静脈じょうみゃく流出りゅうしゅつする。また、リンパ液りんぱえき相当そうとうする廃液はいえきのう脊髄せきずいえきとしてのうしつけい脈絡みゃくらくくさむらからさんされ、クモまくながれて最後さいごにはクモまく顆粒かりゅうから、または脊柱せきちゅうかん静脈じょうみゃくくさむらから静脈じょうみゃく吸収きゅうしゅうされる。

機能きのう[編集へんしゅう]

のう運動うんどう知覚ちかくなど神経しんけいかいする情報じょうほう伝達でんたつさい上位じょうい中枢ちゅうすうである。また、感情かんじょう情緒じょうちょ理性りせいなどヒトの精神せいしん活動かつどうにおいても重要じゅうよう役割やくわりたしている。いくつかの精神せいしん活動かつどうかんしてはポジトロン断層だんそうほうなどにより、のう活動かつどうとのあいだ密接みっせつ関係かんけいがあることがたしかめられている。

のう以上いじょうのような機能きのうふかかかわっていることにはうたがいがないが、のうがそのすべてをになっているかどうかはあきらかでない。このことは脳死のうしにまつわる問題もんだいわれ、ラザロ徴候ちょうこうをどう解釈かいしゃくするかで意見いけんかれる。脳死のうし推進すいしんはラザロ徴候ちょうこう脊髄せきずいによる反射はんしゃとみなし、のう機能きのうのこっている証拠しょうこにはならないとする。一方いっぽう脳死のうし反対はんたいはラザロ徴候ちょうこうのう機能きのうかかわっているとする。脳死のうし反対はんたい一部いちぶは、ラザロ徴候ちょうこうのうかかわっていようといまいと、そのような高度こうど活動かつどうが(たとえば脊髄せきずいによって)なされうるならそれは生命せいめい反応はんのうとみなすべきだと主張しゅちょうする。ラザロ徴候ちょうこうじょ解明かいめいされておらず、この議論ぎろん決着けっちゃくしていない。

のうが、あるいは大脳だいのうおおきいほうがあたまがいいという俗説ぞくせつがある。これはヒトの大脳だいのう類人猿るいじんえん大脳だいのうよりもおおきいこと、高齢こうれいしゃのうよわいともなって萎縮いしゅくすること、アルツハイマーびょうなどの疾患しっかんでは病変びょうへんいちじるしく萎縮いしゅくすることなどにも助長じょちょうされていよう。しかしのうおもさは(とくひとあいだで)知能ちのう指標しひょうとはならないとされる。夏目なつめ漱石そうせきアルベルト・アインシュタインのうかれらの死後しご保存ほぞんされているが、そのおもさをはかってみても正常せいじょう範囲はんいない。またクジラやゾウは、ヒトよりおものうつ。以上いじょうのように、人間にんげん動物どうぶつよりかしこいのは、のうおおきさではなく、大脳皮質だいのうひしつ複雑ふくざつさ、神経しんけい細胞さいぼうかずやグリア細胞さいぼうによるものである[20]

性差せいさ[編集へんしゅう]

ヒトをふく脊椎動物せきついどうぶつのうはその性別せいべつによりことなった構造こうぞうつ。これは大脳だいのう解剖かいぼうがくにおける肉眼にくがん観察かんさつや、ラットたいしてのう形成けいせいせいホルモン投与とうよする実験じっけんによりたしかめられている。のう部分ぶぶん性差せいさがあるとみられている部分ぶぶんは、大脳だいのう半球はんきゅう左右さゆうのうをつなぐぜん交連やのうはり本能ほんのうをつかさどる視床ししょう下部かぶである(のうせい分化ぶんか)。ただしゆうさる幼少ようしょうからめすとしてそだてればめすおな行動こうどうをとるようになるなどの報告ほうこくもあるため、これらの性差せいさがどれほど行動こうどう影響えいきょうおよぼすかはさだかでない。

ヒトの場合ばあい男女だんじょ精神せいしんてき文化ぶんかてきことなった傾向けいこうしめすことがある(ジェンダー参照さんしょう)が、のう性差せいさがこれの一因いちいんになっているとかんがえられている。ただしのう性差せいさ人格じんかく形成けいせいにどれほどの割合わりあい貢献こうけんをしているかは不明ふめいである(えにくくなった後天的こうてんてき環境かんきょう影響えいきょうが、生得しょうとくてき性差せいさであると認識にんしきされる場合ばあいもあるため)。 女性じょせい論理ろんりてき思考しこうに「論理ろんりてき思考しこうつかさど左脳さのう」を「想像そうぞうりょくはたらかせる右脳うのう」と連動れんどうしてはたらかすことができ、男性だんせいはこれが不得手ふえてであるが訓練くんれんによって可能かのうであるといわれることがあるが、これらのせつ根拠こんきょ女性じょせいのうはり左右さゆう大脳だいのう半球はんきゅう連絡れんらくする神経しんけい繊維せんい)のおおさのみにもとづいている。(以下いかのう左右さゆう参照さんしょう) また男女だんじょのうしつちがいとして、女性じょせいのう男性だんせいのうよりも皮質ひしつあつくなる傾向けいこう複数ふくすう研究けんきゅう確認かくにんされている[21][22][23]

質量しつりょう容積ようせき[編集へんしゅう]

ヒト男性だんせいおよび女性じょせい算術さんじゅつ平均へいきん頭脳ずのう容積ようせき (1984ねん)[24]
  1450 cm3 以上いじょう
  1400〜1449 cm3
  1350〜1399 cm3
  1300〜1349 cm3
  1250〜1299 cm3
  1200〜1249 cm3
  1200 cm3 以下いか
  ひとんでいない

哺乳類ほにゅうるいではのう容積ようせきからだ容積ようせきがおおむね対数たいすう比例ひれいする。まず観察かんさつされるてんとして、頭蓋骨ずがいこつおおきさはおおむ体格たいかく比例ひれいし、男性だんせいのう女性じょせいよりもおおきくおもい。出生しゅっしょう性別せいべつによる有意ゆういく、男女だんじょともに370〜400グラムである。成人せいじんでは、男性だんせいは1350〜1500グラム、女性じょせいでは1200〜1250グラムであり、これは体重たいじゅうやく2%にあたる。なお、性差せいさ人種じんしゅ除外じょがいした同質どうしつ人類じんるい集団しゅうだん同士どうし比較ひかくではのうおおきさは知能指数ちのうしすう相関そうかん係数けいすう0.4程度ていど相関そうかんがあることがられる。(研究けんきゅうによりことなる) 認知にんち能力のうりょくのうおおきさの関連かんれんについて13,600にん以上いじょう非常ひじょうおおきなサンプルをもちいておこなわれた研究けんきゅうでは、相関そうかん係数けいすうは0.19であり、同性どうせいあいだではのうおおきさは認知にんちテストの結果けっかやく2%に影響えいきょうするが、男女だんじょ認知にんちテストの平均へいきんスコアには有意ゆういられず、男女だんじょのうおおきさのちがいは認知にんち能力のうりょくにはつながらなかった。研究けんきゅうしゃのうしつ性差せいさによる可能かのうせいがあるとしている[25]

活動かつどう[編集へんしゅう]

ポジトロン断層だんそうほうによって様々さまざま精神せいしん活動かつどうさいのうはたら様子ようす調しらべると、男性だんせいおもひだり半球はんきゅうが、女性じょせい比較的ひかくてき均質きんしつはたらくとの報告ほうこくがある。ただしこれをして「女性じょせい左右さゆうのう満遍まんべんなくはたらかせることができ、男性だんせいのう活動かつどう左脳さのう依存いぞんするところがおおきい」とはならない。ポジトロン断層だんそうほう自体じたいりゅう代謝たいしゃ増加ぞうかした部分ぶぶん集中しゅうちゅうてき活動かつどうしたとする仮定かていしたおこなわれるものだが、これによるのう活動かつどう測定そくていはあくまで相対そうたいてき活動かつどう増大ぞうだいしめすものである。これについてものう機能きのう局在きょくざいろん参照さんしょうされたい。

周期しゅうきせい[編集へんしゅう]

月経げっけい代表だいひょうされるように女性じょせい身体しんたいてき周期しゅうき変動へんどうっている。またそれにともなって精神せいしんてきにも周期しゅうきてき変動へんどうすると指摘してきされることもある。この周期しゅうきせい支配しはいしているのが下垂かすいたいから分泌ぶんぴつされる卵胞らんぽう刺激しげきホルモン黄体おうたい形成けいせいホルモンである。

男性だんせいのうではこのような周期しゅうきせいはない。胎生たいせい精巣せいそうから分泌ぶんぴつされたテストステロン(アンドロゲン・シャワーとよばれる)によるものだとかんがえられている。

大脳だいのう半球はんきゅう左右さゆう[編集へんしゅう]

ヒト特有とくゆう大脳だいのう半球はんきゅう左右さゆう機能きのうについての学説がくせつは、ふる時代じだいてんかん患者かんじゃ治療ちりょうのためにった、のうはり切除せつじょや、手術しゅじゅつちゅうのう電気でんき刺激しげきなどをほどこし患者かんじゃ質問しつもんおこなった場合ばあい観察かんさつ記録きろくから推測すいそくされた仮説かせつおおい。それらのすくない観察かんさつれいから拡大かくだい解釈かいしゃくされたもの、その拡大かくだい解釈かいしゃくをさらに拡大かくだい解釈かいしゃくし、歪曲わいきょくされた俗説ぞくせつ非常ひじょうおおいので注意ちゅうい必要ひつようである。

しかしながら、のう専門医せんもんいなかには、左右さゆうのう半球はんきゅう機能きのう分布ぶんぷちがいをみとめる医師いしもいる。病巣びょうそう事故じこによってそこなわれたのう部位ぶいと、そとから観察かんさつできる機能きのう欠損けっそん関連かんれんせい経験けいけんそくがあてはまるからである。また、非常ひじょうまれなケースをのぞいて、言語げんご大脳だいのうひだり半球はんきゅうるのはたしかである。一方いっぽうで、論理ろんりてき思考しこうについて重要じゅうよう機能きのうひだり半球はんきゅうにあるのはたしかだが、みぎ大脳だいのう前頭まえがしら欠損けっそんによって「順序じゅんじょった行動こうどう」が不可能ふかのうになったれいが、カナダのワイルダー・ペンフィールド医師いしあね報告ほうこくれいなどにられる。

確認かくにんれている事実じじつとして、まずヒトの大脳だいのうではひだり半球はんきゅうのほうがみぎ半球はんきゅうより若干じゃっかんおおきいことや、身体しんたい右側みぎがわ制御せいぎょひだり半球はんきゅう左側ひだりがわ制御せいぎょみぎ半球はんきゅうおこなっていることなどは判明はんめいしている。のう左右さゆうおおきさのちがいは医療いりょう機器きき即座そくざ確認かくにんでき、ひだり右脳うのう身体しんたい制御せいぎょ関連かんれんせいについては、のう欠損けっそん半球はんきゅうと、麻痺まひがおこる身体しんたい部位ぶいとの関連かんれんからあきらかだからである。

しかしながら、のうという器官きかん複雑ふくざつせいをかんがみた場合ばあい、ある能力のうりょくについて、どちらかの半球はんきゅうだけが機能きのうしているといえるほど単純たんじゅんなものではなく、またそれを裏付うらづけるデータもない。

だい多数たすう研究けんきゅうしゃ特定とくてい精神せいしん機能きのう中枢ちゅうすうとみなしている領野りょうやいまのところ、末梢まっしょうとの神経しんけい接続せつぞく解剖かいぼうてき調しらべられている初期しょき知覚ちかく領野りょうや運動うんどうのぞけば言語げんごしかない。さらに左脳さのう右脳うのうがそれぞれ論理ろんりてき思考しこう創造そうぞうてき思考しこう処理しょりし、もう片方かたがたがそれを担当たんとうしていないという明確めいかく証拠しょうこ実験じっけんデータはない。

2010ねんのう神経しんけい細胞さいぼうさん次元じげんてき培養ばいようした結果けっか神経しんけい突起とっきすす方向ほうこう決定けっていする成長せいちょう円錐えんすいにある糸状いとじょうかりあしみぎまわりで伸縮しんしゅくしていることが玉田たまだらの研究けんきゅうによりあきらかとなり[26]のう左右さゆう機能きのう関連かんれんしているのではないかと注目ちゅうもくされている[27]

のうとコレステロール[編集へんしゅう]

のう冠状かんじょう断面だんめん

のう神経しんけいけいコレステロール全量ぜんりょうの1/3もがふくまれているが、神経しんけい細胞さいぼうからびて神経しんけい伝達でんたつつかさどっているじくさくおおっているミエリンさやにコレステロールが大量たいりょうふくまれているためである。コレステロールは、ミエリンさや絶縁ぜつえんせい保持ほじする役割やくわりたしている。絶縁ぜつえんされたミエリンさやであるランヴィエのしぼごとでの跳躍ちょうやく伝導でんどうにより高速こうそく神経しんけい信号しんごう伝達でんたつ寄与きよしている[28]実際じっさい哺乳類ほにゅうるいであるぶたうしなどではのうそう重量じゅうりょうの2-3%がコレステロールでめられている。ヒトではのうそう重量じゅうりょうの2.7%がコレステロールでめられている。

のうはいしろしつは、中枢ちゅうすう神経しんけいけい神経しんけい組織そしきのうち、神経しんけい細胞さいぼう細胞さいぼうたい存在そんざいしている部位ぶいのことである。これにたいし、神経しんけい細胞さいぼうたいがなく、神経しんけい線維せんいばかりの部位ぶいはくただしぶ。しろしつあかるくひかるような白色はくしょくをしているのにたいし、はいしろしつは、しろしつよりもいろく、灰色はいいろがかってえることによる。これは、ゆうずい神経しんけい線維せんいミエリンさや主成分しゅせいぶんとして大量たいりょう存在そんざいしているコレステロール[28]ミエリンしろいろをしているためで、しろしつには、はいしろしつくらべて、ゆうずい神経しんけい線維せんいおおいからとかんがえられている。

神経しんけい細胞さいぼう構造こうぞう en:Dendrites=じょう突起とっきen:Axon=じくさく、(以下いかりゃく

のう脂肪酸しぼうさん[編集へんしゅう]

細胞さいぼうまく流動りゅうどうせいち、脂質ししつまくタンパクはうごいている。この流動りゅうどうせいまく構成こうせい物質ぶっしつまる。たとえば、リン脂質ししつ構成こうせいする脂肪酸しぼうさん飽和ほうわじゅう結合けつごうかず)に影響えいきょうされ、じゅう結合けつごう炭化たんか水素すいそおおいほど(じゅう結合けつごうがあるとその部分ぶぶん炭化たんか水素すいそがるので)リン脂質ししつ相互そうご作用さようひくくなり流動りゅうどうせいすことになる。たとえばドコサヘキサエンさん(DHA)は飽和ほうわきわめてたか細胞さいぼうまく流動りゅうどうせい保持ほじ寄与きよしている。

神経しんけい細胞さいぼうは、じくさくじょう突起とっきなどの凹凸おうとつおおんだ構造こうぞうゆうしているため、まく成分せいぶん極端きょくたんおおくなっている[29][信頼しんらいせいよう検証けんしょう]

食材しょくざいとして[編集へんしゅう]

うしなりうしおよびうし)、ぶたひつじ、ウサギなどの家畜かちくのう食材しょくざいとしてももちいられる。おもにヨーロッパおよび中東ちゅうとうでは肉屋にくや店先みせさきのほかスーパーマーケットでも流通りゅうつうしている。世界せかい各地かくち様々さまざま料理りょうりで、のうそのものをる、く、げるなどの料理りょうりほうべるほか、また煮込にこ料理りょうり出汁だしりとしても使つかわれる。このわたよう独特どくとくしょくかんがある。

BSE影響えいきょうによりいち時期じきヨーロッパでは食材しょくざいとしてののう骨髄こつづい流通りゅうつう減少げんしょうしたが、伝統でんとうてき食材しょくざいとしての存在そんざいいまだにひろ一般いっぱんれられている。

のう研究けんきゅうかんする国家こっかプロジェクト[編集へんしゅう]

近年きんねん先進せんしんこく中心ちゅうしんに、のう理解りかい促進そくしんするための大型おおがた国家こっか科学かがくプロジェクトがまれている。

米国べいこくの「ブレイン・イニシアチブ」、欧州おうしゅうの「ヒューマンブレインプロジェクト日本にっぽんの「革新かくしんてき技術ぎじゅつによるのう機能きのうネットワークの全容ぜんよう解明かいめいプロジェクト(Brain/MINDS)」中国ちゅうごくの「チャイナブレインプロジェクト」とうがある。

脚注きゃくちゅう[編集へんしゅう]

出典しゅってん[編集へんしゅう]

  1. ^ のう(のう)の意味いみ”. goo国語こくご辞書じしょ. 2019ねん11月27にち閲覧えつらん
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  9. ^ Lucy and the 10 Percent Brain Myth” (英語えいご). www.brainfacts.org. 2021ねん10がつ26にち閲覧えつらん
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  29. ^ 浜崎はまざき智仁ともひと13:00 ~13:40脂質ししつ精神せいしん金城学院大学きんじょうがくいんだいがく/日本にっぽん脂質ししつ栄養えいよう学会がっかい共催きょうさいシンポジウムの抄録しょうろく 6しょうp10『脂質ししつ栄養えいようがくしん方向ほうこうとトピックス

参考さんこう文献ぶんけん[編集へんしゅう]

  • Werner Kahle、長島ながしまきよしいわほり修明のぶあきやく分冊ぶんさつ 解剖かいぼうがくアトラスIII』だい5はん文光ぶんこうどうISBN 4-8306-0026-8日本語にほんごばん2003ねん
  • スポーンズ下野しもの昌宣まさのぶやくのうのネットワーク』 (みすず書房しょぼうISBN 9784622088844、2020ねん)
  • Brain 英語えいご - スカラーペディア百科ひゃっか事典じてんのう」の項目こうもく

関連かんれん項目こうもく[編集へんしゅう]

外部がいぶリンク[編集へんしゅう]